最終更新:ID:x+fcxmK6Bg 2008年05月31日(土) 23:45:40履歴
『ご主人様と奴隷の幸せな関係エピソード4・犬が迎える明るい戌年』
一年の締めくくりの大晦日。
街はしんしんと降り注ぐ雪に覆われ、一面真っ白な世界と化していた。
あと数時間で新年を迎えるという今、どこの家でも静かな時を過ごしていた。
こたつ、ストーブ、テレビ、みかん……。
ここ、中村リョーコのマンションでも、それは例外では―――
「何かしこまってんのよ、リラックスしなさいよ」
「はぁ……」
こたつを挟んで男女が二人。
一人はこの部屋の主、中村リョーコ。
そしてもう一人は、彼女のこいび……もとい、奴隷の豊田セイジだ。
「こたつに入ったら?」
リョーコはこたつに体半分を埋め、熱い茶なぞをすすりつつリラックスした状態。
「……いえ、けっこうです……」
一方のセイジは、逆にそれとは程遠い緊張感に包まれていた。
こたつに入らず、絨毯の上で正座をしている。
「そう?ま、あんたがそれでいいならいいけどさ」
歳は四歳セイジが上、社会的に見ても、一流銀行に就職が決まっているとはいえ、
まだ学生のリョーコと立派な中学教師であるセイジとを比べたら、明らかにセイジが上だ。
ところが。
この二人の間には、決して男が上位に立てない大きくて高い壁が存在していた。
「別に予定無かったんでしょ?」
「……無いです」
嘘である。
確かに予定は無かった。だが、作るつもりでいたのだ。
本当は実家に帰りたかった。いや、逃げたかった。
しかし、逃げれなかった。
セイジは受験生である三年生の担当だ。
冬休みに入ったとはいえ、やらねばならないことが山積みでわんさかとある。
で、それに時間を取られているうちに、逃亡する暇を失ってしまったというわけだ。
「だったらもっとゆったりとしなさいよ、何しゃちほこばってんのよ」
「はぁ……」
セイジは抵抗する気を無くしていた。
仕事でぐたぐたに疲れているのもあるし、もう完全に諦めているのもある。
敬語はその表れだった。
しょっちゅう呼び出されては酒を浴びせられ、精を搾り取られる。
再開した当初は、まだそれなりに対等の関係でつきあえたのだが、
今ではもう完全に下の立場になっていた。
「あたしも暇だからさ、アンタと遊んであげることにした。嬉しいでしょ?」
「……はい」
何しろ、“犬”である。
犬が飼い主に逆らう方法はただ一つしかない。首輪を外して逃げるしかないのだ。
それが出来なきゃ噛み付くしかないのだが、
下手にガブリとやってしまったら、どれだけ恐ろしい罰が待っていることか。
「で、これなんだけど」
「……何ですか、こりゃ」
リョーコは一枚の紙をセイジに差し出した。
「年越し予定表」
「は?」
「ま、とりあえず読んでみて」
「……はあ」
セイジは手を伸ばし、こたつの上にリョーコが置いた紙を取った。
ただし、正座は崩さずに。
『 ○31日
PM7:00 晩御飯を食べる
セイジにも餌をやる
PM8:00 一発目【百閉】
とりあえず騎乗位からスタート。まずセイジに奴隷の何たるかを再度教える
PM8:30 二発目【時雨茶臼から御所車へ】
引き続き騎乗位体勢で楽しむ
PM9:00 一時休憩
PM9:30 三発目【鶯の谷渡り、岩清水】
セイジに全身奉仕させる
PM10:00 四発目【雁が首、千鳥の曲、二つ巴】
お互いの気分を再び高める
PM11:00 入浴
○1日
AM0:00 五発目、年越し蕎麦でなく年越しセックス【つり橋から深山、松葉崩しへ】
セイジ主導でヤラせてみる
AM1:00 六発目【鵯越え、仏壇返し、碁盤攻め、後ろ矢倉】
そろそろ佳境、激しくバックで色々と
AM2:00 七発目【鳴門、乱れ牡丹、しぼり芙蓉】
まだまだ搾り取る、がっつり楽しむ
AM3:00 八発目【こたつかがり、こたつ隠れ】
やはりこれがないとね、冬は
AM4:00 九発目【首引き恋慕、流鏑馬】
最後にどっちが偉いがトドメを叩き込む
AM5:00 入浴
AM6:00 初日の出を臨海公園に見に行く 』
「……どう?」
「……、…………」
セイジは正座の体勢のまま、後ろにゆっくりと倒れた。
視界に入った天井が、ぐにぐにと歪んでいく。
「48手全て制覇はさすがにしんどいだろうから、これくらいで許してやろうと思ってね」
「……」
「ちょっと、聞いてるの?セイジ」
「…………」
リョーコの言葉は耳に届いてはいた。だが、“聞こえて”はいなかった。
セイジの目から、涙が後から後から沸いてくる。
「セイジー、おーい、セイジーッ?」
「あは、ああ、ああはは……はぁ、あ」
セイジはそのまま気を失った。
「……コイツ、そんなに嫌か」
のびているセイジを見て、リョーコは不機嫌そうな顔をした。
「ねえ、セイジったら」
こたつから出ると、リョーコは四つんばいになってセイジへと近寄った。
そして上からセイジの顔を覗き込む。
「……マジで気絶してるのか、こんにゃろ」
人差し指でセイジの鼻を突付いた。だが、セイジは反応しない。
無論、気を失ったからといって、リョーコはこのプログラムを変更するつもりはない。
犬にはきちんと躾をしなければならないのだ。
主人は毅然とした態度で臨む必要がある。
「……」
リョーコは体を起こすと、テレビの上に置いてあるデジタル時計を見た。
時間は、午後5時を少し回ったところだった。
「ま、いいか。7時までは寝かせといてやるわよ」
そう言うと、リョーコはもう一度、セイジの顔に自分の顔を近づけた。
「……セイジ」
出会った頃より、ずっと大人びた顔。
老けた、とも言える。教師は激職、苦労がたくさんあるのだろう。
もっとも、セイジに一番負担をかけているのはリョーコ自身なのだが。
「今年一年、リンやマサ、ミサキやアヤナの面倒をよくみてくれたね……ご苦労様」
リョーコは髪をかきあげると、セイジに軽く、優しくキスをした。
「来年もよろしく……ね」
そっと唇を離すと、リョーコは晩御飯の用意をするためにキッチンへと向かった。
「さて、精力つくもん作ってやるかね」
窓の外では、変わらず雪が降っている。
どこの家も、静かに年越しを迎えるはずだ。
だが、どうやらここは―――例外のようだった。
F I N
一年の締めくくりの大晦日。
街はしんしんと降り注ぐ雪に覆われ、一面真っ白な世界と化していた。
あと数時間で新年を迎えるという今、どこの家でも静かな時を過ごしていた。
こたつ、ストーブ、テレビ、みかん……。
ここ、中村リョーコのマンションでも、それは例外では―――
「何かしこまってんのよ、リラックスしなさいよ」
「はぁ……」
こたつを挟んで男女が二人。
一人はこの部屋の主、中村リョーコ。
そしてもう一人は、彼女のこいび……もとい、奴隷の豊田セイジだ。
「こたつに入ったら?」
リョーコはこたつに体半分を埋め、熱い茶なぞをすすりつつリラックスした状態。
「……いえ、けっこうです……」
一方のセイジは、逆にそれとは程遠い緊張感に包まれていた。
こたつに入らず、絨毯の上で正座をしている。
「そう?ま、あんたがそれでいいならいいけどさ」
歳は四歳セイジが上、社会的に見ても、一流銀行に就職が決まっているとはいえ、
まだ学生のリョーコと立派な中学教師であるセイジとを比べたら、明らかにセイジが上だ。
ところが。
この二人の間には、決して男が上位に立てない大きくて高い壁が存在していた。
「別に予定無かったんでしょ?」
「……無いです」
嘘である。
確かに予定は無かった。だが、作るつもりでいたのだ。
本当は実家に帰りたかった。いや、逃げたかった。
しかし、逃げれなかった。
セイジは受験生である三年生の担当だ。
冬休みに入ったとはいえ、やらねばならないことが山積みでわんさかとある。
で、それに時間を取られているうちに、逃亡する暇を失ってしまったというわけだ。
「だったらもっとゆったりとしなさいよ、何しゃちほこばってんのよ」
「はぁ……」
セイジは抵抗する気を無くしていた。
仕事でぐたぐたに疲れているのもあるし、もう完全に諦めているのもある。
敬語はその表れだった。
しょっちゅう呼び出されては酒を浴びせられ、精を搾り取られる。
再開した当初は、まだそれなりに対等の関係でつきあえたのだが、
今ではもう完全に下の立場になっていた。
「あたしも暇だからさ、アンタと遊んであげることにした。嬉しいでしょ?」
「……はい」
何しろ、“犬”である。
犬が飼い主に逆らう方法はただ一つしかない。首輪を外して逃げるしかないのだ。
それが出来なきゃ噛み付くしかないのだが、
下手にガブリとやってしまったら、どれだけ恐ろしい罰が待っていることか。
「で、これなんだけど」
「……何ですか、こりゃ」
リョーコは一枚の紙をセイジに差し出した。
「年越し予定表」
「は?」
「ま、とりあえず読んでみて」
「……はあ」
セイジは手を伸ばし、こたつの上にリョーコが置いた紙を取った。
ただし、正座は崩さずに。
『 ○31日
PM7:00 晩御飯を食べる
セイジにも餌をやる
PM8:00 一発目【百閉】
とりあえず騎乗位からスタート。まずセイジに奴隷の何たるかを再度教える
PM8:30 二発目【時雨茶臼から御所車へ】
引き続き騎乗位体勢で楽しむ
PM9:00 一時休憩
PM9:30 三発目【鶯の谷渡り、岩清水】
セイジに全身奉仕させる
PM10:00 四発目【雁が首、千鳥の曲、二つ巴】
お互いの気分を再び高める
PM11:00 入浴
○1日
AM0:00 五発目、年越し蕎麦でなく年越しセックス【つり橋から深山、松葉崩しへ】
セイジ主導でヤラせてみる
AM1:00 六発目【鵯越え、仏壇返し、碁盤攻め、後ろ矢倉】
そろそろ佳境、激しくバックで色々と
AM2:00 七発目【鳴門、乱れ牡丹、しぼり芙蓉】
まだまだ搾り取る、がっつり楽しむ
AM3:00 八発目【こたつかがり、こたつ隠れ】
やはりこれがないとね、冬は
AM4:00 九発目【首引き恋慕、流鏑馬】
最後にどっちが偉いがトドメを叩き込む
AM5:00 入浴
AM6:00 初日の出を臨海公園に見に行く 』
「……どう?」
「……、…………」
セイジは正座の体勢のまま、後ろにゆっくりと倒れた。
視界に入った天井が、ぐにぐにと歪んでいく。
「48手全て制覇はさすがにしんどいだろうから、これくらいで許してやろうと思ってね」
「……」
「ちょっと、聞いてるの?セイジ」
「…………」
リョーコの言葉は耳に届いてはいた。だが、“聞こえて”はいなかった。
セイジの目から、涙が後から後から沸いてくる。
「セイジー、おーい、セイジーッ?」
「あは、ああ、ああはは……はぁ、あ」
セイジはそのまま気を失った。
「……コイツ、そんなに嫌か」
のびているセイジを見て、リョーコは不機嫌そうな顔をした。
「ねえ、セイジったら」
こたつから出ると、リョーコは四つんばいになってセイジへと近寄った。
そして上からセイジの顔を覗き込む。
「……マジで気絶してるのか、こんにゃろ」
人差し指でセイジの鼻を突付いた。だが、セイジは反応しない。
無論、気を失ったからといって、リョーコはこのプログラムを変更するつもりはない。
犬にはきちんと躾をしなければならないのだ。
主人は毅然とした態度で臨む必要がある。
「……」
リョーコは体を起こすと、テレビの上に置いてあるデジタル時計を見た。
時間は、午後5時を少し回ったところだった。
「ま、いいか。7時までは寝かせといてやるわよ」
そう言うと、リョーコはもう一度、セイジの顔に自分の顔を近づけた。
「……セイジ」
出会った頃より、ずっと大人びた顔。
老けた、とも言える。教師は激職、苦労がたくさんあるのだろう。
もっとも、セイジに一番負担をかけているのはリョーコ自身なのだが。
「今年一年、リンやマサ、ミサキやアヤナの面倒をよくみてくれたね……ご苦労様」
リョーコは髪をかきあげると、セイジに軽く、優しくキスをした。
「来年もよろしく……ね」
そっと唇を離すと、リョーコは晩御飯の用意をするためにキッチンへと向かった。
「さて、精力つくもん作ってやるかね」
窓の外では、変わらず雪が降っている。
どこの家も、静かに年越しを迎えるはずだ。
だが、どうやらここは―――例外のようだった。
F I N
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