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15-247

スレ番号タイトルカップリング作者名備考レス
15赤蒼の約束〜盾蟹挽歌〜2 蟹の人 247〜249、251

赤蒼の約束〜盾蟹挽歌〜2


「突き飛ばされたり飛ばされたり……やっぱり厄日だわ」
「畜生、死ぬかと思ったぜ」
『もがもが』

雪の柔らかい部分に滅と絶は着地し、事なき事を得た。朧も着地には失敗したものの(頭から埋まったが)無傷のようだ。
『よいせーッ』と二人でじたばたもがいている朧を引き上げ、辺りを見回すが崩龍は先ほど一瞬姿を現したもののまたどこかに消えてしまい、補足できなくなった。
周囲には不気味な沈黙が漂い、三人に重圧をかけ、焦らせていく。それは気配を消し戦うハンターの戦いと似ていた。

――いかに敵を疑心暗記させ焦らせ、警戒させ、体力を奪うか。

「アイツは?」

沈黙に耐えかね、滅が口を開く。ポポ車の操縦&周囲の見張りをしていた片手剣使い『独』が見当たらない。

「あの突き上げの時には居なかった……まさか逃げたか」

絶は辺りを見回すが、真っ白な雪原に動く影は無い。ポポ車は操縦者がいないと停止してしまうため、事前に逃げるのも不可能。
むしろ水中や地中、雪中は中で音を大きく反響させるため逃げるどころか、位置を知らせてしまうため逆に囮となってしまう。
……と滅が説明している中、朧が短く吼え目を大きく見開き、少し離れた場所に走っていくとその場の雪を急いで掘り始める

「下にござるッ。何か、何かが下に埋まっているッ!!」

程なくして出てきたのは雪に塗れた一振りの剣。
実間違えることは無いだろう、蒼く輝く龍殺しの小剣――独龍剣【藍鬼】まさしく独の持っていた一族秘伝の武器だった。それが雪に埋もれているという事は……
三人は直感した、ポポ車の見張りに立っていたアイツはいち早く崩龍を発見しポポ車を護るため戦った結果

「無茶……するでござるな。正しく奴は真の女傑にござる」
「帰ったらアンタの好きなリュウノテールで作った焼肉、備えておくよ」
「……」

黒龍のブレスに焼かれ、一時は死が最も近かった。それでも一命を取り留め、必死の思いで現役に復帰した彼女。
『はーははは。アタシにかかれば古龍なんて雑魚よ!』とさえ言っていたが……それが、こんなにもあっけ無い幕引きで終わり――

「……ないでよ」
「ウォッ!?」

朧の足が“何か”にガッチリと掴まれ、何かが這い出ようとしている。
その光景は正にホラー。雪中から人間の手が生え、足を掴んで離さない。あまりの出来事に、朧を除いた二人は唖然としその場から動けないでいる。
それどころではない朧は、倒れながらも懸命に手を振り払い背中に差した朧火を抜刀し、刃先を向け叫ぶ。

「ええい、物の怪か妖の類か!?それとも反魂により仮初の命を得、生きし者を食む屍人か!?いや、そうに違いない!
この劫士族生き残り、龍衛門が再び冥土の釜へ送り返してしんぜようッ」
「だれが……死んでゾンビになったってっ」

ポロリと刀を取りこぼし、二、三歩朧が後ろに下がる。その声は紛れも無く、死んだと思っていた――

「【独】!?」

剣が落ちていた場所に程近くで『プハァッ』と呼吸があがると、雪中からパピメル装備を着た人間が生えて……抜け出してきた。
髪の毛凍ってパリパリになり、様々な色使いと華麗さが売りのパピメルには雪がどっちゃりとついて見るも無惨に。
それになぜか兜をつけず、代わりに鷹をあしらった変なピアスをつけていて耳は霜焼けで真っ赤っか。体が小刻みに震えている。

正気に戻った絶が詰め寄り『テメェ何をしに来てるのよ』と胸ぐらを掴まれている。
滅からは『生きてたのかよお前、しぶとい奴だぜ』と笑いながら頭をポンポンと叩き、雪を払ってやる。
立ち上がった朧は無事だったアイテム袋からホットドリンク取り出し、投げてよこす。

「何が起きたのか答えてもらおうかしら」

朧にもらったホットドリンクをがぶ飲みする独は手を止め口の中に残った分をゴクンと飲み干し、問いに答えた。

「崩龍を見つけて、合図しようと思ったけど間に合わなくて飛び降りたの」
「俺達を放っておいて……か」
「う、うるさい。着雪したと思った瞬間、上から巨大な雪が降ってきて動けなかったの。死ぬかと思った」
「アンタ、本当に運が良いのか悪いのか分からないわね。幸運と不運の星が重なっているのかしら。北斗七星の傍らにある小さな星、もしかして見える?」
「うるさいなあ黙っててよぅ。ところでアンタ達、崩龍はどこに居るか分かる?」
「……ッ」

素早く辺りを見回すが、辺りには崩龍どころかガウシカ一匹居ない。阿呆な顔をした四人の人間だけがそこに居る。

「本当にヤレヤレだねー。まさか千里眼の薬無くしたのー、だっさーい」
「そういうアンタは分かるのかしら?」
「絶って失礼だよね、いっつも一言多いし。分かるからこうして話を振ったのに何それ」

この寒い場所で何かに火がついた。火薬草でも大タル爆弾でも無く、火種も小タル爆弾や竜の吐くブレスでもない何か。
『修羅場』と言えば正しいのか

「分かるならさっさと言ってよ、このちんまい雪ん娘」
「雪にまみれてる今の状態のこと言ってるの?なら金髪で尚且つ三白眼な人よりは可愛げがあるよね、要するに半竜人より小さくて可愛いってことだし」
「……ッ。要約すればバカって事よ。ちんま――失礼、可愛いサイズの脳味噌じゃ気が付かなかったのかしら?」

いよいよ大砲の弾のように爆発しそうな空気、冷たい筈の雪山は砂漠のように(主に二人の周りが)熱くなり、近くにいる男二人はたまったものではない。
下手に触れれば火傷する、かと言って放っておけば炭になる。どちらの選択もできれば選びたくないが……
『お前は独を止めろ、俺は絶を何とかする』『拙者は貧乏くじでござるか』と、滅と話し合いそれを行動に移す。

「と、とにかく独は奴の居場所が分かるのでござるな?」
「当然!じゃなきゃこんな奴と漫才みたいなふざけ合い、しないよ」
「ほう、それは主の特殊な力にござるか?蝶装束にはそんな能力無かったような」
「フフン。このピアスのおかげだよ、このピアス。猛禽類の持つ類稀なる眼力と……」

チラリと朧は滅を見る。あちらも中々苦労しているようでギャーギャー耳元で罵声、もとい咆哮されている。
天災である崩龍を退治しに来たのに今は同じ仲間による人災に遭っている、なんという不条理だと朧はため息をついた。

「つまり、モンスターの位置が分かる装備をギルドからパク……借りてきた有りがたいピアスだよ。聞いてる?」
「存分に。で、どこに居るのでござろうか。教えてくだされ」

いつの間にか絶の唸り声は消え、滅のため息も収まった。ここにきてようやっと雪原は本来の静けさを取り戻す。
それを見計らってか独は目を瞑り、耳に付けたピアスにゆっくりと手を当てた。

「んっ――」

朧は思った。この辺り全部が何かに見られてるようだ、と。
それはモンスターに発見されたとかではない、小さく大きな。例えるなら東国の『鷹』のようなのに目をつけられたような。
『とにかく、千里眼の薬で察知されたモンスターはこんな感じなのだろう』と一人納得し、頷いた。

「もう少し、もう少し」

違う仲間の表情。独はこのパーティの中で一番年齢が若い、そしてやはり行動も幼い。
絶にいちいち突っかかったり(お互い様だが)、滅のお伊達にすぐ乗ったり、老け顔な朧の言葉に従ったり……いつもはそうだった。
ずっと幼く、頼りないと思っていた。でも、今は違う。あの頃――ミラボレアス戦のときとは違う何かが彼女の表情にはあった。
三人が三人ともそれを感じとった。

「分かった、あの龍の位置。でも、でも……」
「でも?何が見えたのよ」
「絶、貴方と押し問答してる暇は無いの。場所はとっても近いの!早く行かないと」
「だからどこって聞いてるじゃない」

素早く自分の愛刀である独龍剣を持ち、突っかかる絶を押しのけてポポ車が来た道を全速力で戻りだす。
『何だなよ何だよ』と遅れて後を追いかけてくる三人に対し、喝の意味を込め、大きな声で言い放った。

「ポッケ村に凄く近いの!早くしないと村が、村が踏み潰されちゃうのッ」
「!?」

いつの間にか天には雲がかかっている。でもなぜか日の光は辺りを照らす。
つまり、雲の間から太陽が出ているこの天気。これを不吉といわず何と言おうか。

――おそらがふたつにわれてるよ
――おてんきがくずれるかもね。さあはやくおうちにかえろうか。ぼうや。
――こわいよまま……
――だいじょうぶ、なにかあってもはんたーさんがまもってくれるわ。
――うん!
2010年08月25日(水) 12:58:14 Modified by gubaguba




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