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その名はエメラ

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
その名はエメラ sage忘れ擬人化(翠水竜)・否エロ401〜403

その名はエメラ


今日も窓から差し込む朝日とともに、爽やかな目覚めが訪れる。
ジュリオは暖かな日の光を肌に感じながら、目を覚ました。この暖かな朝日は気温の低いポッケ村では実にありがたい。
…しかし、彼が目を覚ました時に彼の目の前にあったのは…

昨夜のガノトトスを名乗る翠色の髪の女性の顔だった。
「!!??」
女性の顔がそのままゆっくりと近づいてくる。ジュリオは状況を全く理解できずにいた。
そして、次の瞬間。

何かがジュリオの肌を掠め、彼の顔の真隣に綺麗に細く、鋭い穴が開いた。
「いぃ!?」
ジュリオが驚いてベッドから飛び出す。
「ちっ! 失敗したか! まあいい、今ここで仕留める!!」
女性がベッドから飛び出したジュリオに向き直る。ジュリオはとりあえず女性に向かって身構えた。
その女性があからさまに殺気を放っているからだ。じっとしていたら間違いなく殺される。
(何がどうなってるんだ…!? 何で昨日の夜の女の人が……!?)
「はぁ!!」
そんな事を考えていると、再びジュリオの肌を何かが掠める。しかし、先ほどよりも少し深く食らってしまった。
顔からは血が垂れている。
「ちぃっ! また外したか! だがまだまだだ!!」
そしてジュリオは気づいた。
先ほどから自分の肌を掠めているのはあの女性が吐いている高圧の水だと。
(あの攻撃は……!?)
しかし、そんなことを考えている間にまた次の攻撃が来た。
なんとか避ける事はできたが、このままでは防戦一方で何も出来ない。
その上、どう対抗しようか考えている間に次の攻撃が来るのだから、反撃も出来ない。
このペースが続けば、やがてジュリオの方の体力が切れてしまう。
「ハハハハハ!! 抵抗のしようがあるまい! さあ、おとなしく私に…!?」
女性が喋っていると、彼女はいきなりその場でよろけて膝をついてしまった。
「!? い、一体何が…」
その答えはすぐに出た。彼女の足元にカンカンに腹を立てている子豚がいる。
そう、さっきからの騒音でブタヒレが睡眠を妨げられ、その怒りで彼女に体当たりをしたのだ。
「ナイスだ、ブタヒレ!」
「くっ、しまった…」
体制を立て直そうとする女性だが、ジュリオの方が速かった。
素早く女性の方にダッシュし、彼女を押し倒すと、首を鷲掴みにして身動きを取れなくした。
「…さて…どういうことか説明してほしいのですが?」
「ふ…不覚……!!」



とりあえずまた攻撃されるのは御免だが、ずっとあんな体制でいるわけにもいかないので、武器をつきつけながら話を聞く事にした。
これなら攻撃されつこともあるまい。
ブタヒレはさっきまでの怒りもおさまり、また気持ちよさそうに寝息を立てている。
「…つまり、あなたは僕が取り逃がしたガノトトスが人間になった姿だ、と?」
「昨日も言ったはずだが…そうだ」
「…そんなファンタスティックな事がこの世にあるものか…。…でもさっきの攻撃を見たらそれを信じざるを得なくなりましたよ…」
「だから何度も言っているだろうが!」
だが、やはり先ほどの攻撃などを見たとはいえ、いきなりそんな事を信じるのは難しかった。
モンスターが人間になるなど、ファンタジー小説でも読んだことが無い。
「…それで、何で僕を殺そうと?」
「だからそれも昨日言っただろうが!!」
「それじゃあ、改めて説明をお願いしたいのですが…」
ジュリオが言うと、女性はしぶしぶ説明し始めた。

彼女の話によると、様々なモンスター達の中でも、彼女の仲間達は古いしきたりを大事にしていたらしい。
そして、そのしきたりの一つが『雌は戦って負けた雄とつがいになる』というもの。
そのしきたりの『負けた雄』というのが、人間でも例外ではなかったらしい。
信じられない話だが、モンスターは古来より人間に転生することができるらしく、彼女は転生して人間の姿になったとのこと。
しかし、彼女は(理由は不明だが)人間が嫌いなので人間の姿になどなりたくなかった上に、ジュリオに対して負けを認めていない。
その恨みで、彼を殺そうとしたのだと述べた。
「…無茶苦茶な話だなぁ…。モンスターが人間に転生だなんて…」
「無茶苦茶なものか。お前達人間が知らないだけで、この世界には数多くの元モンスターの人間が暮らしているぞ」
…彼女の目が嘘をついているようにも見えない。
が、だとすると自分が今まで会った人間の中にもモンスターがいたのかもしれないのか?
それを考えて、ジュリオはただ一言、発した。

「ま、いっか!」
モンスターが転生などと、最初に聞いた時は衝撃を受けたが、
ある意味馬鹿とも呼べるほどのポジティブ思考の持ち主であるジュリオはたった一言で疑問を解消してしまった。
「…いいのか? そんなに簡単に信じて……」
「信じがたい話ではありますが、別にそれが本当だとしても嘘だとしても何も迷惑しませんし。
ただ、殺されるのは勘弁してほしいですが」
そう言いながらジュリオは武器をしまった。
それを見て女性がぽかん、とする。
「お前…私はお前を殺すと言ったはずだぞ? なぜ武器をしまう?」
「う〜ん…何というか…あなた、あんまり悪い人に見えないんですよねぇ…。それだけかな?」
「…後悔するぞ?」
「ふーん。そんなことより、あなたの事どう呼べばいいですか?」
今度は女性がガクリとずっこけかける。
ジュリオが自分の生死に関わる問題をたった三文字で解決させ、そのまま全く関係ない話題を持ち出したのだから。
「そんな事って…」
「いや、だからどう呼べばいいんですか?」
あっさりと言葉を遮られ、彼女は少し怒り気味に言った。
「殺すべき敵に名乗る名など無い! 好きに呼べばいい!」
「それじゃあ、スポポビッチさんとお呼ばせさせ」
「前言撤回だ」



その後もひたすらしつこく問い詰め、ジュリオは彼女の名前が『エメラ』という名前だと知った。
「エメラさんかぁ…いい名前ですね」
「何なんだこいつは……」
エメラはあきれ果ててため息すらついていた。
名前を教えないとおそらく永遠に問い詰められ続けるだろうと思い、仕方なく名前を教えたものの、
内心まだ本当にこれでよかったのかと思っていた。
「…今日のところはこれで帰ってやる。だが次こそはお前の息の根を……」
エメラはそう言いかけて、自分の腹の虫が鳴くの音に言葉を遮られた。
「…………」
「…何か食べていきます?」
他人の前で腹の虫が鳴ってしまって恥ずかしいのか、エメラは顔を紅潮させている。
今自分に食事を勧めているのは敵だ。
しかしながら、腹が空いたという事実に逆らう事ができず、彼女は小さく頷いてしまった。
「それじゃあ、うちで雇ってるアイルーに作らせますね」
「…すまんが、私は人間が食べるようなものは食えんぞ」
「え? …あ、そっか!」
ジュリオは思い出したよいうに言うと、部屋にあるアイテムボックスを漁り始めた。
そして、何かを取り出してアイテムボックスを閉じると、それをエメラに突きつけた。

…ジュリオが突きつけた物体…実によく肥えた釣りカエルを見て、エメラが危うくよだれを垂らしそうになる。
人間になったとはいえ、元はガノトトス。本能通りのことなのだが、それが妙に恥ずかしく、あわててそれを我慢した。
これが人間の精神というものか…と彼女は思った。
とはいえ、やはりモンスターから人間になったばかりの彼女は本能に逆らうなどということは到底出来なかった。
「よこせっ!!」
エメラはジュリオの手から釣りカエルを奪い取ると、ものすごい勢いで食べ始めた。
…人間がカエルを食べている姿は少々グロテスクであったが、これを見てジュリオは彼女が元ガノトトスであることを確信した。
「…敵の情けを受けるとは、我ながら情けない…。だが、覚えてお」
「エメラさん」
カエルを食べ終えたエメラが突然大声で喋りだしたが、またもジュリオに遮られる。
「…今度は何だ?」
「僕は礼の品を出せとかそういう事は言いません。…ですが、お礼の言葉の一つもないのは少々不快です」
「な」
「やはり礼儀としてお礼の言葉ぐらいは言ってほしいわけで…」
「………」
言い返そうとしたが、もはやエメラは、完全にジュリオのペースに飲まれていた。
そのまま彼の話は5分ほど続き、それを聞き続けていた。
「…わかりましたか?」
「ああ…。…あ…ありが…とう…」
「よし! それでいいんです!」
ようやくジュリオの呪縛から開放されたエメラは、外に駆け出しながら叫んだ。
「いいか! 次に会う時、お前の命はないからな!!」
「あ、今日はまだ屋根の雪下ろししてないからそんな大声出したら危な…あ、雪が頭の上に…。
痛そうだなぁ…。でもそのまま走ってるし大丈夫みたいだし、よかった…」



「くそ、散々な目に会った……。……待てよ……。よくよく考えてみたら、さっき話してた時、隙だらけだったんじゃ………」


続く


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2010年07月18日(日) 20:46:58 Modified by sayuri2219




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