【定義】
�＿茲防舛い震澆里海函Ｊ源�や言句を譬えていうこともある。
��道元禅師の『正法眼蔵』の巻名の一。95巻本では40巻、75巻本では24巻。仁治3年（1242）1月5日興聖寺で修行僧に示された。
【内容】
�｜羚駟�教に於いては「画餅充飢」或いは「画餅不充飢」という表現が用いられた。「充飢」の方は、画に描いた餅で飢えをしのぐことであり、無益なことに譬えられ、「不充飢」の方は、画に描いた餅では飢えをしのぐことは出来ないことであり、経典の学習では真理を会得することが出来ず、実際の修行によって得なくてはならないことを意味している。
これは、道元禅師が『景徳伝燈録』巻11香厳智閑章から引用して訓じた文章であり、経典をよく学んでいた香厳が、師である潙山霊祐から質問されて、まともな答えを言えなかったことについて、自ら嘆じていった言葉だとされている。傍線部分は「画餅不可充飢」という一文であるが、よく用いられた表現であることが理解できる。香厳は、文字に拘泥して自ら何も理解していなかったことを認めたのである。
��道元禅師が「画餅」巻を書いた時期だが、その写本の奥書からすれば、仁治3年（1242）11月5日であることが知られ、京都の興聖寺にいた頃に書かれたものである。いわゆる75巻本『正法眼蔵』の第24巻として、「画餅」に関する思想を表現したものである。道元禅師の『正法眼蔵』には、「破邪顕正」とでもいうべき批判が見えるものが多いが、同巻でも明確な批判が見える（以下、文中に指示がない場合、「画餅」巻からの引用）。
この意味は、「画餅不能充飢」とは、「仮に立てられた存在は、実は無駄なものだ」という言葉だとする見解は、大きな誤りだという指摘である。大乗仏教では、空思想を推し進めることによって、一切の存在は全て空虚なものだという思考をされることが多い。特に批判されるのは、対象としての現象（仮立なる法）であり、その現象が自己に対して発生するための「仏心」あるいは「一心」についてはともかくも（最終的には、これもまた空虚だとされるが）、その上で発生が観測される現象は徹底して実体化を否定されていくのである。
ところが、道元禅師はこのような現象について空虚だという発想をしない。いわば、自己に対して発生した現象は、それを事実として肯い、むしろ現象がどのように我々自身に観測されるかを記述していく。それが75巻本『正法眼蔵』という著作の大きな特徴でもある。その中で、「画餅」巻というのは、画図＝仏心と解釈し、餅＝現象と解釈する。そして、画図は、仏心とその仏心上に現象する餅と、その両方にかかっていくため、餅がどのように現れるかも合わせて記述されている。
画図の図は、頭に通じ、頭は、個物という意味であるが、図はそのようなものが来ても良いから、道元禅師もどのような餅＝個物かは明らかにせず、おおまかに一切の存在という程度の意味で使っている。そして、「画図から餅へ」という方向性が指摘されているが、例えば、画としての餅を描くなら、使うのは絵の具であるし、本物の餅であれば、米などを用いるところであろう。しかし、道元禅師の「画餅」は米などを用いるとされているのである。
したがって、ここからは、現象するための「根拠」があるという事実と、我々自身に対して現象するという「効果」だけが問題になっていくのである。ただし、「根拠」とは「恁麼」という超越であるとされているため、特定の実体的な根拠があるわけではない。その意味では、根拠の有無とはここでは問題にされていない。現象自体が問題なのであり、そのような根拠を問えない現象を道元禅師は「解脱」という。
解脱でありながら、同時に現象していることを「画餅」という言葉になぞらえて記述すれば、自ずと「画」に、多重的な意味を持たせなければならない。多重的な意味とは、現象と、その場所についての記述を、とりあえず相即的に論じ、さらにそこから両者を分割させていくのである。
存在の生滅も画図として成じ、この上ない菩提も画図として成じ、そしてそれは法界虚空であるという。法界虚空であるからこそ、無限の包容力を持ち、あらゆる存在が入る。これは、現象している事実を記述する以上、いわば現象がこの「画図」に入り込むのは当然でもあるが、それを道元禅師は敢えて示す。この背景には、当時の日本仏教思想に、三界唯心（観念論的発想）を推し進めた結果、観念的な世界を事実だとする風潮があったためであろう。それは、この世界を直接、仏の世界であると解釈することである。結果、一切の修行をしなくても、全てが仏の世界であるということだけを承知していれば、それだけで、仏の悟りを得たと思えてしまうという、修行否定思想である。
道元禅師の場合、修行否定を否定するというテーマは、その著作の全てを通底している。したがって、この「画餅」巻でも同様であると見て良い。道元禅師が、そのために用いた語句こそ「不充飢（不能充飢、とも書く）」である。いわば、画餅を食べることで自らの飢えが満ち足りてしまえば、修行の完成は限定的であり、それ以上の修行などは不要になる。しかし、もし「画餅」自体に、そのような完成を否定する機構が入っていたとすればどうだろうか。
当然に、「画に描いた餅」なのだから、「画餅」をいくら食べても飢えを充たすことはない。しかしながら、そうであっても、「餅」を食べなければ、飢えを充たすことはあり得ない。例えば、道元禅師の修行とは、悟りを目的に行われるものではない。むしろ、修行が悟りであるという「修証一等」だとしており、或いは修行とは、そのまま仏の行為であるという「仏行」だというのである。
それを食べて、飢えを充たしてしまうただの「餅」は、ここで道元禅師が否定した「船筏」と同じである。この「船筏」とは、河を渡るための船のことであり、以前から、迷いの世界である「此岸」から、悟りの世界である「彼岸（＝波羅密）」に渡るための「修行」に譬えられたものである。しかし、道元禅師は、仏祖の坐禅とは「船筏」ではないとしているということは、船に乗るとすれば、船の行き先・目的地がその船の他のどこかにあるのではなく、今ここで進んでいるという事実が肝心だという意味になり、或いは、餅もそれを食べているという事実が重要であり、飢えが充たされるかどうかが問題なのではない。飢えを充たさない「餅」それが「画餅」であるとすれば、道元禅師の修行観と一致するのである。
そして、「画」「餅」「飢」「充」といった事象を明らかにすることが「学道の力量」である。「転物物転」という言葉がある。物を転じ、物が転じるということであり、我々自身に於いて現象が現象するとき、そこにどのように「物」が関わるかを、自らの身心によって明らかにすることである。坐禅人の修行とは、坐禅によって仏を見るようなことはない。坐禅は、我々自身を明らかにするのである。道元禅師はそれを「画餅不充飢」という言葉の解釈から理解を進められた。
なお、道元禅師はこの「画餅」の概念を『正法眼蔵』「仏性」「心不可得」「三十七品菩提分法」巻などで用いられる。
�＿茲防舛い震澆里海函Ｊ源�や言句を譬えていうこともある。
��道元禅師の『正法眼蔵』の巻名の一。95巻本では40巻、75巻本では24巻。仁治3年（1242）1月5日興聖寺で修行僧に示された。
【内容】
�｜羚駟�教に於いては「画餅充飢」或いは「画餅不充飢」という表現が用いられた。「充飢」の方は、画に描いた餅で飢えをしのぐことであり、無益なことに譬えられ、「不充飢」の方は、画に描いた餅では飢えをしのぐことは出来ないことであり、経典の学習では真理を会得することが出来ず、実際の修行によって得なくてはならないことを意味している。
香厳、いはんことをもとむること数番すれども不得なり。ふかく身心をうらみ、年来たくはふるところの書籍を披尋するに、なほ茫然なり。つひに火をもちて、年来のあつむる書をやきていはく、画にかけるもちひは、うゑをふさぐにたらず。 『正法眼蔵』「渓声山色」巻
これは、道元禅師が『景徳伝燈録』巻11香厳智閑章から引用して訓じた文章であり、経典をよく学んでいた香厳が、師である潙山霊祐から質問されて、まともな答えを言えなかったことについて、自ら嘆じていった言葉だとされている。傍線部分は「画餅不可充飢」という一文であるが、よく用いられた表現であることが理解できる。香厳は、文字に拘泥して自ら何も理解していなかったことを認めたのである。
��道元禅師が「画餅」巻を書いた時期だが、その写本の奥書からすれば、仁治3年（1242）11月5日であることが知られ、京都の興聖寺にいた頃に書かれたものである。いわゆる75巻本『正法眼蔵』の第24巻として、「画餅」に関する思想を表現したものである。道元禅師の『正法眼蔵』には、「破邪顕正」とでもいうべき批判が見えるものが多いが、同巻でも明確な批判が見える（以下、文中に指示がない場合、「画餅」巻からの引用）。
おほよそ、仮立なる法は真に用不著なるをいはんとして恁麼の道取ありと見解する、おほきにあやまるなり。
この意味は、「画餅不能充飢」とは、「仮に立てられた存在は、実は無駄なものだ」という言葉だとする見解は、大きな誤りだという指摘である。大乗仏教では、空思想を推し進めることによって、一切の存在は全て空虚なものだという思考をされることが多い。特に批判されるのは、対象としての現象（仮立なる法）であり、その現象が自己に対して発生するための「仏心」あるいは「一心」についてはともかくも（最終的には、これもまた空虚だとされるが）、その上で発生が観測される現象は徹底して実体化を否定されていくのである。
ところが、道元禅師はこのような現象について空虚だという発想をしない。いわば、自己に対して発生した現象は、それを事実として肯い、むしろ現象がどのように我々自身に観測されるかを記述していく。それが75巻本『正法眼蔵』という著作の大きな特徴でもある。その中で、「画餅」巻というのは、画図＝仏心と解釈し、餅＝現象と解釈する。そして、画図は、仏心とその仏心上に現象する餅と、その両方にかかっていくため、餅がどのように現れるかも合わせて記述されている。
米麺をもちいて作法せしむる正当恁麼、かならずしも生・不生にあらざれども、現成道成の時節なり、去来の見聞に拘牽せらるると参学すべからず。〈中略〉しかあればすなはち、いま道著する画餅といふは、一切の糊餅・菜餅・乳餅・焼餅・糍餅等、みなこれ画図より現成するなり。しるべし、画等、餅等、法等なり。このゆえに、いま現成するところの諸餅、ともに画餅なり。
画図の図は、頭に通じ、頭は、個物という意味であるが、図はそのようなものが来ても良いから、道元禅師もどのような餅＝個物かは明らかにせず、おおまかに一切の存在という程度の意味で使っている。そして、「画図から餅へ」という方向性が指摘されているが、例えば、画としての餅を描くなら、使うのは絵の具であるし、本物の餅であれば、米などを用いるところであろう。しかし、道元禅師の「画餅」は米などを用いるとされているのである。
いはゆる、山水を画するには青丹をもちいる、画餅を画するには米麺をもちいる。恁麼なるゆえに、その所用おなじ、功夫ひとしきなり。
したがって、ここからは、現象するための「根拠」があるという事実と、我々自身に対して現象するという「効果」だけが問題になっていくのである。ただし、「根拠」とは「恁麼」という超越であるとされているため、特定の実体的な根拠があるわけではない。その意味では、根拠の有無とはここでは問題にされていない。現象自体が問題なのであり、そのような根拠を問えない現象を道元禅師は「解脱」という。
眼裏に筋骨なし、色裏に膠弑あらず、当処の解脱あり。
解脱でありながら、同時に現象していることを「画餅」という言葉になぞらえて記述すれば、自ずと「画」に、多重的な意味を持たせなければならない。多重的な意味とは、現象と、その場所についての記述を、とりあえず相即的に論じ、さらにそこから両者を分割させていくのである。
恁麼功夫するとき、生死去来はことごとく画図なり、無上菩提すなはち画図なり。おほよそ法界虚空、いづれも画図にあらざるなし。
存在の生滅も画図として成じ、この上ない菩提も画図として成じ、そしてそれは法界虚空であるという。法界虚空であるからこそ、無限の包容力を持ち、あらゆる存在が入る。これは、現象している事実を記述する以上、いわば現象がこの「画図」に入り込むのは当然でもあるが、それを道元禅師は敢えて示す。この背景には、当時の日本仏教思想に、三界唯心（観念論的発想）を推し進めた結果、観念的な世界を事実だとする風潮があったためであろう。それは、この世界を直接、仏の世界であると解釈することである。結果、一切の修行をしなくても、全てが仏の世界であるということだけを承知していれば、それだけで、仏の悟りを得たと思えてしまうという、修行否定思想である。
道元禅師の場合、修行否定を否定するというテーマは、その著作の全てを通底している。したがって、この「画餅」巻でも同様であると見て良い。道元禅師が、そのために用いた語句こそ「不充飢（不能充飢、とも書く）」である。いわば、画餅を食べることで自らの飢えが満ち足りてしまえば、修行の完成は限定的であり、それ以上の修行などは不要になる。しかし、もし「画餅」自体に、そのような完成を否定する機構が入っていたとすればどうだろうか。
不充飢といふは、飢は十二時使にあらざれども、画餅に相見する便宜あらず、画餅を喫著するにつひに飢をやむる功なし。
当然に、「画に描いた餅」なのだから、「画餅」をいくら食べても飢えを充たすことはない。しかしながら、そうであっても、「餅」を食べなければ、飢えを充たすことはあり得ない。例えば、道元禅師の修行とは、悟りを目的に行われるものではない。むしろ、修行が悟りであるという「修証一等」だとしており、或いは修行とは、そのまま仏の行為であるという「仏行」だというのである。
此の坐禅、仏仏相伝し、祖祖直指し、独り嫡嗣なる者なり。余の者は其の名を聞くと雖も、仏祖の坐禅と同じからず。所以は何となれば、諸宗の坐禅は、悟を待つことを則と為す。譬えば船筏を仮りて大海を度り、将に海を度れば船を抛つべしと謂うが如し。吾が仏祖の坐禅は然らず、是れ乃ち仏行なり。所謂、仏家の為体は、宗説行一等なり、一如なり。 『永平広録』巻8-法語11
それを食べて、飢えを充たしてしまうただの「餅」は、ここで道元禅師が否定した「船筏」と同じである。この「船筏」とは、河を渡るための船のことであり、以前から、迷いの世界である「此岸」から、悟りの世界である「彼岸（＝波羅密）」に渡るための「修行」に譬えられたものである。しかし、道元禅師は、仏祖の坐禅とは「船筏」ではないとしているということは、船に乗るとすれば、船の行き先・目的地がその船の他のどこかにあるのではなく、今ここで進んでいるという事実が肝心だという意味になり、或いは、餅もそれを食べているという事実が重要であり、飢えが充たされるかどうかが問題なのではない。飢えを充たさない「餅」それが「画餅」であるとすれば、道元禅師の修行観と一致するのである。
しかあればすなはち、画餅にあらざれば充飢の薬なし、画飢にあらざれば人に相逢せず、画充にあらざれば力量あらざるなり。おほよそ、飢に充し、不飢に充し、飢を充せず、不飢を充せざること、画飢にあらざれば不得なり、不道なるなり。しばらく這箇は画餅なることを参学すべし。この宗旨を参学するとき、いささか転物物転の功徳を、身心に究尽するなり。この功徳、いまだ現前せざるがごときは、学道の力量、いまだ現成せざるなり。この功徳を現成せしむる、証画現成なり。
そして、「画」「餅」「飢」「充」といった事象を明らかにすることが「学道の力量」である。「転物物転」という言葉がある。物を転じ、物が転じるということであり、我々自身に於いて現象が現象するとき、そこにどのように「物」が関わるかを、自らの身心によって明らかにすることである。坐禅人の修行とは、坐禅によって仏を見るようなことはない。坐禅は、我々自身を明らかにするのである。道元禅師はそれを「画餅不充飢」という言葉の解釈から理解を進められた。
なお、道元禅師はこの「画餅」の概念を『正法眼蔵』「仏性」「心不可得」「三十七品菩提分法」巻などで用いられる。
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