「さよなら、頑張れよ若田部。」
彼の言葉が脳内をリフレインする。
目覚ましに起こされる日常。
目を覚ましても彼はどこにもいない。
みんなと一緒に何度もぶつかって仲良くして。
ずっと夢を見て安心してた。
あの頃はまるで、白昼夢を信じる少女のように。
それから机の上の写真に視線を移す。
そこにあるのは柔らかく微笑む皆。
そして、彼。
小久保マサヒコ。
夕方勉強のために机についても、彼はもうどこにもいない。
いや、正確には私の方からの離別なのだけれど…
それも、もう遠い思い出。
写真の中から彼は優しく微笑む。
今となれば、私は確実に彼に恋心を抱いていたと思う。
私の心を圧迫するこの感情を他に説明できない自分が情けない。
「見てなさいよ。」
そこまで考えてふと口をつく言葉。
自分のふがいなさに対する逆ギレ以外のなにものでも無いのだけれど…
そうしないと自分の心が確かに折れそうになる時がある。

………………………………

「いってきます。」
全ての準備を終えて家をでる。
いつまでも過去を引きずるようなタイプではないけれど、あの頃の、中学時代の思い出は色あせない。
未だ、私の中で輝いている。
今、思えば、あの頃はずっと夢を見て幸せだったのかもしれない。
そんな事を考えながら学校への普段の道を私は歩んでいく。

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