○月×日
私にはひとつだけ大きな悩みがある。それはこの貧乳だ。
毎日かかさず牛乳を飲んで、バストアップ体操をしていたというのに…なんでこんなことに。
いい意味でスレンダーと言われるのかも知れないが、それでも私にとってはコンプレックスのひとつ。
何より私が官能小説家を目指す上で、ある程度胸は必要なのだ―と思う。
例えば自慰行為の際に胸をいじるシーンを書くときに、
自分の貧乳をいじってもイメージが湧かず、大して参考にならないのだ。
巨乳の人は自慰で自分の乳首を舐めたりするそうだが…正直そんな事ができる巨乳がうらやましい―


△月■日
今日から新しい高校に転入した。新しい生活に胸が躍る…いえ、躍らせる胸もないですけど。
その小笠原高校で、昔幼稚園で同じ組だったカナミちゃんと再会した。
嬉しい事にカナミちゃんの胸はそんなに成長していなくて、ぶっちゃけると貧乳。
同志だ。やはり本当の親友とは、離れていても心だけでなく、身体でも繋がっているということか。
そういえば幼稚園時代に胸のことでカナミちゃんと話していた事があったような…
あの頃は「胸が大きくなりすぎても困る」って話してたっけ…
…あの時はまさかこんな事態になるとは思ってなかった。
ああ、タイムマシンがあるなら、今すぐにでもあの頃の私を諭しに行きたい。
「今のうちから精一杯の努力はしましょうね」って…

そして…カナミちゃんの親友に一人許せない人がいた。名前は矢野アキさん。結構な巨乳だ。
正直ちょっと憎たらしい。別にアキさんが嫌いではない…むしろいい人だ。
でも私には、その自己主張するかのような巨乳が憎くてしょうがない。ちくしょう。


◎月▽日
今日は水泳の授業があった。
アキさんが水着姿になると、ただでさえ大きな胸がより強調される。うらやましい…
…ちなみにカナミちゃんは水着の下に極厚パットをつけていた。
胸のふくらみが、どう見ても明らかに不自然だからすぐ分かってしまった。
バレバレですよ、カナミちゃん…


×月▲日
今日教室に入ると、アキさんがなにやら悩んでいるようだったので、親友として相談に乗ってあげた。
―話を聞くと、なんでもまた胸が大きくなってしまい、新しいブラを買わないといけないらしい。
それで今月は出費が増えてしまい、金欠で苦しいのだそうだ…

…なめとんのか。胸があるだけでも感謝すべきなのに!
しかも今も成長している?こっちが分けてもらいたいぐらいだ。
貧乳の辛さを分かっていない。なにをほざいているのか!!


○月◎日
廊下でアキさんとぶつかった。せっかくなので大げさに吹っ飛んであげた。
…ちょっとむなしい。


□月△日
アキさんのYシャツのボタンが、私の目の前でちぎれて飛んでいった。
「今も胸が大きくなっている」と言うのはやはり本当らしい。
しかし…これは私に対する嫌がらせにしか見えない。なんて不公平な世の中なのだろう。
むかついたので、これからはもっと胸の事でアキさんをいびってやろうと思う―




「な…なに、これ…?」
ある日の放課後、マナカの机の上に置いてあったメモ帳をなにげなく手にとってしまったアキ。
そこには上記のような恨み節が延々と綴られていたわけで。

「…見なかったことにしよう…」
そう言って、アキはそのメモ帳を静かに閉じて机の上に置き、急いで立ち去ろうとした…
…しかし。
「あ…マナカ…?」

「アキさん…見てしまいましたね?」
そこには今にも泣き出しそうなマナカが立っていた。
「あ、あの…マナカ…勝手に見ちゃって…なんつーか…ごめん。
…まさかマナカがこんなに恨んでるなんて知らなくて…」
「なにを謝ってるんですか?別に私はアキさんを本気で恨んでなんか…ただ…胸が憎いだけで…ううっ」
「いや…ちょっと…?やっぱり泣きそう…?」

「な、泣いてなんか…うわあああん!!やっぱり巨乳なんて大嫌いだー!!
こうなったらマリア先生にアキさんの性癖を全部教えてやるにゃあ!!」
泣きながら教室を飛び出すマナカ。それに驚いて追いかけるアキ。
「えええっ!!それだけはやめろお!!
…つーかアンタそんなキャラだったっけ…って待てマナカーッ!!」

そんなこんなで小笠原高校の一日は終わりを告げるのであった。

(おしまい)

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