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サイバーパンク2077

 あのウィッチャー3の、あのCD Projektが作った新規IPということで、世界中から期待されていたわけです。実際、売れに売れたわけです。ところが、どうもゲームの中身がPS4には荷が重かったようで、発売当初はバグとエラー落ちの嵐だったということは皆さんご存知のとおりです。
 私はこのゲームを2021年1月中旬から2月初頭に普通のPS4(proではないやつ)でプレイしました。ゲームのバージョンで言うと1.06と1.1です。一応、状況は大分改善されてはいました。グラフィックの設定は一切いじらずにプレイをしており、総プレイ時間は今のところ60時間ほどになっていますが、これまでのエラー落ちは合計15回だけです。全体的には、メインミッションよりもサイドミッションの方が改善が甘い気がします。細かいバグは色々ありました。原因不明の短時間フリーズは何度もありましたし(OPTIONSボタンやタッチパッドをいったん押してゲームをポーズしてからまた戻ると治る場合が多いですが、治らない場合もありました)、なぜか唐突に走ることができなくなる(歩いての移動は可能だが、それも妙に遅い)といったような事態も何回も起きました。特にゲーム内で主人公にかかってくる電話が色々な不具合の引き金になっているような印象を受けました。ただ、進行不能バグのような重大なものには出会っていません。この手の細かいバグは大作オープンワールドにはつきものでしょう。

 重要なのは、このゲームが前記のような不具合を我慢してまでやるほどおもしろいものなのか、ということでしょう。また特徴を箇条書きにしておきます。
・FPSのオープンワールド。
・舞台は2077年の北米にある「ナイトシティ」という架空の都市。
・オープンワールドは特別広くはない。近年の大作と比較すれば小さめ。
・人間は自分の体に色々と機械を埋め込んで「肉体改造」をするのが普通の世界観になっている。
・道を走っている車は奪えるし、通行人も攻撃できる。ただ悪いことをするとすぐ公権力に追い回される。このへんは非常にGTAっぽい。
・主人公はGTAのように色々な銃器や近接武器を使いながら敵と戦うことになる。また、ウォッチドッグスシリーズのようなハッキングアクションも可能であり、機械やら人間やらを遠くから攻撃することができる。目的へのアプローチの手法は多彩である。正面からドンパチをしてもいいし、メタギアのように近接ステルスを中心に立ち回るのもありだし、ハッキングアクションを駆使してもよい。
・アプローチが多彩であるということは、その裏返しとして、FPSとしては特別難しくはないということでもある。難易度はイージーからベリーハードまでの4段階あり、変更もいつでも可能である。またこのゲームで一番強いのはおそらくハッキングアクションであり、極めればドンパチは一切せずとも敵を全部沈黙させることができる。
・メインミッションだけやればおそらく20時間から30時間ほどで終わるボリューム。
・ただ基本は敵の拠点に潜入して戦うだけなので、バリエーションには乏しい。
・サイドミッションも数は豊富。ボリュームは文句はない。ただやっぱり中身のバリエーションには乏しい。
・主人公Vは性別も含めて自由にキャラメイクができる。またゲーム開始時に主人公の出自を3つの選択肢の中から選ぶことになるが、序盤の展開が違うだけですぐに共通のストーリーに合流してしまうようである。
・ストーリーは、特筆するほどおもしろいわけではない。Vは、裏稼業でのし上がることを夢見る若者である。ここもやっぱりGTAみたいである。そんなVがとある依頼を遂行中に、"Relic"なるものを自分の体に埋め込んだせいで、ジョニーという別の人格が発現し、放っておけば早晩自分の体はジョニーに乗っ取られてしまうということが判明する。そんなVが、その状態を解消するべく奔走するうちに、ナイトシティの暗部に触れていく……というような話になっている。ひとつの体をVとジョニーというふたつの人格がとり合う三角関係状態にどう折り合いをつけるかは、最終的にはプレイヤーに委ねられる構造になっており、エンディングも色々と種類がある。
・ロード時間は長い。

 まとめると、オープンワールドとしての新機軸は一切ありません。GTAにウォッチドッグスシリーズのハッキングアクションを混ぜて近未来SFチックにした作品です。舞台となるナイトシティは作り込まれてはいます。近未来の治安が悪化したディストピアなので、全体的な雰囲気は『AKIRA』や『攻殻機動隊』や『ブレードランナー』みたいな感じです。文字通り「サイバーパンク」というジャンルそのものです。この手のディストピアをゲームで再現したのが、このゲームの新しさなのかもしれません。確かにナイトシティには高度に都市化されたエリアがあるかと思えば、すぐ近くにはほとんどスラム街のような屋台町(「サイバーパンク」というジャンルの通例ですが、日本の繁華街みたいに漢字や仮名の書かれた看板が鬱蒼と配置されています)も寄り添っており、貧富の差が激しい発展途上国のメガシティのような、むせ返るほどの密度はよく表現できていると思います。ただ別に、自由に入れる建物が多いわけでもなく(特定のミッション中しか入れない建物も結構あります)、迷宮のような地下街があるわけでもないので、結局都市の外側しか探訪できません。この点も昔のオープンワールドのままです。
 ミッションの内容も単調なことが多いです。この点はウォッチドッグスの良くないところをそのまま継承してしまっています。敵の拠点に潜入してドンパチをするミッションが多く、バリエーションに乏しいのです。サイドミッションには射的やらレースやらもありましたが、絶対数は少ないです。GTA5であれば、飛行機を落としたり、飛行機に飛行機で突入したり、パラシュートで敵の拠点に降下したりといった映画的な演出に富んだミッションがたくさんありました。そういうバカっぽさをこのゲームで出せと言っているわけではありませんが、何にせよもうちょい多様性が欲しいのです。息をつかせぬワクワクをプレイヤーに与えて欲しいのです。
 結論的には、現状まだまだ残っているバグやエラー落ちと戦いながらやるほどのゲームではありません。アップデートは確実にしてくれるでしょうから、そのあたりが落ち着いてからやった方がいいと思います。オープンワールドゲームは、もう世に色々なものが出ているので、最後は好みだというのが私の持論です。本作は既存の作品のハイブリッドような存在であり、目新しい部分は特にありませんが、近未来ディストピアを舞台としたSF(つまりは、「サイバーパンク」というジャンル)が好きな人であればハマれると思います。以上です。

その他
・店に物を売るときのUIはウィッチャー3そのものです。店の所持金に限りがあり、その額以上の物を一度に売れないのもウィッチャー3のままです(ゲーム内時間を経過させないと店の所持金が回復しない仕様になっています)。面倒くさいだけのリアリティなので、改善して欲しいです。
・消耗品もムチャクチャたくさん種類があります。ここもウィッチャー3と同じなのですが、ワンボタンで使える回復アイテム以外はほとんど使わない(使わなくてもクリアできる難易度)ので、あんなに種類を用意してやる必要はないと思います。

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