―きっかけは…ほんのささいなものだ。

―とある日曜日、昼下がりの城島家。

その日シンジはどうしようもなく暇だった。
どこかに出かけるにしてもまず先立つ金がない。じゃあ勉強でもすればいいのだがやる気は起きない。
やる気が起きなければゴロゴロしてるしかない…とまあ、悪循環というわけで。
退屈しのぎの漫画雑誌も読み飽きて、やることがなくなったシンジはソファーにごろりと寝転んだ。
さあて…何かいい暇つぶしはないものか…

そんなシンジに、ふと疑問が浮かぶ。
「そう言えば…女物のパンツってあんなんだったっけ?」
それは今読んでいた雑誌に載っていた、とある漫画の最終回。
そのラストシーンにパンモロのシーンが出て来たのだが、
その下着にシンジはどこか違和感を感じたのだ。

…まあ、しょうもない事ではあるが…どうしても気になる。
こういう事は一旦気になりだすと止まらないもので。
考えあぐねた彼は、やがて「これはぜひとも実物を見て確かめなければ!」という発想に至った。
…しかし、どうやって調べようか?
AVやエロ本なら自分の部屋にあるが、わざわざその為に二階へ行くのも…正直めんどい。
ていうかアホらしい。
…とは言うものの、身の回りにあるものでそれを確かめる術はない。
女性の下着関係のチラシでもあればと思ったが、そう都合よくあるわけがない。


そんな事を考えつつ、ふと外に目をやるシンジ。
庭には城島家の洗濯物が風にゆらゆらと揺れていた。
カナミが買い物に出掛ける前に干していったものだ。
シンジの目に映るのは白いワイシャツや靴下、そして―
それらに混じって吊るされている―妹の下着。
(あ…カナミの…パンツ…)
ここでシンジに短絡的な考えが浮かんだ。
(そっか…あれで確かめればいいか)
運のいいのか悪いのか、カナミはまだ買い物から帰っていない。
(チャンスは今しかないな…っておいおい…)
何のチャンスだよ、と自分に突っ込みを入れつつ、早速シンジは庭へと出た。

「あー、いい天気だな…」
ポカポカとした陽気と心地よい春の風がシンジを迎え入れる。
おかげで干してある洗濯物はすっかり乾いているようだ。
「さて…と」
庭に出た目的を果たすべく、シンジは洗濯物の干してある場所へと向かう。
「これだな…」
そして彼は竿にかかる"それ"へと手を伸ばした。
「別に…ただ…調べるだけだからな…」


続いてシンジが付いている洗濯ばさみを外すと、
汚れのないそれは彼の手の中にふわりと落ちた。
決して派手でないシンプルな下着。実にカナミらしいとも言える一品。
いまだ処女のカナミは、こういう所は結構ピュア?なのだ。
「…やっぱパンツは純白に限るよな、うん」
そう独り言を呟いたあと、シンジは両手でその生地を広げた。
「さて…と…おかしいところは…?」
そう言って早速カナミのショーツを調べ始めるシンジ。
…が、百聞は一見に如かず。疑問の答えはすぐに見つかった。
「…ああ…なるほどね」
結局のところ大した事ではない。やはり形が微妙に違ったのだ。
こうしてあっという間に疑問が解けたシンジは、それを元の場所に戻すことにした…

…だが。シンジの手は意思に反してそれを離そうとはしない。
それどころか、いつの間にか彼の目はその純白の下着に釘付けになっていた。


―何のことはない。ただの下着だ。しかもこれは妹の…

…下着に欲情…?…俺が?まさか?

カナミの下着を握り締め、じっと見つめてるこの姿は…どこからどう見ても変態じゃないか!!

…さあ、いいから早く元の場所に戻すんだ、俺…


シンジは頭の中でそう何度も自分に言い聞かせるが…。
…残念ながら、身体は欲望に忠実だった。


(…ごくり…)

黙りこくったまま、しばしその白く妖しい生地をじっくりと眺めた後…
そっとそれに顔を近づけ…シンジは匂いを嗅いだ。

"くん…"

…別に変な匂いはしない。洗濯したばかりなので当然と言えば当然だが。
石鹸のほのかな香りが、シンジの鼻腔をくすぐる。
春の日差しをたっぷりと浴びたショーツはふんわりとしていて…そして暖かい。
(ふう…いい匂いだ…って何やってんだ…オレ…)
若干の後ろめたさを感じながらも、シンジはその背徳的な己の行為に激しく興奮を覚え始めていた。

―ああ、局部を覆うただの布きれに過ぎないのに…

―なぜ男は女のパンツにこうも心を揺り動かされるのか…

それは人類(というか男にとっての)永遠の謎。
"すうう…"
シンジはショーツを鼻に押し付け思い切り息を吸い込み、
そして手でその肌触りを十分に楽しむ。
(洗ってなかったら…もっと良かったかも…)
既に頭のネジが一本取れてしまったのか…もう自分でも何を言っているのか分からない。
今のシンジにはもはや周囲など全く気にならない。
たかが下着、されど下着の完全な虜となった彼。
やがてシンジの右手が己の股間へと伸び―
―チャックを下ろし、天を仰ぐ己のイチモツを取り出そうとした―


"ガサ…"

―とその時―シンジは背後に誰かの気配を感じた。
はっと我に返ったシンジが後ろを振り向くと…


ジャーン!!ジャーン!!ジャーン!!

「げえっ、カナミ!!」


「…お…にい…ちゃ…ん…?
…何…やって…んの?」

買い物から帰り、洗濯物を取り込もうと庭に来てみれば―
―いきなり目に入ったのが、妹の下着の匂いを夢中で嗅ぐ兄の姿。
流石のカナミも、ただあ然とした顔で立ち尽くしていた。
「いや…その…これは…」
「これは…なに?」
シンジに弁解の余地は…まあ、まずあり得ない。
「私の下着で…何しようとしてたの?…まさかオナ…」
「いや!…ちがっ…いや…その…」
言葉に詰まるシンジ。そしてそんな兄をじっと見つめるカナミ。
そんな気まずい空気にやがて耐え切れなくなったシンジは、
「は…はい…これ…じゃ…」
そう言ってカナミに持っていた下着を手渡し―
「え…お兄ちゃん…待って…!」
―妹の呼び止める声も聞かず、自分の部屋へと駆け込んだ。


―うわぁああああ…最低だ…オレ。

なんて事を…どう考えても変態だ…

違う、ただパンツの形が気になっただけで…オレはぁあああ…!!


―後悔、そして自己嫌悪。
自分が何をしたのか、そしてその行為を誰に見られてしまったのか…
布団の中に篭って悶え苦しむシンジ。
―結局シンジはその日ずっと部屋から出て来れなかった。

一方で庭に取り残されたカナミは、自らの下着を持ったまま立ち尽くしていた。
その顔は…困惑半分、嬉しさ(?)半分と言ったところ。
自分(の下着)をオカズにしてくれたのが嬉しいってことなんだろうか。
「お兄ちゃん…溜まってるのかな…」
兄のいる二階の部屋を見上げながら、カナミはそっとそう呟いた。


そして次の日の朝…シンジが目覚めると、机の上にはメモと一緒に妹の下着が置かれていた。
メモにはカナミの字でひと言…「プレゼント」と書かれている。

…確か部屋には鍵をかけておいたはずなのだが…
そんなささいな事は彼にとって、正直もうどうでも良かった。
「これを…使えってコトだよな…」
ここは妹の好意を素直に受け取るべきだ―と開き直ったシンジは、
その魅惑の布切れを握り締め、そそくさとベッドに潜りこんだのだった。

(つづく?)

兄は発情期〜第二章〜

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