照明の柔らかい光に包まれた、絡み合う二つの裸身。
紅潮した肌に浮かび上がった珠のような汗が、一滴、二滴、三滴と、ベッドが軋む度に跳ね、飛び散る。
「あん、小久保くぅん……乳首はだめぇ、ジンジンしちゃうよぉ」
「相変わらず的山は敏感だな」
「むー、それって胸が小さいってことを言いたいの?」
「いや、そーゆーわけじゃないけど」
 男の名は小久保マサヒコ、女の名は的山リンコ。
中学からの知り合いで、同じ高校に通う仲である。
セックスをしているからといって、恋人同士というわけではない。
では、割り切ったセックスフレンド同士なのかというと、それも適切ではない。
強いて言うなら、その丁度中間と言ったところか。
「やっ! 爪をたてちゃ、あんっ!」
「乳首、大きくなってきてる」
「あ、ああん……こ、小久保くんっ……」
 複雑にして、少々怪奇。
それが、二人の関係だった。

 小久保マサヒコは複数の女性と関係を持っている。
リンコの他に、幼馴染の天野ミサキ、中学時代の同級生の若田部アヤナ、
同じく中学時代の家庭教師の濱中アイ、そしてベッドテクニックの師匠である中村リョーコの計五名で、
リョーコとは月に一度程だが、他の四名とは週に何度も会っては身体を重ねている。
時には二人同時、三人同時に抱くこともある。
他者から見れば、マサヒコは男として許されざる存在に見えるだろう。
だが、実際はそうではない。
マサヒコもミサキもアヤナも、リンコもアイも、納得ずくで今の関係を続けている。
確かにおかしいと言えばおかしい。
おかしいが、それでもマサヒコたちにとっては、これ以上ない、まさにパズルのピースがぴったりはまった状態。
四人の女性は、それぞれにマサヒコに恋愛感情を抱いた。
そしてそれにマサヒコは応えた。
誰か一人を選ぶのではなく、全てを均等に愛するという形で。
女性たちはいがみあわなかった。
嫉妬という感情が全くないわけではないが、それでも他を排斥してマサヒコを独占しようとは思わなかった。
複雑で歪で、純な関係。
それを成し得たのは、マサヒコがマサヒコであるからだ。
両親から受け継いだ血か、それとも彼自身の天賦の才能か。
欠けることなく愛を受けとめ、注ぎ、保つ。
単純な言葉では説明出来ない、マサヒコの絶対的な魅力が、今の在り様を肯定するのだ。
ぶれることも、揺れることもなく。

「ん……ちゅ、はむ……っぷ」
「くっ、的山……」
「ちゅっ……ふふ、裏からこうやって、舌で……れろ、っ……」
「やばい、凄く気持いいって……っ」
 マサヒコはひとしきりリンコの身体を愛撫した後、股間を彼女の口に委ねた。
雄々しくそそりたった男の象徴が、リンコの小さな口と舌によって、丁寧に濡らされていく。
「すっごく固くなってきたよ」
「そりゃ……的山が巧すぎるから」
「えへへ」
 リンコはマサヒコと同じ高校二年生だが、外見はかなり幼く見える。
中学生、下手をすればちょっと大人びた小学六年生辺りに間違われてもおかしくないくらいだ。
そんな容姿の彼女が、股間に顔を埋め舌と唇でペニスに奉仕している様は何とも背徳的で、
その光景と股間に与えられる刺激が、マサヒコの脳髄をチリチリと焼いていく。
「私ね、さっきも言ったけど、おっぱいが小さいから」
「ん?」
「アヤナちゃんやアイ先生みたいに胸でしてあげられないから、お口だけは負けないようにしようって思って」
「的山……」
 女性はどうしても、自分の胸の大きさが気になってしまう。
これは女性という生き物の脳に根づいた、決して切り離すことの出来ない感情で、
男性がペニスの大きさを気にしてしまうのも、おそらく同じ理由であろう。
「ミサキちゃんにも……はみゅ……む……ふ、舐めるのは、ふみゅ……負けないんだから……」

 マサヒコは乳房の大きい小さいで差別をしない。
胸だけではない、身体のサイズの違いで、注ぐ愛の量を変えることは、絶対にしない。
それはマサヒコにとって特別意識するようなことではなく、当たり前のことである。
リンコの小さい胸も、アヤナの大きな胸も、彼は変わりなく好きであり、無論皆もそれをわかっている。
アヤナなどはマサヒコに好きと言われたおかげで、コンプレックスを解消出来た程だ。
「的山……うっ」
「れろ、ぺろ……っ、くむ、あむ……ちゅ、っ」
 袋の裏から亀頭の先まで、舌先で丹念に舐め上げ、竿を含み、唇と口腔で強弱をつけならがら吸う。
さすがにリョーコレベルの超絶技とまではいかないが、それでも相当なフェラチオのテクニックであるのは間違いない。
「もう出そうだ、的山っ……!」
「くぷ……ぅ、ぷは、いいよ、お口に出して……小久保君」
「くうっ、的山っ!」
「ん、あ……!」
 亀頭の一番先端に、リンコが前歯を優しく当てたその瞬間、マサヒコは限界を越えた。
リンコの口の中へと注ぎこまれていく、マサヒコの精液。
あまりの勢いに、幾筋か唇から零れ、頬とメガネのレンズに飛んで白い線を描く。
「……んん、ん」
 リンコは掌で唇を押さえ、次いで顎を反らしてマサヒコの精液を喉の奥へと流し込んだ。
最初に掌で口を塞いだのは、精液の味と臭いに嫌悪を覚えたわけではなく、量が多くて押さえないと漏れてしまいそうだったからだ。
「……くは、ぁ」
「的山……」
「ん……小久保君の、凄く濃いね……けほっ、喉に絡みついてくる」
「無理しなくて良かったのに」
「無理じゃないよう、けほ、飲んであげたかったら、飲んだんだもん」
 先程までの妖艶さはどこへやら。
マサヒコの言葉に、口をヘの字に曲げてリンコは拗ねてみせた。
「的山、お前……可愛いな」
 そんなリンコをどうしようもなく愛しく思い、マサヒコはその細く小さな身体をそっと自分の腕の中へと引き寄せた。
「あ……」
 マサヒコの体温が、身体の奥へ奥へと深く浸透していくようなその感覚。
リンコはそのあまりの心地よさに、一瞬ふっと気が遠くなった。
「的山……」
「小久保君……」
 性豪と評してよいマサヒコだが、その一番の武器はテクニックでも体力でもペニスの大きさでもない。
優しく包むような抱擁、それがマサヒコ最大の『性技』である。
マサヒコの胸と腕の中に抱かれた者は、それだけでエクスタシーを感じてしまう。
「的山、いいかな」
 抱きあって数分、マサヒコはリンコに交合の伺いを出した。
股間のそれは、すでに固さと大きさを回復させている。
「うん……」
 もちろん、リンコに嫌も否もない。
「あのね、小久保君」
「ん?」
「後ろから、きてほしいの」
 男と女が繋がる際、色々なスタイルが存在する。
どれが最も感じやすいかは人によりけりで、マサヒコはどれが特別というのはないが、女性陣はそれぞれに好みの体位がある。
責めよりも受けのタイプで、しっとりねっとりと愛しむようなセックスが合うミサキとアイは正常位、
表面は強気だが被虐気質を秘め、溺れるようなセックスを望むアヤナは騎乗位をどちらかというと要求することが多い。
そしてリンコはと言えば、あそこがやや下つきなこともあってか、後背位がお気に入りになっている。
「わかった」
「あ、きゃん……っ」
 マサヒコはコロリとリンコの身体を転がしてうつ伏せにさせた。
「的山、腰を上げて」
「うん……」
 マサヒコに言われるままに、リンコは膝をたて、お尻を突き出すような体勢を取った。
フェラチオ前のマサヒコの愛撫と、ついさっきの抱擁によって、そこは淫らな液がトロリと溢れるくらいに潤っている。
「いくよ、的山」
 マサヒコはリンコの腰を掴むと、ペニスの位置を調整して挿入への狙いを定めた。

「小久保くぅん……お願い」
「ああ……っ、くっ!」
「あ、あ、入って、あ、ああんんっ!」
 ゆっくりと、だがしっかりとマサヒコは怒張をリンコの中へと押し進めた。
身体の小さいリンコのそこは、やはり応じて狭く、キツい。
「く、う……!」
「あ、あ……奥に、奥に当たってるよう……」
 時間をかけて、マサヒコはリンコの最深部へと到達した。
そこで一度動きを止め、呼吸を整える。
何せその締め付けが半端なものではないため、下手に動けばすぐに達してしまいかねない。
「こ、くぼくん……う、ごいて、強くして……」
 マサヒコの気持ちを知ってか知らずか、激しい出し入れを求めるリンコ。
四人の中では性に一番抵抗が無いだけに、ノッた時は誰よりも底無しに悦楽を欲しがるのだ。
「でも、すぐ出ちまうかもしれないって」
「んん……いいよ、いつもみたいに、何度でも中に出して……あんっ」
 マサヒコは並の男では足元にも及ばない程の持続力と回復力を持っているが、
どちらかと言うと後者の方が彼の武器である。
何度放っても衰えることも萎えることもないマサヒコは、まさに絶倫と評して良いだろう。
「わかった、じゃあいくぞ」
「うん、うん……!」
 マサヒコは頷くと、ゆっくり腰を引き、次いでズンと強めにリンコの秘所をえぐった。
その勢いに押され、リンコの身体が一瞬僅かに浮く。
「ふあああ……っ!」
「悪い、ちょっと乱暴だったか?」
「う、ううん……そんなことない。もっと、もっと激しくしても、あふっ、いいよ……」
「的山……」
 激しくしてもいい、という言葉を受けたものの、マサヒコはフルパワーを使うつもりはない。
アイやアヤナを相手にする時のように、120%全開の力で彼女を抱くわけにはいかない。
リンコ、そしてミサキもそうだが、身体が細く小さい相手には、それなりのやり方というものがある。
セックスが身体を激しく重ね合わせる行為である以上、相手の体力と体格の限界を越える抱き方は避けた方が賢明である。
女性が性交時に悦楽を感じて「壊れちゃう」という表現を使う時があるが、本当に壊れてしまってはシャレにならないというものだ。
「あっ、あっ、ああっ……! 届いてる、届いてるぅ」
「的山、すごくキツい……」
 ただ、全力を使わないからと言って、それは愛情の差にはならない。
要は相手のことを思いやったセックスをする、ということだ。
アイとアヤナは確かに大柄ではないが、胸やお尻が豊かで、
つまりはマサヒコの暴風を受けとめるだけの肉体的な器がある。
一方、リンコとミサキの細身の身体では、暴風を受けとめ切れない。
だからやり方を調節する、それだけの話なのだ。
「あふ、あふぅっ、小久保くぅん、小久保君っ」
「締め付けてくるよ、的山のアソコが……くうっ」
「おっきい、おっきいよぉ、小久保君、すごいよぉ」
 もっとも、今でこそ動きをコントロール出来るマサヒコだが、
皆と関係を持ち始めた頃は、まだまだ経験不足で性欲を叩きつけることしか出来なかった。
それこそ、足腰立たなくなるまでひたすら吐き出し、求めるセックスを繰り返した。
リョーコの直接的指導を受けなければ、もしかすると誰かの身体を壊してしまったかもしれない。
「的山、的山……」
「ああん、ダメダメ……ェ、くる、もうきちゃう、イッちゃうよぉっ!」
「俺も、もう少し……っ、で、イキそうだよ……んっ」
 湿った身体がぶつかりあう音が、ベッドの軋みと重なりあう。
マサヒコはラストスパートをかけ、挿入の動きを強くする。
リンコのことを思ってセーブをかけているが、普通の男を基準にすれば十分に激しい出し入れである。
「あっ、あああっ! こくぼくっ、んん、あっ、あ、う、あっ、あああっ!」
 絶頂を迎え、リンコの身体がぐいっと反り返った。
顔が跳ねあがった時の勢いで、メガネが外れて宙を舞い、ベッドの横へと落ちていく。

「くっ、的山、イクぞっ!」
 支える腕の力を失い、ベッドの完全に突っ伏したリンコを、マサヒコは責め立てる。
自身の精を解放するために。
「まと、やまあっ!」
 首筋に走る、ビリッとした電流をマサヒコは覚えた。
それは、背骨の上を通り、腰から袋、竿へと伝わっていく。
「く、っ……」
 たっぷり十秒、マサヒコはリンコの子宮へとほとばしらせた。
そして、自分が出した精に押され、ずるりとペニスを引き抜く。
「ふうう……」
 マサヒコはリンコに負担をかけないよう、右側へと身体をずらして横たえた。
呼吸こそ荒いものの、肉体には張りがあり、まだまだ余裕を残しているといった感じである。
一方のリンコは、官能の頂点に放り出されて、失神状態になっている。
四人の中でもっとも敏な感覚を持っている彼女は、オーガズムを迎えると気を失ってしまうことが、よくある。
「的山……」
 マサヒコは手を伸ばすと、リンコの艶やかな髪を指で梳いた。
汗とそれ以外の液体で、やや湿っているものの、それでもほとんど抵抗なく、指の間を髪が流れていく。
「……」
 リンコは目を開かない。
目蓋と頬の辺りが小さく震えているのを見ると、まだ絶頂の余韻から抜けきっていないのがわかる。
少なくともあと数分は、このまま蕩けた夢の中にいることであろう。
「ん?」
 マサヒコはベッドから降りた。
さっき飛んだメガネが、床の上に転がっているのを見つけたからだ。
手を伸ばして拾ってみれば、レンズに口でしてもらったときの精液の残滓がうっすらと付着していた。
「潰れなくてよかったな」
 そのメガネを、マサヒコはサイドテーブルにあったウェットティッシュで丁寧に拭くと、
同じくサイドテーブルに置いた。
リンコが目覚めれば、第二ラウンドに突入することになる。
ベッドの上で愛しあっている以上は床に二人して転げ落ちることはないだろうが、
万が一のために押し潰さないところに置いておくべきだ、と思ったのだ。
もしメガネが壊れたら、それこそリンコは部屋から一歩も出れなくなってしまう。
まあ、そうなればなったで、マサヒコがまたおぶって家まで連れていってあげるだけのことだが……。
「ん、んん……」
 意識が戻りつつあるようで、リンコが小さく呻き、身を捩った。
「的山?」
 マサヒコは声をかけたが、反応はない。
まだもうちょっと、復帰には時間がかかる様子である。

「ふふ……」
 今日は小久保家は両親が不在。
まだ午後の七時を回ったところで、時間もたっぷりある。
もしかするとミサキなりアヤナなり、アイなりが不意に訪ねてくる可能性もあるが、
リンコとのマンツーマンのセックスをあと最低数回は楽しめそうだった。
「う……ううん」
 と、ここでリンコが目覚めた。
上半身を起こそうとするが、腕が萎えているのか、なかなかうまくいかない。
「的山、起きた?」
「え、あ……小久保、くん? あ、れ……どこ……?」
 リンコの視力はかなり悪く、裸眼ではほとんど視界に像を結べない。
顔を動かしてマサヒコの所在を探るが、すぐ近くにいるのに気づかないでいる。
「ここだよ」
「あ、小久保くぅん……」
 マサヒコはまたベッドの上にあがると、リンコをそっと抱きしめた。
汗に濡れて光る肌が、何ともエロティックな感じだ。
「あ、ん……」
「んん……」
 顔を寄せ、マサヒコはリンコの唇を吸った。
リンコもそれに応えて、マサヒコの首筋に腕を回して吸い返す。
「小久保くぅん……ちゅ……っ、ぷ……」
「的山ぁ……ん、んん……」
「メガネがないと……んふ、よく見えないよぉ……こんなの……」
「目隠しプレイと思えばいいんじゃないか?」
「んぁ……っ、小久保君、ひどい……」
「はは、ゴメン」
 そして、マサヒコはゆっくりとリンコを押し倒していった。
二回戦を始めるために。


   F     I     N

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

Wiki内検索

どなたでも編集できます