最終更新:ID:TH/WOTQWUA 2009年07月02日(木) 20:42:02履歴
「ん…っ、ふ、ぷちゅ……っ!どうでふか?シンジさん」
「…っ、良いよ、ミホちゃん!」
私より遥かに良いスタイルを駆使して、お兄ちゃんと戯れている。
興味本意で覗いたお兄ちゃんの部屋。
酷い後悔が襲う。
本当はこんなはずじゃ無かった。
今日は出掛けると、嘘までついて覗いた部屋。
そこには自分の好奇心を満たしてくれる光景が広がるはずだった。
なのに…
流れ込む黒い感情。
大きな何かの塊に押し潰されそうになる。
(こんなの……嫌だ……)
そこで気付いた自らの気持ち。
(嫌だよ、お兄ちゃん……)
全てが始まったあの日のことが頭を過ぎる。
………………………………
「ミホちゃん、お兄ちゃんの事好きなの?」
委員会がきっかけで仲良くなり、度々帰路を共にするようになったミホちゃんに問いかける。
「ええっ!カナミちゃ……きゃ!!」
急な私の問い掛けに驚いたのか躓くミホちゃん。
「ドジっ娘だねぇ…」
そんな彼女に、私は今の彼女を形容するのに相応しい言葉をかける。
「あたたたた…」
汚れた制服を叩きながら、彼女は続ける。
「ん。まぁ、ね。」
前のマナカちゃん達との会話からわかっていたことだけど、改めて確認する。
「そっか…まぁ、頑張ってよ。お兄ちゃんもいつまでも童貞ってわけにはいかないだろうし。」
「結局それなの?」
私のエロボケに言葉をあげる彼女。
実はお兄ちゃんに気のある人は多い。
アキちゃんは少なくとも憎からずお兄ちゃんを思い、マナカちゃんはどこまで本気かは解らないけれど、好意を抱いてるのは確かだ。
でもその実、実際に行動を起こそうという人はそう多くない。
私が知る限りではミホちゃん一人……いや、エーコちゃんの友達の子がいたっけ。
「そっか、でも、妹から公認も貰ったし、私頑張るよ。」
「いや、話を飛躍させすぎだよ…」
ミホちゃんは時々暴走しがちな趣がある。
まだ結婚はおろか、付き合ってもいないのに、もう私のことを妹扱い。
「明日こそ、頑張って告白してみよー!!」
なんだか、気になる語彙が混ざったけれど、鼻歌まじりにそう宣うミホちゃんは微笑ましかった。
………………………………
──パチッ
「うおっ!カナミいつの間に戻ったんだ?」
明かりの付けられたリビング。
明かりを付けた張本人のお兄ちゃんは私の姿を認めると、驚きの声をあげる。
「お兄ちゃん…」
逃げるように飛び込んだリビングで、膝を抱えながら震えて過ごした私の声は少し掠れてしまっている。
「…………………」
そんな私の顔を覗き込んで、お兄ちゃんは固まったように何も言葉を発してはくれない。
正確にはかけるべき言葉が見付からない。
そう表現した方が正しそうではある。
普段の私なら、この場を和ませる言葉の一つぐらいは出てくるのに…
先程垣間見た光景が頭を過ぎり、言葉が出てこない。
沈黙が部屋を包む。
「カナミ、お前どうしたんだ?」
先に口を開いたのはお兄ちゃん。
その表情に張り付いた私を心配する表情。
「お兄ちゃん……」
その表情に縋り付いて、不本意にも私の頬を涙が伝う。
なんだか、昔の距離感とは変わってしまった私達。
以前はもっと気軽にお兄ちゃんに触れたり、抱き着いたり…
それに確かに私は安堵を抱いていたはずなのに…
気付けばそんな日々を、私は自ら手放していた。
「……っ、ひっぐ!」
ポロポロと止まらない涙は次から次へと頬を伝う。
遂には嗚咽まで交え、私は声をあげてしまう。
─ポン─
突如広がる温もり。広がる臭い。
直ぐに理解できた。自分がどうなったのか。
何故ならそれは先程自分が渇望したことだったから。
「…………………………」
私の頭上から何も言わずにただそこにいる人の息遣いを感じる。
「っ……ひっ、ぐ!お兄ちゃん、」
その胸に顔を埋めて、私は思う存分声をあげる。
「嫌だ……嫌だよ……」
ただ譫言のように。
溢れ出す自らの心をせき止められなくて、同じ言葉を繰り返す。
先程お兄ちゃんの部屋を覗いていた時から何度も私の口を突く言葉。
私の本心。
本当はお兄ちゃんが誰かのものになることなんて望んでいなかった。
なのに、好奇心から友人をその気にさせた。
そうして失ったものは大きく、私の心は深くえぐられたかのような強い痛みを覚えた。
その痛みはけしてお兄ちゃんに抱きしめられたくらいで消えるようなものではないけれど、
それでもお兄ちゃんの胸の中で私は幾分かの安堵を覚えた。
………………………………
「おはよう、カナミ。」
リビングで朝食を作るカナミの背中に声をかける。
普段ならカナミに起こされる立場であるはずの俺だが、今日は自然と目を覚ました。
昨晩、リビングで声を上げながら泣いたカナミ。
その姿は夢で見るほどに目に焼き付いていた。
実の妹のそんな姿は、兄としてやはり心配なのである。
「あ、おはよう。お兄ちゃん。珍しいね。」
昨晩と打って変わっていつも通りなカナミ。
昨晩は消えていってしまいそうな程の弱々しさを見せたカナミだったが、今日は普段通りだ。
「朝ごはん作っといたよ。」
カナミが言う。
「おぅ、サンキューな。」
カナミが言ったとおり食卓には湯気を立てる食事が並んでいる。
朝一であるとは言っても、カナミの作った朝食の、湯気をたてる様は俺の食欲をそそる。
「あと、お弁当も作ったから。食べてね。」
カナミが言う。
好意は嬉しいのだが…
「あー…」
俺は言い淀む。
こう見えても17年間に及ぶ童貞生活に別れを告げ、まかりなりにも彼女がいる身。
最近はその彼女が弁当を作って来てくれる。
カナミの弁当を受け取ってしまえば、俺の手元には都合、弁当が2つ。
部活の一つでもやっていれば消化しきれない量でも無いんだろうが、いかんせん俺には無理だ。
だから…
「そのだな、ミホちゃんも弁当作って来てくれるし、気持ちは嬉しいんだが…」
気まずい。
そう思いながら口にする。
「え…」
それを口にするとカナミは昨晩のような表情を作る。
何かに怯え、今にも震え出して崩れ落ちそうな。
その表情に俺は何も言えなくなる。
「…………………」
部屋に下りる重苦しい沈黙。
やがて、俺は耐え切れなくなる。
「…わかった。もらっていくよ。ありがとうカナミ。」
「うん!」
俺の言葉にカナミにはなんとか普段通りの表情が戻る。
一体カナミの身には何が起こったのだろうか?
そういった考えが頭に浮かぶ。
こうしている分にはなんら変わらないのにな。
そう思う。
─ピンポーン─
朝飯を食べ終えて、すっかり高校へ行く準備を終えた段階になって、家の呼び鈴が鳴る。
そこに立っているであろう人物は容易に分かる。
「先輩、迎えに来ました。」
鞄を持って下まで降りて行き、ドアを開けた先。
そこに立っているのはミホちゃん。
付き合い初めてからは弁当と並ぶ日課。
こういった毎日を送っていると、ホントに俺らは付き合いだしたんだなと言う実感が沸く。
「いつも、ありがとうね。ミホちゃん。」
「は、ハイ!!こちらこそ迷惑じゃなかったですか?」
遠慮がちに口を開くミホちゃん。
こういった部分も持ち合わせたミホちゃんはよく出来た子だと思う。
「いやいや、そんなことないよ、さて行こ─う、か」
─ガシッ─
突然の事に何があったかわからずに、俺は発音おかしく言葉を紡ぐ。
「カナミ…?」
俺の手を掴みながら佇むカナミの姿がそこにはあった。
「……か……で……」
「カナミちゃん?」
何かを口走ったのだが、何を言ったかわからない声をあげたカナミに、ミホちゃんが声をかける。
やはり、突発的にちらつく昨晩のカナミの姿。
俺は何も言えないまま黙り込む。
「行かないで、行かないでよ、お兄ちゃん…」
今度ははっきりと理解できる音声が響く。
─行かないで─
その言葉は俺の胸にも響いて引っ掛かりを残す。
「何言ってるんだ?カナミ。いつも3人で一緒じゃないか?」
「そうよ、カナミちゃん。高校に行かないわけには行かないんだから…」
困惑の表情を浮かべるミホちゃん。
それは俺も同じだ。
「違うの……そうじゃない。」
「「?」」
焦点は定まらず譫言のように、そう口にするカナミに、俺とミホちゃんは疑問を浮かべる。
「……わかったわ、カナミちゃん。先輩、私は先に行きますね。」
そんな痛々しいまでのカナミをしばらく見つめていたミホちゃんが言葉を紡ぐ。
「あ、あぁ…」
そんなミホちゃんに申し訳なく思いつつも俺は返事を返す。
「気にしないで下さい。先輩、お昼休みは待ってますから。」
お先に。そう言ってミホちゃんは踵を返す。
「大丈夫か?」
残された俺はカナミに声をかける。
「…………」
フルフルと首を振るカナミが落ち着くまで俺はカナミを待つことにする。
「ごめん…ありがとう。」
暫くすれば元通りになるカナミ。
「…………………」
俺は促されるまま通学路に足を向ける。
「昨日からごめんね。お兄ちゃん…その、わがままついでに良いかな?」
暫く歩いた先でカナミが言う。
「手…繋いで良い?」
赤くなりながらカナミが告げる。
昨日からのカナミの様子のおかしさに不安を抱いている俺は、
カナミの願いに応え、カナミという存在を手放さないように大切に手をとると、歩を進める。
………………………………
「大丈夫か?カナミ。」
お兄ちゃんの声がする。
白いシーツの上、身体を横たえた状態で私は目を覚ました。
「お兄ちゃん…?」
枕元から心配そうな顔で覗き込むお兄ちゃんに声をかけてから、私は時刻を確認する。
「1時3分…」
ほぼ、もう予鈴の鳴る時刻だ。
「全く、お前は無理し過ぎだ。倒れたって聞いて心配したよ。」
お兄ちゃんが言うには、昼休みに入ってすぐ、ご飯を食べようと皆の元へ向かう途中で私は倒れたらしい。
「そっか、ごめん。」
私は素直にお兄ちゃんに謝罪をする。
「いや、礼ならマナカちゃんに言ってくれ。マナカちゃんが教えてくれたんだ。」
言われてお兄ちゃんの後方を見る。
「マナカちゃんもありがとう…」
視線の先にマナカちゃんを見とめて、私は礼を述べる。
「とりあえずは大丈夫そうですね。」
安堵の表情を浮かべながらマナカちゃんは言う。
─キンコーンカーンコーン─
その時、校内には予鈴を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「シンジさん、先に戻ってください。カナミちゃんも目を覚ましましたし、後は私が見てますよ。」
チャイムを受けてマナカちゃんがお兄ちゃんに言う。
「でも…」
「大丈夫ですよ。それにここにいつまでもいると、噂になっちゃいますよ?」
「噂??」
「城島シンジはシスコンって。ま、私は一行に構いませんが…」
「わかった。戻ることにするよ。」
マナカちゃんの言葉を受けて、お兄ちゃんは保健室を後にする。
立ち去り間際、私を労ってくれたのはすごく嬉しかった。
「さて、カナミちゃん。少しお話をしましょうか。」
お兄ちゃんを見送った後でマナカちゃんは口を開く。
「シンジさんとミホさんのことで追い詰められてるみたいですね。」
ストレートにマナカちゃんはそのことを告げてくる。
「うん…」
「だから言ったのに…」
肯定した私に、遠い目をしながらマナカちゃんが続ける。
マナカちゃんが口にしたのは、あの日の事だろうと思う。
あの日、ミホちゃんの真意を聞き出した私は、マナカちゃんに話した。
その時、マナカちゃんは、『ホントにそれで良いんですか?』
と言った。
今となって、その言葉の意味はよくわかった。
その時の私は、親友の心配など意にも介さず、ただただ"大丈夫"と繰り返した。
「案外、自分の事はわからなくなりがちなものです。」
そんなマナカちゃんからの言葉を聞き入れずに、今こうしている私を、マナカちゃんは責めたりはしない。
冷静に、淡々と言葉を紡ぐ。
「今まで、2人しかいない家族だから。とずっとシンジさんの世話をしてきたカナミちゃんは、そこに存在価値を見出だしていた。」
私の心を見透かすように告げる。
「でも、それはシンジさんも同じでした。持ちつもたれつで2人は互いにやってきました。」
でも─
そこでいったん言葉を区切るマナカちゃん。
「シンジさんが離れていってしまう。そのことに、自らの存在意義の揺らぎに、カナミちゃんは恐怖を覚えてしまった。」
マナカちゃんは的確に、私の心の内を暴いていく。
だからこそ、あの日、好奇心に任せて行動した私は、反省せざるを得ない。
「シンジさんという存在に依存してしまっているというのが現状だと思われます。」
そう告げる。
やけに冷静に。
いや、もはや冷淡といった方が正しいかもしれないと思うぐらいに。
「解決方法は2つ、新しい依存先を見つけるか、あるいは─」
その後のマナカちゃんの言葉に私は思うところがあった。
………………………………
「ただいま。」
結局カナミは早退と相成ったらしいことを、マナカちゃんから伝えられた俺は、放課後、寄り道などはせず真っすぐ帰宅した。
ミホちゃんと付き合いだしてからは、常に一緒に帰ったり、デートしたりしてたからいつ以来の真っすぐ帰宅だろうか?
そんなことを思う。
「おかえり〜。」
そんな俺を出迎えてくれたのは、普段通りのカナミの声。
その声がリビングから響いたので、俺は真っすぐリビングへと向かう。
「お前、大丈夫なのか?」
そこには、普段のように台所仕事に勤しむカナミの姿。
その姿は一見普段通りだが、いつどこでそんなカナミに影がさすかはわからない。
「ん。大丈夫だよ。」
俺の問いに応え、カナミは笑顔を見せる。
「本当か?」
それでももう一度念押しをする。
大丈夫と答えたカナミをひとまずは信用することにして、俺は一度着替えのため、自分の部屋へ戻る。
「妹が早退してきたからって、わざわざ自分も早く帰ってくるなんて、お兄ちゃんもシスコンだねえ…」
着替えを終えてリビングで、一緒にテレビを見ていたカナミが言う。
「うるさいやい。」
カナミの一言に頬が火照るのを自覚しながら俺は返す。
─ポフッ─
「??」
そうして顔を反らした俺の肩にカナミが寄り掛かってくる。
「でも、嬉しかったよ…」
カナミが呟く。
普段のエロボケとは違った雰囲気のカナミに、俺は暫くそのままでいることにする。
「お兄ちゃんは…」
そのままでカナミが口を開。
「私のことをどう思ってるの?」
「どうって…よく出来た妹だと思ってるよ。」
カナミの問いに答え、俺は思うままを口にする。
「あと、当然、何かあったとすれば心配するしな。」
付け足して、ポンポンとカナミの頭を2、3度叩く。
「うん…」
そうされる事に気持ちよさそうに、カナミが目を細める。
「でも、私はそれだけじゃ嫌だな…」
カナミが呟く。
「カナミ?」
カナミの呟きに俺は疑問譜を浮かべる。
俺にとって、カナミは妹。
それ以下でも、それ以上でもない。
たった一人の妹だから、カナミを心配するし、大切にする。
「お兄ちゃんがミホちゃんと付き合い初めて、」
カナミが続きを口にする。
「お兄ちゃんがいなくなっちゃうと思うと、目の前が真っ暗になっちゃった。」
カナミの独白。
俺にしてみれば、そんなつもりは無いのに。
それにミホちゃんと付き合い始めた時、カナミも喜んでくれてたはずなのに。
そんなことが脳裏を霞める。
「………………………」
何を口にすれば良いのかもわからずに、俺は黙り込む。
「ねぇ、お兄ちゃん、こっち向いて…」
カナミに促される。
「ん…ふ、ちゅっ、ちゅふ…」
向いた先で重ねられる唇。
「カナミ…」
唇が離れていった後で、俺は呟く。
「私がお兄ちゃんの彼女になる。ダメなの!お兄ちゃんがいないと!!」
強い強い言葉。
「……っ!!」
俺は驚いて、カナミを突き飛ばして距離をとる。
「…お…兄ちゃん……?」
でも、俺に突き放されたカナミは震えていて、今にも壊れそうな儚さを見せる。
カナミの言っていた事は全て真実なのだ。
そのことを改めて自覚する。
このままではダメだ。
それがカナミがいなくなることなのか、それとも、俺への依存を表明したことへなのか。
その事がはっきりとは自分でもわからないまま、もう一度俺はカナミに手を伸ばし、
その両手でカナミを抱きしめた。
………………………………
「ん……ふちゅ、……ぷちゅ……」
カナミに請われるままキスを交わす。
「ね、このまま…」
「あ、あぁ…」
今、俺の腕の中にいるカナミは普段通りのカナミ。
カナミがこのままでいてくれるなら、と思う。
「んん、ふあっ、……っ!」
首筋まで顔を南下させて、首筋に舌を這わせる。
カナミの口からは甘ったるい声が漏れる。
カナミがこのまま壊れてしまうのは嫌だったから…
念入りに、普段ミホちゃんにしてるそれより丁寧にカナミの身体をまさぐる。
「んん、ふ、あっ、ごめんね、……っ!私、ミホちゃん程、胸大きくない……っ!」
自らの乳房に触れた俺の手を見ながらカナミが呟く。
「ふあっ、……っ!くぅ……」
胸を揉みながら、首筋に舌を這わせて、カナミの反応を伺う。
頬を紅潮させながら艶やかな声を吐き出すカナミに、感じてくれているという事実に安堵して事を進めていく。
「……っ!お兄ちゃん……ん、あぅ、あっ、ふ……」
スカートから手を侵入して、ショーツ越しにカナミの秘唇を撫であげる。
「ふあっ、あっ……あっ、あぅ……ん、……っ!」
そこから伝わる熱を感じながら、揉むように手を動かす。
「ん、んん、待って……っ!ショーツが汚れ……ちゃう……っ!」
カナミが言う。
カナミに言われて、俺が一度身体を離すと、カナミは自らのスカートの中からショーツを抜き取る。
「……続き、して?」
ソファーに腰掛けなおして、脚を開き、カナミからは続きのおねだり。
微妙に口を開き、うっすらと愛液を滲ませるそこを見せ付けられて、俺も興奮していく。
「……っ、あっ、あっ、ふ、ん、お兄ちゃん……っ!!」
そこに舌を這わせる俺を呼ぶカナミの声。
今、カナミとしている。
そんな思いを強くして、背徳感に背筋を震わせる。
「あっ、あっ、あっ、ふぁっ……っ、あっ、お兄ちゃん、舌が……っ!」
舌まで挿入しながらのクンニに、カナミは足をピンと伸ばしながら敏感に反応する。
「っあ、ふ、くぅ……あぅ、あっ、ふあっ……っ!」
溢れ出てくる愛液を舐めあげて、それを塗りたくるようにカナミの膣口全体をほぐしていく。
「あっ、そこ……っ、ダメ、感じすぎ……ちゃ、う、」
途中存在を主張するクリトリスは、舌で弾いて、歯をたてる。
「っ、ふあぁ、あっ、ふぅ……っ!」
なおも艶やかな声をあげるカナミ。
口から伝わる、カナミの秘唇の状況にもうそろそろかな。
なんて事を思う。
「カナミ、そろそろ。」
「……っ、うん、来て。」
俺の言葉にカナミが返す。
俺は身体を立てて、自らのペニスを露出すると、カナミの膣口に押し当てる…
「あっ、ふあっ、お兄ちゃんのが、入ってく、る……っ!」
カナミの声を聞きながら、自らのペニスをカナミの奥深くまで沈める。
「あっ、ふあっ……っ!大きい……っ!」
変わらぬ艶やかな声でカナミが口にする。
そこには苦痛の声は交じってなくて、カナミは感じやすい体質なのかな?なんて思いながら、腰を揺すっていく。
「あっ、あっ、あっ、ふあっ、あっ……っ!」
リズミカルに漏れる吐息はエロくて、俺の腰にも自然と熱が篭る。
「ふああぁぁぁ、お兄ちゃん……っあ、ふあっ、お兄ちゃん……っ!」
しがみつくように、俺の手を掴むカナミ。
委細構わずカナミに腰を突き立てる。
「んん、……っ、ああ、あふ、……お兄ちゃん……っ!」
何度も何度も俺を呼ぶカナミ。
先程も感じた背徳感が俺の中で大きなうねりとなる。
「あっ、ふあっ、ふあぁ、……っ!奥、すごい気持ちいいよ……っ!」
コリコリとした感触が伝わる最奥。
そこの感触は俺にとってもすごく気持ち良くて、そこに目掛けて、何度も腰を突き立てる。
「っあ、あっ、ふあぅ……っ、お兄ちゃん……っ!」
またしても呼ばれる俺の名前。
ゾクゾクと快感になって俺の背筋を駆け抜ける。
「お兄ちゃん……っ、ふあっ、あっ……っ!お兄ちゃん……あぅ、っ!」
ただ俺の名前を呼ぶカナミ。
ホントは俺の心の内がわかっているんじゃないだろうか?
そんなことを考える。
一線を越えてしまった今、もうすでに、その言葉の意味は違う。
「あっ……っあ、ふあぁっ!、私、あっ、もう……イッちゃう……っ!」
カナミの為、その言葉を免罪符に踏み込んだ世界。
世の中はどう思うだろうか?
「ふああぁぁぁ……っ!………お兄、ちゃん……っ!」
カナミが全身をピンと伸ばす。
どうやら、達してしまったようだ。
どう思われようと、引き返すことは不可能なのだろうな。
そんなことを思う。
そこまでを考えて、頭のどこかで開き直りに近い感情が沸く。
「……っ!俺、も」
駆け上がってくる射精感。
俺は低く呻く。
「……あっ、っ!中、中が良い、の……っ!、ふああぁぁぁっ!!」
それが限界まで膨れ上がった時、俺は請われるまま、カナミの中に精を放った。
………………………………
『寝とれば良い。』
昼間友人にかけた言葉。
それを思い出しながら、マナカはノートパソコンを閉じる。
兄に依存しながらも、友人に気を使い、強くいようとしたカナミ。
心のバランスを崩してなお、気丈に振る舞う彼女に思うところはあった。
思えば、昼間のあれは、彼女と昼ご飯を共にしようとする兄に対する無意識の行動なのだろう。と思う。
それぐらい、兄に依存したカナミを救う手だては無くて、背中を押した。
マナカは思う。
仲の良かったはずの兄妹はどこで道を間違えたのだろうか。と。
ただ兄に着いて、幸せに暮らしていたはずのカナミがシンジに依存してしまったのはいつからだろうか。と。
そのことを知るには、この街を離れていた期間が分厚い壁となって立ち塞がることをマナカは知っているから、
これ以上の詮索はよそう、と思う。
今頃、シンジはカナミを受け入れただろうか?
あの2人はよく似ている。
カナミがブラコンなら、シンジもシスコンだ。
カナミが寄せる好意に心を揺さぶられてしまうのだから。
きっと、なんであれシンジが断りを入れることは無いだろう。
そんな風に思う。
「人は強いもの、そして儚いもの…ですね。」
マナカの呟きは夜の戸張に溶け込んで、あっという間に消えていった。
「…っ、良いよ、ミホちゃん!」
私より遥かに良いスタイルを駆使して、お兄ちゃんと戯れている。
興味本意で覗いたお兄ちゃんの部屋。
酷い後悔が襲う。
本当はこんなはずじゃ無かった。
今日は出掛けると、嘘までついて覗いた部屋。
そこには自分の好奇心を満たしてくれる光景が広がるはずだった。
なのに…
流れ込む黒い感情。
大きな何かの塊に押し潰されそうになる。
(こんなの……嫌だ……)
そこで気付いた自らの気持ち。
(嫌だよ、お兄ちゃん……)
全てが始まったあの日のことが頭を過ぎる。
………………………………
「ミホちゃん、お兄ちゃんの事好きなの?」
委員会がきっかけで仲良くなり、度々帰路を共にするようになったミホちゃんに問いかける。
「ええっ!カナミちゃ……きゃ!!」
急な私の問い掛けに驚いたのか躓くミホちゃん。
「ドジっ娘だねぇ…」
そんな彼女に、私は今の彼女を形容するのに相応しい言葉をかける。
「あたたたた…」
汚れた制服を叩きながら、彼女は続ける。
「ん。まぁ、ね。」
前のマナカちゃん達との会話からわかっていたことだけど、改めて確認する。
「そっか…まぁ、頑張ってよ。お兄ちゃんもいつまでも童貞ってわけにはいかないだろうし。」
「結局それなの?」
私のエロボケに言葉をあげる彼女。
実はお兄ちゃんに気のある人は多い。
アキちゃんは少なくとも憎からずお兄ちゃんを思い、マナカちゃんはどこまで本気かは解らないけれど、好意を抱いてるのは確かだ。
でもその実、実際に行動を起こそうという人はそう多くない。
私が知る限りではミホちゃん一人……いや、エーコちゃんの友達の子がいたっけ。
「そっか、でも、妹から公認も貰ったし、私頑張るよ。」
「いや、話を飛躍させすぎだよ…」
ミホちゃんは時々暴走しがちな趣がある。
まだ結婚はおろか、付き合ってもいないのに、もう私のことを妹扱い。
「明日こそ、頑張って告白してみよー!!」
なんだか、気になる語彙が混ざったけれど、鼻歌まじりにそう宣うミホちゃんは微笑ましかった。
………………………………
──パチッ
「うおっ!カナミいつの間に戻ったんだ?」
明かりの付けられたリビング。
明かりを付けた張本人のお兄ちゃんは私の姿を認めると、驚きの声をあげる。
「お兄ちゃん…」
逃げるように飛び込んだリビングで、膝を抱えながら震えて過ごした私の声は少し掠れてしまっている。
「…………………」
そんな私の顔を覗き込んで、お兄ちゃんは固まったように何も言葉を発してはくれない。
正確にはかけるべき言葉が見付からない。
そう表現した方が正しそうではある。
普段の私なら、この場を和ませる言葉の一つぐらいは出てくるのに…
先程垣間見た光景が頭を過ぎり、言葉が出てこない。
沈黙が部屋を包む。
「カナミ、お前どうしたんだ?」
先に口を開いたのはお兄ちゃん。
その表情に張り付いた私を心配する表情。
「お兄ちゃん……」
その表情に縋り付いて、不本意にも私の頬を涙が伝う。
なんだか、昔の距離感とは変わってしまった私達。
以前はもっと気軽にお兄ちゃんに触れたり、抱き着いたり…
それに確かに私は安堵を抱いていたはずなのに…
気付けばそんな日々を、私は自ら手放していた。
「……っ、ひっぐ!」
ポロポロと止まらない涙は次から次へと頬を伝う。
遂には嗚咽まで交え、私は声をあげてしまう。
─ポン─
突如広がる温もり。広がる臭い。
直ぐに理解できた。自分がどうなったのか。
何故ならそれは先程自分が渇望したことだったから。
「…………………………」
私の頭上から何も言わずにただそこにいる人の息遣いを感じる。
「っ……ひっ、ぐ!お兄ちゃん、」
その胸に顔を埋めて、私は思う存分声をあげる。
「嫌だ……嫌だよ……」
ただ譫言のように。
溢れ出す自らの心をせき止められなくて、同じ言葉を繰り返す。
先程お兄ちゃんの部屋を覗いていた時から何度も私の口を突く言葉。
私の本心。
本当はお兄ちゃんが誰かのものになることなんて望んでいなかった。
なのに、好奇心から友人をその気にさせた。
そうして失ったものは大きく、私の心は深くえぐられたかのような強い痛みを覚えた。
その痛みはけしてお兄ちゃんに抱きしめられたくらいで消えるようなものではないけれど、
それでもお兄ちゃんの胸の中で私は幾分かの安堵を覚えた。
………………………………
「おはよう、カナミ。」
リビングで朝食を作るカナミの背中に声をかける。
普段ならカナミに起こされる立場であるはずの俺だが、今日は自然と目を覚ました。
昨晩、リビングで声を上げながら泣いたカナミ。
その姿は夢で見るほどに目に焼き付いていた。
実の妹のそんな姿は、兄としてやはり心配なのである。
「あ、おはよう。お兄ちゃん。珍しいね。」
昨晩と打って変わっていつも通りなカナミ。
昨晩は消えていってしまいそうな程の弱々しさを見せたカナミだったが、今日は普段通りだ。
「朝ごはん作っといたよ。」
カナミが言う。
「おぅ、サンキューな。」
カナミが言ったとおり食卓には湯気を立てる食事が並んでいる。
朝一であるとは言っても、カナミの作った朝食の、湯気をたてる様は俺の食欲をそそる。
「あと、お弁当も作ったから。食べてね。」
カナミが言う。
好意は嬉しいのだが…
「あー…」
俺は言い淀む。
こう見えても17年間に及ぶ童貞生活に別れを告げ、まかりなりにも彼女がいる身。
最近はその彼女が弁当を作って来てくれる。
カナミの弁当を受け取ってしまえば、俺の手元には都合、弁当が2つ。
部活の一つでもやっていれば消化しきれない量でも無いんだろうが、いかんせん俺には無理だ。
だから…
「そのだな、ミホちゃんも弁当作って来てくれるし、気持ちは嬉しいんだが…」
気まずい。
そう思いながら口にする。
「え…」
それを口にするとカナミは昨晩のような表情を作る。
何かに怯え、今にも震え出して崩れ落ちそうな。
その表情に俺は何も言えなくなる。
「…………………」
部屋に下りる重苦しい沈黙。
やがて、俺は耐え切れなくなる。
「…わかった。もらっていくよ。ありがとうカナミ。」
「うん!」
俺の言葉にカナミにはなんとか普段通りの表情が戻る。
一体カナミの身には何が起こったのだろうか?
そういった考えが頭に浮かぶ。
こうしている分にはなんら変わらないのにな。
そう思う。
─ピンポーン─
朝飯を食べ終えて、すっかり高校へ行く準備を終えた段階になって、家の呼び鈴が鳴る。
そこに立っているであろう人物は容易に分かる。
「先輩、迎えに来ました。」
鞄を持って下まで降りて行き、ドアを開けた先。
そこに立っているのはミホちゃん。
付き合い初めてからは弁当と並ぶ日課。
こういった毎日を送っていると、ホントに俺らは付き合いだしたんだなと言う実感が沸く。
「いつも、ありがとうね。ミホちゃん。」
「は、ハイ!!こちらこそ迷惑じゃなかったですか?」
遠慮がちに口を開くミホちゃん。
こういった部分も持ち合わせたミホちゃんはよく出来た子だと思う。
「いやいや、そんなことないよ、さて行こ─う、か」
─ガシッ─
突然の事に何があったかわからずに、俺は発音おかしく言葉を紡ぐ。
「カナミ…?」
俺の手を掴みながら佇むカナミの姿がそこにはあった。
「……か……で……」
「カナミちゃん?」
何かを口走ったのだが、何を言ったかわからない声をあげたカナミに、ミホちゃんが声をかける。
やはり、突発的にちらつく昨晩のカナミの姿。
俺は何も言えないまま黙り込む。
「行かないで、行かないでよ、お兄ちゃん…」
今度ははっきりと理解できる音声が響く。
─行かないで─
その言葉は俺の胸にも響いて引っ掛かりを残す。
「何言ってるんだ?カナミ。いつも3人で一緒じゃないか?」
「そうよ、カナミちゃん。高校に行かないわけには行かないんだから…」
困惑の表情を浮かべるミホちゃん。
それは俺も同じだ。
「違うの……そうじゃない。」
「「?」」
焦点は定まらず譫言のように、そう口にするカナミに、俺とミホちゃんは疑問を浮かべる。
「……わかったわ、カナミちゃん。先輩、私は先に行きますね。」
そんな痛々しいまでのカナミをしばらく見つめていたミホちゃんが言葉を紡ぐ。
「あ、あぁ…」
そんなミホちゃんに申し訳なく思いつつも俺は返事を返す。
「気にしないで下さい。先輩、お昼休みは待ってますから。」
お先に。そう言ってミホちゃんは踵を返す。
「大丈夫か?」
残された俺はカナミに声をかける。
「…………」
フルフルと首を振るカナミが落ち着くまで俺はカナミを待つことにする。
「ごめん…ありがとう。」
暫くすれば元通りになるカナミ。
「…………………」
俺は促されるまま通学路に足を向ける。
「昨日からごめんね。お兄ちゃん…その、わがままついでに良いかな?」
暫く歩いた先でカナミが言う。
「手…繋いで良い?」
赤くなりながらカナミが告げる。
昨日からのカナミの様子のおかしさに不安を抱いている俺は、
カナミの願いに応え、カナミという存在を手放さないように大切に手をとると、歩を進める。
………………………………
「大丈夫か?カナミ。」
お兄ちゃんの声がする。
白いシーツの上、身体を横たえた状態で私は目を覚ました。
「お兄ちゃん…?」
枕元から心配そうな顔で覗き込むお兄ちゃんに声をかけてから、私は時刻を確認する。
「1時3分…」
ほぼ、もう予鈴の鳴る時刻だ。
「全く、お前は無理し過ぎだ。倒れたって聞いて心配したよ。」
お兄ちゃんが言うには、昼休みに入ってすぐ、ご飯を食べようと皆の元へ向かう途中で私は倒れたらしい。
「そっか、ごめん。」
私は素直にお兄ちゃんに謝罪をする。
「いや、礼ならマナカちゃんに言ってくれ。マナカちゃんが教えてくれたんだ。」
言われてお兄ちゃんの後方を見る。
「マナカちゃんもありがとう…」
視線の先にマナカちゃんを見とめて、私は礼を述べる。
「とりあえずは大丈夫そうですね。」
安堵の表情を浮かべながらマナカちゃんは言う。
─キンコーンカーンコーン─
その時、校内には予鈴を知らせるチャイムが鳴り響いた。
「シンジさん、先に戻ってください。カナミちゃんも目を覚ましましたし、後は私が見てますよ。」
チャイムを受けてマナカちゃんがお兄ちゃんに言う。
「でも…」
「大丈夫ですよ。それにここにいつまでもいると、噂になっちゃいますよ?」
「噂??」
「城島シンジはシスコンって。ま、私は一行に構いませんが…」
「わかった。戻ることにするよ。」
マナカちゃんの言葉を受けて、お兄ちゃんは保健室を後にする。
立ち去り間際、私を労ってくれたのはすごく嬉しかった。
「さて、カナミちゃん。少しお話をしましょうか。」
お兄ちゃんを見送った後でマナカちゃんは口を開く。
「シンジさんとミホさんのことで追い詰められてるみたいですね。」
ストレートにマナカちゃんはそのことを告げてくる。
「うん…」
「だから言ったのに…」
肯定した私に、遠い目をしながらマナカちゃんが続ける。
マナカちゃんが口にしたのは、あの日の事だろうと思う。
あの日、ミホちゃんの真意を聞き出した私は、マナカちゃんに話した。
その時、マナカちゃんは、『ホントにそれで良いんですか?』
と言った。
今となって、その言葉の意味はよくわかった。
その時の私は、親友の心配など意にも介さず、ただただ"大丈夫"と繰り返した。
「案外、自分の事はわからなくなりがちなものです。」
そんなマナカちゃんからの言葉を聞き入れずに、今こうしている私を、マナカちゃんは責めたりはしない。
冷静に、淡々と言葉を紡ぐ。
「今まで、2人しかいない家族だから。とずっとシンジさんの世話をしてきたカナミちゃんは、そこに存在価値を見出だしていた。」
私の心を見透かすように告げる。
「でも、それはシンジさんも同じでした。持ちつもたれつで2人は互いにやってきました。」
でも─
そこでいったん言葉を区切るマナカちゃん。
「シンジさんが離れていってしまう。そのことに、自らの存在意義の揺らぎに、カナミちゃんは恐怖を覚えてしまった。」
マナカちゃんは的確に、私の心の内を暴いていく。
だからこそ、あの日、好奇心に任せて行動した私は、反省せざるを得ない。
「シンジさんという存在に依存してしまっているというのが現状だと思われます。」
そう告げる。
やけに冷静に。
いや、もはや冷淡といった方が正しいかもしれないと思うぐらいに。
「解決方法は2つ、新しい依存先を見つけるか、あるいは─」
その後のマナカちゃんの言葉に私は思うところがあった。
………………………………
「ただいま。」
結局カナミは早退と相成ったらしいことを、マナカちゃんから伝えられた俺は、放課後、寄り道などはせず真っすぐ帰宅した。
ミホちゃんと付き合いだしてからは、常に一緒に帰ったり、デートしたりしてたからいつ以来の真っすぐ帰宅だろうか?
そんなことを思う。
「おかえり〜。」
そんな俺を出迎えてくれたのは、普段通りのカナミの声。
その声がリビングから響いたので、俺は真っすぐリビングへと向かう。
「お前、大丈夫なのか?」
そこには、普段のように台所仕事に勤しむカナミの姿。
その姿は一見普段通りだが、いつどこでそんなカナミに影がさすかはわからない。
「ん。大丈夫だよ。」
俺の問いに応え、カナミは笑顔を見せる。
「本当か?」
それでももう一度念押しをする。
大丈夫と答えたカナミをひとまずは信用することにして、俺は一度着替えのため、自分の部屋へ戻る。
「妹が早退してきたからって、わざわざ自分も早く帰ってくるなんて、お兄ちゃんもシスコンだねえ…」
着替えを終えてリビングで、一緒にテレビを見ていたカナミが言う。
「うるさいやい。」
カナミの一言に頬が火照るのを自覚しながら俺は返す。
─ポフッ─
「??」
そうして顔を反らした俺の肩にカナミが寄り掛かってくる。
「でも、嬉しかったよ…」
カナミが呟く。
普段のエロボケとは違った雰囲気のカナミに、俺は暫くそのままでいることにする。
「お兄ちゃんは…」
そのままでカナミが口を開。
「私のことをどう思ってるの?」
「どうって…よく出来た妹だと思ってるよ。」
カナミの問いに答え、俺は思うままを口にする。
「あと、当然、何かあったとすれば心配するしな。」
付け足して、ポンポンとカナミの頭を2、3度叩く。
「うん…」
そうされる事に気持ちよさそうに、カナミが目を細める。
「でも、私はそれだけじゃ嫌だな…」
カナミが呟く。
「カナミ?」
カナミの呟きに俺は疑問譜を浮かべる。
俺にとって、カナミは妹。
それ以下でも、それ以上でもない。
たった一人の妹だから、カナミを心配するし、大切にする。
「お兄ちゃんがミホちゃんと付き合い初めて、」
カナミが続きを口にする。
「お兄ちゃんがいなくなっちゃうと思うと、目の前が真っ暗になっちゃった。」
カナミの独白。
俺にしてみれば、そんなつもりは無いのに。
それにミホちゃんと付き合い始めた時、カナミも喜んでくれてたはずなのに。
そんなことが脳裏を霞める。
「………………………」
何を口にすれば良いのかもわからずに、俺は黙り込む。
「ねぇ、お兄ちゃん、こっち向いて…」
カナミに促される。
「ん…ふ、ちゅっ、ちゅふ…」
向いた先で重ねられる唇。
「カナミ…」
唇が離れていった後で、俺は呟く。
「私がお兄ちゃんの彼女になる。ダメなの!お兄ちゃんがいないと!!」
強い強い言葉。
「……っ!!」
俺は驚いて、カナミを突き飛ばして距離をとる。
「…お…兄ちゃん……?」
でも、俺に突き放されたカナミは震えていて、今にも壊れそうな儚さを見せる。
カナミの言っていた事は全て真実なのだ。
そのことを改めて自覚する。
このままではダメだ。
それがカナミがいなくなることなのか、それとも、俺への依存を表明したことへなのか。
その事がはっきりとは自分でもわからないまま、もう一度俺はカナミに手を伸ばし、
その両手でカナミを抱きしめた。
………………………………
「ん……ふちゅ、……ぷちゅ……」
カナミに請われるままキスを交わす。
「ね、このまま…」
「あ、あぁ…」
今、俺の腕の中にいるカナミは普段通りのカナミ。
カナミがこのままでいてくれるなら、と思う。
「んん、ふあっ、……っ!」
首筋まで顔を南下させて、首筋に舌を這わせる。
カナミの口からは甘ったるい声が漏れる。
カナミがこのまま壊れてしまうのは嫌だったから…
念入りに、普段ミホちゃんにしてるそれより丁寧にカナミの身体をまさぐる。
「んん、ふ、あっ、ごめんね、……っ!私、ミホちゃん程、胸大きくない……っ!」
自らの乳房に触れた俺の手を見ながらカナミが呟く。
「ふあっ、……っ!くぅ……」
胸を揉みながら、首筋に舌を這わせて、カナミの反応を伺う。
頬を紅潮させながら艶やかな声を吐き出すカナミに、感じてくれているという事実に安堵して事を進めていく。
「……っ!お兄ちゃん……ん、あぅ、あっ、ふ……」
スカートから手を侵入して、ショーツ越しにカナミの秘唇を撫であげる。
「ふあっ、あっ……あっ、あぅ……ん、……っ!」
そこから伝わる熱を感じながら、揉むように手を動かす。
「ん、んん、待って……っ!ショーツが汚れ……ちゃう……っ!」
カナミが言う。
カナミに言われて、俺が一度身体を離すと、カナミは自らのスカートの中からショーツを抜き取る。
「……続き、して?」
ソファーに腰掛けなおして、脚を開き、カナミからは続きのおねだり。
微妙に口を開き、うっすらと愛液を滲ませるそこを見せ付けられて、俺も興奮していく。
「……っ、あっ、あっ、ふ、ん、お兄ちゃん……っ!!」
そこに舌を這わせる俺を呼ぶカナミの声。
今、カナミとしている。
そんな思いを強くして、背徳感に背筋を震わせる。
「あっ、あっ、あっ、ふぁっ……っ、あっ、お兄ちゃん、舌が……っ!」
舌まで挿入しながらのクンニに、カナミは足をピンと伸ばしながら敏感に反応する。
「っあ、ふ、くぅ……あぅ、あっ、ふあっ……っ!」
溢れ出てくる愛液を舐めあげて、それを塗りたくるようにカナミの膣口全体をほぐしていく。
「あっ、そこ……っ、ダメ、感じすぎ……ちゃ、う、」
途中存在を主張するクリトリスは、舌で弾いて、歯をたてる。
「っ、ふあぁ、あっ、ふぅ……っ!」
なおも艶やかな声をあげるカナミ。
口から伝わる、カナミの秘唇の状況にもうそろそろかな。
なんて事を思う。
「カナミ、そろそろ。」
「……っ、うん、来て。」
俺の言葉にカナミが返す。
俺は身体を立てて、自らのペニスを露出すると、カナミの膣口に押し当てる…
「あっ、ふあっ、お兄ちゃんのが、入ってく、る……っ!」
カナミの声を聞きながら、自らのペニスをカナミの奥深くまで沈める。
「あっ、ふあっ……っ!大きい……っ!」
変わらぬ艶やかな声でカナミが口にする。
そこには苦痛の声は交じってなくて、カナミは感じやすい体質なのかな?なんて思いながら、腰を揺すっていく。
「あっ、あっ、あっ、ふあっ、あっ……っ!」
リズミカルに漏れる吐息はエロくて、俺の腰にも自然と熱が篭る。
「ふああぁぁぁ、お兄ちゃん……っあ、ふあっ、お兄ちゃん……っ!」
しがみつくように、俺の手を掴むカナミ。
委細構わずカナミに腰を突き立てる。
「んん、……っ、ああ、あふ、……お兄ちゃん……っ!」
何度も何度も俺を呼ぶカナミ。
先程も感じた背徳感が俺の中で大きなうねりとなる。
「あっ、ふあっ、ふあぁ、……っ!奥、すごい気持ちいいよ……っ!」
コリコリとした感触が伝わる最奥。
そこの感触は俺にとってもすごく気持ち良くて、そこに目掛けて、何度も腰を突き立てる。
「っあ、あっ、ふあぅ……っ、お兄ちゃん……っ!」
またしても呼ばれる俺の名前。
ゾクゾクと快感になって俺の背筋を駆け抜ける。
「お兄ちゃん……っ、ふあっ、あっ……っ!お兄ちゃん……あぅ、っ!」
ただ俺の名前を呼ぶカナミ。
ホントは俺の心の内がわかっているんじゃないだろうか?
そんなことを考える。
一線を越えてしまった今、もうすでに、その言葉の意味は違う。
「あっ……っあ、ふあぁっ!、私、あっ、もう……イッちゃう……っ!」
カナミの為、その言葉を免罪符に踏み込んだ世界。
世の中はどう思うだろうか?
「ふああぁぁぁ……っ!………お兄、ちゃん……っ!」
カナミが全身をピンと伸ばす。
どうやら、達してしまったようだ。
どう思われようと、引き返すことは不可能なのだろうな。
そんなことを思う。
そこまでを考えて、頭のどこかで開き直りに近い感情が沸く。
「……っ!俺、も」
駆け上がってくる射精感。
俺は低く呻く。
「……あっ、っ!中、中が良い、の……っ!、ふああぁぁぁっ!!」
それが限界まで膨れ上がった時、俺は請われるまま、カナミの中に精を放った。
………………………………
『寝とれば良い。』
昼間友人にかけた言葉。
それを思い出しながら、マナカはノートパソコンを閉じる。
兄に依存しながらも、友人に気を使い、強くいようとしたカナミ。
心のバランスを崩してなお、気丈に振る舞う彼女に思うところはあった。
思えば、昼間のあれは、彼女と昼ご飯を共にしようとする兄に対する無意識の行動なのだろう。と思う。
それぐらい、兄に依存したカナミを救う手だては無くて、背中を押した。
マナカは思う。
仲の良かったはずの兄妹はどこで道を間違えたのだろうか。と。
ただ兄に着いて、幸せに暮らしていたはずのカナミがシンジに依存してしまったのはいつからだろうか。と。
そのことを知るには、この街を離れていた期間が分厚い壁となって立ち塞がることをマナカは知っているから、
これ以上の詮索はよそう、と思う。
今頃、シンジはカナミを受け入れただろうか?
あの2人はよく似ている。
カナミがブラコンなら、シンジもシスコンだ。
カナミが寄せる好意に心を揺さぶられてしまうのだから。
きっと、なんであれシンジが断りを入れることは無いだろう。
そんな風に思う。
「人は強いもの、そして儚いもの…ですね。」
マナカの呟きは夜の戸張に溶け込んで、あっという間に消えていった。
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