「………………………」
感じる視線。
ここ最近ずっと感じている。
いや、視線の主は知っているし、視線の理由も知っている。
「はぁ…」
だからこそ、自然と溜息を零す。
「……………………っ!」
それから、視線をそちらへ移す。
視線の主は、常にこちらを見ているのだから、自然と視線同士はぶつかり合う。
目が合った瞬間に、相手は息を飲み、照れたように頬を赤くし、視線を下に向ける。
その表情に、普段俺の見知った、よく見かける姿は微塵も無い。
別段、その事に、不安も何も感じはしない。
だって、余りにその瞳の理由がバカげているから。
「はぁ……」
もう1度溜息を吐く。
さて、どこから、説明すれば良いのだろうか?
同じタイミングで三葉の吐いた溜息が耳へ届く。

………………………………

『あのね、タカトシ君…』
三葉がそう切り出したのは昨日の事。
ちょっと話がある、とのメールを受信して、互いに放課活動を終えてから、教室で落ち合った時の事。
夏に差し掛かり始めて、日の伸びた放課後は、ただその場にいるだけでも、じんわりと汗をかく。
『なんか、タカトシ君を見てると妙な気分になるんだよね…』
唐突にそんな事を口にした三葉。
これは、まさかアレなのか?
だとしたら、全校生徒の規範たる生徒会メンバーとしてどうなのだろうか?
そんなことを思いながらも、続く言葉を待つことにした。
『何て言うのかなぁ、もどかしいというか、ムズムズするというか?』
『…………は?』
そうして続いた言葉に呆然として、マヌケな声を俺は漏らした。
そして、問う。
『何か変な物でも食べたのか?』
今思えば、薮蛇だったと思う。
雉も鳴かずば打たれまい。
回想して、同じ意味の言葉を、頭で弄ぶ。
『ううん。そんな覚えはないよ。ただ…』
『ただ?』
『ネネちゃんから、、ちょっとね…』
変に言い淀んだ三葉。
それよりも、轟さんの名前を聞いた時点で、俺は嫌な予感しかしなかった訳で…
『それが、原因だろうな…』
『え?そうなの?』
『ああ。』
何も知らないであろう、三葉にはそれ以上は聞かない。
と言うか聞きたくなかった訳で、それから先は、
『轟さんと相談する』
それだけを三葉に伝え、その場は一先ず解散となった。



『はい、もしもし。』
その晩。
三葉との事もあり、轟さんに電話をかける。
『夜遅くにゴメン。三葉の事なんだけど…』
『ムツミちゃんのこと?』
『そう。』
妙に冷静に轟さんに短く返事をする。
『なんか、変な事吹き込まなかったか?』
『ううん。別に。』
『……………』
あっさりと否定されてしまう。
それでも、普段の轟さんを知る身としては、訝しく思うわけで、
『ただ、ローターの使い方を教えてあげただけだよ。』
『それだー!!』
電話越しなのに、エロボケ時の特有の良い笑顔が頭に浮かぶ。
思わず大きな声を張り上げてしまう。
『はぁ…』
そして、溜息。
『大丈夫だよ。ちゃんと刺激強く改造しといたから』
『そういう問題じゃない!』
根本的に"大丈夫"の概念が違うらしい。
三葉にローター…
なんだそのまるで結び付かない組み合わせ。
で、そこからさらに俺に繋がる訳だ。
だって、三葉がローターの使い方を指南された結果、俺を見て呆ける三葉がいるわけで…
『で、なにか、俺に纏わることを吹き込まなかったか?』
ずばり核心に迫る。
『オカズ』
『…は?』
『オカズとして推薦しておいたよ。』
『……………………』
つまりはそういう事だった。
あまりの発言に、俺はその後、全ての気力を投げ出してしまった。

………………………………

その晩は、その後三葉に電話。
『必要以上に他言しないように。』
それだけを伝えた。
それから、まぁ、少なからず他の女子もするようだということ、
形は違えと男もそういう感情を抱くことがあるということを付け足しておいた。
それでも、視線を感じるときは、家に帰って行為をすれば落ち着くであろう事を伝え、
ことなきを得ている。
三葉はピュアというか、無垢過ぎるんだよなぁ…
そんなことを思う。
俺だって男だし、年頃だし行為に耽ることが無いといえば嘘になる。
某ツンデレさん的な言い回しをすれば、持て余す訳だ。
ただ、その由縁を理解はしている。
環境が環境だし、悶々としていても仕方が無い、割り切って致す部分もある。
ただ、三葉の場合はどうだろうか?
少なくとも、子供を作る行為ぐらいはわかるはず。
小学4年位の時、あるいは中学の時、その手の授業は受けているはずだから。
ただ、その過程は一切知らないと思う。
その証拠に、回りの思春期共の発言に取り残されているわけで…
つまりは、今、視線を浴びている事に対する根本的な解決は出来ていない。
悶々としているのであれば、自慰行為をすれば良いと伝えているだけ。
その感情がどこから来て、どこへ向かっているのかは、理解させられていない。
「ムツミちゃん、おっぱい大きくなったよね。」
不意打ちでかけられた声に盛大に驚く。


休み時間に三葉について色々考えていた自らを、引き戻されるには十分過ぎる。
「やっぱり、自分で揉んでるのかな?」
言ってる事がおっさん過ぎやしないだろうか?
問題のきっかけとなった人物は、前の席に腰を下ろす。
「あの調子だと、今日もオナニーしそうだよね。」
セクハラ以外の何物でもない。
敢えて適当な相槌のみで、何も答えずにいると轟さんは続ける。
「なんか、でも、あそこまでピュアだと罪悪感感じちゃうよ。」
「そうなのか?」
「うん。」
一応真面目な部分もあるにはあるらしい。
始めて見るそれに若干驚く。
「だったら始めからやるなよ…」
でも、それよりも、毒づいてしまう自分が先に出る。
そして溜息。
「流石に、性別の違う俺には、これ以上はお手上げさ。」
愚痴を零す。
「ねーねー、ムツミちゃん」
って、聞いちゃいねー!!
気付けば横にいたはずの轟さんは三葉の元へ。
謎だ…
直前の少しは常識人っぽいところを持ってる発言(我ながら言ってることが酷い)
と併せて、いまいち掴みきれない。
そんな轟さんは、今、三葉の耳に手を当てながら、何か内緒話をしている。
ただ、その三葉の視線は相変わらずこちらに向いている。
つまりはあの話題の中心にいるのは、明らかに俺なのだろう。
ホントに掴めない人だなぁ…
横目でチラリとそちらを見る。
まぁ、好きに言ってください。
それによって、今置かれている問題が解決するのであれば…
正直言って、先程から掴みきれない雲のような面を見せている轟さんに惑わされているのかもしれないが…
下手すれば、新たにいらないことを吹き込んでるかもしれないしなぁ…
そんなことを考えていると、話しが終わったらしく、轟さんがこちらに向かってくる。
とりあえずこちらに話し掛けてくるつもりらしいので、よぉ、なんて声をかけようと構えた、
のだが、それよりも早く轟さんが口を開く。
「結局解決できるのは、津田君だと思うよ。」
いきなりの言葉。
三葉のところに行く前にそこまでは聞いていたようだ。
つくづく、この人は良く分からん。
「とりあえず、今日、生徒会終わったら、教室に戻って来てってムツミちゃんから。」
戸惑う俺を置き去りに轟さんがそう告げる。
「分かった」
特有の良い笑顔。
やっぱり、この人は掴めない。
そんな事を考えてしまった時点で、俺に断りを入れるなどありえなかった。

………………………………



「ごめんね、タカトシ君。」
放課後。
教室に戻って来て、暫くして、三葉が教室へと戻ってくる。
「いや、気にしなくて良いよ。」
「ううん。気にするよ。ごめん。」
ここのところの三葉はいつもこんな感じだ。
ちょっとシュンとしているような感じだ。
「それで、話って?」
とりあえず本題に入る。
ただでさえ、時間は遅いのだから。
「う、うん。あ、あのね…」
もぞもぞと居心地の悪そうな三葉。
その表情はやはりここ最近よく見掛ける表情。
以前のトレードマークの快活さはなりを潜めてしまっている。
「あのね、ネネちゃんがね…」
ゆっくりだが、確実に三葉は言葉を紡ぐ。
「わ、私はタカトシ君に恋してるんじゃないかって…」
最後に向かいフェードアウトしながら、顔を赤くしながら言う。
…………って、何か凄く重要な事言わなかったか?
状況の説明に終始してしまっていて、後から理解が追いついた脳が混乱する。
「だから、タカトシ君をおかずにして、ろーたーを使うと凄く気持ちいいんだって…」
三葉の口から聞くとは思わなかった単語。
それを用いながら三葉が紡いだ言葉。
思わず目を背けたくなる。
「女の子は皆そうだから、不自然な事じゃないって…」
三葉はそう締め括る。
告白。
形はどうであれ告白。
分かってる。
分かってはいるのだが、ここ数日の三葉に纏わることが、余りにバカげ過ぎていて、
正直、どうすれば良いのだろうか?と逡巡してしまう。
「三葉、俺…」
とりあえず、三葉の言葉に何か、と思って口を開くのだが、何を言って良いかわからず言葉が詰まる。
「この感触は、タカトシ君にしか満たす事が出来ないって、ネネちゃんが…」
俺のそんな様子に躊躇いがちに三葉がそう口にする。
その言葉を聞いた瞬間、脳裏に浮かぶのは轟さんの良い笑顔。
「くそっ、あのメガネ…」
小声で悪態をつく。
「タカトシ君と身体を重ねて、満たして貰ってって…」
どこまで分かっているのかは分からないが、本人は本気で信じて疑わないらしい。
そんな様子がかえって三葉らしいなんて思ってしまう。
だから、
だからこそ、
「お前、意味わかってんのか?」
問う。
「ううん。分からないよ。」
赤い表情のまま、三葉は口を開く。
「タカトシ君のことを信じてるから…」
それはどういう事なのだろう?
そんな風に思う。
「だから、私は、ネネちゃんに教えられた事をするだけだよ。」
ここ最近見かけなかった、意志の篭った瞳を三葉が向けてくる。
話はおしまい。そう言わんばかりに、その意志を携えて、三葉は俺に向かって歩を進める。
「三葉…」
俺の声よりも早く三葉の腕が伸びて来て、俺に絡まる。
「ん、ふ、ちゅ……」
「ちょ、こら……っ!」
そこから、首筋に熱を感じるまではあっと言う間。
三葉に抱き着かれた態勢で、首筋にキスをされる。


「やめ……っ!」
「ふ、ちゅっ、ちゅ……あむ……」
俺が声をあげるのもお構い無しに、三葉は首筋に唇を這わしてくる。
そうして、繰り返されている内にどんどんと三葉との身体の密着度合いが上がっていく…
いや、違うのか?
俺が三葉の事を意識しだしているのだろうか?
「ん、ちゅ……どう?ネネちゃんは、こうすれば、その気になるって…」
「あぁ…」
潤んだ瞳で見上げながら三葉が言う。
キスをするために当然のように密着してきた三葉の最近大きくなった胸が押し上げてくる。
「その気になった?」
なおも問いかけてくる三葉。
こちらに疑問を投げ掛けているにも関わらず、こちらが否定する余地の無い強い瞳。
NOと答えたら、どうするつもりなのだろう、と思ってしまう。
でも、そんな考えはある種無駄な考え。
何故なら、
「三葉、俺も男だから…」
正直言って断る気にならない。
俺だって年頃の男だから。
「うん。分かってる。」
「その気になったら、やめられないと思う…酷くしちゃうかもしれない…」
その気になってしまったからこそ、三葉の意志を伺う。
「タカトシ君の事、信じてるから。それに…」
「それに?」
「身体を重ねることは、私の好きって気持ちをタカトシ君に分ける行為だって、ネネちゃんから聞いたから
私は自分の気持ちも確かめたいし、この気持ちも分けたいと思う。
私は後悔しないから。」
そう言って、赤い頬で三葉は笑う。

………………………………

「ふあっ、ふ、あ…ぅ…っ!」
三葉の耳を甘噛みしながら、最近もっぱら大きくなったと評される胸に触れる。
ブラウスの心地よい触り心地の奥から柔らかさが俺の指を押し返す。
それだけで、脳が沸騰しそうになりながら、その先を渇望する。
「はっ、ふっ……あっ、タカトシ君……っ、」
徐々に荒く指を動かしながら、執拗に舌と唇で三葉の耳を責め立てる。
「ん、あっ……っ」
徐々に熱くなっていく三葉の息遣いが耳朶を撫でる。
その熱い吐息に押されるように、俺の中の興奮も大きくなる。
「ん、ふ、あぅ…ん、ふぁっ、タカトシくん…っ」
ブラウス越しでも三葉の胸が熱を持って、徐々に柔らかくなってくるのが分かる。
そんななのに、これが直に触れたらどうなってしまうのだろうか?
そんなことを考える。
「んんっ、ふ、はっ、ん…ん、あ……、」
その感情は大きくなってもどかしくなる。
「三葉、直にさわって良いかな?」
人間の欲は大きい。
もどかしさまでを感じてしまえば、後は簡単で、すらすらと言葉は口をつく。
「……うん…」
その言葉に三葉は顔を赤くしながらも一応は頷いてくれる。
一体どんなことを考えているのだろうか?
「ううん。気にしなくて良いよ…」
俺の表情にそれが映っていたのだろうか?
ブラウスに指をかけながら、三葉がそんなことを言う。
「タカトシ君がリードしてくれないと私は分からないんだし…」
「あ、あぁ…」
改めて、三葉は無垢なんだなと思う。
そんな三葉が戸惑いながら、俺のリードで俺と交わる…
何とも言い難い気持ちになる。


とはいえ、今更退くことも出来ず…
そんなことを思う心とは裏腹に、三葉の素肌に触れることに思いを馳せてしまう自分自身がいる。
「綺麗だ…」
そんなことを考えている俺の目の前で、三葉はブラウスの全てのボタンを外し終える。
そうして、ブラジャーをたくしあげて、自由になった乳房に思わずそんなことを口にしてしまう。
「恥ずかしいよ…」
そんなことを言いながらも、三葉はけしてさらけ出したそこを隠そうとはしない。
なるほど、同性をして美乳だと形容された三葉のそれは異性として、見事なまでに魅力を感じる。
きめ細かい三葉の肌に、強く主張をする丸み。
その肌の色とは対照の色だけれども、うまく中和して淡く色付く先端。
引き寄せられるようにその先端に口づける。
「……っ!あっ、ふあっ……っ!」
口づけた瞬間に身体を震わせた三葉の反応は直で俺へと伝わってくる。
「っ、あぅ、ふあっ、あっ……っ、あっ、先っぽ気持ち……いい…あ…ふ、」
その言葉は三葉の身体の方も伝えてくる。
口に含んだ乳首は俺の唇を押し上げる。
「んんっ、ふあっ、……っ、あ、あん、ふ……っ、あ、」
快い感触と音声が脳を焦がす。
その衝動のまま腕を三葉の太股へて伸ばす。
「あ……っ!ふあっ、んんっ、」
身体をびくつかせて、手の動きに合わせながら三葉が声をあげる。
「っ、ふあっ、ん、タカトシくん……ふあっ、……っ、1人より……全然、ふあっ、っく、気持ちいい」
そういって、三葉の腕が俺の頭へと回される。
委細構わずに、そのまま吸い付きながら、指を立てて、三葉の引き締まった太股を撫で回す。
「あっ、っあ、あっ……ふあっ、あっ、……っ!」
指が内股に回り、足の付け根に近づけば近づくほど、三葉の艶のある声は色濃くなる。
「ふあっ、っ、気持ちいいよぉ、……っ、あふ…」
敏感に反応を示しながら、声をあげる。
太股に触れる指先に熱が篭る。
「あっ、あぅ、んん……っ、っ、……っ、」
三葉の快感に震える声を耳で心地よく捉えながら、愛撫を続行する。
果たして熱くなっているのは俺の指と三葉自身のどちらなのだろうかと思う。
「んふ、ふあっ、あっ、ん、んん、っ……あふ、タカトシ君……っ!」
きっと、その両方なのだろう。
快感に脳が蕩けているのは俺も一緒。
三葉の感じている姿を目で耳で興奮している。
互いに蕩けて、混ざり合って熱を共有する。
「ん、おかしくなっひゃ……ぅ、っ、くはぁ…」
そして、欲を抱く。
熱を感じる指先が熱源に直で触れたら、その中で溺れたらどうなってしまうのだろうか。と。
「…………っ、く、ぅん!」
またしても、そこまで至れば躊躇いは無くて、すんなりと、指先は三葉のショーツに触れる。
その瞬間に三葉の嬌声は音の無い嬌声に変わる。
口に含んだ三葉の乳房を弄ぶ余裕などもはや無くて、夢中でクロッチの部分をずらして、
三葉のそこに指を沈める。
「ふあっ、あっ……っ、ふぅあっ、指……指……っ、中、ふあっ、こんなに気持ちいいなんて、ふあっ、っ、、私、知らない…っ、」
恐らく三葉自身でさえ、弄ったことの無いであろうところを縦横無尽に動き回る。
「っ、ん、く、ふあっ、あふ……っ、っ!中らめ、飛んじゃ……ふあ……っ!」
指を曲げて、その熱ごと掻き出すように動かすと、呂律さえ怪しく三葉は感じまくる。
「ふぁっ、っ、ふあっ、っ、ん、ん、……ふぁっ、っ、ん、ん、…ふあっ、…っ、っ、っ、んんんんっ!」
瞬間頭に回された三葉の腕から力が抜けるのが分かる。
俺は慌てて指を引き抜くと、三葉が倒れないよう抱き止める。
その態勢で自然と三葉と視線を重ねる。
三葉は蕩けきった瞳で肩で息をしていた。

………………………………



「それじゃ、三葉…」
「うん。」
良い?とは目で問う。
息の整った三葉は机の上。
座して足を開いて、自らの秘所をさらけ出す。
十分に潤っているそこを確認してから、俺はそこにペニスを当てがい、前に突き出していく。
「っ、ん…ふ、はぁ……」
三葉のぬかるみに滑り込んだ亀頭を慎重に前に進める。
「んんっ、ジンジンする……っ、〜〜!!!」
ジンジンすると三葉が声を漏らした次の瞬間には、ペニスに何かが破れるような感覚が伝わる。
三葉の吐く息に苦悶の色が乗るのが分かる。
「っ、いったあああぁぁぁっ……」
柔道で普段からある程度の痛みに慣れているはずである三葉をもってしても顔を歪める。
いつの間にか俺の肩を掴んでいた三葉の手に力が篭って、爪を立て、肉に食い込むのが分かる。
「大丈夫か?」
ホントはこんなことを聞くのも失礼だったかもしれないけれど、『大丈夫』そんな言葉が口をつく。
「っ、っ〜〜っ!」
苦悶の表情を浮かべながら、首を縦に動かす三葉。
嘘だと瞬間的に分かる嘘。
「〜〜っ、…っ、ふっ、」
苦悶の表情の三葉に杭を打ち込んで痛みを与えているのは俺自身。
俺が与えた痛みなのだと自覚してしまうと、一気に脳内が白くなってしまう。
「わ、悪い…」
またしても陳腐な言葉が口をついてしまう。
苦悶の表情を浮かべる三葉は苦々しくて、見てるこちらまで苦しみを覚えてしまう。
「……ん、ん、っ、っ、あっ!……タカトシ君?……っ、」
いてもたってもいられなくて、三葉を抱きしめる。
抱きしめた三葉は良い臭いがして、少しふわふわした気持ちになる。
なんとかして三葉の苦痛の色を取り除きたい。
そして、
─笑顔が見たい
そんな事を自然に思う。
きっと、どこかで、三葉が笑顔でいる事が当たり前になっている自分がいることに気づく。
きっとどこかで、三葉の笑顔に惹かれている自らがいることの証拠なのだろうと思う。
「ふあっ、っ……ちゅ、ん、ふ、ちゅ……」
衝動的に三葉と唇を合わせる。
ふわふわした気持ちはまた違ったものに変化する。
「ん、んちゅ、ふ、ちゅ、……っ、」
快い感覚に何度も何度も調子に乗ってしまう。
変化した気持ちはけして不快なものではなかった。
自らが三葉に惹かれていることを認められたから。
最初は青い衝動だけだったはずなのに、確かに三葉から流れ込んできたそれは、やがて自らを包んでいく。
「ん、ちゅうぅ、ふわ……タカ、トシ君…っ…?」
「三葉……いや、ムツミ。」
何故か名前で呼ばなければいけない気がした。
いつも下の名前で呼んでくれる三葉に失礼な気がして。
「ムツミの気持ち、確かに伝わった気がする。俺もムツミの事を好きみたいだ。」
「……!タカトシ君!」
悔しいけれど、轟さんが言った言葉の意味が分かってしまう。
その言葉を考えてしまえば考えてしまうほど、三葉に対する感情は大きくなる。
「ちゅ、………っ、」
何も言わずにまた三葉と唇を合わせる。
「キスって気持ちいいね……」
徐々に息の整った三葉がそう口にする。
繋がっている下半身も疼きに似た快感を覚えているはずなのに、確かに唇に快感を覚える。
「ちゅ、ふ、ちゅ、ちゅぅ……」
俺の身体に絡み付いた三葉の腕が優しいものになりながら、首筋まで移動すると手繰り寄せられる。
三葉からのキス。
それはやっぱり気持ちいい。


先程の紅潮したのとは違う、薄桃色に染まった三葉の表情にドキドキとしてしまう。
「三葉、そろそろ大丈夫?」
「うん。もう、あまり痛くないよ。だけど…」
「だけど?」
「また名前で呼んでほしいよ…呼び方戻っちゃってる…」
「悪いムツミ。」
思わず苦笑い。
「うん!」
その言葉にムツミの表情に笑顔が張り付く。
「それじゃ、動くな。きつかったら言ってくれ。」
「動く……っ、きゃっ!」
「わ、悪い、大丈夫か?」
ひいた腰に反応したムツミに若干焦ってしまう。
「ううん。違うの…さっき指で弄られた時より気持ち良くて、びっくりしちゃっただけだよ…」
その言葉に胸を撫で下ろす。
キスをしたり、気持ちを伝えたりしたことが、ムツミにリラックスをもたらしたのだろうか?
よく女の人は気持ちの部分が与える影響が大きいなんて聞くしな…
そんなことを考える。
「そっか、なら…」
「んんっっっ、ふわぁ……」
ぬちゃぬちゃと音を立てながら、再びムツミの中に自らを埋める。
「ん、ふわ、ふわぁ、……っ、んんっ、」
それから腰を引き出して、また腰を打ち付ける。
「あっ、ふわ、あ、ふぁっ、……っ、ちゅ、ちゅむ、〜〜っ、」
そのまま、ムツミの唇を啄む。
「ちゅぷ、ちゅ、……ふ、ちゅ、あっ、ふわ……っ!」
上から下から伝わる快感に脳を痺れさせながら、本能のまま、唾液を交換する。
「ん、ふっ、ん、ふぁ、っ、あっ、……ん、中……っ!すごっ……っ!」
ムツミと身体を交わす事に夢中になる。
「あっ、ふあっ、っ、っ、ふあっ……んんっ、ふわあっ、ん、ふ……っ、」
ムツミの喘ぎ声が直接脳に響き渡る。
それも1つの刺激として、押し寄せる波に身を任せる。
「ん、ふわ、……っ、あっ、あっ、あっ、ふあっ……っ、タカトシ君〜〜っ!」
ビクビクと快感に反応を示すムツミ。
合わせるように、きゅうきゅうと収縮を繰り返す膣内。
ムツミが気持ち良くなれば、俺も気持ち良くなって、1つの快感を2人で共有している感覚に陥る。
「あっ、ふあっ、あぅ、……タカト、シ君……っ、気持ちいいょ……っ、ふあっ、」
潤んだ声でムツミが呟く。
「ん、ふあっ、……あっ、っ、ああっ、ふあっ、〜〜!」
ムツミから伝わる快感に押し流されながら、必死に腰を揺する。
「ん、っ、ふあっ、あっ、んん、っ、っ、あっ、あっふぁ……、んん!」
何度も何度も腰を動かすうちに快感にすっかり蕩けてしまって、感覚が麻痺していく。
「あっ、っあ、……っ!っ、ふあっ、んんっ、ふあっ……っ、あっ、っぅん……っ、」
それでも、ムツミへの思いが強く杭を打ち、その場に踏み止まらせる。
「……くっ!」
そうこうするうちに、もう1つ太い芯が打ち込まれる。
突如込み上げる射精感。
「あっ、あぅ、ふあっ、……っ、んん、あっ、」
トロトロに蕩けきったムツミの顔を見ながら、絶頂に向かって突き進む。
「ふぁっ、っ、ふあっ、っ、ん、ん、……ふぁっ、っ、ん、ん、…ふあっ、…っ、っ、っ、んんんんっ!」
そうこうするうちに、限界まで膨らんだそれが爆ぜる。
「……ん、ふ、はぁ……っ、」
放出したそれと同じ色に染まった脳内を正気に戻しながら、目に映ったのは、
ムツミの秘所から垂れ落ちる、少しピンク色の2人の初めての証だった。

………………………………


「あらあら、熱々だね。2人とも。」
それから暫く、それぞれの活動を終えた放課後、ムツミと待ち合わせて帰る下駄箱で
轟さんに声をかけられる。
確かに楽しくお喋りなぞしてたので、そのやっかみを否定する事は出来ない。
あれから、ムツミと何度か遊びに行ったし、身体を重ねた。
最初が唐突過ぎて、コンドームを用意出来なかった為、ちゃんと事のあらましをムツミに説明するのは
一苦労だった。
1番困ったのは、無しでするより気持ち良くないと文句を言われた時。
無垢な少女に、快楽を覚えさせた代償は大きい。
「あ、ネネちゃん!」
ムツミの声が轟さんに返る。
幸いその場は、身体を重ねる事にもっと良くなってくるらしいという言葉で事なきを得た。
情報の出所は勿論目の前の眼鏡女子である。
「今日はこれから伊達メガネ買いに行くんだ〜」
エロゲの主人公よろしく、回想に耽っていた俺を現実に引き戻す、不穏当な言葉。
「ホントに眼鏡かけてるとタカトシ君、もっと気持ち良くなるの?」
「そうだよ、メガネ萌えって言って…」
「んなわけねーだろ!」
未だに轟さんには色々入れ知恵されてる様子のムツミだった。
そんな俺達の横でニコニコ笑う轟さん。
相変わらず何を考えているかは分からない。
無垢だったムツミが染まるきっかけを作った轟さん。
その実績は罪深い。
ただ、本当はムツミの気持ちを知っていた。
そんな気もする。
どちらにせよ、俺にとっては良い事だったのかもしれない。
ムツミから気持ちを受け取って2人で共有する関係になれたのだから──

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