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走れゲリョス

ゲリョスは激怒した。
必ず、かの邪知暴虐の王、砂漠の暴君ディアブロスを除かなければならぬと決意した。 
ゲリョスには政治がわからぬ。
ゲリョスは、沼地の鳥竜種である。
激しい閃光を瞬かせては間抜けなハンターどもを撃退し、
イーオスたちと遊んで暮らしてきた。
けれども光り物に対しては、竜一倍に敏感であった。
今日未明ゲリョスは沼地を出発し、森丘を超え雪山を超え、
はるか遠く離れたこの砂漠の地へとやってきた。

ゲリョスには父も、母もない。
女房もない。
鳥竜種の、内気なイャンクックと二人暮らしだ。
このイャンクックは、森丘のある律儀なイャンガルルガを、近々、花婿として迎えることになっていた。
結婚式も間近なのである。
ゲリョスは、それゆえ、花嫁の装飾品や祝宴のご馳走やらを買いに、はるばる市にやってきたのだ。
砂漠に 住み着く蟹は珍味として有名だ。

まず、その品々を探し集め、それから砂漠の外れへ向かった。
ゲリョスには竹馬の友があった。
アカムトルムである。
ゲリョスは炎が、アカムトルムは閃光が苦手だったが、それさえ2匹の友情にはなんら問題を起こさなかった。
彼は今、この砂漠の外れに住み着いている(なんでも、近々そこを巨竜ラオシャンロンが通るらしい)。
その友を、 これから訪ねてみるつもりなのだ。
久しく会わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。

歩いているうちにゲリョスは、砂漠の様子を怪しく思った。
ひっそりとしている。
もうすでに日も落ちて、砂漠が 暗いのは当たり前だが、けれども、なんだか、夜のせいばかりではなく、
砂漠全体が、やけに寂しい。
砂漠とは、 もっと生命に満ち溢れた賑やかな場所ではなかったか。
呑気なゲリョスも、だんだん不安になってきた。
エリア5で逢ったガレオスを捕まえて、なにかあったのか、2年前に この砂漠に来た時は、
夜でも皆が歌をうたって、砂漠は賑やかであった筈だが、と質問した。
ガレオスは、首を振って 答えなかった。

しばらく歩いてゲネポスに出会い、今度はもっと、語勢を強くして質問した。
ゲネポスは答えなかった。
ゲリョスは 嘴を打ち鳴らして質問を重ねた。
ゲネポスは、辺りをはばかる低声で、僅かに答えた。

「ディアブロス様は、砂漠の民を殺します」
「何故殺すのだ」
「悪心を抱いている、と言うのですが、誰もそんな、悪心を持ってはおりませぬ」
「沢山お前たちを殺したのか」
「はい、初めはディアブロス様の妹婿、ティガレックス様を。それから、ご自身のお世継ぎのモノブロス様を。
それから、妹のディアブロス亜種様を。それから、ディアブロス亜種様のお子様のリオレウス様を。それから、
皇后のナナ・テスカトリ様を。それから、賢臣のドドブランゴ亜種様を」
「驚いた。王は乱心か」


「いいえ、乱心では御座いませぬ。モンスターを、信ずることができぬ、というのです。
この頃は、臣下の心をも、お疑いになり、少しく派手な暮らしをしている者には、人質1匹ずつ
差し出すことを命じております。ご命令を拒めば十字架にかけられて、殺されてしまいます。今日は、
6回猫タクが呼ばれました」

聞いて、ゲリョスは激怒した。

「呆れた王だ。生かしておけぬ」

ゲリョスは、単純な男であった。
買い物を背負ったままで、のそのそエリア9に入っていった。

たちまち彼は、巡邏のガレオスに束縛された。
調べられて、ゲリョスの懐中からは投げナイフが出てきたので、騒ぎが大きくなってしまった。
ゲリョスは、王の前に引き出された。

「この投げナイフでなにをするつもりであったか。言え!」

暴君ディアブロスは静かに、けれども威厳をもって問い詰めた。
その王の顔はモノブロス亜種のように蒼白で、双角の間の皺は、刻み込まれたかのように深かった。

「砂漠を暴君の手から救うのだ」

ディアブロスは、憫笑した。

「仕方のない奴じゃ。お前には、わしの孤独が分からぬ」
「言うな!」

とゲリョスは、トサカを光らせて反駁した。

「モンスターの心を疑うのは、もっとも恥ずべき悪徳だ。王は、民の忠誠をさえ疑っておられる」
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、お前たちだ。モンスターの心は、
当てにならない。モンスターは、もともと私欲の塊さ。信じては、ならぬ」

暴君は落ち着いて呟き、ほっと溜息を吐いた。

「わしだって、平和を望んでいるのだが」
「なんの平和だ。自分の地位を守るためか」

今度はゲリョスが嘲笑した。

「罪のないものを殺して、なにが平和だ」
「黙れ、下賤の者」

ディアブロスは、さっと顔をあげて報いた。

「口では、どんな清らかなことでも言える。わしには、モンスターの腹綿の奥底が見え透いてならぬ。
お前だって、今に、磔になってから、泣いて詫びたって聞かぬぞ」
「ああ、王は利口だ。自惚れるが良い。私は、ちゃんと死ぬる覚悟でいるのに。命乞いなど
 決してしない。ただ――」

と言いかけて、ゲリョスは足元に視線を落とし瞬時ためらい、

「ただ、私に情をかけたいつもりならば、処刑まで3日間の日限を与えてください。たった1匹の妹に、
亭主を持たせてやりたいのです。3日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰ってきます」
「馬鹿な」

とディアブロスは、しわがれた声で低く笑った。


「とんでもない嘘を言うわい。逃がした鳥竜種が帰ってくるというのか」
「そうです。帰ってくるのです」

ゲリョスは必死で言い張った。

「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許してください。妹が、私の帰りを持っているのだ。
そんなに私を信じられないならば、宜しい、この砂漠にアカムトルムという飛竜がいます。私の無二の友人だ。
あれを、竜質としてここに置いていこう。私が逃げてしまって、三日目の日暮れまで、ここに帰ってこなかったら、
あの友人をハメ殺してください(閃光玉的な意味で)。頼む、そうしてください」

それを聞いてディアブロスは、残虐な気持ちで、そっとほくそ笑んだ。
生意気なことを言うわい。
どうせ帰ってこないに決まっている……この嘘吐きに騙された振りして、放してやるのも面白い。
そうして身代わりの飛竜を、三日目に殺してやるのも気味が良い。
モンスターは、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代わりの飛竜を閃光玉漬けにしてやるのだ。
世の中の正直者と、ソロプレイしかできない奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。

「高台ハメはソロでもできるが、タイミングがシビアだからな」
「なに、なにを仰る」
「願いを、聞いた。その身代わりを呼ぶが良い。三日目には日没までに帰ってこい。
遅れたら、その身代わりを、きっと殺すぞ。ちょっと遅れてくるがいい。お前の罪は、永遠に許してやろうぞ」
「なに、なにを仰る」
「はは。命が大切だったら、遅れてこい。お前の心は、わかっているぞ」

ゲリョスは口惜しく、トサカを光らせて地団駄踏んだ。
ものも言いたくなくなった。
竹馬の友、アカムトルムは、深夜、エリア9に召された。
暴君ディアブロスの面前で、良き友と良き友は、2年振りで相逢うた相逢うた。

ゲリョスは、友に一切の事情を語った。
アカムトルムは無言で頷き、ゲリョスに鼻っ面を擦り付けた。
友と友の間は、それで良かった。
アカムトルムは、鎖打たれた。
ゲリョスは、すぐに出発した。
初夏、満天の星である。


ゲリョスのその夜、一睡もせず十里の路を急ぎに急いで飛んだ。
しかし、夜更けまでには村に着くと踏んでいたゲリョスの翼に、突然、激痛がはしった。
ゲリョスを 傷付けたそれは細く鋭く、厄介なことに炎を帯びていた。
動かすほどに翼は痛んだが、ゲリョスは降りることも、戦うこともしなかった。
ゲリョスにはやるべきことがあったのだ。

村へと到着したのは、あくる日の午前、日はすでに高く昇って、沼地のモンスターたちは住処を出て縄張りの見回りを始めていた。
ゲリョスの妹のイャンクックも、今日は兄の代わりに縄張り回りをしていた。
よろめいて飛んでくる兄の、傷付き、疲労困憊の姿を見つけて驚いた。
そうして、嘴喧しく兄に質問を浴びせた。

「なんでもない」

ゲリョスは無理に笑おうと努めた。

「砂漠に用事を残してきた。またすぐ砂漠に行かなければならぬ。明日、お前の結婚式を挙げる。早いほうが良かろう」

イャンクックは桃色の身体をいっそう赤らめた。

「嬉しいか。綺麗な衣装や、閃光玉も拾ってきた。さあ、これから行って、
沼地のモンスターたちに知らせてこい。結婚式は、明日だと」

ゲリョスは、また、よろよろと歩きだし、がらくた置き場を飾り、祝宴の席を調え、
間もなくエリア2にうずくまり、大剣溜め3で切りつけても起きぬくらいの深い眠りに落ちてしまった。

目が覚めたのは夜だった。ゲリョスは起きてすぐ、花婿のイャンガルルガの家を訪れた。
そうして、少し事情があるから、結婚式を明日にしてくれ、と頼んだ。
婿の牧人のコンガは驚き、それはいけない、こちらにはいまだなんの仕度もできていない、
虫の季節まで待ってくれ、と答えた。

ゲリョスは、待つことはできぬ、どうか明日にしてくれたまえ、と更に押して頼んだ。
牧人のコンガも頑強であった。なかなか承諾してくれない。
夜明けまで議論を続けて、やっと、どうにかイャンガルルガをなだめ、すかして、説き伏せた。

結婚式は、真昼に行われた。
新郎新婦の、ミラルーツらへの宣誓が済んだ頃、黒雲が空を覆い、ぽつりぽつり雨が降り出し、
やがて車軸を流すような大雨となった。
祝宴に列席していた沼地のモンスターたちは、なにか不吉なものを感じだが、それでも、
命名気持ちを引きたて、狭いエリアの中で、同士討ちしそうになるのもこらえ、陽気に咆哮し、嘴や鉤爪を拍った。

ゲリョスも、満面に喜色をたたえ、しばらくは、ディアブロスとのあの約束さえ忘れていた。
祝宴は、夜に入っていよいよ乱れ華やかになり、モンスターたちは、豪雨をまったく気にしなくなった。
ゲリョスは、一生このままここにいたい、と思った。
この沼地の仲間たちと生涯暮らしていきたいと願ったが、今は、自分の身体で、自分のものではない。
ままならぬことである。


ゲリョスは、我が身にゴムの尾で鞭打ち、ついに出発を決意した。
明日の日没までには、走ってもまだ十分の時がある。
翼の怪我も気になるため、ちょっとひと眠りして回復し、それからすぐに出発しよう、と考えた。
その頃には、雨も小降りになっていよう。
少しでも長く沼地にぐずぐずと留まっていたかった。
ゲリョスほどの男にも、やはり未練の情というものはある。
今宵呆然、歓喜に酔っているらしい花嫁のイャンクックに近寄り、

「おめでとう。私は疲れてしまったから、ちょっとごめんこうむって眠りたい。
目が覚めたら、すぐに砂漠に出かける。大切な用事があるのだ。
私がいなくても、もうお前には優しい亭主があるのだから、決して寂しいことはない。

お前の兄の、1番嫌いなものは、モンスターを疑うことと、それから、嘘を吐くことだ。
毒は吐いても問題ない。お前も、それは、知っているね。亭主との間に、どんな秘密を作ってはならぬ。
お前に言いたいのは、それだけだ。お前の兄は、多分偉い男なのだから、お前もその誇りを持っていろ」

イャンクックは、夢見心地で頷いた。
ゲリョスは、それから花婿のイャンガルルガのごつごつとした鱗に覆われた翼を叩いて、

「仕度のないのはお互い様さ。私の住処にも、宝といっては、妹と大量の閃光玉だけだ。
ほかには、なにもない。全部あげよう。もう1つ、ゲリョスの弟になったことを誇ってくれ」

イャンガルルガは耳をぱたぱたとはためかせ、照れていた。
ゲリョスは笑って沼地のモンスターたちにも会釈して、宴席から立ち去り、エリア2の定位置にうずくまると、
ヒプノックの睡眠ブレスでもくらったかのように深く眠った。


目が覚めたのはあくる日の薄明の頃である。
ゲリョスは跳ね起き、南無三、寝坊したか、いや、まだまだ大丈夫、これからすぐに出発すれば、
約束の刻限までには十分間に合う。
今日は是非とも、あのディアブロスに、モンスターの信実の存するところを見せてやろう。
そうして笑って磔の台に上がってやる。

ゲリョスは、悠々と身支度を始めた。
雨も、いくぶん小降りになっている様子である。
まだ飛ぶことはできないが、問題ない。身支度はできた。
さて、ゲリョスは、ぶるんと全身を大きく揺すって、雨中、貫通矢のごとく走り出した。

私は、今宵、殺される。殺されるために走るのだ。身代わりの友を救うために走るのだ。
ディアブロスの奸佞邪智を打ち破るために走るのだ。
走らなければならぬ。そうして、私は三乙される。若い時から名誉を守れ。
さらば、故郷。若いゲリョスは、辛かった。幾度か、立ち止りそうになった。
くええ、ぎょええ、と咆哮挙げて自身を叱りながら走った。

沼地を出て、森丘を横切り、樹海を潜り抜け、旧密林に着いた頃には、雨も止み、
日は高く昇って、そろそろ暑くなってきた。
ゲリョスは額の汗を翼で払い、ここまでくれば大丈夫、もはや沼地への未練はない。
イャンクックたちは、きっと良い夫婦になるだろう。
私には、今、なんの気懸りもない筈だ。

まっすぐに砂漠エリア9に行き着けば、それで良いのだ。
そんなに急ぐ必要もない。
ゆっくり歩こう、と持ち前の呑気さをとり返し、台詞付きで肉焼きのBGMを囀りだした。
ぶらぶら歩いて2里行き3里行き、そろそろ全里ほど半ばに到達した頃、降って湧いた災難、
ゲリョスの足は、はたと、止まった。

見よ、旧密林エリア2、3間を流れる川を。
昨日の豪雨で旧密林の水源地は氾濫し、濁流滔々と下流に集まり、猛然一挙に丸太を押し流し、
どうどうと響きをあげる激流が、木っ端微塵に丸太を跳ね飛ばしていた。
彼は呆然と、立ち竦んだ。
あちこちと眺めまわし、また、声を限りに咆哮を上げてみたが、ザザミは残らず波にさらわれて影なく、
ドスイーオスの姿さえ見えない。
流れはいよいよ、膨れ上がり、海のようになっている。後のモンスターハンタートライである。

ゲリョスは川岸にうずくまり、男泣きに泣きながらカ○コンに手を挙げて哀願した。

「ああ、鎮めたまえ、荒れ狂う流れを! 時は刻々に過ぎていきます。太陽もすでに真昼時です。
あれが沈んでしまわぬうちに、砂漠エリア9へ行きつくことができなかったら、あの良い友達が、私のために死ぬのです」

濁流は、ゲリョスの叫びをせせら笑うごとく、ますます激しく踊り狂う。
波は波を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えていく。


濁流は、ゲリョスの叫びをせせら笑うごとく、ますます激しく踊り狂う。
波は波を呑み、捲き、煽り立て、そうして時は、刻一刻と消えていく。

今はゲリョスも覚悟した。泳ぎ切るよりほかにない。
ああ、ミラルーツらも照覧あれ! 
濁流にも負けぬ愛と誠の偉大な力を、今こそ発揮してみせる。
ゲリョスは、ざぶんと流れに飛び込み、百匹のガノトトスのようにのたうち暴れ狂う波を相手に、
必死の闘争を開始した。
満身の力を翼に込めて、押し寄せ渦巻き引きずる流れを、なんのこれしきと掻き分け掻き分け、
めくらめっぽう獅子奮迅の毒怪鳥の子の姿には、ミラルーツも哀れと思ったか、ついに憐憫を垂れてくれた。
押し流されつつも、見事、対岸の樹木の幹に、縋り付くことができたのである。

有り難い。ゲリョスはキリンのように大きな胴震いを一つして、すぐにまた先を急いだ。
一刻といえども、無駄にはできない。
日はすでに西に傾きかけている。
ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠を登り、登り切って、ほっとした時、突然、目の前に一隊のハンターが躍り出た。

「(やっと見つけたぞ)」
「なにをするのだ。私は日の沈まぬうちに砂漠へ行かねばならぬ。放せ」
「(おっと、逃げるなよ。まさかゲリョスにワールドツアーされる羽目になるなんてな。
さあ、剥ぎ取れるもの全部剥ぎ取らせてもらうぜ。ただしライトクリスタルてめーは駄目だ)」
「私は命のほかにはなにもない。その、たった一つの命も、これからディアブロスにくれてやるのだ」
「(てめーのせいでゲリョスに時間切れ(笑)とかギルドの連中に失笑されたじゃねーか、畜生、狂走エキス寄越せ)」
「さては、王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。道中で私の翼に弓を射たのも、お前たちか」

ハンターたちは、物も言わず(言ったがお互いに理解できず)一斉に双剣を振り上げた。
どう見ても乱舞厨です本当に有難う御座いました。
ゲリョスはかくかくと、目にも止まらぬ早さで首を振り、公園で餌に群がる鳩のごとく身近の一人に襲い掛かり、
その双剣を盗み取って

「(武器盗まれるとかどんなバグだよ)」
「気の毒だが正義のためだ!」

と、猛然一撃、たちまち、閃光で三人をピヨり倒し、残る者がハリウッドダイブから起き上がろうとする隙に、
さっさとパニック走りで峠を下った。

一気に峠を駆け下りたが、さすがに疲労し、折から午後の灼熱の太陽がまともに、かっと照ってきて、
ゲリョスは幾度となく眩暈を感じ、これではならぬ、と気を取り直しては、よろよろ2、3歩歩いて、
ついにがくりとダウンした。

立ち上がることができぬのだ。天を仰いで、悔し泣きに泣きだした。
ああ、あ、濁流を泳ぎ切り、ハンターを3人も打ち倒しパニック走り、ここまで突破してきたゲリョス よ。
真の勇者、ゲリョスよ。今、ここで、疲れきってしんでしまうとはなさけない、じゃなかった、
ダウンするとは情けない。

愛する友は、お前を信じたばかりに、やがて閃光玉漬けの刑にされなければならぬ。お前は、稀代の 不信のモンスター、
まさしくディアブロスの思うつぼだぞ、と自分を叱ってみるのだが、全身萎えて、
もはや火事場力+2で蛸殴りにされたラオシャンロンほどにも前進叶わぬ。
道端の草原にごろりと寝転がった。体力値が20%以下にもなれば、精神もともにやられる(怒りやすくもなる)。
もう、どうでもいいという、勇者に不似合いな不貞腐れた根性が、心の隅に巣食った。

私は、これほど努力したのだ。約束を破る心は、微塵もなかった。
ミラルーツも照覧、私は精いっぱいに努めてきたのだ。動けなくなるまでパニック走りをしてきたのだ。私は不信の徒ではない。
ああ、できることなら私の鳩胸を絶ち割って、真紅のゲリョスハートをお目に掛けたい。愛と真実と毒の血液だけで動いているこの心臓をみせてやりたい。

けれども私は、この大事な時に、精も近も尽きたのだ。私は、よくよく不幸な鳥竜種なのだ。私は、 きっと笑われる。
私の一家も笑われる。私は友を欺いた。途中で倒れるのは、初めからなにもしないのと同じことだ。

ああ、もう、どうでもいい。これが、私の定まった運命なのかもしれない。アカムトルムよ、許してくれ。
君は、何時でも私を信じた。私も君を、欺かなかった。私たちは、本当に良い友と友で あった。
一度だって、暗い疑惑の雲を、お互い胸に宿したことはなかった。
今だって、君は私を無心に待っているだろう。ああ、待っているだろう。

有難う、アカムトルム。よくも私を信じてくれた。それを思えば、堪らない。
友と友の間の天の山菜組引換券は、この世で1番誇るべき宝なのだからな。アカムトルム、私は走ったのだ。
君を欺くつもりは、微塵もなかった。信じてくれ! 私は急ぎに急いでここまで来たのだ。濁流を突破した。
ハンターの囲みからも、するりと(?)抜けて毒を撒き散らしながら一気に峠をパニック走りしてきたのだ。
私だから、できたのだよ(イャンクック、イャンガルルガたちはパニック走りできても毒までは吐けないからな)。

ああ、このうえ、私に望みたまうな。放っておいてくれ。どうでも、良いのだ。私は、クエストにしっぱいしました。
だらしがない。笑ってくれ。ディアブロスは私に、ちょっとタイムアップしてこい、と耳打ちした。
タイムアップしたら、身代わりを3乙して、私を助けてくれると約束した。私はディアブロスの卑劣を憎んだ。
けれども、今になってみると、私はディアブロスの言うままになっている。

私は、タイムアップしていくだろう。ディアブロスは、1匹合点して私を笑い、そうしてこともなく私を放免するだろう。
そうなったら、私は、3乙してひんしゅくを買うより辛い。私は、永遠に裏切り者だ。
モンスターハンターでもっとも、不名誉のモンスターだ。どうせ3rdではリストラだ。アカムトルムよ、私も死ぬぞ。
君と一緒に死なせてくれ。君だけは私を信じてくれるに違いない。いや、それも私の、独りよがりか?

ああ、もういっそ、データ改造で生き延びてやろうか。村には私の家がある。イーオスもいる。
妹夫婦は、まさか私を運営に通報するようなことはしないだろう。
正義だの、真実だの、愛だの、悪魔猫反対だの、考えてみれば、くだらない。
モンスターを殺してレア素材を剥ぎ取る。それがモンスターハンターの定法ではなかったか。

ああ、もう、なにもかも、ばかばかしい。私は、醜い裏切り者だ。どうとも、勝手にするがよい。やんぬるかな。
――身体を丸めて、うとうと、鼻提灯をだしながらまどろんでしまった。


 ふと耳に、潺々、水の流れる音が聞こえた。そっと頭部をもたげ、息を呑んで耳を澄ました。
すぐ足元で、水が流れているらしい。よろよろ起き上がって、見ると、岩の裂け目から滾々と、
なにかが小さく囁きながら清水が湧きでているのである。

 泉に吸い込まれるようにゲリョスは身を屈めた。水を嘴ですくって、一口飲んだ。ほうと長い
溜め息が出て、夢から覚めたような気がした。歩ける。さすがゲリョスだなんともないぜ。行こう。
 肉体の疲労回復とともに、わずかながら希望がうまれた。クエストクリアの希望である。我が
身を殺して、名誉を守る希望である。

 斜陽は赤い光を、木々の葉に投じ、葉も枝も燃えるばかりに輝いている。日没までには、まだ
間がある。私を、待っているモンスターがあるのだ。少しも疑わず、静かに期待してくれている
モンスターがあるのだ。私は、信じられている。私の命なぞは、問題ではない。死んで剥ぎ取らせて
お詫び、などと気の良いことは言っておられぬ。私は、信頼に報いなければならぬ。今はただ
その一事だ。走れ! ゲリョス。

 私は信頼されている。私は信頼されている。大切なことなので2回言いました。先刻の、あの
悪魔の囁きは、あれは夢だ。悪い夢だ。三歩歩いて忘れてしまえ。スタミナ切れの時は、ふいと
あんな悪い夢を見るものだ。MH3から勝手に実装された機能だからゲリョス、お前の恥ではない。
やはり、お前は真の勇者だ。再びパニック走れるようになったではないか。有り難い!

 私は、正義の士として3乙することができるぞ。ああ、日が沈む。ずんずん沈む。待ってくれ、
カ○コンよ。私は生まれた時から正直な盗人毒怪鳥であった。正直な毒怪鳥のままにしてリストラ
してください。あ、できればポンデリングの代わりに再就職が良いです。

 道行くゲネポスを押しのけ、跳ね飛ばし、ゲリョスは紫の風のようにパニック走った。テントで
反省会兼酒宴の、その宴席の真っ只中を駆け抜け、ハンターたちを仰天させ(どこかで見たことが
あるような気がする)、アイルーを蹴飛ばし、オアシスの小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく
太陽の、10倍も早く走った。

 ちなみにここでゲリョスの速度を求めるとモンスターハンターの世界を地球に当てはめるとして
赤道上は約4万kmそれを24時間で割ると1670km/h≒464m/sになり更に日本付近だと仮定して緯度は
35度にし一周の距離が約0.82倍(cos35°≒0.82)だとすると太陽の沈む早さは1370km/h≒380m/sに
なりこの時点ですでに旅客機(278 m/s)よりも遥かに早い計算になるが更にその10倍3800m/sという
ことはつまりNA○Aの開発した世界最速の航空機スクラムジェット搭載無人試験機X-43(3.111 km/s)
よりも早くゲリョスは走っているという驚くべき結果になることがおわかりいただけただろうか。
 ウルトラマンよりも断然早い。

 一団の旅ガレオスを轢き逃……さっと擦れ違った瞬間、不吉な会話を小耳にはさんだ。

「今頃は、あのアカムトルムも、閃光玉漬けにされているよ」

 ああ、そのアカムトルム、その覇竜のために私は、今こんなに走っているのだ。そのATMを3乙させては
ならない。どうせ3rdではリストラ組だけど急げ、ゲリョス! タイムアップしてはならぬ。愛と誠と
狂走エキスの力を、今こそ知らせてやるがよい。風態なんかは、どうでもいい。ゲリョスは、今は、
ほとんど羽を毟られたチキン状態であった。呼吸もできず、2度、3度、嘴から猛毒が噴き出た。走る時の
仕様です。見える。遥か向こうに小さく、砂漠の岩山が見える。岩山は、夕陽を受けてきらきら光っている。

「ああ、ゲリョス様」

 呻くような声が、風と共に聞こえた。
2010年11月16日(火) 23:05:19 Modified by kongali




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