最終更新:ID:N0wo6kp1gA 2012年02月01日(水) 15:58:42履歴
雪のちらつく中、2011年の12月25日が終わろうとしている。
「今年は……楽しくなかったな……」
自室で一人、ベッドに横たわってアリアはつぶやく。
つい今しがた帰ってきてそのままの、赤いドレス姿のままで。
今年は三連休で、学生の身分なら喜ばしいはずであった。
七條家と言う、特殊な環境にあっては仇となった。
『連休なのだから、お前も来なさい』
父のその一言でアリアはパーティーに連れ出された。
泊りがけで、三日間。
楽しいはずの三連休は、愛想笑いを振りまくだけの三日間になってしまった。
去年の今ごろは、心の底から笑っていたはずだ。
心許せる仲間と共に。
笑顔で過ごしていたのに。
「一人、か……」
アリアは思う。
彼らは、彼女たちは、楽しんでいただろうか?笑っていたのだろうか?
楽しんでいて欲しい。笑っていて欲しい。
参加できなかったのは自分の都合なのだから。
けれど――
ボスンっと枕に顔を埋める。
「だめだな、わたし……酷いこと考えてる」
けれど。
心の何処かで。
弱い自分が。
汚らしい自分が。
零(こぼ)す。
ずるいよ……と。
考えまいとすればするほど。
イケナイ感情が溢れ出す。
ぎゅっと目をつぶり、考えないようにしても。
溢れ出す。
醜い、嫉妬。
「……っ!」
ともすれば表に出そうになるその感情を出さないよう、幼子のように丸くなる。
「……」
ポツリとつぶやいた言葉に、答えるものはない。
――コツンッ――
耳に届いたのは、窓を叩く音。
閉ざそうとした心をノックするかのように、コツン、コツンと、何度も窓を叩く。
丸めた身体をほどく。
ベッドから降り、窓際へ。
外の様子を覗い、目を見開く。
「っ!?」
声すら出せず、窓を開く。
出そうとする声は言葉にならず、まるで金魚のようにパクパクと口を開閉するばかりで。
幻かと目をこすってみても、間違いなく彼はそこに居て。
「……」
なにも言えず、ただそこに佇むだけのアリアに、彼が身振りで伝える。
――窓から、離れて――
僅かに木が軋み、枝から落ちる雪。
そして――枝から窓へと飛び移ってきた、彼。
夢中で、抱きついた。
「……」
なにも言えない。
彼も、なにも言わない。
けれど、アリアに伝わってきたことがある。
「……からだ、冷え切ってるよ。ずっと、待っててくれたの?」
彼は笑顔で答え、出島さんの協力のおかげ、とネタばらしをしてくれる。
「そっか……ずっと、待っててくれたんだ」
身体にまわした腕に、ぎゅっと力をこめる。
彼の冷えたからだが、とても、温かい。
閉ざそうとした心は今は全開で。
だから……
「……大好きです…誰よりも……あなたが」
そう言って、口付けた。
夜は、まだ、長い。
END
「今年は……楽しくなかったな……」
自室で一人、ベッドに横たわってアリアはつぶやく。
つい今しがた帰ってきてそのままの、赤いドレス姿のままで。
今年は三連休で、学生の身分なら喜ばしいはずであった。
七條家と言う、特殊な環境にあっては仇となった。
『連休なのだから、お前も来なさい』
父のその一言でアリアはパーティーに連れ出された。
泊りがけで、三日間。
楽しいはずの三連休は、愛想笑いを振りまくだけの三日間になってしまった。
去年の今ごろは、心の底から笑っていたはずだ。
心許せる仲間と共に。
笑顔で過ごしていたのに。
「一人、か……」
アリアは思う。
彼らは、彼女たちは、楽しんでいただろうか?笑っていたのだろうか?
楽しんでいて欲しい。笑っていて欲しい。
参加できなかったのは自分の都合なのだから。
けれど――
ボスンっと枕に顔を埋める。
「だめだな、わたし……酷いこと考えてる」
けれど。
心の何処かで。
弱い自分が。
汚らしい自分が。
零(こぼ)す。
ずるいよ……と。
考えまいとすればするほど。
イケナイ感情が溢れ出す。
ぎゅっと目をつぶり、考えないようにしても。
溢れ出す。
醜い、嫉妬。
「……っ!」
ともすれば表に出そうになるその感情を出さないよう、幼子のように丸くなる。
「……」
ポツリとつぶやいた言葉に、答えるものはない。
――コツンッ――
耳に届いたのは、窓を叩く音。
閉ざそうとした心をノックするかのように、コツン、コツンと、何度も窓を叩く。
丸めた身体をほどく。
ベッドから降り、窓際へ。
外の様子を覗い、目を見開く。
「っ!?」
声すら出せず、窓を開く。
出そうとする声は言葉にならず、まるで金魚のようにパクパクと口を開閉するばかりで。
幻かと目をこすってみても、間違いなく彼はそこに居て。
「……」
なにも言えず、ただそこに佇むだけのアリアに、彼が身振りで伝える。
――窓から、離れて――
僅かに木が軋み、枝から落ちる雪。
そして――枝から窓へと飛び移ってきた、彼。
夢中で、抱きついた。
「……」
なにも言えない。
彼も、なにも言わない。
けれど、アリアに伝わってきたことがある。
「……からだ、冷え切ってるよ。ずっと、待っててくれたの?」
彼は笑顔で答え、出島さんの協力のおかげ、とネタばらしをしてくれる。
「そっか……ずっと、待っててくれたんだ」
身体にまわした腕に、ぎゅっと力をこめる。
彼の冷えたからだが、とても、温かい。
閉ざそうとした心は今は全開で。
だから……
「……大好きです…誰よりも……あなたが」
そう言って、口付けた。
夜は、まだ、長い。
END
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