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ギアノス・フェイク5

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
ギアノス・フェイク5 2-332擬人化(ギアノス、轟竜)・否エロ129〜132

ギアノス・フェイク5


荷車を引く。がしゃがしゃと金属がこすれあう音がする。ぎしぎしと車輪が雪を踏む音がする。
積まれているのは武器だ。そんなに強くないものが殆どだが、刀剣類や弓など、弾の補充等が無い物を選んだ。
砥石は掘り出して使えるし、矢は作れる。彼らに持たせる武器ならば人と関わらずに運営できるものが一番である。
俺が村を離れてからもう一週間ほど。体力の回復を待ってあの恐い娘から逃げるように武器を買いに村を出たのだ。
本当は武器を買ってすぐ戻るつもりだったが、大量の武器を買うには金も材料も足りず、補充するのに時間がかかった。
おまけに国付きの騎士隊のほうから武力団でも作る気だろうとあらぬ疑いを――まあ、これは仕方ないか。
それに武力を持った団体を作るという意味においてはあながち間違ってもいない。いやしかし、それにしてもだ。
龍忌に狩らせるなんていう脅しをかけること無いだろうに。思わず本当の事を言いそうになった。

「まあ、無事武器も手に入ったし、これで――」

「ギャァァアァッ!」

遠くでギアノスの声が響いた。聞き覚えがある。
これは狩りのときに『危険』を表す鳴き声だ。この辺りにはあの一群以外のギアノスの群れは存在しない。と、いうことは。

「糞ッ!」

俺は荷車から太刀を引き抜くと、急いで声のした方角へ向かった。ざっしゅざっしゅと雪を漕いで進む。
いったい何が起こったんだ?彼らは、そしてあの少女は無事なのだろうか――?

「わぁっ!」

崖を回りこむと、女の子とぶつかった。あの恐い娘だ。しかしそんなことに構ってもいられない。

「何があった!?」

「あなたは…!戻ってきてくれたんですか!?」

「ああ!だから何があったんだと…」

その娘はひどくあせった様子で手短に説明した。

「私たちの群れが“敵”に襲われているんです!手段は講じたんですが、私が力不足で…!」

彼女が、俺が殺したドスギアノスの代わりの立場を勤めていたらしい。
少女をそっと抱きしめて安心させると、俺は群れの方向へ向かって走り出した。
どんな奴が相手だろうが、必ず狩ってやる!
自信はあった。前回とは違い武器も得手な太刀だ。狩れない敵なんて――


「…え?」

――居た。体がぴくりとも動かない。俺の目の前にいる、ギアノスたちを襲っていた“敵”。
だからあの娘はぼかしたんだろうか。俺が人間だと知っていたからか?

俺の目の前にいるのは龍だった。
いや、見た目だけを言えば美しい女性ハンターだ。けれど解る。彼女が迸らせている殺気、そして怒り。
これは人間のそれではない。

「…あら?良いところに来てくれたわね☆」

直感。師匠の教えで、いつも俺はそれを大切にしてきた。
今回も俺は直感に従い、真横に跳んだ。瞬間、俺が居た空間を切り裂いて女の腕が飛ぶ。
瞬発力を最大限発揮し、獲物との距離を縮めると同時にその勢いで攻撃する。その動きには覚えがあった。

「お前は…あの時のティガレックスか…!」

ギアノスの血に汚れた右手を嘗めながら嬉しそうに目を細める女。
緑色の目、極彩色の鱗。そして角をあしらったように立った二筋の髪。オレンジ色の短髪は短気そうな“彼女”の特徴をよく表している。

「フン、この間はよくもまあ虚仮にしてくれたわねぇ?」

装備は見たことの無いデザインだ。全身を覆った鱗が体のラインをきっちりと描いている。恐らくはティガレックスにおける「スーツ装備」なのだろう。
ひじには尖った装甲も見える。あれもまた武器だろうか?下半身は材質は鱗ながらもスカート状になっていて、時折覗くむき出しの太ももが艶かしい。
…これが竜か?

「何故俺たちを襲う」

「腹が立ったから、よ。虚仮にしてくれた御礼ってわけ☆」

場に不釣合いなほど明るい口調で話すその轟竜はなおも右手の血を啜る。
プライドの高さや残忍さは間違いなく飛竜だ。しかし――。
女は、いや轟竜は姿勢を低くして右腕を構えた。攻撃態勢らしい。
俺も背負った太刀を抜き放ち、切っ先を敵に向ける。人間相手の戦闘は師匠から教わってはいるが、まさかあの教えを使う羽目になるとは。

「トカゲまがいがハンターの真似事?そんなモン持ったって何も変わりはしないのにね」

疑問点が一つ。あのティガレックスは何故人の姿をしているんだ?ここのギアノスが異常なんじゃないのか?
人型をした飛竜なんて聞いたことも無い。


「ぼんやりしてたらすぐに死んじゃうわよ」

敵の攻撃、右手の掌底をかわす。攻撃目標を失って轟竜の体が流れた。俺の右脇を通過し、視線が交差する。
今の瞬間にもカウンターは入れられる。攻撃を避け、すれ違いざまに袈裟懸けに斬り倒す。それが元々東国で対人武器として作られた太刀の真髄だと、師匠は言っていた。
或いはここだ。敵が右フックを放ち、俺がしゃがみ込んでかわす。がら空きの胴に突きを一閃してやることが出来る。
避けざまに腕を斬り落とす。後ろを取った瞬間に肩口から斬る。或いは首を撥ねる。
この瞬間にも、その一撃にも、余り人の姿で戦ったことの無いだろう彼女の隙が見て取れる。
だが、太刀を握ったその手が動かない。「相手は竜だ」と自分に思い切り言い聞かせても、どうしても人の姿の彼女を斬ることが出来ない。
人間を、同種を殺すようで、どうしても決心がつかない。

「ちぇッ。戦う気ないのぉ?」

俺の気も知らず軽く述べる轟竜の女。つまらなそうに緑色の目で俺を射抜く。左目の光彩が著しく収縮し、威嚇する光を放つ。
途端に俺の体に痺れが走る。懐かしい感覚だ。竜の眼――生き物を威嚇する際に竜が使う常套手段だ。
対峙の瞬間に最も気を付けなければならないことで、気を抜いているとこの竜の眼からの連撃で殺されかねない。
しかし、これについての訓練は十分積めている。
女が思っているよりずっと早く筋肉の収縮を解いた俺は、掌底を一歩横に踏み出してかわす。
状況から訓練による条件反射になってしまって、体が考えるより先に動いた。
掌底をかわした数瞬の後、ざしゅっ、と手に斬った感触が伝わる。すれ違いざま、カウンターという形をとって彼女を、斬った。

「な…っ!」

足の力を失った女は雪を紅く染めながら、自らの攻撃の勢いで転がっていく。
生命力は強いようで、起き上がりはしたが、かなり弱っているようだった。

「かはッ…」

血を吐いた後も気丈にこちらを睨みつける。
がたがたと体が震える。頭に声が鳴り響いた――『人を斬ったな』、と。
手の中でかちゃかちゃと太刀が音を立てた。刃の返り血がどこまでも紅い。
飛竜だって血は紅い。頭でいくらそう考えても、その血から眼が離せない。

『人を、同種を斬ったな』

そんな、声が。

「あああぁぁぁあああああ!!」

彼女は隙を見逃すほど優しい敵ではなかった。血を振りまきながらも俺の肩に掌底を打ち込む。


「ぐぅッ!」

今度は俺が吹き飛んだ。雪に埋もれながらも何とか態勢を整える。

「はぁっ、はぁっ……おかしいな、どうして私の“眼”が効かないのよ?」

女は当然ともいえる質問を口にした。通常、“眼”は絶対に有効な武器である。
それは他の者と隔絶されるべき竜たちの威嚇手段であり、通常は避けられるものではない。

「…生憎と、眼に対する訓練は何度もやっているからね」

面白くない、という表情をした彼女は静かに腰を落とす。俺は未だにショックが抜けない。未だに太刀を持つ手は震えているのだ。
しかし、彼女が飛び込んできてくれれば、或いは斬ることが出来るだろう。
静かに太刀を構えた。
白い雪原に、静寂の時間が過ぎてゆく。ひょっとしたら数瞬かもしれない、その時間の末に。
女の血が、ぽたっ、と雪原に落ちた。

「はぁぁああっ!」

女が動いた。一気に間合いを詰め、右手をこちらに突き出さんとする。この攻撃なら避けられる。そう思った。
右足を大きく突き出し、地面を強く蹴る。強い瞬発力が更なるスピードを生み出して、右腕を思い切り前に突き出すその瞬間、俺は左に身を引いた。
これで彼女の攻撃は外れ、後は眼を瞑って先程の動きを反芻してやればよかった。
こいつは敵だ。殺さなくては。
だが、太刀を構える腕に先程のような感触は伝わらない。代わりに全身を覆う痛み。

「ぐぁああっ!」

思わず口から悲鳴が漏れた。何でだ?確実に彼女を斬れた筈だったのに!
眼を開くと、回転する視界の中に先程まで無かったものが見える。…竜だ。
一目でそれとわかる巨大な体躯。紛れも無く先日戦ったティガレックスだった。
彼女はインパクトの瞬間に体を竜のそれに戻していたのだ。避けられよう筈も無かった、か。

「だ、大丈夫!?」

聞き覚えのある懐かしい声がした。最初に会ったギアノスの女の子だ。そういえば、レックスとのあの一戦以来あっていなかった。
あの時、俺が攻撃を受けたのを自分のせいだと思っていると、そう誰かから聞いていた。
ここでまた心配させるわけにもいかないだろう。取り合えず起き上がるだけ起き上がり、少女の頭を撫でてやる。
しかし不味い。さっきの攻撃を無防備のまま受けてしまった。
人間状態の掌底ならまだ大丈夫だが、竜の攻撃はやはり強力だ。
こんな状態で、勝てるのだろうか。
2010年07月19日(月) 10:47:01 Modified by sayuri2219




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