最終更新:ID:mlBbph17TQ 2009年11月23日(月) 14:09:00履歴
最近、心なしか幼馴染が冷たい。
そう感じていた城島カナミは、ある日の帰路にて大胆な行動にでた。
本人に直球勝負を仕掛けたのだ。
「ねぇ、マナカちゃん。最近冷たくな〜い?」
「…そうでしょうか」
「冷たいよ〜。ボケに合いの手を打ってくれないし…」
「…それは、必ずしも打たねばならぬものですか?」
「ほら、やっぱり冷たい! いつもならそんなこと言わないよ!」
「……」
「私たち『ゴールデンボールコンビ』は片方だけじゃ成り立たないんでしょ?」
「……」
「私が何か気に障ることしたなら謝るからさ、ね?」
「…ふふっ」
マナカは不意に微笑んだ。
それが意味するところを知るべく、カナミは次の言葉を待つ。
「ごめんなさい」
彼女の口から出たのは謝罪であった。
「恥ずべきことですが、無意識のうちに八つ当たりをしていたようですね」
「…八つ当たり?」
「カナミちゃんの苗字が『城島』なもので、つい…」
「どういうこと?」
いまいちカナミには事態が飲み込めない。
それはマナカも了承済みらしく、申し訳なさそう頬を染めて苦笑しながら続ける。
「話が見えないのも無理ありません。なにしろ、カナミちゃんには全く責のない事柄ですから」
「だから、どういうこと?」
「来季から日本球界に復帰する、とある野球選手の名前がですね…」
「あーっ!!」
ここにきてカナミにも筋が見えてきた。
そういうことだったのだ。
判ってみれば、なんと下らない…。
カナミが頬を膨らませて憤りを露わにしたのも、やむを得ぬ仕儀といえるだろう。
「ひっどーい! 八つ当たりもいいところじゃない!」
「仰る通りです。申し訳ありませんでした」
「マナカちゃんがそんな情けないことする娘だったなんて!」
「反論できません…」
「おね〜さんは悲しいよ! こんな風に育てた覚えはありません!」
「…その発言は撤回して下さい」
「あ、ごめん。ご家族を責めるとかそういうのじゃないよ」
「いえ、そうではなく…」
カナミの叱責に甘んじていたマナカだったが、育ちを揶揄されるのは嫌なようだ。
「でもさ、私に冷たくしてた原因があの選手の去就ってことは、マナカちゃんは野球好きだったんだ。なんか意外…」
「う…ん。野球好きとは違いますね。偏狭な土着主義という方が正しいと思います」
「ど、どちゃく?」
「私の故郷は筑前国なんです」
「そうだったの!?」
露わになった衝撃(?)の事実によろめくカナミ。
マナカは説明を続ける。
「ええ。私の苗字『黒田』は黒田藩の黒田ですから。まぁ、ウチは傍流なので如水公の直接の子孫ではありませんが」
「よく分からないけど、とにかく凄いんだね!」
「まぁ、そういうわけで実家は地元との関係が密なんです。そこで育てられた私も当然…」
「地元LOVE…。そういうことだったんだね…」
「ご迷惑をお掛けしました」
「ううん、いいよ。ちゃんと理由が分かったから」
少女たちの屈託のない笑み。
やはり、ゴールデンボールは二つ揃っていたほうがいい。
と、ここでカナミに一つの疑問が浮かんだ。
「じゃあさ、いつも装着しているソレも…」
「はい。黒田家の家訓に従っています」
「押し付けられて嫌じゃなかった?」
「物心がついた時には既に履いていましたから、特に違和感はありませんね」
「そういうものなんだ」
「ええ。それに、これを履いていないと力を制御できませんから」
「う〜ん。せっかく凄いんだし、別に制御しなくてもいいんじゃないかなぁ」
「いいえ。『無闇に才気や野心を露わにすると災いが訪れる』といいますし。如水公の頃よりの黒田の教えです」
「厳しいんだね。マナカちゃんのお婿さんになる人は大変そう…」
「そうですね。シンジさんには頑張ってもらわないと」
「え、お兄ちゃん!?」
実の兄の名が急に出てきたことに驚愕するカナミ。
「マナカちゃん! 今のは爆弾発言だよ! お兄ちゃんと結婚する気なの!?」
「そういう可能性もある…という話ですよ」
「も〜う! いつも通りのポーカフェイスだから本気か冗談か判らないよっ!」
「それもまた家訓です。『喜怒哀楽を封ずる術を身に付けよ』と、ね…」
「ううう…」
「それよりも、筑前の実家から美味しい御菓子が届いたんです。よかったらウチに寄りませんか?」
「誤魔化されないよ! さっきの発言を追及するんだからね!」
「ふふふ。それは怖いですね。では、行きましょうか。八女の新茶もありますから…」
それは、黒田の血を引きし娘の平穏な日常の一幕であったとかなかったとか。
終
そう感じていた城島カナミは、ある日の帰路にて大胆な行動にでた。
本人に直球勝負を仕掛けたのだ。
「ねぇ、マナカちゃん。最近冷たくな〜い?」
「…そうでしょうか」
「冷たいよ〜。ボケに合いの手を打ってくれないし…」
「…それは、必ずしも打たねばならぬものですか?」
「ほら、やっぱり冷たい! いつもならそんなこと言わないよ!」
「……」
「私たち『ゴールデンボールコンビ』は片方だけじゃ成り立たないんでしょ?」
「……」
「私が何か気に障ることしたなら謝るからさ、ね?」
「…ふふっ」
マナカは不意に微笑んだ。
それが意味するところを知るべく、カナミは次の言葉を待つ。
「ごめんなさい」
彼女の口から出たのは謝罪であった。
「恥ずべきことですが、無意識のうちに八つ当たりをしていたようですね」
「…八つ当たり?」
「カナミちゃんの苗字が『城島』なもので、つい…」
「どういうこと?」
いまいちカナミには事態が飲み込めない。
それはマナカも了承済みらしく、申し訳なさそう頬を染めて苦笑しながら続ける。
「話が見えないのも無理ありません。なにしろ、カナミちゃんには全く責のない事柄ですから」
「だから、どういうこと?」
「来季から日本球界に復帰する、とある野球選手の名前がですね…」
「あーっ!!」
ここにきてカナミにも筋が見えてきた。
そういうことだったのだ。
判ってみれば、なんと下らない…。
カナミが頬を膨らませて憤りを露わにしたのも、やむを得ぬ仕儀といえるだろう。
「ひっどーい! 八つ当たりもいいところじゃない!」
「仰る通りです。申し訳ありませんでした」
「マナカちゃんがそんな情けないことする娘だったなんて!」
「反論できません…」
「おね〜さんは悲しいよ! こんな風に育てた覚えはありません!」
「…その発言は撤回して下さい」
「あ、ごめん。ご家族を責めるとかそういうのじゃないよ」
「いえ、そうではなく…」
カナミの叱責に甘んじていたマナカだったが、育ちを揶揄されるのは嫌なようだ。
「でもさ、私に冷たくしてた原因があの選手の去就ってことは、マナカちゃんは野球好きだったんだ。なんか意外…」
「う…ん。野球好きとは違いますね。偏狭な土着主義という方が正しいと思います」
「ど、どちゃく?」
「私の故郷は筑前国なんです」
「そうだったの!?」
露わになった衝撃(?)の事実によろめくカナミ。
マナカは説明を続ける。
「ええ。私の苗字『黒田』は黒田藩の黒田ですから。まぁ、ウチは傍流なので如水公の直接の子孫ではありませんが」
「よく分からないけど、とにかく凄いんだね!」
「まぁ、そういうわけで実家は地元との関係が密なんです。そこで育てられた私も当然…」
「地元LOVE…。そういうことだったんだね…」
「ご迷惑をお掛けしました」
「ううん、いいよ。ちゃんと理由が分かったから」
少女たちの屈託のない笑み。
やはり、ゴールデンボールは二つ揃っていたほうがいい。
と、ここでカナミに一つの疑問が浮かんだ。
「じゃあさ、いつも装着しているソレも…」
「はい。黒田家の家訓に従っています」
「押し付けられて嫌じゃなかった?」
「物心がついた時には既に履いていましたから、特に違和感はありませんね」
「そういうものなんだ」
「ええ。それに、これを履いていないと力を制御できませんから」
「う〜ん。せっかく凄いんだし、別に制御しなくてもいいんじゃないかなぁ」
「いいえ。『無闇に才気や野心を露わにすると災いが訪れる』といいますし。如水公の頃よりの黒田の教えです」
「厳しいんだね。マナカちゃんのお婿さんになる人は大変そう…」
「そうですね。シンジさんには頑張ってもらわないと」
「え、お兄ちゃん!?」
実の兄の名が急に出てきたことに驚愕するカナミ。
「マナカちゃん! 今のは爆弾発言だよ! お兄ちゃんと結婚する気なの!?」
「そういう可能性もある…という話ですよ」
「も〜う! いつも通りのポーカフェイスだから本気か冗談か判らないよっ!」
「それもまた家訓です。『喜怒哀楽を封ずる術を身に付けよ』と、ね…」
「ううう…」
「それよりも、筑前の実家から美味しい御菓子が届いたんです。よかったらウチに寄りませんか?」
「誤魔化されないよ! さっきの発言を追及するんだからね!」
「ふふふ。それは怖いですね。では、行きましょうか。八女の新茶もありますから…」
それは、黒田の血を引きし娘の平穏な日常の一幕であったとかなかったとか。
終
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