日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼2018年珠海航空ショーで展示されたパキスタン空軍所属のJF-17 Block2(2018年11月11日著者撮影)




性能緒元(JF-17 Block2)
空虚重量6,320kg
通常離陸重量9,100kg
最大離陸重量12,700kg
機内燃料2,300kg
外部ペイロード4,600kg
全長14.00m
全幅9.00m
全高5.10m
エンジンRD-93(ドライ5040kg、A/B 8,300kg)1基
最大速度M1.8
戦闘行動半径1,200km(空対空任務)、700km(対地攻撃任務)、空中給油により延伸可能
フェリー航続距離1,800km
上昇限度16,700m
荷重制限-3〜+8.5G
武装23mm二銃身機関砲×1(220発)
 SD-10Aアクティブ・レーダー誘導空対空ミサイル
 PL-9赤外線誘導空対空ミサイル(霹靂9)
 PL-5空対空ミサイル(霹靂5)
 AIM-9P空対空ミサイル *パキスタン空軍
 LT-2レーザー誘導爆弾(雷霆2型)
 LS-6滑空誘導爆弾(雷石6)
 FT-1/3誘導爆弾(飛騰1型/3型)
 [GIDS B-REK 滑空誘導爆弾*パキスタン空軍
 C-802AK空対艦ミサイル
 CM-400AKG空対艦ミサイル
 ラード興箙劵潺汽ぅ *パキスタン空軍
 MAR-1対レーダーミサイル *パキスタン空軍
 その他、各種ミサイル、ロケット弾、爆弾等
データリンクシステムLink17 *パキスタン空軍
乗員1名

FC-1/JF-17 Block2は、FC-1/JF-17 Block1に続いて生産されたJF-17の第二次発注分の機体であり、空対地・空対艦能力を向上させてマルチロール戦闘機としての性格を強め、空中給油による航続距離延伸を可能とするなどの改良が施されている[1]。

【第二次発注分、JF-17 Block2の開発と生産について】
2007年11月29日のJane's Newsによると、パキスタン空軍ではJF-17にフランスのタレスRC-400レーダーとMBDA MICA空対空ミサイルを搭載したバリエーションの開発を検討しているとのこと[2]。これはフランスのDGA(Délegation Générale pour l'Armement)の提案による。これが実現すれば、パキスタンのJF-17は中国製レーダーと空対空ミサイルを搭載したタイプと、フランス製レーダー/ミサイルを搭載したタイプが並存する事になる。これは、予算や整備の面では余分なコストが掛かるが、コンポーネントの供給源を複数にする事で禁輸措置などに対する脆弱性を減少させる事が可能となる。かつて、兵器供給国との関係悪化により何度も禁輸措置を受けたパキスタンにとっては、この問題は深刻な課題であり続けていた。

空対地兵装や空対艦兵装についてもヨーロッパ諸国の装備の導入が検討され続けたが、最終的に、アビオニクスも兵装も引き続き中国由来の技術を使用するとの結論に落ち着いた[1]。この結論に至った理由はヨーロッパ諸国のアビオニクスや兵装が中国製のものよりもはるかに高額なことに起因するものだった。

前述の通り、パキスタンではJF-17にフランス製アビオニクスや空対空ミサイルを搭載した発展型の開発を計画してフランスと交渉を行っていたが[3]、これは2010年になって中断された。仏ルモンド紙の報道では、これはパキスタンへの技術移転に懸念を示すインドの圧力、パキスタンの財政状況や移転された技術の機密保持への懸念などが理由とされる[4]。

パキスタン空軍のプレスリリースによると、JF-17 Block2は、アビオニクスの改良、空中受油能力の付与、使用可能な兵器の種類の増加がなされ、整備性の向上などが施されると発表された[5]。2013年12月21日の報道によると、JF-17はまずA-5攻撃機の更新用に配備が行われ(2011年に更新完了)、今後は同空軍のミラージュ/5、F-7Pを更新する事になる[6]。JF-17 Block2は50機が発注され、最初の機体のロールアウトは2014年初頭になるとされ[6]、これは告知通りに実現した[7]。

パキスタンの軍事アナリストのUsman Shabbir氏によると、機体の改修は空中受油プローブの装備程度で、改良の多くはレーダーやアビオニクスになるとしている。今後、全てのJF-17 Block1もBlock2仕様にアップグレードされる事になる[6]。

JF-17 Block1の生産費用は1500万ドルだが、Block2になると2000〜2500万ドルに上昇したとされる[8]。なお、ナイジェリアに輸出されたBlock2は1機当たり4,000万ドルで販売されている。カムラ工場の生産設備はBlock2の生産に合わせて再構成された。JF-17 Block2の生産は2016年まで実施され累計62機が調達され、その後は改良型であるJF-17 Block3の生産に移行した[7][8]。

【JF-17 Block2の性能】
JF-17 Block2は、空対地・空対艦能力を向上させたマルチロール戦闘機としての特徴を追求したのが特徴[7]。当初はヨーロッパ諸国のアビオニクスや兵装を用いることが検討されたが、前述の通り、Block1に引き続いて中国製アビオニクスや兵装を用いて能力向上が行われた[1]。

【兵装】
JF-17 Block2では空対地・空対艦の精密誘導兵器の運用能力が付与されて、そのスタンドオフ攻撃能力と精密打撃能力が大きく強化されることとなった。レーダーには空対空モード以外に、空対地、空対艦、合成開口レーダーモードなどが取り揃えられ、特に空対艦モードでは200kmを超える最大探知距離と、150kmを超える同時追尾能力を有しており、空対艦ミサイルの搭載が可能となったJF-17 Block2ではその対艦攻撃能力を下支えする重要な機能となった[7]。

外部ペイロードについても、Block1の3,600kgから4.600kgへと約一トン増加しており、より多くの兵装を搭載できるようになった[10]。


対艦ミサイルとしては中国製C-802AK空対艦ミサイルCM-400AKG空対艦ミサイルの二種類が採用された[1]。これにより、JF-17は200kmを超える距離からの対艦攻撃が可能となり、パキスタン空軍の対水上艦艇作戦における主力として活用されるようになった[1]。このほか、中国製や西側製、そしてパキスタン国産の各種精密誘導兵器やスタンドオフ兵器がJF-17での運用を可能としていった。ここで着目すべきは、開発国の異なるそれらの兵器を統合化するのはアビオニクスや機体との様々な調整が必要となるが、パキスタンはそれを実現することでJF-17の作戦能力を底上げすることに成功した[1]。

【アビオニクス】
アビオニクスのアップグレードでは、パキスタンが中国から調達した早期警戒管制機であるZDK-03早期警戒機「カラコルム・イーグル」とのデータリンクが構築され、リアルタイムでの情報共有と指揮管制体制が実現した[7]。パキスタンでは、スウェーデンからサーブ2000旅客機に搭載したエリアイ AEW&Cシステムを、中国からZDK-03と二種類のAEW&C機を調達しているが、これは同国が西側と中国からそれぞれ戦闘機を調達していることが背景にあり、西側系統の機体はエリアイで、中国系の機体はZDK-03を使って管制を行う体制を採っていることによる[10]。これは運用上の問題となるので、パキスタン側で両機をリンクさせるための対策が取られ、パキスタン独自のデータリンクシステム「Link17」の開発と実装により、JF-17はエリアイとZDK-03両方とデータリンク網を構築することが可能となった[11]。Link17は陸海空統合データリンクシステムであり、JF-17が「ネットワーク中心戦」を行うために必要不可欠な情報インフラとして機能することが期待されている[11]。

JF-17 Block2は、「Panjnad」と名付けられた新型の電子戦ポッドの運用能力が付与された。これはミサイルシーカーなど敵のレーダーからの脅威に対して航空機を守ることが可能となり、ESM/ECM(電子戦支援/電子対抗手段)作戦に用いることもできる[7][12]。

【空中受油能力の付与】
JF-17の問題点の一つに航続距離の短さが存在した。これは軽戦闘機としての機内燃料の少なさに起因するため、機内燃料を大幅に増やすのは困難であった。これに対処するため、JF-17 Block2では、空中給油用プローブを装着することで解決を図った。プローブは固定式で、必要がない時は飛行前に取り外すことが可能[1]。夜間での空中給油に資するため、右側インテイクの上部、プローブのすぐ後方にLEDライトが用意され、夜間の空中給油の際に空中給油機のドローグと受油機のプローブの双方を照らすのに使われる[7]。

JF-17は空中給油を一度受けることで作戦行動半径を30%以上増加させる[1]。さらに機内燃料を減らして外部ペイロードを最大限搭載した状態で離陸して、その後空中給油を受けることで兵器搭載力をアップすることもできるようになった[1]。JF-17の運用における選択肢が増したことは、仮想敵であるインドにとっては考慮しなければならないファクターが増えることを意味しており、数的劣位にあるパキスタン空軍にとっては既存戦力のさらなる活用に繋がる価値のある能力向上であった[1]。

【JF-17 Block2の配備情況】
JF-17 Block2は2015年に配備が開始され、2019年には発注されていた62機全機がパキスタン空軍への納入を完了。それ以降は第三次発注分となるJF-17C/JF-17 Block3の量産に移行した[1]。JF-17 Block2の発注数は当初50機であったが、2017年に12機が追加調達された[1][7]。Block1とBlock2を合算すると112機に達し、パキスタン空軍の数的主力の地位を占めるに至った[1]。今後、Block1はアップグレードを受けることでBlock2仕様にされることになっている[1]。

2019年の段階で、パキスタン空軍のJF-17 Block1/Block2は五個戦闘機中隊と一個試験飛行中隊がJF-17を装備して、その累計飛行時間は約25,000時間に達していた[12][13]。JF-17は既に実戦を経験しており、2017年には領空に侵入したイランのUAVを撃墜[14]。2019年2月27日には印パ両空軍が交戦した「スウィフト・レトルト(Swift Retort)作戦」にも参加[12]。2月27日の空戦でインド空軍のMiG-21bis「バイソン」戦闘機を撃墜した戦闘機がJF-17であるとの情報も流れていが公式の確証は得られていない[14][15]。パキスタン空軍は同国にある北ワジリスタンの過激派の拠点攻撃にもJF-17を投入しており、通常爆弾と精密誘導爆弾を投下している[12]。

2024年2月には、イランの弾道弾攻撃に対する報復措置として、J-10CE戦闘機、YL-1「翼竜」UAVと共にイラン領内に地上攻撃を行い、パキスタンからの分離独立を目指すバルチスタン解放戦線(BLF)の基地を爆撃[16]。これにより7名が死亡した。JF-17はJ-10CEの援護と電子戦支援を受けて、パキスタン領内から射程170kmのスタンドオフ兵器であるGIDS B-REK精密誘導ロケットブースト式滑空爆弾を投下して、BLFの基地に着弾させたとの事[16]。

【パキスタン以外のJF-17 Block2採用国】
2015年 6 月、JF-17がアジアの顧客から初の輸出契約を獲得したと報じられた[7]。当初、その顧客は明らかにされなかったが、その後になってミャンマーであることが明らかになった[1][7]。

ミャンマーは5億6000万ドルで調達契約を結び、2018年10月には最初の5機が引き渡され、翌2019年3月にはJF-17の複座型であるJF-17Bが2機受領された[17]。合計調達機数は16機との話もあるが、これ以降の引き渡しはまだ確認されていない。ミャンマー空軍に引き渡されたJF-17は「JF-17M」の型式名が付与されている。JF-17MはBlock2仕様の機体であり、前脚には複座型であるJF-17Bと同じLED着陸灯が装着されており、機体塗装はパキスタン軍のものとは異なるブルーとグレーの迷彩が施されている。

JF-17第三の採用国となったのは、西アフリカのナイジェリアであった。ナイジェリアは、2016年9月に3機のJF-17を調達することを決定した[7]。ナイジェリア空軍のJF-17は「JF-17N」と命名された。JF-17MはBlock2仕様の機体であり、2021年初めに納入を完了させた。

ナイジェリア空軍のJF-17Nは、対地攻撃任務のためASELPODレーザー照準ポッドと Al-Battar/GBU-12レーザー誘導爆弾の運用能力が付与されている[7]。

【参考資料】
[1]天一「南亚海空新猎手 巴基斯坦空军对海打击力量的发展和技术升级」(下部)『舰载武器』2024.03/No.429 (中国船舶集团有限公司/02-19頁)
[2]Jane's Air Forces News (2007年11月29日)「Pakistan considers mix of Chinese, French weapons for its JF-17s」
[3]AVIATION WEEK「French JF-17 Deal Could Anger India」
[4]THE ECONOMIC TIMES「France suspends arms supply to Pakistan」(2010年4月5日)
[5]IHS Jane's Defence Weekly「PAC announces start of JF-17 Block 2 construction」(Farhan Bokhari/2013年12月18日)
[6]Defense News「Pakistan Launches Production of New Fighter Jet」(USMAN ANSARI/2013年12月18日)
[7]Chinese Military Aviation「JF-17/FC-1 Fierce Dragon/Thunder」https://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/f...
[8]DAWN.com「Production of improved version of JF-17 aircraft launched」(Baqir Sajjad Syed and Yaqoob Malik/2013年12月19日)
[9]殷杰「困难重重—浅谈“枭龙”战机能否落户伊拉克」『兵工科技』2023/17(兵工科技杂志社/36-42頁)
[10]姜浩・罗孚「从ZDK03预警机出口交付谈起—访我国预警机技术专家曹晨研究员」『兵工科技』2017/12(兵工科技杂志社/54-58頁)
[11]Quwa「“LINK-17” – PAKISTAN’S HOMEGROWN DATA-LINK SYSTEM」(Bilal Khan/2016 年 4 月 5 日)https://quwa.org/2016/04/05/link-17-pakistans-home...
[12]Air Power Asia「China Designed and Substantially Produced JF-17 Thunder Fighter – Crown Jewel of Sino-Pak Aviation Relations –」(Anil Chopra/2020年6月10日)https://airpowerasia.com/2020/06/10/china-designed...
[13]Air Power Asia「China-Pakistan Aerospace Nexus – Pakistan Hangs on Coat Tails」(Anil Chopra/2020年4月20日)https://airpowerasia.com/2020/04/20/example-post-2...
[14]CNN「India-Pakistan crisis may be easing, but nuclear threat still hangs over the region」(Brad Lendon/2019年3月4日)https://edition.cnn.com/2019/03/01/asia/india-paki...
[15]The Diplomat「Has Pakistan’s JF-17 ‘Thunder’ Block II Fighter Jet Engaged in its First Dogfight?」(Franz-Stefan Gady/2019年2月28日)https://thediplomat.com/2019/02/has-pakistans-jf-1...
[16]EurAsian Times「Pakistan's JF-17, J-10C Fighters Conduct Retaliatory Strikes On Iran; Tehran Confirms 7 Killed」(Ritu Sharma/2024年1月18日)https://www.eurasiantimes.com/pakistans-jf-17-j-10...
[17]Chinese Military Aviation「JF-17B/FC-1B Fierce Dragon/Thunder」https://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/f...

【関連項目】
J-7戦闘機(殲撃7/F-7/MiG-21)
セイバー/スーパー7/J-7CP/J-7C(超7/殲7CP/C)戦闘機 【国際共同開発。計画のみ】
FC-1 Block1「梟龍」/JF-17 Block1「サンダー」戦闘機(殲撃9/JF-17/スーパー7) 【国際共同開発】
FC-1B「梟龍」/JF-17B「サンダー」複座戦闘機 【国際共同開発】
FC-1C Block3「梟龍」/JF-17C/JF-17 Block3「サンダー」戦闘機 【国際共同開発】

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