「「「「…………」」」」



現在、ここ桜才学園生徒会室は、重苦しい空気に満ちていた。
「…………」
腕を組み、無言で見下ろしている、我が桜才学園生徒会長・天草シノ。
「あらあら、うふふ♪」
笑顔で青筋を立てている、生徒会書記・七条アリア。
「ブツブツブツブツ…」
俯き加減で何やらブツブツ呟いている、会計・萩村スズ。
「…(うるうるうる)」
手を胸元で合わせ、涙目になって見つめている、柔道部部長・三葉ムツミ。
「…(ニヤニヤ)」
何が面白いのか、ニヤニヤしながら成り行きを見守っている、一年無所属・津田コトミ。
「…(プルプルプルプル)」
そして、そんな彼女達の前で、床に正座している俺こと、津田タカトシ。



「さて、申し開きはあるか?……津田」



抑揚のない、平坦な声色。普段も(下ネタ以外のときは)それに近いが、今は輪をかいて冷たい。
「ねぇ津田君♪あなたを取り巻く状況もわかるし、溢れるリビドーに抵抗できないという年齢なのもわかるわ…でも、さすがにこれはないんじゃないかしら♪」
笑顔で俺を覗き込む七条先輩。だが、妙なプレッシャーを発しているようにも感じられる。背後に黒いオーラが見えたのは気のせいだと思いたい。



「津田のバカ津田のバカ私だけって言ったのに私だけって言ったのにブツブツ…」
黒いオーラといえばこちらも負けてない。虹彩のなくなった目で先ほどからしきりに何かを呟いている萩村。怖い。
「タカトシ君…」
三葉、頼むからそんな目で見ないでくれ。いや、言いたいことは解る。解るんだが…スマン!
「いや〜、タカ兄にこんな甲斐性があったなんて知らなかったよ〜♪」
笑ってないで助けろコトミ!っていうかなぜいる!?



「で、どう責任を取るつもりだ?」



皆の放つプレッシャーで胃が痛い。ホント、何でこんなことになったんだろう…



こと始まりは、下校中、コトミが暴漢に襲われたことだった。
津田家から学校まで徒歩10分。基本的に商店街や住宅街を通るのだが、一箇所だけ、日が落ちると同時に人気のなくなる公園がある。コトミが襲われたのはそんな場所だった。
その時は、たまたま俺と一緒に帰っていた三葉が、その柔道の腕を奮い、事なきを得た。
「タカトシ君、ちゃんとコトミちゃんを守ってあげなくちゃダメだよ?お兄ちゃんなんだからね!」
「ああ、そうだな。大丈夫か?コトミ?」
「う、うん。ありがとう、タカ兄、三葉先輩」
「なんのなんの!これくらいお安い御用だよ!」
力こぶを作る三葉がこの上なく頼もしかった。
それ以降、下校時刻が遅くなる日は、コトミは俺と一緒に帰るようになった。
まあそれはいい。
問題はその数日後、今度は三葉が襲われた。



たまたま三葉の家の方に用事があった俺は、三葉の叫び声を聞いて即駆け出した
俺が駆けつけたときには、三葉は5人がかりで手足を封じられ、制服を破かれ、犯される寸前といったところだった。
頭に血が上った俺は深く考えるまでもなく特攻。まあ多勢に無勢で返り討ちにはされたが、奴等が再び三葉に目を向ける頃には、呼んでおいた警察が到着、バカ共はその場で御用となった。
「タカトシ君!しっかりしてタカトシ君!」
「み、三葉…ケガはないか?」
「私よりもタカトシ君が…!!」
「三葉には、コトミを守ってくれた恩があるからな…借りを返しただけだよ…」
「タカトシ君!!」
その後は気絶してしまったのでよくは覚えていない。目が覚めたら自宅のベッドの上だった。
後で話を聞くと、つかまった5人は元から素行不良で、カツアゲやら万引きやら相当のワルだったらしい。
「身を呈して女の子を助けるだなんて、タカ兄もやるね!」
「たまたま気付けただけだよ。でも、間に合って本当によかった」

さて、ここで話が終われば、他愛もない青春の1ページということでカタがついたのだろうが、問題はその後に起こった。

「ねえタカトシ君。ちょっと相談があるんだけど…」
「ん?」
普段使われていない教室。三葉に呼び出された俺は、最近になって発生した彼女の癖について相談されていた。
「男性恐怖症?」
「うん…」
どうもこの間の一件が後を引いているらしく、男の前に立つと無意識に緊張してしまうらしい。
「それって五十嵐先輩のような?」
「あそこまで酷くはないと思うんだけど…だんだん悪化しているような気がするの」
最初は少し緊張する程度だったが、今では指も触れなくなってきているという。
「私、どうしたらいいのかな?」



「う〜ん…」
まさか、三葉からこんなデリケートな相談をされるとは思ってもみなかった。
いや、彼女が大雑把だと言っているわけではないのだが。
「あれ?じゃあ今もひょっとして?」
「ううん。タカトシ君だけは別だよ?何でか知らないけど…ほら」
そう言って手を握られる。
「何で?」
「さあ?」
…まあいいや。
「ちょっと待ってて。コトミを呼んでみるから」
「コトミちゃん?」
「あいつも軽く男性恐怖症になっていたからな。どうやって克服したのかアドバイスが出来るかと思ってさ」
「ああ、そういえばそうだったね」
嫌な思い出を蒸し返すようで気が引けるが、友人が本当に悩んでいるのだ。肌の一枚や二枚、強制的に脱がせてもバチはあたらないだろう。
「な〜に〜?タカ兄?」
コトミを呼び出して軽く説明。
「あ〜あれね〜。うん。気持ちはわかりますよ」
しきりに頷く。
「どうすればいいかな?」
「まあ手はあるにはあるんだけど…」
言葉を切って俺を見るコトミ。ナゼミディルンディス?
「三葉先輩。ちょっと」
教室の隅っこに三葉を引っ張っていく。
小声であーだこーだやっていると、結論が出たのかコトミはイイ顔で、三葉は顔を少し赤くして戻ってきた。
「タカ兄。三葉先輩は本当に困ってるんだよね?」
「ああ」
「タカ兄は先輩を助けたいんだよね?」



「ああ」
「そのためなら、タカ兄はなんでもできるよね?」
「勿論だ。三葉、俺に出来ることなら何でも言ってくれ」
「あ…ありがとう…タカトシ君…」
途端に真っ赤になる三葉。なぜ?
「ふっふっふ。その言葉が聞きたかった。タカ兄、手っ取り早く治す方法があるんだけど、試してみる?」
「ああ。俺にも出来ることがあるならな」
「じゃあ簡単だね」
そして、コトミは満面の笑顔で、とんでもない事を口にした。



「タカ兄と先輩がエッチすればいいんだよ♪」



( ゚д゚)…

(゚д゚)

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