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タグ検索でななこい4件見つかりました。

ななこい4

 玄関に再び訪れたのは暗い闇だった。足元を照らしていた明かりは消えうせて、奈々子と竜児の間に重たい緞帳が降りる。  竜児は口元を覆いながら、唾を一度だけ飲み込んだ。 「ねぇ、どう?」  奈々子は、竜児を自分の部屋に誘った。竜児の家で、夕飯を呼ばれて、家に送ってもらった。  そして、竜児を引き止めるために、奈々子はもっと近くに居たいと思った。  家には奈々子と竜児以外誰もいない。まだ、二人きりの時間を作ることは出来る。 「竜児くん……」  奈々子は竜児の正面から、ゆっくりと近づいていった。竜…

https://seesaawiki.jp/w/text_filing/d/%a4%ca%a4%ca... - 2009年09月17日更新

ななこい3

 朝の教室を見渡してみれば、ほんの数人しか登校してきていないようだった。 「早く来すぎたわね……」  机に肘をついて、奈々子はふぅと息を漏らした。  昨日の晴天とは違って、どんよりとした雲が、窓の外で分厚く滞留している。  このままだと雪が降るかもしれない。奈々子は寒さに身震いして、頬杖をついた。  足の痛みを押して登校したのはいいけれど、思ったよりも早く着いてしまった。  歩く速度が遅くなるだろうと予測して、早めに家を出たのが裏目に出た。  足元に目を落とす。  起きたら足の甲がわずか…

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ななこい2

 病院の待合室に溢れる老人たちを見て、奈々子は溜め息を漏らした。  ついつい、待合室にかけられている時計に目をやってしまう。昼の11時を過ぎていた。  病院で診察の手続きをしたのは10時過ぎで、もう1時間近く待たされていることになる。  これだけ老人がいれば仕方が無いのかもしれない。そう考えながら、ずっと興味も無い車関係の雑誌を眺めていた。  父親が隣に座っているので、女性週刊誌を読むのも変だったし、他には絵本くらいしかない。  退屈が過ぎて、奈々子は息を吐いた。そして、竜児のことを脳裏に描く。…

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ななこい1

 降り始めた雨が勢いを増すのに、時間はかからなかった。  夕立にしては強い雨が、奈々子の制服にどんどん染み込んで行く。色を濃くした制服のスカートを翻して、奈々子は自転車を漕ぐ力を強めた。 「傘持ってくるんだったわ……」  学校が終わってから一度帰宅した奈々子は、冷蔵庫の中に夕食の材料が無いのに気づいて制服のまま家を出た。  冬の冷たい雨が、長い髪に染みていく。分厚い曇天は、立春を過ぎた後の太陽を遮り、街を薄いグレーで塗り潰した。    最悪。  そう呟いて、奈々子はスーパーを出て自転車を漕…

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