日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼2018年珠海航空ショーで展示されたCM-400AKG(2018年11月11日著者撮影)

▼動画:Defense Updates「CM-400AKG Missile」(2013年9月3日)2012年珠海航空ショーでのCM-400AKG開発スタッフへのインタビュー動画


性能緒元(パキスタン輸出版)
全長約5m
翼幅約75cm
直径約40cm
重量約900kg
弾頭重量250kg(HEもしくは貫通弾頭)
推進装置固体燃料ロケットモーター
速度最高:マッハ5、終末段階:マッハ3.5
射程240km以上
最高飛行高度約4,500m
誘導方式中間段階:INS+GPS、終末段階:赤外線画像誘導方式
装備機JF-17 Block2JF-17 Block3JF-17BJ-10CE

CM-400AKG空対地/空対艦/対レーダーミサイルは、中国航天科工集団公司(CASIC)がパキスタンの要請を受けて開発した多用途超音速ミサイルで、2012年11月の珠海航空ショーで初公開された[1][2]、2015年に開発を完了。パキスタンへの引き渡しは2017年に開始され、合計60発を一億ドルで調達した[2][3]。コンポーネントを換装することで各種任務に対応可能であるが、パキスタンでは空対艦ミサイルとして活用されている[2]。

【開発経緯】
パキスタンでは第三次印パ戦争の戦訓から、インド海軍の空母機動部隊による海上封鎖を打破する手段の一つとして、空対艦ミサイルを搭載した航空機による対艦攻撃を重視していた[4]。

20世紀末には各国から調達したミラージュ5のうち12機にフランス製AM-39エグゾセ空対艦ミサイルの運用能力を付与したミラージュ5 PA3仕様とする近代化改修を行い、対艦攻撃の主力として運用が行われた[4]。それに続き、中国と共同開発したJF-17戦闘機についても対艦攻撃に活用することが決まり、輸出向けのC-802A対艦ミサイルの空対艦型であるC-802AKの調達が行われた[2]。

C-802AKの最大射程は、AM-39の70〜80kmから180kmにまで延伸され、開発時期が新しいことから電子妨害に対する抗湛性において優位にあり、データリンクシステムやGPSを採用するなどの新機軸も備えていた。特に重要であったのはその価格で、フランスのAM-39の三分の一程度に収まっており、パキスタンとしては大量調達できる費用対効果の高い兵器として高く評価された[2]。

しかし、2000年代に入るとインド海軍でも近代化が進展し、コルカタ級駆逐艦やタルワール級フリゲイトといったエリア・ディフェンス防空艦が就役し、近距離防空を担うイスラエル製のバラク短SAMも複数艦に搭載が進み、防空能力を高めていった[2]。航空母艦についてもロシア製のSTOBAR空母であるヴィクラマーディティアが就役したことで、MiG-29K艦載戦闘機とKa-31早期警戒ヘリコプターの組み合わせにより、空母部隊の周囲数百kmの空域をカバーする防空体制を構築するに至った[2]。

見積もりでは、インド海軍の標準的な空母機動部隊(空母×1、防空駆逐艦×2、防空/対潜フリゲイト×3、補給艦×1)は、理論上では40発以上の対艦ミサイルによる飽和攻撃でないと制圧できないと考えられた[2]。ミラージュが搭載できるAM-39は一発に過ぎず、インド海軍のKa-31は、海面すれすれを飛行するシースキマー対艦ミサイルであっても100km以上の距離から発見できるので、40〜70kmというAM-39の射程ではインドの空母部隊の防空圏内に深く入り込まないと攻撃自体ができず、12機というミラージュ5 PA3の機数からも飽和攻撃に必要な弾数を確保することは無理であった[2]。C-802AKであれば180kmの射程を有しているが、C-802AKの母機であるJF-17は一機当たり二発しか積めないので、40発を超える空対艦ミサイルを投射するには20機という相応の機数を揃える必要が生じる[2]。

これに対してパキスタンでは、より射程が長く超音速飛行が可能な空対艦ミサイルの投入により防空網突破能力を高めるアプローチを採用[2]。超音速対艦ミサイルを求めたことについては、インドがロシアと共同開発を進めていたブラモス超音速対艦ミサイルの存在が念頭にあったとの報道もある[1][3]。当初、パキスタンは中国に対して、C-802AKの射程延伸と高速化による突破能力の改善を要求した。しかし中国側は、C-802AKの改良という方法でこの要求を満たすのは困難であると判断。パキスタン側の要求に答える形で、新型空対艦ミサイルの開発に着手した。それが形となったのがCM-400AKGであった[2]。

【性能】
CM-400AKGは、調達コストの抑制に配慮しつつ、長射程と高速性能を両立することを目指した。CM-400AKGのサブタイトルであるAKGは本来「空対地ミサイル」に付与される型式であり、その名の通り空対艦のみならず対地目標に対して用いることも可能[2]。

ミサイルの先端は細くとがった円錐形となっており、胴体後部に弦長が長く幅の狭い安定翼を、尾部に制御翼をそれぞれX字型に配置している。動力装置はC-802AKが航続距離延伸を狙って小型のターボジェットエンジンを用いているのに対して、CM-400AKGは超音速性能を考慮して高推力の固体ロケットモーターを採用[2]。これにより、CM-400AKGの最高速度はマッハ5という対艦ミサイルとしては極めて高いスペックを得ることに成功した[2]。ミサイル上部には母機との間のデータリンク用のアンテナがある[5]。

CM-400AKGは高度8,000〜12,000mから速度マッハ0.7〜0.9で発射され、高度4,500mをマッハ5で飛行して目標に接近すると急降下して直上から命中する[1][2]。この飛翔コースは通常の巡航ミサイルや対艦ミサイルとは異なるもので、むしろロケット弾や弾道ミサイルのものに類似している[3]。そのため、CM-400AKGは大口径地対地ミサイルを技術的淵源にしているとの推測もあり、SY400 地対地ミサイル・システム(神鷹400)との関連性を指摘する向きもある[3][5]。

航続距離については高度4,500m以上を飛行した場合、航続距離は最大で240kmに達する[2]。ロケットモーター燃焼後は徐々に速度が低くなるが、終末段階においてもマッハ3.5を下らない速度が維持されている[2]。マッハ5という最高速度は240kmという距離を約2分で飛行することで相手側の対処時間を局限する狙いがあり、発見した敵艦隊が退避活動に移ったとしても遠くまでは逃げることが出来ず、発射時に入力済みの目標の座標位置を修正するための手間が省けることに繋がる[2]。これは数千km以上離れたアメリカの空母任務部隊を目標とする中国の対艦弾道ミサイルが高度なISRシステムを構築して、それをデータリンクで繋いで遠距離の移動目標の位置を随時アップリンクする体制を整えているのとは真逆な有り様である[6]。

対艦ミサイルではレーダー探知を避けるため低空を飛行するシースキミング能力を有しているものが多いが、CM-400AKGは最高高度4500mの中高空域で超音速飛行を行うことで、一気に距離を詰めて目標に突入するのがコンセプトであった[2]。これはインド海軍の防空艦艇の高高度迎撃能力の制約を前提としたもので、これに加えて終末段階になると直上から超音速で急降下して目標に垂直に命中することで、迎撃をより難しくすることが目指されている[2]。CM-400AKGの弾頭重量は250kgと、C-802AKの190kgより60kg増加しており、超音速で突入することで発生する運動エネルギーも相まって、強力な貫徹能力と破壊能力を兼ね備えている[2]。

対艦ミサイルの誘導システムとしては、アクティブ・レーダー誘導システムが用いられることが多く、中にはアクティブ・レーダー誘導と赤外線誘導システムの併用を取るケースもあるが、CM-400AKGは異なるアプローチをとっている[2]。

CM-400AKGは、ユーザーの要望に応じて、さまざまな任務に適合した各種誘導システムを選択することが想定されており、‖丱譟璽澄璽潺汽ぅ襦鎮羇崔奮INS+GNSS(米GPSか中国の「北斗」を選択可能)、終末パッシブ・レーダー(L・S・Xバンド)誘導(CEP:5〜10m)、∪彩打撃型空対地ミサイル…同INS+GNSS、同赤外線/TVシーカー誘導(CEP:5m)、N価版空対地ミサイル…同INS+GSNN複合誘導(CEP:50m)、などのバリエーションがある[1]。しかし、パキスタンが選択したのは中間誘導をINS+GPS、終末誘導を赤外線画像誘導方式としたタイプであった[2]。

赤外線画像誘導方式を採用した理由としては、EWシステムやフレアによる妨害に対して高い抗湛性を備えており、いったんロックオンできればマッハ3.5という高速で突入するため相手側が回避することは困難なため[2]。アクティブ・レーダー誘導と赤外線誘導システムの併用のように、複数の誘導システムを用いてシステムの冗長性を高めるのではなく、照準しやすい航空母艦のような大型目標を対象に高速で突入する際に必要な誘導システムということに限定すれば、誘導システムを複雑にすること無く調達コストの節約に繋がるという発想であった[2]。

総じていえば、CM-400AKGは超音速ミサイルとして必要な性能を確保しつつ、冗長性や多用途性といった点については妥協することで構造を簡素化して調達コストの低減を図る事が目指されたと言える。国力で大きな差があるなかでインドと対峙しなければならないパキスタンにとっては、コストを抑制しつつ装備を調達できる点は重要であり、CM-400AKGはパキスタンの国情に合った兵器として実用化に漕ぎつけたと評価できるだろう。

【運用】
CM-400AKGはパキスタンと中国が共同開発したJF-17の主翼の内側パイロンに合計2発が搭載される[2]。同国空軍のJF-17でCM-400AKGの運用能力を有しているのはJF-17 Block2JF-17 Block3そして複座型のJF-17Bの三種類である[2]。

なお、中航技進出口有限責任公司(CATIC)が開発したCM-400AKGを搭載する汎用パイロンは、パイロンとFCSを統合したシステムであり、デジタルデータパスとして西側由来のMIL-STD-1790を用いることで、西側兵器と中国兵器の双方を運用可能[7]。運用においては、機体自体のFCSや衛星位置測定システムからのデータ、データリンクによる外部情報のデータを受け取って、それを処理した上で搭載兵器の投射を行うので、機体自体のFCSに手を加える必要がないのも特徴[7]。これは導入国にとってはパイロンと兵器を導入するだけで西側と中国の兵器を併用できるので、導入のハードルを低くすることが可能となる特性と言える[7]。

CM-400AKGはC-802AKよりも40%重量が増加しているが、中国軍で運用されている超音速空対艦ミサイルであるYJ-12艦対艦ミサイル(鷹撃12)と比べるとまだコンパクトにまとまっており、軽戦闘機であるJF-17での運用が可能なサイズと重量に収まっている[2]。

対艦攻撃任務では、JF-17はC-802AKもしくはCM-400AKG×2、自衛用に翼端パイロンにPL-5空対空ミサイル(霹靂5)×2、胴体パイロンに800L入り増加燃料タンク×1を搭載する[2]。作戦行動半径は空対空任務の場合が500kmなのに対して、対艦攻撃任務では搭載重量が増加する上に被発見率を下げるため低空飛行を強いられることを考慮すると作戦行動半径は350kmにまで減少する[2]。パキスタンでは自国の海岸線から700kmの範囲を空対艦ミサイルによりカバーすることを想定しているので、必要に応じて空中給油を行うことで航続距離の不足を補うことになる[2]。

パキスタン空軍では南部沿岸地域に二個スコードロンのJF-17を装備した部隊を展開させている[2]。一個あたり18機が定数となるので、二個スコードロンの70%が投入されたとすると、一度に50発程度の空対艦ミサイルを投射できるので、対インド海軍向け飽和攻撃の目標値である40発を超えることが出来る[2]。

攻撃においては、C-802AKとCM-400AKGを混用して作戦が遂行されることになる。これには、低空域から飛来するC-802AKと、高高度から一気に距離を詰めて終末段階で直上からの打撃を狙うCM-400AKGを組み合わせることで、インド側の艦隊防空の負荷を高める狙いがある[2]。

パキスタンでは2022年から新たに中国からJ-10CE戦闘機(J-10CP戦闘機)の調達を開始しており、同機にもCM-400AKGやC-802AKを搭載して対艦作戦に投入することが可能[2][5]。JF-17より大推力のエンジンを搭載してペイロードに余裕のあるJ-10CEであれば、より遠い海域まで展開が可能となり、インド海軍の接近をそれだけ遠距離から阻むことが可能となる[2]。

パキスタン海軍は、自国の近海においてインド海軍の空母艦隊の接近を阻止し、領海を使用されることを拒否することを重要な任務としている[2]。パキスタンでは、早期警戒機や対潜哨戒機などの航空機、艦艇、地上のレーダーサイトなどの情報をデータリンクで繋いで、別のプラットフォームから発射された兵器を目標に誘導し得る体制の構築を成し遂げている[3]。パキスタン海軍の情報交換システム(NIXS)はトルコのMilSOFT社が提供したもので、これを活用することで、各種センサーからの情報をリアルタイムで掌握することが出来るようになった[3]。

対艦攻撃に用いられるJF-17戦闘機は、パキスタンの沿岸部から排他的経済水域を守り、有事の際にインド海軍の空母部隊の活動を抑止して海上封鎖を受けないための重要な構成要素として機能しており、CM-400AKGはC-802AKと共にそれを支える兵器として用いられることになる[2][3]。

【参考資料】
[1]「ミリタリー・ニュース 中国―CM-400AKG ASMの新情報あかす」『軍事研究』2014年6月(Jaoan Military Review)168頁
[2]天一「南亚海空新猎手 巴基斯坦空军对海打击力量的发展和技术升级」(下部)『舰载武器』2024.03/No.429 (中国船舶集团有限公司/02-19頁)
[3]Quwa - Pakistan Defence News Coverage & Analysis「The JF-17’s air-launched rocket (CM-400AKG)」(Bilal Khan/2019年10月3日)https://quwa.org/2019/10/03/the-jf-17s-air-launche...
[4]天一「南亚海空新猎手 巴基斯坦空军对海打击力量的发展和技术升级」(上部)『舰载武器』2024.02/No.428 (中国船舶集团有限公司/2-14頁)
[5] Chinese Military Aviation:「CM-400AKG」http://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/mi...
[6]山下奈々「【研究ノート】中国の ASBM の開発動向― DF-21D を中心に ―」『海幹校戦略研究特別号』(通巻第 19 号) (海上自衛隊幹部学校 [編] /2020年4月/116-135頁 https://www.mod.go.jp/msdf/navcol/assets/pdf/ssg20... ,116-118頁参照
[7]「中國向西方戰鬥機推推銷武器系統」(『漢和防務評論』2029年7月號/KANWA DEFENSE REVIEW)28頁

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