「『じゃあ場所を変えてもう一度。うまかったよ、お兄ちゃん』」
「……シホちゃん?悪いんだけど台詞合わせなんだから、変な表情をするのは止めてくれない?」
「にゃんだとう!どこが変な顔なのよ、マサヒコ君!」
「変な表情とは言ったけど、別に変な顔とは」
「女優にとって表情とはすなわち顔!それを否定するのは恥部、じゃなくてタブーでしょう!」
「いつも思うけどシホちゃん絶対分かってて言い間違いしてるよね。
ま、それはともかく。妙な流し目されると、こっちも気持ち悪いっていうか」
「う〜〜、だってやっぱりこういうのは気持ちを入れた方が良いかと思って」
「気持ちを入れるのは良いんだけど、今日はあくまで台詞合わせなんだから、ね?
まずはお互い噛まないように、自然に台詞を言えるように練習しないと。
シホちゃんも初出演映画で気合いが入るってのは分かるんだけどさ」
「………分かった」
ちょっとふくれっ面を作りながらも渋々と青年の言葉を聞く少女。
顔立ちそのものはどちらかと言えば大人びた感じのする、すっきりとした美人顔なのだが。
くるくると変わる表情の豊かさと少し幼い口調が、少女に独特の稚気と愛らしさを与えていた。
青年は端正な顔に苦笑いを浮かべながらも、そんな少女に優しげな眼差しを向けている。
―――読者ならば、もうお気づきだろう。
青年とは成長した小久保マサヒコであり、少女とは飯田シホである。
プリンセス・レイ事務所の社長である柏木レイコに口説かれ……と言うか、
半ばレイプされて弱みを握られる形で、マサヒコは同事務所に所属するタレントのひとりになっていた。
高校在学中こそ雑誌モデル等の小さな仕事をたまにこなす程度の日々だったのだが―――
大学入学後にとある劇団に入団して演技のレッスンを受け始めるや、
元々素質があったのかメキメキと頭角を現して劇団でも主役を張るようになり、
オーディションにも何度か合格して脇役ながらテレビドラマにたびたび起用されるようになっていた。
最近では雑誌で要注目の若手イケメン俳優のひとりとして取り上げられるなど、
お茶の間にも『小久保マサヒコ』の名は徐々に浸透しつつあった。
一方、シホも現役女子高生アイドルとして多忙な日々を送っていた。
レギュラーこそ少ないもののバラエティ番組やトーク番組では常連タレントであり、
特に同性の、(なぜか)年下の女子中学生や小学生からはカリスマ的な人気を集めていた。
「じゃ、次の台詞!ええっと、『私が思うに今の時期に丁度いいのは――まくら2つ』」
「『正直お前が義妹だったらな――って思うことあるよ』」
“ガチャ”
「おはよございます………??あら、熱心ね、ふたりとも」
「あ、カルナさん、おはようございます。やっとホンがあがったんで、
とりあえずシホちゃんと台詞合わせだけでもと思ったんですよ」
「大丈夫?噛んでない」
「もろちん、じゃなくてもちろん大丈夫よ」
「………悪いけど、よろしくね、マサヒコ君」
「……ええ」
事務所に現れた如月カルナとマサヒコは、やれやれ、と言った表情で顔を見合わせた。
TBのもうひとりのメンバーであるカルナは名門・東栄大学に籍を置く女子大生であり、
教養番組や報道バラエティにレギュラーを多く持つ知性派アイドルとして活躍していた。
「ところで、小田さんは?」
「あ、さっき社長から連絡あったみたいで、慌てて出ていきましたけど?」
「あら、入れ違いだったかしら。事務所で合流して現場に行くって話だったんだけど……」
「挿れ違いということは、今頃小田さんは社長としっぽりずっぽり」
“ズシャッ”
エロボケをかましたシホに、カルナの鉄拳が下る。
マサヒコはあえて見ないふりをして台本を読み進めていた。
「あのねえ……初めての主演映画だからって張り切るのは分かるけど、
あんまりマサヒコ君に迷惑かけちゃダメよ、シホ?」
「くぅ〜〜、余裕だな、カルナ。先に処女膜デビュー、じゃなくて銀幕デビューをぶち破ったからって」
“ボスッ”
懲りずにエロボケをかますシホに、本日ふたつめの鉄拳、炸裂。
「映画のタイトルは『妹は思春期』だったかしら、マサヒコ君?」


「ええ。ヤングマラジンで連載されている4コマ漫画が原作ですね」
マサヒコはそう言うと、製本されたばかりのまだ真新しい台本をカルナの方に広げて見せた。
そう、シホとマサヒコが先ほどから読み合わせをしているのは、
ふたりにとって初の競演作であり、初の主演作となる映画の台本なのであった。
「『あの大人気まったり系脱力H四コマ漫画が遂に映画化!禁断の兄妹愛ドタバタラブコメディ』
って、宣伝文を読んだだけじゃ良く分からないけど面白そうね」
「はは、原作が原作だけにシリアスな演技がほとんど無いのは助かるんですけどね」
「ふ〜〜ん。でも初主演なのにマサヒコ君は落ち着いてるわねえ」
「脇役だけは無駄に多くこなしてきましたからね。主役は確かに初めてですけど、
今回はスタッフに顔見知りも多いし、正直緊張感とかはあんま無いですね」
「頼もしいわね。シホのこと、リードしてあげてね?」
「ええ、それは、もちろん」
「いや〜〜、私は処女だからマサヒコ君がいくら上手にリードしてもいきなりイかせてもらうのは」
“バキッ”
「じゃあ、私はこれから収録があるから。頑張ってね?マサヒコ君」
「…………はい」
本日三発目の鉄拳をシホにお見舞いすると、カルナは事務所を後にした。
「いちちちち………カルナの奴、日に日にパンチが重くなってきている気がするんだけど」
「ああ、なんでも番組の企画でボクササイズとかやってるみたいだからね、カルナさん」
「にゃに?偉そうなこと言ってるけど、あいつもそんなイロモノ系の仕事を」
「いや、女性の護身術特集だったそうでね。それで試してみたら結構ハマっちゃったらしいよ」
「ふ〜〜ん?カルナのこと、詳しいんだね、マサヒコ君」
「?あ、まあ……ね」
シホの疑いの視線にちょっと居心地の悪そうなマサヒコ。
ふたりの間に微妙な空気が流れ始めた―――そのとき。
“ガチャ”
「お疲れ様で〜〜す!シホちゃん、マサヒコ君!」
「お疲れ、マサヒコ君、シホ」
「あ、おはようございます。ユーリちゃん、井戸田さん」
「おっはよ〜〜、ユーリ!ヒロ君」
現れたのは、TB最後のメンバー・有銘ユーリと、マネージャーの井戸田ヒロキである。
「ねぇねえ、ワンちゃんって可愛いよね!シホちゃん」
「?いきなりなんの話?ユーリ?」
「いや、今日『チンポタマ』の収録があって。番組に出てきたシーズーのこと、
ユーリちゃんすごく気に入っちゃったみたいで。帰りのクルマの中でもずっと、
『ワンちゃん飼いたい!ワンちゃん飼いたい!』って連発してたんだよ」
「だ〜〜って、今のマンションだとペット禁止なんだもん。ねえね、おにいちゃ〜〜ん、
ペット飼ってもいいマンションに引っ越ししたい〜〜!それでユーリもワンちゃん飼いた〜〜い!」
「あんまりワガママ言わないでくれよ、ユーリちゃん。アイドルの住むマンションってのは、
セキュリティ面もあるから簡単に引っ越しするわけにはいかないんだから」
「え〜〜、つまんな〜〜〜い〜〜」
しばらく不満そうな表情をしていたユーリだが―――
「!あ、そうだ、ねえねえ、おにいちゃん‥‥」
なにかを思いついたらしく、悪戯っぽい笑顔を浮かべるとヒロキの耳元に口を寄せ、囁いた。
「じゃ、おにいちゃんのマンションでワンちゃん飼おうよ‥‥‥ね?」
「へ?なんで俺の部屋?」
「そしたらおにいちゃんのお部屋に遊びに行ったときにワンちゃんに会えるもん、ね?」
「!ゆ、ユーリちゃん、だからそれは!」
慌てるヒロキの様子を見て、今度はシホがからかうように、言った。
「怪しいぞ〜〜〜、ユーリ。ま〜〜たヒロ君を口説いてるのか〜〜?」
「違うよ〜〜ぉ♪インセストになっちゃうもん♪ね?おにいちゃん」
「あははははははは、そ、そうだよ、シホ。あんま変なこと言うなよ」
「そうだよ、井戸田さんに失礼だろ、シホちゃん」
ニヤニヤ笑いのシホと、苦笑気味のマサヒコと、引きつった笑顔のヒロキ。
三人の様子を楽しそうに見ながら、ユーリは年齢に不釣り合いな艶やかな微笑みを浮かべている。

TB最年少のユーリは今や小悪魔系ジュニアアイドルとして人気急上昇中であり、
写真集は売り上げNo.1、表紙を飾る週刊誌も軒並み売り上げ増という、正に絶好調の状態にあった。
しかし―――そんな彼女と、マネージャーのヒロキには、口外できない秘密があった。
「ところで、社長は?」
「まだ来てませんね。ていうか、さっき社長から連絡があったとかで小田さん慌てて出ていきましたけど?」
「あちゃ〜〜、連絡ミスかな?ちょっと待っててね、ユーリちゃん」
携帯を胸ポケットから取り出すと急いでヒロキは部屋を出て行った。
しばらく暇そうにしていたユーリだが……テーブルの上に広げてあった台本を見つけ、嬌声をあげる。
「わ〜〜!これ、マサヒコ君とシホちゃんの主演映画だよね!すご〜〜い!」
「あっはははは、バレたあ?」
「テーブルの上に堂々と置いてありゃバレるも無いって。うん、そうなんだ。
今日ホンがあがったから、事務所でとりあえず台詞合わせでもしようかって、シホちゃんとね」
「いいな〜〜、いいな〜〜!ユーリね、テレビのドラマはいっぱい出てるのに、
映画はまだなんですよぉ!ユーリも映画出た〜〜い!」
(テレビドラマは……いっぱい?私はまだ3本、しかも脇役だぞ?このアマ……)
刺すような目を向けるシホだが、ユーリは平然とした表情である。
「あ〜〜、でもこの前のドラマ、『パンティーナ』だっけ?あれ良かったよ、ユーリちゃん」
「うふふ、ありがとうございますぅ♪でも、ここだけのお話ですよぅ?
一緒に出てた松竹ジュン君、何度もユーリのメアド聞いてきたんですぅ。
お断りしたんですけどぉ〜〜、収録終わった後に無理矢理ユーリにメアド渡してきて」
「あははは、そりゃ大変だったね?でも、まさかユーリちゃん?」
「うふふふ〜〜、大丈夫ですよぅ♪ユーリ、メールなんてしませんからぁ♪」
「はは、そうだよね。ユーリちゃんも現場だとモテるだろうけど、気を付けてね?
井戸田さんが心配しちゃうよ?」
「うふ〜〜♪おにいちゃんをちょっと心配させたいって気持ちもあるんで・す・け・ど・ねっ♪」
「あははは、冗談だよね?」
「うふ〜〜、冗談ですよぉ♪」
(マツジュンからメアドだとぅぅ!!!!!!!!!!!!!私がメアドもらったのなんて、ヨゴレ芸人の下島竜平くらいだぞ!!)
ギラついた視線を送り続けるシホだが、やはりユーリは意に介する様子もない。
意識的なのか無意識的なのか、さりげなく毒を吐くという彼女の天然キャラは健在のようだ。
「ま、それはともかく………ちょっとお願いしても良いかな、ユーリちゃん?」
「?なんですかぁ?」
「せっかくここにベテラン女優さんがいるわけだし、俺らの台詞合わせのチェックをお願いしたんだよね。
人に見られてた方が緊張感があって、より本番に近いだろうし。良いよね、シホちゃん?」
「なるほど、本番視姦プレーってことね!受けて立ちゅ!」
「…………ユーリはいいですけど?」
「ああ、ならお願いするね。じゃ、3ページから初めよっか。
『……でもさ、できちゃった婚だろ?結婚するにしてももうちょっと計画的にやってほしいよ』」
「『えーーー、でもさーーー、お兄ちゃんも妄想の中じゃアイドルと無計画に中出しでしょ?』」
「『妄想の中なら、無計画でもいいの』」
「いや〜〜ん、ユーリ、意味わかんないですぅ〜〜♪」
「あははは、ゴメンね、ユーリちゃん」
(な〜〜〜にカマトトぶっとんのじゃ、このアマ……)
ブリブリ状態のユーリ、イラっときているシホ、そしてその場を冷静に仕切るマサヒコ。
三人は、微妙な空気のまましばし台詞合わせを続けるのであった―――

「お待たせ、ユーリちゃん。やっぱ連絡ミスみたいだね。俺らは直帰して良いって。
どうする?マサヒコ君、シホ?帰るならついでだし、送ってくけど?」
「いえ………一応、5時までは台詞合わせするって三瀬さんには言ってあるんで」
「だね。ウチらはも少し頑張るからさ、ヒロ君。先にハケてもらって良いよ?」
「ああ、じゃ。お先にね、マサヒコ君、シホ」
「お疲れです、井戸田さん、ユーリちゃん」
「お疲れ、ユーリ、ヒロ君………」
そそくさと部屋を出て行くふたりの背中を見送ってしばらくした後、
マサヒコとシホはほぼ同時に、ふう、と息をひとつ、ついたのであった。
§





: 郭泰源
作『スタア誕生』etcの続編です。

Skin Deep

「は〜〜〜あ、とぼけるのもそれなりに疲れるわねえ」
そう言って大げさに息を吐くと、シホは肩を揉みながら首を左右に振る。
マサヒコはそんな彼女を苦笑しつつ見ていたが―――たしなめるように、言った。
「だけど今日のシホちゃん、危なかったぞ?結構エグいこと言ってたし」
「あそこでスルーすんのも逆に、って感じじゃない?」
「まあ、ね………」
否定することもできず、マサヒコもちょっと疲れた顔をすると眉間を指で挟んでマッサージを始めた。
しばらく、シホもマサヒコも無言だった。しかしふたりとも、思っていることは一緒だった。
ユーリとヒロキの口外できない秘密、それは―――
業界では御法度である、マネージャーとタレントの、禁断の恋。
そしてその秘密は、既にマサヒコとシホの知るところとなっていた。
「でもいつまで続けるつもりなのかな、あのふたり?
井戸田さんだってこのままじゃヤバイって分ってるはずだろうし」
「ああ見えてヒロ君ってマジメだからね。本当のところは、
もうおしまいにしたいのかもしれないけど。ユーリがそうはさせない感じだし」
「ふたりともまだバレてないって思ってるかもしれないけど……社長は鋭いから分らないよね」
「ねえ、マサヒコ君?これ、あくまで私の推理なんだけど」
「?なに、シホちゃん?」
珍しくシリアスな口調になったシホにちょっと戸惑うマサヒコだが、彼女は真顔のまま、続けた。
「多分ユーリの奴は、私たちにバレてるの、知ってると思うんだ」
「え!ま、まさか、そんな」
「良いから聞いて?今日も実は私、それを試すつもりであいつにカマかけてみたんだけど。
一瞬だけどね、私に向かってなにもかもお見通し、って感じでニヤッと笑ったんだ。
あいつ、全部知ってて、それで慌てるヒロ君を見て楽しんでる感じがして………」
「でも……それは」
疑りすぎでは、という言葉が喉元まで出かかったが、どうしても口にすることが出来なかった。
なぜなら、マサヒコにもおぼろげながら過去に記憶があったからだ。
ユーリが、わざとヒロキとの関係を匂わせるような発言を何度かしていたことを。
「マサヒコ君の言うとおり、私も社長は気付いてるんじゃないかな、って思う。なんとなくだけどね。
でも、それをあえて放置してるんだとしたら?もしかして、それもゲイの癒しになるって考えてるんじゃ?」
「それを言うなら芸の肥やし………まあ、それはいいけど。
そう言えば最近のユーリちゃん、すごくキレイになってきたしね。大人っぽくなっただけじゃなくて」
「哀れなのはヒロ君だよ。このままだとユーリにポイ捨てされる感じ満々じゃん」
「それは………まだ、どうかと思うけど」
そう言いながらもマサヒコはいつか寝物語にレイコが語っていた内容を思い出していた。

<「ユーリちゃん?ふふ、あの子はめっけもんだったわ。ああいう方向に成長するなんてね」>
<「?ああいう方向って、どういうことですか?」>
<「マサヒコ君には、まだ分らないか。あの子はね、ドラキュラタイプなのよ」>
<「ドラキュラって、ちょっと、レイコさん?」>
<「悪い意味じゃないの。男の生き血を啜って輝くタイプっていうか。
ユーリちゃん自身はまだ自分のそういう素質について、自覚もしてないでしょうけどね。
でもあの子はきっと近い将来、とんでもない男喰いのタレントになるわ」>
<「………聞いていると、悪い意味にしか聞こえないんですけど」>
<「うふふ、君は分らなくて良いの。だからね、マサヒコ君?
可愛がるのはいいけど、あの子には手を出さない方が良いわよ?あなたのためでもあるし」>
<「出しませんよ、手なんて………」>
<「どうかしら?でもユーリちゃんに骨抜きにされた君も見てみたいって気もするけどね……うふふ」>
<「骨抜きって……レイコさんも、ひでえこと言うなあ………」>
<「あン、ゴメンね、マサヒコ君?冗談よ。おわびに……」>

「マサヒコ君?もしかして、ユーリのこと、狙ってた?」
「!な、なに言ってるんだよ、シホちゃん!」
レイコとのやりとりを思い出してボーっとしていたが、予想外のシホのツッコミが入って慌てるマサヒコであった。
「だって仲良かったじゃん、ユーリと。それにさっきからなんかモノ思いにふけってる感じだし」

「んなことないって。たださ、俺は今後あのふたりとどう付き合おうかって思ってただけで」
「今まで通りでいいんじゃない?」
「………あっさり言うねえ」
「だってそうするしかないじゃん。別れろとも言えないし、応援するとも言えないし。
マスコミとかにバレたら自業自得だけど、そうなったら社長の仕事でしょ?」
「まあ、ね」
突き放すような言い方だが、シホの言っていることは理に適っていた。
こういう妙に現代っ子なところはシホとマサヒコ、良く似ているのである。
「よし、休憩プラス猥談終わり!続けようよ、台詞合わせ」
「ソレを言うなら雑談。ま、それはともかく。じゃ、『ちょっとこの柄カワイすぎて恥ずかしいな』」
「『そう?じゃあこのカワイさとオトナっぽさを兼ね備えたパンツを』」
「『最初のほうがGOODだね』………」
ふたりはそれから、熱心に練習を続け、気付けば時計は5時の針を回っていた。

「ごめ〜〜〜ん!マサヒコ君、シホちゃん。待った?」
ちょっと慌てて、プリンセス・レイ事務所の事務員・三瀬エリコ登場。
「あ、三瀬さん?もうこんな時間だったんだ」
「お疲れです、三瀬さん………ん?くんくん………三瀬さん、お昼に松坂屋の大輔弁当食べた?」
「あ〜〜ん、バレちゃった?相変わらずワンちゃんなみの鼻ねえ、シホちゃんは。
それはともかく、ホントごめんね?お留守番させちゃって」
「いえ、俺らも練習したかったし」
「カルナは社長と小田さんと一緒に現場行ったし、ユーリとヒロ君は帰ったよ?」
「ウン、聞いてるわ。私はカルナちゃんたちが帰ってくるまでもう少しお仕事するつもりだけど、ふたりは?」
「あ、そろそろ帰ります。だいたいのところはつかんだ感じなんで」
「私も明日午後から『踊るまんこ御殿』の収録があるから、今日は帰ります」
「そう?じゃ、タクシーを」
「俺、今日はクルマで来てますんで、良いです。どうする?一緒に帰る?シホちゃん」
「うん、じゃあ送ってもらっても良い?」
「分ったわ。でも写真週刊誌とかに撮られないように、くれぐれも……」
「はは、確かにシホちゃんは有名ですけど、俺じゃあマネージャーだと思われるのがせいぜいじゃ」
「なに言ってるの!最近マサヒコ君だってブレイク中なんだから、気を付けないとダメよ!」
「そうだよ、プレイ中は気を付けないちょ!」
「………分りました。気を付けますんで、三瀬さん。じゃ」
「はい、お疲れ、シホちゃん、マサヒコ君」
「お疲れっしゅ〜〜、三瀬さん」

「………ねえ、シホちゃん?そこまですると、逆に不自然っていうか」
ビル地下の駐車場に赴き、クルマにのりこむふたり。
シホはグラサン・キャップ・ウィッグ着用の重装備の変装であった。
「だって三瀬さんが、気を付けろって」
「いや、それじゃいかにも変装しました、って感じだし」
「そうかな?」
「うん。メガネに帽子ぐらいで良いんじゃない?」
「分った〜〜」
マサヒコの言葉に素直に従うシホ。マサヒコは自分もメガネをかけてニットキャップを被ると、クルマを発進させた。
「マサヒコ君、もう免許持ってるんだ〜〜良いな〜〜」
「はは、有難いんだか悲しいんだかTBのみんなと違って俺の場合ずっと仕事少なかったしね。
大学入ってすぐに教習所に通ったわけ」
「でも最近じゃドライブも気軽に行けないんじゃない?」
「いや、そんなことも無いよ。この前も大学の友達と海まで行ったりしてるし」
「良いな〜〜、ねね、私も今度連れてってよ〜〜」
「うん、良いよ………って言いたいところだけど、それこそ週刊誌とか危なくないかな?
俺は別に大丈夫だろうけど、シホちゃんは一応人気アイドルなんだし」
「一応ってのがひっかかる」
「あはは、ゴメン。ま、だから行くなら小田さんや三瀬さんとかも誘うとかさ」

「…………私は、ふたりで、行きたいな」
「え?」
「なんでもないの!前見ないと危ないよ、マサヒコ君!」
「あ、ああ」
(今なんか、シホちゃん?)
珍しく女の子らしい表情のシホにドキッとしてしまうマサヒコだが、すぐに彼女はいつもの明るい笑顔になった。
「それはともかく、性交させたいね、映画」
「なんとなく発音がおかしい気がしないでもないけど、そうだね、せっかくお互い初主演映画なんだし。
ま、そのためには主役の俺らが頑張らないとだけど」
「うん。でも台本と原作読んで思ったけど、このカナミちゃんって、超ブラコンだよね」
「ああ、それはね」
「おにいちゃんのシンジ君のイメージはマサヒコ君にぴったりだけど、私はひとりっこだし、
どうもイラマチオ、じゃなくてイマイチ感情挿入できないっていうか、カナミちゃんの気持ちが分らないっていうか」
「う〜〜ん、俺もひとりっこだから、そのあたりはなんとも」
シホの無理矢理なボケをあえてスルーするマサヒコ。このあたりは、手慣れたものである。
「だからね、マサヒコ君?」
「なに?シホちゃん」
「これからはマサヒコ君のこと、“おにいちゃん”って呼ぶね?」
「断る」
「え〜〜なんで〜〜〜」
「だってそれ、他の人にヘンに勘ぐられそうだし、キャラ的にもユーリちゃんだろ」
「役作りのためって言えば大丈夫だよ」
「でもなあ」
「ぶ〜〜、じゃあ、ふたりだけのときだけにするから、いいでしょ?おにいちゃん」
「って、もう決まりなの、それ?」
「こんな可愛い子が妹になるんだから、喜んでよ〜〜。ね?」
「上目遣いに弱いっていうのはシンジ君の設定だけど、俺はあんま」
「ダメだよ〜〜〜、そこで『萌え〜〜』とか言わないと」
「て言うか、それシンジ君のキャラじゃ無いよね、完全に」
車内で夫婦漫才を続けるシホ&マサヒコ。やはりふたりの相性は、悪くないようだ。
「って、ホラ、そろそろマンションにつくよ、シホちゃん?」
「あ、ホントだ。ねえ、おにいちゃん?」
「ん?なに?」
「今日、時間ある?」
「俺?あとはウチに帰るだけだけど」
「じゃあ、もう少し付き合ってくれない?なんだかまだ納得いかないんだ、私」
「気合い入れるのは良いんだけどね、シホちゃん?まだホンあがって台詞合わせしたばっかなんだしさ。
あんまり最初から頑張りすぎると、息切れしちゃうよ?今日は、ゆっくり休んだ方が」
「ね、お願い!私、噛み癖があるから、人の何倍も頑張らないといけないの。
それにね………本当は、怖いんだ。バラエティとかと違って、映画だし、主演だし。
私、ドラマとかでも脇役しかしたことなくて……怖いんだ」
「………シホちゃん」
表情は、真剣そのものだった。明るくて、おとぼけキャラである普段の彼女からは想像もつかないが、
実際のシホは、自分の欠点を冷静に見つめることが出来て、それを克服する努力を惜しまない、
努力家タイプのタレントなのだ。そのことは、同じ事務所で働いていて、マサヒコも良く知っていた。
だからこそ、彼女のそのお願いを断ることなど、心優しいマサヒコにできるはずもなく―――
「分ったよ、じゃ、もうちょっと頑張ろうか?」
「ウン!ありがとう、マサヒコ君!あ!」
さきほどの宣言をあっさりと忘れ、つい本名でマサヒコを呼んで苦笑するシホ。
同じくマサヒコも苦笑して顔を見合わせる。その様子は、実の兄妹のように微笑ましかった。
「ただ三瀬さんの話じゃないけどマスコミに見つかるとヤバいから、一応用心してちょっと回り道して良いかな?」
「うん。じゃ、その間に私、も一回台詞読んでおくね?」
「ああ。それじゃ………」
しばらくカーナビを見るふりをしながらわざと一通を続けたり無意味に大回りをしてみたが、
どうやらマスコミのクルマはついてきていないようだった。


安心したふたりは、ようやくマンションへと着き、シホの部屋へと入っていった。
「いらっしゃ〜〜い。散らかってるけど、どうぞどうぞ」
「はあ……しかし、本当に散らかってるね」
「コラ!おにいちゃん!」
「はは、冗談だよ」
確かに片付いてはいなかったが、足の踏み場もない、というほどでもなかった。
(ふぅん……シホちゃんって)
ついしげしげと見回してしまったマサヒコは、シホの意外な几帳面さを発見して感心していた。
同じ事務所に所属する彼だからこそ分るのだが、シホの部屋は一見モノがあふれて雑然としているようで、
それらは実は、TB初期から現在に至るまでのポスターや、販促グッズの数々だった。
しかも全てキチンと時系列で並べられており、インタビュー記事や雑誌の表紙を飾ったグラビアも、
キレイに切り抜いて飾ってあった。ひとつ間違えれば自分大好きアイドルの痛い部屋とも見られかねないが、
テーブルの上に散らばる読みかけであろう大量のファンレターはシホの仕事に対する真剣さを感じさせた。
「ちょっと待っててね、おにいちゃん。今コーヒー持ってくるから」
「別にそんな」
「良いの、こういうのは定番のお決まりなんだから。
あ〜〜、なんだったらこの前番組で使ったメイド服着て持って来ようか?」
「ふ・つ・う・に・コーヒー希望」
「は〜〜い♪」
キッチンへと向かうシホの後ろ姿を苦笑しながら見送ると、
マサヒコは彼女が戻るまで台本を手にして黙読するのであった。
「お待たせ、おにいちゃん。インスタントで悪いけど」
「ん、良いよ、別に。でも感心だね、シホちゃん?ファンレターとか全部読んでるんだ?」
「あ、ゴメ〜〜ン、広げっぱなしで。あは、全部は読めないけど、でもなるべく頑張って読みたいの。
だってファンの人のチェックって結構厳しかったりするしね。特に私の場合トーク番組が多いから」
「いや、凄いよ。俺のファンレターとは桁違いなのに、それを全部読むなんて」
「あはは、私のファンってマジで厳しくて、ダメ出しばっかりなんだけどね。
ツッコまれてばっかりで嫌になっちゃうくらい。それはおいといて、お兄ちゃん?コーヒー、冷めちゃうから」
「あ、うん」
誤魔化すように、シホが言う。彼女なりの照れ隠しなのは、それなりに長い付き合いのマサヒコにも分っていた。
「へ〜〜、だけどぬいぐるみとかは結構可愛い目なんだね、シホちゃん」
「!やだ、コレもファンからのプレゼントだって」
「これ全部?ふ〜〜ん、丁寧に飾ってるんだね」
「……もう、恥ずかしいな。ユーリやカルナにあげちゃったのも結構あるんだけどね」
ファンからのプレゼントだという大量のぬいぐるみやアクセサリー等は、大切にディスプレイされていた。
(照れてるけど、シホちゃんって……)
普段はエロボケ連発でおちゃらけてるいるが、なによりファンを大切にして他人の意見にも真剣に耳を傾ける、
勉強熱心なアイドルなのである。そんな自分を隠そうとするシホの可愛らしさに、つい頬が緩むマサヒコであった。
「もう!いいから読み合わせしようよ!」
「あはは、ごめんね、シホちゃん。じゃ、ここのパートから」
「あ、でもそこって結構後半のヤマだよね」
マサヒコが蛍光ペンでラインを引いていた箇所をのぞきこむシホ。
「うん。ま、ふたりの微妙な関係が決定的になるとこだからね」
「でも原作だとカナミちゃんってブラコンだけどそこまで踏み込んでないのに、このシナリオは結構大胆だよね」
「ん〜〜、ま、この方が面白いと脚本の工藤さんは考えたんだろうね」
「原作があんな感じだし、工藤さんならお笑いのシナリオになるかと思ってたんだけど」
「そうは言ってもカナミちゃんは周りの女の子に煽られる感じだけどね、あくまで。
結局カナミちゃんが告白を決心するところでラストシーンみたいだし」
「エッチなシーンは、無いんだよね」
「無理だって、そりゃ。メジャー配給で未成年のアイドルが出る映画だし。きわどい台詞はあってもさ」
「残念だ〜〜、せっかく私の艶技力を………」
「って君、さっき怖いって言ったばっかりだろ」
「あはは、ごめ〜〜ん。………でも本当にちょっと残念なんだけど」
「?なんか言った、シホちゃん?」
「良いの、別に。じゃ、読み合わせ続けよっか、おにいちゃん」

「ああ。続きからね。『見たって減るもんじゃないだろ』」
「『減るよ!!愛液が』」
「シホちゃん?一応ここ、もうちょっと女の子っぽくした方が」
「女の子っぽく?じゃ、『減るよぉ……愛………液………がぁ』」
「表情が微妙だけど、ま、さっきよりは良いかな」
「えへへ、そう?」
「でも監督さんによってはセリフにタメを作るのを嫌がる人もいるから、そこんとこは難しいんだけどね」
「そっか〜〜、ねね、監督の松井メダカさんはどんな感じ?
マサ、じゃなくておにいちゃんは何度か一緒にやったことあるんだよね?」
「どっちかと言えば歯切れの良いセリフ回しが好きなタイプだけど、その場の雰囲気で変わるね。
脚本の工藤さんと同じ天才型っていうか、インスピレーション次第の人かな」
「天才型かぁ〜〜、ただのちっこいオジサンじゃなかったんだ」
「コラ。ああ見えて『明るい家族計画』っていう大人気劇団の総監督やってる人なんだぞ」
「えへへ、ごめ〜〜ん。ふうん……でもそう言うことはアドリブで相当変わることもあるってこと?」
「ま、そうだね。俺も前回の映画ではちょっと苦労したし」
「そっか。じゃあエッチなシーンありってことも………」
「あのねぇ、そんなしたいの?エッチなシーン」
「………したくないって、思った?」
「え?」
「あはははは、マジな表情になってる〜〜〜、おにいちゃん、可愛い」
「コラ、からかうなよ」
「はは、ごめ〜〜ん、だって」
一瞬だけ陰りのある表情をしたシホだが、すぐにいつもの冗談めかした口調に戻ってけらけらと笑う。
マサヒコはそんな彼女の様子に、つい安心して軽口を叩いた。
「んっとに、今の表情、まるでユーリちゃんみたいだったぞ?小悪魔系っていうか」
「…………マサヒコ君?」
「おにいちゃんだろ?それ、君の方から言い出し」
「やっぱり、ユーリのこと好きだったの?」
「はぁ?まったく、さっきからなにを」
「社長みたいな、年上の女の人に飽きたら次はロリ?」
「!なに言ってるんだよ、シホちゃん、いくら冗談でも」
「私ね、見たんだ。マサヒコ君と、社長がキスしてるの。それに、そういう匂いもしてたしね」
「!!!」
(って、あのときか?いや、そんな、バレてるはずは。でも、シホちゃんって妙に鋭いところが)
「私が気付いていないと思った?マサヒコ君」
「冗談だとしたら、ちょっとクドイかな?シホちゃん。さすがに、しつこく言われると俺もあんまり良い気持ちはしな」
「ヒロ君がカルナと付き合って、別れて、ユーリと付き合ってることなんて、すぐ分ったよ。
だって、私はカルナとユーリとずっと一緒だったし、ヒロ君はあの通り、正直な人だしね」
「………………」
「そういう状態のふたりってのは、独特な、“匂い”がするんだ。
マサヒコ君にも前言ったことがあるよね?私、生まれつき人一倍鼻が良いんだ。
だから社長とマサヒコ君の関係も、初めてふたりを見たときからなんとなく分ってたよ」
(匂い………そうか、確かシホちゃんは………)
マサヒコは、背筋に冷たいものが伝うのを感じていた。
シホは、無表情だった。今まで、見たことがないほどに。
そしてマサヒコは、覚えていた。彼女の嗅覚が、驚異的なまでに鋭かったということを。
思い起こせば、ユーリと、ヒロキの関係も―――カルナと、ヒロキの関係も―――
一番最初に気付いたのは、他ならぬシホだったのだ。
「ねえ、どうなの?社長とのことはともかく。ユーリのこと、やっぱり」
「………………社長とのことは、認めるよ。でも、ユーリちゃんはそんなつもりじゃないよ。
あの子はさ、しゃべりやすいっていうか、壁がない子だから、俺もなんとなく良く話してたっていうか」
「………本当?」
「ああ。俺も覚悟を決めて言うけど、社長と俺はね、無理矢理とかそんな関係じゃないよ。
俺が事務所に入る前から、年の離れたお姉さんみたいな……そんな感じだったんだ。
でも、ま、その………ちょっとしたきっかけでこういう関係になったっていうか」

実際のところは限りなく無理矢理な、半レイプのような状態でレイコとの関係は始まったのだが。
そうも言えないマサヒコは、慎重に言葉を選びつつ話すしかなかった。
そしてそれを聞くシホの表情は―――やはりつかみどころのない、どこか、醒めたような表情だった。
「そうなんだ?ふ〜〜ん。ねえ、マサヒコ君?私だってこの事務所の人間だから、
ベラベラしゃべるつもりなんて無いよ。そんなことしたらユーリやカルナにも迷惑かかるしね」
「………うん、悪い」
「で、聞くけど。社長のこと、好きなの?結婚するつもり?」
「分かんないよ。社長は俺よりずっと年上だし、あの人がどう思ってるかなんて」
「違う。だから、マサヒコ君はどう思ってるの?社長のこと」
「………好きかどうかって聞かれれば、好きだと思う。でも、結婚とか将来のことは全然考えられないな。
俺もまだガキだし。仕事のことも、大学のこともあるし。それにさっきも言ったけど、社長の気持ちも分らないし」
「体だけの関係じゃ、無いんだ?」
「それは違うよ。ただなんとも言えないんだ。これが………恋愛ってもんなのかどうかも、さ。
正直、俺、社長以外の女の子とそういう関係になったこと、無いし」
「!嘘だ?マサヒコ君が?」
「ま、このさいぶっちゃけるとね。マトモに女の子と付き合ったことないよ、俺。
社長とそういうことになっちゃって、すぐに事務所入ったから」
「ふ〜〜〜ん。じゃ、素人童貞なの?」
「………あのねえ。明らかにそれ、使い方を」
「なら、試してみる?」
「は?なにを」
「私で……試してみない?普通の、女の子との、恋愛」
「!!!って、ねえ、いくらなんでも」
「年下は……ダメ?マサヒコ君……」
そう言いながらシホはすばやくマサヒコの側に寄り添うと、じっと見つめてきた。
(う………ええ?……)
いつもの元気な脳天気キャラと打って変わって、シホの視線には、どこか、憂いと寂しさ――
そしてそれ以上に、マサヒコが初めて見る、妖しさがあった。
「あ、あのね、一応俺もマジ話してたんだから、そこでからかわれるのは」
「私は、マジだよ?ねえ、どうなの?私とじゃ、恋愛とか、できない?」
「人気アイドルの君と俺じゃ、釣り合わないよ。おまけに俺らは同じ事務所の人間なんだしさ」
「いいじゃん。ヒロ君なんてマネージャーのクセして自分の担当してるアイドルをふたりも喰ってるんだよ?」
「あれは、その、純粋に当事者同士の問題であって」
「私と、マサヒコ君のことだって当事者同士の問題じゃん。ねえ………」
「や、やっぱダメだよ。ゴメン、シホちゃん。もう時間も遅いし、俺、帰るから」
「…………分った」
「あ、分ってくれた………って!?」
シホは素早くシャツのボタンを外してスカートをずらすと、あっという間に下着姿になった。
そして―――思いっきり三白眼で、マサヒコをにらみつける。
「し、シホちゃん?ききき、君、ちょ!ちょ、」
「ありがちな手だけど。私がこの姿でベランダに出て、『助けて〜〜〜』なんて叫んじゃえば、
マサヒコ君も社長も一発だよね?」
「ぐ……………」
「そんな顔しないでよ。一回だけで良いの。ね?」
「でも、あの」
「そうじゃなくても私って口が軽くなっちゃうときがあるしな〜〜♪
しゃべっちゃうか・も・だ・よ?良いの、バレちゃうの?」
「……………………はぁ、本当に誰にも言わないでくれるんだね?」
「オッケー♪ありがと、マサヒコ君♪」
諦めきって目を閉じるマサヒコだが、シホはそんな彼を見て、にま〜〜っと楽しそうに笑うのであった。
そして――再びマサヒコに寄り添うと、股間に手をかけ、ジーンズのジッパーを下ろす。
「ふ〜〜ん♪嫌よ嫌よもなんとかだね〜〜♪しっかり固くなってるじゃん、マサヒコ君♪」
「…………君、しかし時々オッサンくさいよね」
「とか言いながらオッサンになってるのはマサヒコ君のココじゃん♪じゃ♪」
あっさりとトランクスを脱がされると、ずるり、とマサヒコのペニスが顔を出した。

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