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ライフ イズ ストレンジ

 洋ゲーです。舞台はアメリカですが、作ったのはフランスの会社らしいです。
 主人公のマックスは、アルカディア・ベイという片田舎の漁師町でブラックウェル高校という学校に通う少女です。このマックスが、ある日突然時間を巻き戻す能力を手に入れました。その能力を使ってとある少女(後に判明しますが、かつてマックスの親友だったクロエです)を助けます。久し振りにクロエと再会したマックスは、クロエの頼みで失踪した彼女の親友・レイチェルの捜索を手伝うことになります。これに首を突っ込んだせいで、マックスがブラックウェル高校全体の暗部にまつわるゴタゴタに巻き込まれていくという話です。
 基本的には、主人公をアクションゲームみたいに動かせるサウンドノベルと思ってくれれば間違いはありません。マックスは色々なところに行って、時間を巻き戻す能力を使いながら、色々な人から話を聞き、色々な物を調べつつ、レイチェル失踪事件の真相を追っていくことになります。ただアクション要素はそれほど強いわけではなく、L.A.ノワールみたいに「どこをどうやって調べるかをアクションゲーム的な操作で決定していくことができる」という程度のものです。ゲームの核はお話を見ることであって、そういう意味ではやっぱりサウンドノベルなのです。
 サウンドノベルなので、プレーヤーで様々な局面で様々な選択を迫られ、その選択で未来は様々に分岐するわけですが、和製サウンドノベルのようにそのせいでバッドエンドに分岐したりはしません。ある場所での選択が未来に影響を与えるとはいっても、未来の会話の内容が若干変わるとか、それぐらいのものであります。過去に良くない選択をしていたとしても正解の方向に行けなくなるということはなく、若干正解にたどり着くまでの会話の流れが変わる、ぐらいの違いしか生じません。だから、あまり考えずにやっても、エンディングまでは行けます。そのためフローチャートみたいなものも存在せず、過去をやり直すとやり直した時点以降のデータは全て吹っ飛び、またその時点から始めないといけません。完璧主義で全ての選択肢を見ておきたい筆者はこの仕様に若干イライラしましたが、それも好みの問題でしょう。

 サウンドノベルである以上、決定的に重要なのはお話になってきますが、ネタバレになるのであまり詳しくは書けません。上記のあらすじを見るとミステリー要素が強いのかなという印象を受けるかもしれませんが、決してそんなことはありません。ゲームは5部構成になっていますが、レイチェル失踪事件の真相は5部の冒頭で分かってしまいます。話が進むにつれて、マックスの時間を巻き戻す能力も万能ではなく、使うと種々の弊害が生じることが明らかになっていくわけですが、むしろ「そういう制約のある能力しか使えない中で、この街や高校に起きている問題に対して全体的にどう折り合いをつけるか」というのが話の主眼になっています(5部のお話の大半はそれに割かれています)。
 筆者は十分に楽しめたとだけ言っておきますが、完全なハッピーエンドではないので、そこは好みの分かれるところかと思います。アルカディア・ベイの情景に全体的に漂う田舎の漁師町特有のけだるげでどこか閉塞的な雰囲気、それを助長するフンワリとしたBGM、序盤は徹底的に内気で自分に自信がないマックスと、学校から退学処分を受けて腐っており、家庭とも折り合いの悪いクロエ、プレーヤーの敵愾心を絶妙に煽ってくるトコトンまでにステレオタイプないじめっ子たち、それに無頓着に見える大人たちなど、やっていると気分がドンドン沈んでくる要素でゲームは固められています。解決されるものもありますが、それも終盤の話であって、大部分はこの鬱要素と向き合ってゲームを進めなければなりません。そこも、好みの分かれるところかと思います。筆者なんぞは、1部をクリアしたところで、ダメージが大きくてしばらく再開できなくなりました。

 とはいえお話はよくできているので、この手のが好きな人はやってみましょう。
 筆者が若干気になったのは、話を進めていくにつれ優等生のレイチェルがフランクというドラッグの売人とかなり親密な交際関係にあったことが明らかになるわけですが、そのことがスルーされていた点です(レイチェルに固執しており、フランクのことを嫌っていたクロエも、そこまで反発している様子がありませんでした)。筆者の感覚からすると、「なぜ優等生がこのようなろくでもない男と?」というふうに新たな謎のひとつに加わる要素だと思うのですが、そういう扱いにはならず、当然の前提として話が進んでいきました。欧米の方々との感覚の違いなのかもしれないので、分かりませんが。

余談1
 クロエは髪を青く染めているのですが、不思議なほど違和感がありません。アニメキャラも髪が青くても違和感がないので、やっぱりアニメキャラは白人っぽい顔にデザインされているんだろうなという仮説への確信を強くしました。

余談2
 これを書くためにウィキペディアの"Life Is Strange"の項目を見たら、何の注意も警告もなくストーリーの完全なネタバレが書いてあってワロタ(2016年8月28日現在)。

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