＊＊＊　メンタルサポート　＊＊＊

それまで健康であった人が、難しい疾患にかかると、必然的に様々な精神的・心理的反応が起こってくる。疾患が慢性、または進行性であったり、重度の機能障害を伴ったり、適切な治療法がないような場合には、その反応は複雑さを増し、ときには病気そのものより大きな問題となりうる。こうした場合には、効果的な疾患治療の弊害となるばかりでなく、患者及びその家族に様々な影響を及ぼす。
　難しい疾患にかかっている患者に対しては、医師は診断・治療等の医学面だけで、疾患の引き起こす精神的・心理的障害にまで十分注意を払う必要がある。メンタルサポートとは、患者がそうした疾患に対して上手に、しかもできるだけ健常人のように適応できるよう、精神的・心理的サポートを与えることである。まず、病気が引き起こす生理的機能障害を、患者が心理的に受け入れ、それに適応することができるかどうか、その障害を精神的、心理的に克服して、希望を見出すことができるか、さらにそのような限られた生理的条件下で、意味ある毎日を送ることができるかどうか、難しいいくつかのステップを通りすぎなければならない。こうした精神的・心理的過程を上手に通りすぎるためにも、また医学的治療が効果的になされるためにも、メンタルサポートは不可欠である。そして忘れてならないことは、メンタルサポートは患者のみならず、その家族や介護者にとっても必要でありうるということである。個人の病気は、病気が重大であればあるほど、家族全体の病気になりうるからである。

　癌患者・ＡＬＳ患者等に行われた研究によると、疾患に対して精神的、心理的に適応した患者は、そうでない患者に比べ明らかに生存率が高いことが判明している。メンタルサポートの必要性を支持する大切なデータである。