「じゃあ、タカトシ君って呼ぶね。人の名前は下の名前を呼称にした方が呼びやすく出来てるんだから!!」
4月、同じクラスになった明るさを振り撒くポニーテールのクラスメートに言われた言葉。
初対面で馴れ馴れし過ぎじゃね?なんて思いながらも基本受け身な自分に抗う術など無かった。
なし崩し的に呼ばれるようになった愛称。それでも頑なに自分は彼女の事を苗字で呼び続けた。
照れ臭かったから、今までそんな風に女の子を下の名前で呼び捨てにした事など無かったから。
そんな事など委細構わずに彼女は自分の名前に愛称を込めて呼び続けてくれた。"タカトシ君"と。
いつからだろう。口では苗字で彼女を呼びながら、心の中で"ムツミ"と呼ぶようになったのは。

………………………………

文化祭が休日に食い込んで行われたが為の、振替休日が開けた火曜日朝一番。津田タカトシは重い足取りで廊下を歩く。
文化祭が終わり最初の登校日。それはつまり約束を果たさなかった自分自身が咎められる日。
(ムツミに悪いことしちまったな…)
そんな事を心では思う。多分彼女は仕方ないよーだなんて笑うだろう。その姿は容易に想像できる。
ニコニコと人の良さそうな笑顔と、人懐っこそうな柔和な目つき。それからポニーテールを文字通りに揺らしながら。
彼女は文化祭で約束を果たせなかった自分を許すだろうと思える。それが彼女の性格、魅力だから。
快活で無頓着。それから警戒心なんて無くて、人懐っこい。でもけして愛想を振り撒いてるわけではない自然体。
そんな彼女に惹かれている自分自身が、彼女との約束を果たせなかった事への後悔、自責。それらが自然と足取りを重くさせた。
それでも、運命の時は訪れる訳で、気付けばタカトシは自らの在籍するクラスの前までやって来ていた。
普段通りにクラスのドアを開ける。ここへ至る道程の足取りは重くとも、生活のリズムは変わらないのだ。
「おはよー。タカトシ君。」
タカトシがドアを開くとすぐにかけられる声。そこには普段通りな、タカトシが心惹かれたムツミの姿。
先程足取りを重くするほど気に病みながらも、朝一番で自分の好きな女子から声をかけられればそこはやはり嬉しいもの。
安堵と歓喜。それらを入り混ぜながらタカトシは挨拶を返す。
「よぉ、おはよう三葉。」
そう言うとタカトシは自らの席を一直線に目指す。窓際一番後方。そこがタカトシの定位置だ。
ドアからの道すがら、その後にムツミが続く。別にそこで引き止めて話などはしない。
そこでせずとも、ムツミはタカトシの一つ前の席。席に腰を落ち着けてそれから話す方がリラックスできるのだ。
「文化祭お疲れ様〜。生徒会役員大変だったでしょ?」
案の定、タカトシが席につくと、身体を90度回転させてムツミが話し掛けてくる。
話題は先週末に行われた文化祭。クラスのそこかしこで話題に上がり持ち切りである。
「あぁ。前日準備から借りだされっぱなしだったよ」
苦笑しながらタカトシが答える。
「へぇぇー。しかも当日も仕事は有りでしょ?大変だ−。」
タカトシの言葉にムツミは盛大なリアクション。ころころと変わるムツミの表情は見てて飽きない。
「あぁ。お陰で当日寝ちまった…その、すまん、行けなくて。」
話題の流れで、さりげなく、ほんとにさりげなーく、先程から自分が気にかけてたことを話題にあげるタカトシ。
「ううん。大丈夫。気にしないでよ。」

手を顔の前でフルフルとふりながら答えるムツミ。
「そんな事があったなんて知らなかったし、こっちこそ無理言っちゃったみたいで…」
「おいおい、三葉がそんな事言わないでくれよ。寝ちまった俺が悪いんだから。それで、どうだった?」
申し訳なさそうにしだしたムツミをタカトシが諌め、話題をふる。
話題をふられ、一瞬申し訳なさそうにしてたムツミも普段通りに戻り、身振り手ぶり話をしていく。
やれ、普段メガネをかけてる子が対戦相手だっただの、なぜか空手技より寝技の方が巧みだっただの。
そして、思い出したようにタカトシに言う。
「そうだ。今度は英陵高校の柔道部と練習試合が決まったから応援来てね。」
「いつ?」
「今週の日曜日。」
「う゛、生徒会あるかも…」
「ダメだよちゃんと見に来てくれなきゃ。こないだ来てくれなかったから、罰ゲームね。」
「罰ゲーム?」
「そ。タカトシ君には応援団やってもらうから。」
ニコニコと普段と変わらない表情のムツミ。生き生きと楽しそうにタカトシとの会話を紡いでいく。
「私設三葉ムツミ応援団ね。」
そう言ってムツミはタカトシに笑顔を向けた。

………………………………

結論から言うとタカトシが柔道部に『私設三葉ムツミ応援団』として駆け付けるのは十分に可能だった。
ただし、「ただし」の条件付きでだ。
この日は朝から生徒会役員の仕事があり登校。全てが終われば晴れて自由の身となる。
言ってしまえば、仕事が終わらなければ駆け付けることなど到底願わない。
そしてこういう状況下において、大低の人はバッドラックに見舞われる。
よりにもよって今日の仕事量は多い。考えてみればそれも当たり前の事。
なにせ、年内最後の大型活動である、2学期の総括なのだから。
その仕事の内訳は文化祭の記録整理、反省、改善点の記録、予算配分に向けた各部活動の記録など。
4人で行うには一人頭での分配量はかなりのものに及ぶ。時間制限のあるタカトシにとっては酷ではある。
それでもやるしかない。生徒会役員としてこの場にいる以上は自らの仕事に責任を持ち、やる以外に選択肢は存在しない。
あとは己の力量次第。タカトシとしてはムツミの下へ駆け付けたいのだ。
それは断れなかった義務感でもなければ、前回すっぽかした罪悪感でもない。
自らの意志で。惚れた者の弱みであるとも言えるかもしれない。好きな女の子からのお誘いを無下に等出来ない。
タカトシの思考はそれに埋め尽くされる。

『自分の為の私設応援団』よくよく考えてみれば恥ずかしいことを言ったものだ。
練習試合の会場でウォーミングアップをしながらムツミはそんな事を考えている。
勢いで、口走ってしまったとは言え、一度口をついて出た言葉は取り消せはしない。
前回文化祭の招待試合を見に来てもらう約束は果たされなかった。
結果オーライでそれはムツミにとって良かった事だった。
あの日周りからそそのかされ、タカトシの出辞を気にかけ、注意力も散漫だった自分など見せられなかった。
自分から望み決めた試合。主将の大役も果たせずに敗慘した姿なんて見られたくなかったから。
悔しさに涙を堪えながら心のどこかでタカトシが来てたらこうだったとか考えてしまった自分が情けなかった。
ムツミは自分自身タカトシの事が好きだと気付いている。
タカトシを目で追う自分の無意識下の行動。タカトシを思うと切なくなる自分自身の心。
最初出会った時、下の名前で呼ぶことを宣言した。最初は平気だったはずなのに最近"タカトシ"と声に出して呼ぶ事にかかる甘い響き。
全てが自分自身の恋心を証明していた。


………………………………

「大将、前へ。」
柔道とは大変スピーディーなスポーツだ。早ければ一瞬のうちに背中を畳に叩き付けられて勝敗は決してしまう。
よく陸上のアスリートなどは一瞬の勝負のために辛い練習に耐えるという。
水泳競技などの己を鍛え、自己のベストへと挑戦する競技もまたしかり。
そういう観点でいえば柔道も確実にそちら側へと分類されるであろう。
諸々の事情も加味し、試合が始まったのが3時。3時半を前にして早くも大将戦。
タカトシは未だに現れる気配は無い。
柔道の試合は5分以内。技ありや効果、指導などをポイントとして勝敗を決する近代柔道において、それ以上の遅延などほぼ確実にありえない。
また、礼に始まり、礼に終わる。と言われるほどに礼儀を重んじる競技。見え見えの時間稼ぎなどは不義に当たってしまう。
退く道はなく前に進むだけ。その道に身を投じた以上は恋する女の子の乙女心など関知する謂れは無いのだ。
そのような状況下で自然とムツミは焦れてくる。注意力も散らし、動きは緩慢。
相手側はそれが手に取るようにわかる。勿論その所以に関してまでは知らない。
しかしながら、どちらにせよ、これはチャンスなのだ。
大将を張るほどの猛者が試合に集中出来ていない。その隙を一気呵成についてくる。
手数は多く、積極的にムツミの襟を掴みにくる、足の揺さぶりも頻繁に行われる。
それに対しムツミも前に出て掴みにいくも嫌われたり、そのまま巻き込まれて投げられかけたり。
集中力を切らした状態では"一歩"が出ない。アスリートの勝敗を決める一歩が。
彼女が気にかけるタカトシが現れる気配はなくムツミ劣勢が続く。
1分、2分…人間の体感で待っている時間は長い。スピーディーな柔道というスポーツの中でムツミの意識だけが引き延ばされたような妙な感覚。
(あ、やばい…)
瞬間的に相手がムツミの足に自らの足を絡めにくるのがわかる。だが、その時にはもう遅い。ムツミの身体が宙に浮く。
「効果!!」
無情にも響く審判の声。これで正真正銘首の皮一枚。技ありは愚か、効果、指導も許されない。
(逃れなきゃ!)
しかもピンチは続く。投げ飛ばされて逃れた。それはつまり圧倒的に不利な状態で自分が寝転がっているということ。
この態勢から寝技に持ち込まれての15秒で負けは決まってしまう。
タカトシが来るまでに決着がついてしまう事だけは絶対に避けなければならない。
咄嗟に身体を丸めるムツミ。背後から差し込まれた手はムツミを返しにかかる。
それでもムツミは動かない。懸命に身体を丸め、「待て」の合図を待つ。
人を待ち、合図を待つ。二重苦の中でムツミは耐える。
"ガラガラガラ……"
「待て!!」
待ての合図がかかるのとほぼ同時。いや、こちらの方が先だろうか。ドアの開く音がする。
ドアが開いたタイミングはちょうど会場が制止したタイミング。視線はそちらへと集まる。
(……!!タカ…トシ君…)
そこに現れたのはタカトシ。三葉ムツミ私設応援団。
ムツミの目に光が灯る。
再開と共に一歩前に出て来る相手。その光景の後綺麗な弧を描いて宙に浮く相手の姿をタカトシは確かに捉えた。

………………………………

「おめでとう、三葉。」
試合が終わり英陵高校は引き上げ、ムツミを茶化しながらさっさと撤収した桜才学園の面々に残された2人の間の最初の言葉。
労い。私設応援団なんて勿体付けたような立場でありながら応援で活躍は出来なかった。
それが胸に引っ掛かりを残すのが嫌で真っ先にタカトシはそれを口にした。
「いやいやー、さすがタカトシ君だよー。」
タカトシが予想もしていなかった言葉をムツミは笑いながら返す。
「ヒロインはヒーローのピンチに現れる。だからそんなお約束を守った、タカトシ君はさすがってこと。」
「逆じゃねそれ?」
タカトシは苦笑しながら返す。そんなのはお構い無しにムツミが貼付けているのはいつもの笑顔。
タカトシが惹かれた、今となっては明確に恋をしている笑顔。
「ヒーローは私でしょ?だからこれで正解なの!!」
揺れるポニーテール。その様は喜びを体言しているかのように活発に揺れる。
夕方に差し掛かり、日が柔道場を赤く染めるのも気にせずに普段のようにおしゃべりをまじわす。
思ってみればこれほど長い時間互いに話をするのは初めてかも知れないと言うほど夢中に。
「ほんとはね、言って無かったことがあるんだ。」
改めて、話題を変えますよって、そんな意志を込めてムツミが言う。
「こないだの招待試合負けちゃったんだ…」
確かにムツミは招待試合について勝ったとは言っていない。
しかし、負けたとも聞いていないタカトシは驚きを隠せない。
「そうなんだ…本当にこないだは行けなくて…何て言うか申し訳ない。」
「そんな、謝らないで。タカトシ君は関係ないよ。私のせいだから。」
いつぞやのように顔の前で手を振りながら否定するムツミ。
「あの日ね、皆から唆されたの。もう告白しちゃえって。」
「!!」
ムツミの言葉にタカトシは驚愕する。これは期待しても良いのだろうかと。
「そんな事言われたら、すごくタカトシ君の事を意識しちゃって。」
馬鹿だよね−。なんて一切言葉とは結び付かないような表情でムツミは言う。
「結局、そのまま…ほんとはね、今日もハラハラしてたんだ。このまま来ないんじゃ無いかなって…」
自らの心情の吐露であるはずなのにすらすらと言葉はムツミの口をつく。
周りに囃し立てられそれを気に止め、精彩を欠いていた自分自身を嘲笑うかのように。
今なら伝えられる…ムツミにはそう思える。
「私ね…タカトシ君の事が好き。」
今の自分がどんな顔をしているかなんてムツミにはわからない。
やっと言えた一言。やっと踏み込んだ一歩。タカトシはそんな自分から目を逸らさない。
そんなタカトシにつられてムツミの視線にも真剣さが宿る。
「…どうかな?」
「ムツミ…」
タカトシが心の中でしか呼ぶことの無かったムツミの名を呼ぶ。
ムツミが一歩踏み込んだが故に引き出したタカトシの本音。
下の名前で呼ばれたことでムツミの顔には朱がかかる。
「俺もムツミの事好きだよ。」
「タカトシ君…嬉しい!」そういってムツミは笑う。先程の告白前後から真剣な表情を作ったムツミの久しぶりの笑顔。
やはり、この笑顔に自分は惚れたんだなとタカトシは思う。それほどの胸の高鳴り。
気付けばタカトシは自然とムツミを抱きしめていた。

………………………………

「ね、キスしよ…」
告白をし、受け入れて、抱き合った態勢のまましばらくの時間を過ごした2人。
先に口を開いたのはムツミの方。キスのおねだり。
「ん。」
ムツミの言葉に短く相槌を返すとタカトシはムツミの唇に自らの唇を近づけていく。
「ちゅ……あ、ふん、ちゅ……ちゅ…」
スポーツをしているとは言え女の子。身嗜みや手入れをしっかりとしている身体からは甘いニオイ。
柔道の試合で汗はかいたであろう身体はしかしながら不快な臭いは発さずに、その甘い臭いをより強くする。

合わせた唇はしっとりと柔らかく押し付ければその分ひき、離せば追い掛けてくる。
しかしながら弾力は失われておらず、心地よい。妙に冷静にそんな事をタカトシは思う。
"ニュルリ"
そんな事を考えていたタカトシの口内に不意にムツミの舌が侵入してくる。
「ん……ちゅぷ…ふ、は、っ……は、ん、れる…」
なすがままタカトシの舌はムツミの舌に搦め捕られなぶられていく。
興奮というよりかは息苦しさ。その言葉が的を得ている状況でムツミは顔を紅くしている。
「ふ、ぷちゅ、れる……ん、ちゅ、ぷは」
しばらく後、ムツミが顔を離す。
突然の出来事にタカトシは呆気に取られている。それでもタカトシは言う。
「あの…ムツミ、舌?」
微妙に回り切らない頭で要点のみしか言葉として出ていかないのはご愛敬だ。
「ん〜、だって恋人同士のキスは舌を絡めるものだって聞いたんだけど?」
「それ誰から聞いた?…いや、良いや。」
小首を傾げながらそんな事を言うムツミ。タカトシはツッコミをいれかけるも、聞くまでも無いことに苦笑する。
「ね?もっかい。」
「ああ。」
そう言ってムツミが顔を近づけてくる。
それをタカトシが受け止めると、今度は最初からムツミが舌を差し入れてくる。
それを受け止め、タカトシは舌で押し返す。
不意打ちだった先程と違い、今度は来ると分かっているのだから対処できる。
「ぷちゅ…ちゅ、ん……は、」
何度も何度も舌を絡める。時には口内をなめ回し、純粋に舌同士を絡め、自然と唾液は互いの口内を行き来する。
その味は不快ではなくて…むしろ興奮でタカトシの脳を溶かし、下半身に血を集める。
「は、……ぷちゅ…ムツミ…その、俺…」
「ん、どしたの?」
タカトシの事情など知るよしもなくムツミは返す。
「その、シタい…」
「シタい??シタいって何を?」
当然のムツミの問い。ピュア娘ムツミにこれだけで伝わるはずもなく。
「いや…その、セックス……」
「セッ……」
今度は顔を紅くするムツミ。行為自体は理解しているらしい。
「それは、恋人同士ですることなの?」
「うん…まぁ、普通…」
わからないからこそ口をつくムツミの問いにタカトシは簡潔に答えを返す。
「ここで?」
「うん……嫌か?」
「ううん…タカトシ君がしたいなら…ところでどうすれば良いの?」
首を横にふりながらムツミが言う。ただ、その過程がわからない。
学術的な知識としては知っていても、いざとなると全くわからないムツミだった。
「大丈夫、俺が…」
「うん、わかった。じゃあ、お任せするね。」
タカトシの言葉にムツミは頷く。

………………………………

ムツミを畳の上に横たえ、その傍らに寄り添う形でタカトシも座る。
「ちゅ、……ん、は、ぷちゅ…は、」
本日3度目のキス。先ずはキスから。別にルールではない、ルールではないがタカトシはキスから始めていく。
「んん…ちゅ、ちゅぱ…ん、ふ…」
キスをしながらタカトシが手を動かしはじめる。柔道着の襟辺りから手を入れて、ムツミの脇腹辺りを撫でるように愛撫。
「ちゅぷ……ふ…、ん、ぷはっ、く、くすぐったい〜、ん、ちゅっ、れるっ…」
初めての愛撫を本気でくすぐったがるムツミ。むず痒さを訴えるムツミの口をタカトシが塞ぐ。
ムツミの舌を自らの舌で搦め捕りながら執拗に愛撫を繰り返していく。
「ん、ふ…ぷちゅ……んん、あ、ふ、ん」
その愛撫に若干だが、ムツミの吐き出す吐息の色が変わりはじめる。
頃合いかなと思ったタカトシは手を北上させ、インナーのシャツ越しにムツミの乳房に触れる。
「んん、ふぁ、ん、なんか変…」
ムツミはタカトシの指の動きに感覚が変わってきた事を示唆する。
ムツミの乳房はほどほどに大きくて、柔らかい。その感触を手に馴染ませるようにタカトシは夢中でムツミの胸を揉んでいく。
「はぁっ、んん……ふ、ん、あっ……っ」
ムツミの吐息に熱が篭っていく。確実にムツミが性感を感じ始めているとタカトシは思う。
そう思うとタカトシは服越しに触れている事にもどかしさを覚える。
(直接…)
直接触れたいという欲望がタカトシの中で大きくなる。
「……っんん!……く、はぁ、ん…ふ……っ」
ムツミの艶声にタカトシの理性は限界だった。ムツミのシャツを捲りあげる。
「……………」
そして固まってしまう。その美しさに。
年頃の女性の乳房など見るのは始めてなタカトシ。
整った形で程よい大きさのムツミの乳房は重力の干渉を受けず、ツンとそのままの形のままでタカトシの眼前に現れる。
そして、同時に…
「ブラジャーは?」
あるだろうと思っていた物がそこに無かった事への驚きが口をつく。
「んん、柔道着の時は気になっちゃうからしてないよ、ちなみに下…!ううん、何でもない!」
途中まで言いかけて辞めるムツミ。なにか地雷的な言葉がこの先に含まれることがタカトシには容易に読み取れる。
しまったみたいな表情で目を泳がせるムツミ。困惑した顔もやっぱり可愛くて、タカトシに悪戯心が生まれる。
下"も"なのか?下"は"なのか?少し冷静に考えれば答えはでようもの。
後者ならば何も言葉を途中で途切れさせる等と自滅する必要は無いのだから。
つまり、ムツミは下"も"つけていないということになる。
そう考えが至るとタカトシは右手を柔道着のズボンの中に滑り込ませていく。
ムツミの困った顔がもっと見たいのも本音だし、興奮に負けたのも本音。なんて心の中で自らに言い訳をしながら。
「ちょっ、タカトシ君ん、あぅ……っ」
タカトシの指先滑り込むと直で伝わるムツミの淫毛の感触。
そこを抜けて一気にムツミの秘唇まで手を進めると伝わってくるのは、僅かばかりの湿り気。
まだ完全に秘唇は開ききってはいないが入口に愛液をたたえ始めている。
「あっ、ふぅ……ん、っあ、あぅ、んん……っ!」
その愛液を指先に塗りたくるようにタカトシが手を上下させるとムツミが声をあげる。
ムツミの秘所を右手で弄りながら、左手で乳房を揉みしだく。
「んん……あっ、ふあっ、ん、あっ、ああ、あぅ、……」
ムツミはより一層声を大きくする。同時に秘所からは更なる愛液がタカトシの指に絡み付く。
(もしかして、胸弱いのかな?)
ムツミの反応を見るにそれはまず間違いはなさそうである。
近道としてタカトシは弱いところを責めることを選択する。
しかしながら、右手はムツミの秘所、左手はムツミの乳房。空いてる場所は少ない。
(それなら…)
タカトシが開いたムツミの乳房に自らの顔を近づけていく。
「んん、あ、ふぅ……っ!タカトシ君、ん、赤ちゃんみたい……っ!」
自らの乳房に顔を近づけて行くタカトシをムツミが茶化すが、
「あっ、ふあっ、あ、あっ、……それダメ!!……っ、あっ!」
タカトシの舌がムツミの乳首を転がしだすと途端に余裕もなく喘ぎ声をあげる。
その反応が良好と見るとタカトシは両手、舌を用いて執拗にその責めを繰り返す。
気付けばムツミの秘唇は口を開けダラダラとタカトシの指に自らの愛液を振り撒きまくっている。
「あっ、っあ……ん、ふ、っあ!!それ以上はダメ!!んん……ふぁ、何か、来ちゃう……っ!」
ムツミが必死に何かを訴えてもタカトシは愛撫を続行。
ムツミの声はどんどんと切羽詰まっていく。
「ん、あっ、ふあっ!あっ!……っ、もうダメ!!…あっ!、んん、私、限…界……っ!!」
全身を震わせながら自らの背骨を一直線に駆け抜けた快楽に、ムツミが声をつまらせる。
ムツミの異変に気付いたタカトシが手を止めるとムツミは蕩けた目でタカトシを見つめる。
息を整える風なムツミが絶頂に達した事は直感的にわかる。先程まで直で触れていたからその濡れ具合も。
これぐらいまで行けば大丈夫なのか?
タカトシの中で疑問が広がる。だが、これ以上の状況になるかもタカトシにはわからない。
そして、先程まで散々ムツミの身体をねぶっていた自身の揚ぶりは限界近くまで来てしまっている。
蕩けきった熱っぽい瞳で見詰めてくるムツミに急かされているようで…タカトシは口にする。
「ムツミ、良い?」
息も絶え絶えにまだ時折身体を震わせながらムツミは二度三度首を縦に動かす。
頷くムツミにタカトシが柔道着のズボンを脱がす。脱がした瞬間に広がった独特の匂いにタカトシはクラクラとしてしまう。
直で見たそこは充血し、愛液を流す淫靡なもの。
一つ唾を飲み込むとタカトシは自らのペニスを露出し、ムツミの膣口にあてがうと体重をかけていく。
「……っ、はっ、んんんん、かはっ……っ!!」
一際強い抵抗を抜けてタカトシのペニスが全て埋まるとムツミが鋭く息を吐き出したのがわかる。
目元に涙を浮かべ顔を引き攣らせるムツミ。安心させる為にタカトシは唇をムツミに合わせる。
「ふあっ……っ、ちゅ、ぺちゅ、ちゅぷ……っ!!」
舌を絡ませながら、ゆっくりとタカトシはペニスを引き抜き、またその全てを埋め込む。
2回、3回、4回…馴染ませるようにタカトシはピストンを繰り返す。
「……っ、あっ…ふ、あぅん、んん、ふ、ふぁっ……っ!」
最初のうちは打ち込まれる痛みに涙を貯めていたムツミもピストンが2桁をゆうに数えるようになるうちに声色から痛みの色が抜けはじめる。
血を潤滑油として動いていたタカトシのペニスにも愛液が絡み付く。
その段階まで来るとムツミの中は温かくタカトシのペニスを包み込み何度も何度もタカトシに快楽を送り込む。
「あっ、あっ!……ん、ふぁっ、あぅ、あ!……っ!あぁっ、」
次第に膣内は蠢きだす。突く動きには巻き付き、抜く動きには、絡み付く。
「んあっ……っ、あっ、タカトシ君……っ!あっ、」
声に艶をたたえ、タカトシの名を呼ぶムツミ。名前を呼ばれる事で駆け抜けた快感にタカトシの理性は消し飛んでいく感を覚える。
「ムツミ……っ」
答えるようにタカトシは一度ムツミの名を呼ぶと、ムツミの膝を抱え目茶苦茶に腰を動かしていく。
「あっ、ああ!ん……っ、すご、んんん!……っ!」
もうほぼムツミの身体は垂直に立てられた状態。そこにタカトシが全体重をかけてムツミに突き入れる。
そうされる事で強く与えられる快楽に身を任せムツミは喘ぐ。
「ふあっ、あっ、ん、あっ!わた……っ!し」
ガクガクとムツミが身体を揺らす。初体験で迎えようという2度目の絶頂に身を委ねる。
"ギュッ"
宙を泳いでいたムツミの手がしがみつくようにタカトシの背に回される。
「ふあっ、あ、あっ!、……んん!あぅ、あっ!あああぁぁぁ!!」
その手が爪をたてた時、ムツミの膣内で痙攣がおこる。
「くぁ……っ!ムツミ!!」
巻き込まれるようにタカトシも限界を迎える。
駆け登ってくる射精感に慌ててペニスを抜こうとするもムツミに爪を立てられたその態勢では間に合わず。
「んんんんん!……っ、熱、い……ん、っ!ふわぁ…」
タカトシの精液はムツミの膣内を満たした。

………………………………

「それでは将来はやはり、」
新聞部の取材に柔道部部長として応じるムツミ。
ムツミの柔道に向ける真っ直ぐな姿勢に向けられた質問。
"柔道で金メダリスト"
なぜかいるタカトシも含めてその場にいる誰もが来るだろうと思っていた答え。
それほどの打ち込みっぷりを雄弁に語る柔道着に身を包みムツミが口を開く。
「おヨメさんです。」
ムツミの答えにその場にいた全員が固まってしまう。
予想の遥か斜め上を行く答えを答えたムツミは後光がさしているようにさえ見える。
「……って、もしかして、今のってプロp「やだなぁ、何言ってるのよ〜、もぉ〜!」
一番最初に我に返った柔道部員が口にした言葉を最後まで言わせずにムツミは立ち上がり締め上げる。
「プロポーズですか?それはつまり…」
そんなやり取りを目の当たりにした畑さんの視線は、その場唯一の男子タカトシに向けられる。
「どうなのですか?というか、婚約を前提に突き合っているということですか?」
矢継ぎ早な質問。
「今、さりげに発音おかしかったですよね?」
天性のツッコミの血がツッコミを入れさせる。だが…
「………………」
無言。それ以後は何を言うことも出来ない。
というか、新聞部が誇る敏腕記者の前でむざむざと墓穴を掘るわけにはいかないのだ。
「ちょっ、ムツミ、ギブ、ギブ!!」
「さぁ、どうなのですか?」
厳かに行われていたはずの取材は一転、混沌と化す。
男女恋愛禁止の桜才学園において公然にしてしまうわけにはいかない2人の仲。
2人はごまかしにかかる。
しかしながらそうすればするほど回りは騒がしくなってしまうわけで。
「だーかーらー」
それを打ち消すようにムツミの叫びが響き渡る。
(中々に前途多難だよな、ムツミ。)
苦笑しながらそんな事をタカトシが思う。
心の中での呼称に変化は無いはずなのに、付き合いだした今は全く違う響きがある。
きっとムツミの心の中でも同じなんだろうな等と思いながら、タカトシはいかに切り抜けるかを模索していくのだった。

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