「うふふ〜〜♪どう、似合う?お母さん!」
「ええ、とっても似合って可愛いわよ、リンコ」
英稜高校の制服に着替えて喜色満面のリンコと、娘の姿を優しげに見つめるリンコママ。
時は小春日和の3月某日、ところは的山家。
母娘が心から高校合格を喜び合う、微笑ましい風景だった。
「えへへ、ありがとう、お母さん!三年間この服で通うんだから、大切にするね!」
「そうね、リンコ。でも本当に可愛いわ。きっとお父さんも喜ぶわね」
「ウン!帰ってきたら、お父さんにも見てもらうんだ!」
くるり、と嬉しそうに一回転するとリンコは制服のスカートの裾をつまんで少し広げて見せた。
「あらあら、嬉しいのは分るけど、リンコったら」
「あ!そうだ!ねえねえ、お母さん、友達に見せに行っても良いかな〜〜?」
「良いけど、気を付けて行くのよ?」
「大丈夫だよ!行ってくるね、お母さん!」
飛び跳ねるように軽快に、リンコは部屋を出て行く。
そんな娘の後ろ姿を、苦笑混じりにリンコママは見つめていた。
「ぜんぜん人の言う事なんて聞いてないんだから……うふふ、よっぽど嬉しかったのね、リンコ」

「えっと〜〜、中村先生に一番に見てもらいたいけど、でも昨日から卒業旅行だって言ってたし、
アヤナちゃんはアメリカだし、アイ先生は地元に帰って就職活動だって言ってたし、
ミサキちゃんは、家族旅行だって言ってたし〜〜、うん、そうだ!小久保君に見てもらお!」
嬉しそうにそう呟きながら歩くリンコだが、
要するに消去法的に小久保家に向かうしかないのである。
ててててて、としばらく歩き―――目的地に、着いた。
“ピンポ〜〜ン♪”
「こんにちは―――っ」
「あ〜〜ら、リンちゃん!今日もまた可愛いー格好してるわねーーーーっ」
「えへへへ、ありがとうございますぅ♪」
「?あら?でも、もう受験も終わったし、みんなで勉強ってわけじゃないわよね?」
「はい、今日はちょっと遊びに来たんですぅ。小久保君はいますかぁ〜〜?」
「今ちょっとおつかいに出てるけど、すぐに戻ってくると思うから先に部屋で待ってたら?」
「はい!」
「あと………ねえ、リンちゃん?」
「?なんですかぁ?」
「4月からまたウチの子と同じ学校に通うわけだけど、よろしくね?仲良くしてやってね?」
「あ、はい!小久保君とは、友達ですから、よろしくお願いします!」
「うふ、私としては友達以上に仲良くなって欲しいんだけど」
「???」
「いいのいいの、こっちの話だから」
「?じゃあ、おじゃましま〜〜す」
マサヒコママの言葉に可愛らしく小首を傾げていたリンコだったが、
すぐに笑顔に戻ると、とてとて、と階段を登っていった。
動きといい表情といい、どことなく小動物のようなリンコの姿を、
マサヒコママは微笑みながら見送っている。
「ふふ、ミサキちゃんも良い子なんだけど、リンちゃんも本当に良い子なのよねえ。
あ〜〜〜、ホント、どっちの子でも良いからさっさとウチの子とくっついてくれないかしら?
全く、いつまでボヤボヤしてるのかしらねえ、あのニブチンは………」

「こんにちは〜〜って、今は誰もいないんだよね、てへ♪」
ハイテンション気味のリンコはマサヒコの部屋に入ると、
いつもどおりコタツにくるまってマサヒコを待つことにした。
「ふぁ〜〜〜、ヒマだな………眠くなって来ちゃったよ……今日はぽかぽかしてるし……」
ふに〜〜、とコタツテーブルの上にあごをのせて早くも半眠りの状態のリンコ。
ふと目をやると――マサヒコのベッドがおいでおいで、と誘っているように見えた。
「そだ♪前みたいに小久保君のベッドで休ませてもらお♪
あ、でもこのままじゃ制服シワになっちゃうな〜〜」
zzzzzzzzz

「ただいまーーー、母さん、卵買ってきたよ」
「お〜〜う、ありがとう、マサヒコ。リンちゃん来てるわよ」
「?的山が?」
「そ。し・か・も。今回も可愛い格好で」
「??」
「だからねえ、マサヒコ。アンタもいい加減、も少し女の子に積極的にならないと……」
「???よく分らないけど、俺、行って良いの?」
「イクのは全然構わないけど、避妊はキチンと……って、おらんやないかい!」
いつもの母親のエロボケをあっさりかわしたマサヒコは、既に部屋の前にいた。
(?………可愛い格好?まさか前みたいな革の性服とかじゃねーだろーな……)
以前のことを思い出し、少しげんなりしつつマサヒコはドアを開けた。
“ガチャ”
「おう的山………って」
“くぅ〜〜〜、すぅ〜〜〜〜、Zzzzz♪”
(また寝てるよ………しかも俺のベッドで………毎回毎回なにしにウチに来てるんだか)
「しょ〜〜〜がね〜〜な、おーーーい、的山、起きろーーーー」
バサ、と布団をめくるマサヒコだが、
(L@$!?#まままままままま、的山、さん????)
仰天し、慌てて布団をかけ直した。そう、リンコは―――
(ななな、な、なんで、下着なんだっつの!!)
ブラとショーツだけというリンコの姿に、マサヒコは心の中で絶叫した。

「そだ♪下着で寝れば良いんだ〜〜♪よいしょ、おやすみなさい……むにゃむにゃ」
読者諸氏の予想通り、リンコは制服を吊すと下着姿のままマサヒコのベッドに入ったのだった。

(落ち着け……落ち着け、俺。俺が今すべきなのは………)
この危機を打開すべく、数式を解くマサヒコ。

<下着姿の的山×ちょい勃起気味の俺÷下にいる母さん=?>
マサヒコの回答↓
しばらく(色んな意味で)落ち着くまでなにもしない

と言うわけで、3分あまり経過。 
(よ〜〜〜し、もう大丈夫だろ……)
なにせ、目の前ではリンコが無防備な寝姿をさらしているわけである。
ちらり、と横を見るたび、さきほどの彼女の下着姿を思い出してしまう、
ということを何度か繰り返した後、ようやくマサヒコは落ち着いた。
ふう、と大きく息を吐いた後、恐る恐るリンコの頬をつんつん、とつついた。
「あの……的山さん、起きて下さい?的山さん?おはよ〜〜ございます?」
懐かしの寝起きドッキリ番組のレポーターのようなセリフを囁くマサヒコだが、
よほど良い夢を見ているのかリンコは熟睡中のご様子である。
何度も頬をつついたり声をかけたりするものの無反応で、しばし途方に暮れるのであった。
(………的山って)
すぅすぅ、と気持ち良さそうに寝息を立てているリンコの寝顔。
元々童顔の彼女だが普段よりもずっと幼い感じがして、あどけなくて、愛らしかった。
(可愛い……寝顔だよな……さっきも……)
つい、ボケッとリンコに魅入ってしまうマサヒコ。
ほんの一瞬だけ見えた下着姿も、いやらしさというより、
可愛らしさでマサヒコはドキドキしてしまったのだ。
本人が自虐的に言うように、アヤナのようなボリューム感は確かに無かった。
それでも白い清楚なブラとショーツはリンコに似合っていたし、雪のように白い肌も―――
(って、やべ!)
思い出してまたも<落ち着かない>状態へと突入しそうになったマサヒコは、
慌てて我に返ると今度はちょっと強めにリンコを揺する。
(こんなことしてる場合じゃねえ!早くせんと、俺もヤバイし、母さんも……)
§

「お〜〜い、的山さん?お願いだから、起きてくださいよ、頼むから」
ほとんど懇願調の情けない声を出して何度も揺するうち、
「むに???あ、おはよ〜〜、小久保君!」
ようやく目を覚ましたリンコは、えへへ、と笑顔をマサヒコに向ける。
「あのな、的山。どうでも良いけどお前、どういうカッコで人のベッドに」
「あ!そうだ!ねえね、似合う〜〜?こくぼく〜〜ん!」
寝る前に制服を脱いでいたことをキレイさっぱり忘れていたリンコは、
当初の目的を思い出してベッドの中から起きあがるとマサヒコにポーズを取って見せた。
それは、要するに、ブラとショーツのままで、ということである。
「ΣΣΣ□Φ!!!!まままっまま、的山ぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!!」
顔を真っ赤にして絶叫するマサヒコだが、まだリンコは気付いていないようだ。
「??ど〜〜したの、小久保く………え?きゃ、きゃああああん!!!!!!!」
しばし不思議そうな表情のリンコだったが、
ようやく自分が下着姿であることに気付き、マサヒコと同じく絶叫する。
そして―――正に絶好のタイミングで。
“ガチャ”
「スジャータ〜〜♪じゃなくてスマタ〜〜♪じゃなくてお待た〜〜♪
どお?可愛い制服でしょ、ってアレ?」
若干滑り気味のオヤジギャグと共に史上最強の美熟女・ママン登場。

(涙目のリンちゃん√勃ちつくす、じゃなくて立ちすくむマイサン=?)
ママンの回答↓
“ベキィッ!!”
「ち、違う、これは誤解で、か、かあさ」
“グシャァァ!!!”
「問答ムヨォォォォォォォ!!!!!!!!!!!!!」
“ズシャァァァ!!!!”
見事なマサヒコママの打撃系コンボが決まり、吹っ飛ばされるマサヒコ。
「う、うわぁぁぁん!!!」
「もう大丈夫……乱暴は、まだされてなかったみたいね、リンちゃん」
マサヒコに下着姿を見られた驚きよりも、修羅と化したマサヒコママの姿に
むしろショックを受けて涙を流していたリンコだったが、そんな彼女を優しくマサヒコママは抱きしめる。
「うっく、ひっく、おばさま……」
「ウチの馬鹿息子が本当にとんでもないことを……ゴメンね、リンちゃん」
「う、うッ、ひっく、違うんです……小久保君は、くすん、おばさま」
「確かに……あなたの心の傷は、いくら私が謝っても消えないわね。
ねえ、リンちゃん?責任は、私が取らせるから。」
「くすん、せきにん???」
「あんな馬鹿息子でも、私たちには大切なたったひとりの子供なの。
しっかり、私が責任を取らせます。お願いだから、許してくれないかしら」
「????」
話がさっぱり分らず、マサヒコママをただ見つめるリンコだが、
マサヒコママは完璧に誤解しまくったまま、ひとり一方的に盛り上がっていた。
「今回のことは、不幸な出来事だったけど……でも、だからこそ、私はあなたにお願いしたいの」
「?????」
「お願いします……ウチの子の、お嫁さんになってください」
「??!!!!!えええ!お、およめさん?」
「ずっとね、素直で可愛くて、こんなお嬢さんがウチに来てくれたらなんて思ってたの。
本当よ。だから……お義母さんって、呼んでくれない?」
「お、お義母さ……ん」
「ああ……なんて可愛いのかしら。嬉しいわ、リンちゃん」
リンコとマサヒコママが感動の抱擁を交わす、その足下では。
(俺は、無罪だ……責任って……なんだよ……俺が、なんで的山と??)
漆黒の闇の中へと意識が消えゆく少年が、いた。

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