高橋維新のページ

　暇だったのでPS4のダウンロード版をやってます。
　まあ、ミステリーのサウンドノベルです。

　4本の新作と携帯アプリで配信されていた10本のリメイクが収録されています。個々の作品につながりはほとんどないので、シャーロック・ホームズの短編集みたいなものを想起していただければしっくりくるかと思います。1本1本のお話は2〜3時間もあれば終わるので、ボリュームはそれほどでもありません。ダウンロード版で5390円（パッケージ版は5800円）という価格を高いと見るか低いと見るかは人によりけりだと思います。

　ミステリーのサウンドノベルなのでプレイヤーが主人公の行動を要所要所で選択していくのですが、あんまりお話自体に深みがありません。謎もそれほど深いものがありません。最終的に総当たりでストーリーを進められるのもそうなのですが、そういうレベルの話ではありません（むしろ、詰まった時のために最終的にはそういう逃げ道を用意しておくのがこの手のゲームでは大事だと思います）。そういうこと以前にメインテーマの「事件」自体が、「関係者全員から話を聞いてそれを総合すれば真相が分かってしまうようなもの」ばかりなのです。警察が真相を掴めなかったような過去の事件も劇中には出てくるのですが、それも「関係者全員から話を聞いてそれを総合すれば真相が分かってしまうようなもの」という点は共通しているので、「探偵がわざわざ後から調べなくても警察が最初にちゃんと調べてれば真相は分かっただろ！　聞き込みが甘かっただけじゃねえか！？」と思えて白けてしまいます。1本1本のお話が短めなので調査を進めるうちに新たな謎が出てくるというようなことも少なく、十分な情報が揃って真相の察しがついてしまえば、そこから最後まで進めるのをダルく感じてしまいます（実のところミステリーというものは真相が分かってしまうとそれ以降を読むのがダルくなるということが頻繁に生じるので、何らかの仕掛けや手当てをしておくもんです）。個々のエピソードが完全に独立しているので、逆転裁判みたいな全てのお話が後からつながってくる快感もないのです。
　あと、一介の私立探偵に過ぎない主人公に対して関係者が簡単に話をしすぎだと思います。それゆえに割と簡単に情報が集まるので、真相が判明するまでの駆け足感（アッサリ感）も強くなってしまっています。本来事件の関係者は事件の関係者である以上脛に傷を持つ人が結構な割合でいるはずです。そんな人が探偵を名乗る不審なおっさんに簡単に話をするとは思えません。渋る相手から話を聞き出す神宮寺の技術についてはもっと詳細な描写をした方がリアリティを持たせられると思います。情報料を払うとか、口八丁手八丁で説得するとか、しつこく何回もアタックするとか、その人の琴線に触れるような言動をしてやるとか、ですけど。
　その調査自体も、東京23区周辺（特に主人公の探偵事務所がある新宿と歌舞伎町周辺）をウロチョロしているだけで済んでしまうので動きやスペクタクル感があんまりありません。歌舞伎町周辺で完結する話ばかりだと龍が如くのサブストーリーかと思えてしまいます。
　唯一、「連鎖する呪い」というお話は動きも謎が謎を呼ぶ展開もあってかなり脚本を練った感が伝わってきます。今作の白眉でしょう。ただ、他のお話と尺が同じなので駆け足感が非常に強いです。新しい登場人物が現れたり新しい事件が起きたりする展開の連続でジェットコースターに乗せられたまま真相にたどりついてしまうので、もっと長めの尺でゆっくりと丁寧に伏線を張って欲しいものです。ミクラが出たテレビとか、20年前の火災とか、美倉村がダムに沈んだ経緯とか、グレた浅田大輔とか高田洋平とか池田母子とか崎田志穂とかのことは絶対もっと丁寧に伏線が張れるはずです。いい材料は揃っています。過去の事件を現在に関わらせるというのはミステリーの王道ですからね。全部、登場が唐突過ぎるのです。

※ただ、ふと思いましたが、丁寧に伏線を張ったところで「より尺が長くなってより長い間読者を引っ張れる」という効果しかない気がしてきました。おもしろい事件は、核心部分をかいつまんで伝えただけでもエンターテインメント性がありますからね。まあ、小説を単なる暇つぶしと捉えるのであれば十分な効果でしょうが。

　最後に、これは色んな人が言っていることですが、選択肢を選ぶときに「今どの選択肢にカーソルが合っているか」を視認するのが非常に困難です。カーソルが合っている選択肢と合っていない選択肢が視覚的にほとんど変わりがないのです。特に二択だと、どっちに合っているかを見失ってしまえばもう迷子です。幸い、選び損ねたら死みたいなQTE的な選択肢は一つもないんですけど。

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