「…怒らないんですか、先輩?」
「ん?なにが?」
「だって…教え子のマサヒコ君と…こんなことになっちゃったのに」
その日の夜、いくらか迷ったものの…アイは、中村に今日のことを報告していた。
だが、携帯の向こう側の反応は予想に反してごくごく淡泊なものだった。
「ははは。それが襲われたとか、遊びだけの関係とかならともかくさ。真剣なんだろ?マサとあんた」
「それは…もちろんですけど…」
「ならいいじゃん」
「…やけにあっさりしてますね」
「ま、こーゆーのはさ、誰が止めようが結局ふたりの問題なんだしね。それに…」
「?なんですか、先輩?」
「あの日さ、あんたたちふたりが一緒に歩いてるの見てて思ったけど…すごくね、しっくりいってたし」
「そ、そうですか?」
「はは。あのね、アイ。男と女ってのは不思議なもんでさ。
どんな美男美女でもなんだか妙に似合わないふたりってのもいるだろ?
あんたたちは大丈夫。すごく…一対の絵みたいにハマってた」
「は、はい!ありがとうございます!」
これが中村なりのふたりへの祝福だということに、アイも気付いていた。
「ま、あとは…ミサキちゃんやアヤナにバレないように上手くやること。それと…」
「はい」
「一応、奴も受験生なワケだから…ハメを外しすぎないようにね?
あんたも分かってるだろうけど、志望校合格が最優先なのには変わりがないよ?」
「はい!」
「ま、一ヶ月に一回ハメるぐらいならご褒美になっていいかも…」
「…結局そっちですか、先輩」
若干とってつけたような感じもあるが、最後はいつもの中村であった。
§

そしてそれからしばらくして、再びアイのマンション。
「ふふふ、幸せそうねえ、アイ。満たされてる〜って表情してるわよ」
「そ、そんなこと…からかわないで下さい、先輩!」
「あらあら…真っ赤になって…可愛いわねえ」
愉快そうにアイを見る中村。中間試験も終わり、夏休みの前に生徒ふたりの成績、
今後の授業計画などを雑談…。もとい、相談しているところであった。
「でさ…アイ、まさかとは思うけど…」
「な、なんですか?」
「もう、ヤった?」
「ななななな、ななんなん、ななな」
「…その様子だとまだ清い交際みたいね」
「だって、先輩!マサヒコ君はまだ中学生…」
「バカねえ。そのくらいの頃が一番ヤりたい盛りじゃない。あたしが中学生の頃なんて…」
「ま、マサヒコ君はそんな子じゃありません!!!」
(ほほお…カマかけただけだったのに、本当に清い交際みたいね…。それはそれで…)
ここしばらくは良いお姉さん状態だった中村だが、むくり、といつもの悪戯心が頭をもたげてきた。
「アイ!」
「は、はいッ!」
「いいこと?確かにハメを外すのはダメ!でも、夏休みよ?マサのまわりには…誰がいる?」
「え…それは…」
「ミサキちゃんに?アヤナに?リン?そうよ!ズバリ言うわよ?…マサは、モテるのよ!」
「!!!」
いつもの彼女が戻ってきた。細木○子のようにテンポ良く言葉を連ねてアイに迫る。
「特にミサキちゃんははっきりマサに好意を持っている…てことはよ?おあずけ状態のマサヒコが、
我慢できなくなって一夏の体験を済ましてしまう可能性は否定できないわ!」
「!!!!!」
§

強引な理論展開である。しかし、当のアイは顔色を蒼白にしてその言葉を聞いていた。
「マサを奪られたくなかったら?そこで導き出される結論は?イエス!
マサの筆下ろしを…ほかでもない恋人兼家庭教師のアイ、あんたがしてあげるの!」
「は、はい!」
「よろしい!その意気よ!小便臭いガキどもに負けるわけにはいかないでしょ?」
「はい!!」
完全に中村のペースである。催眠術にかかったようにその言葉を信じ込むアイであった。
§
そして舞台変わってマサヒコの部屋。今日はマサヒコと中村、ふたりきりである。
「なるほっど〜、やっぱり清い関係ってわけね?」
「…妙な表情はせんで下さい。俺は、先生を守るって約束したんですから」
(守る…まもる…マモル…なるほどね…)
中村はニヤニヤしながらマサヒコの言葉を聞いていた。
「ん〜でもねえマサ?女の子の心理ってのも微妙なもんで…。
男があんまり手を出してこないと、逆に自分に魅力が無いせいだなんて思っちゃうもんよ?」
「え…」
「ましてアイはあんたよりも年上…経験こそないけど、心も体も成熟した大人の女。
心の底では間違いなくアンタからのアプローチを待ってるはずよ?」
「…せ、先生はそんな人じゃないと思いますけど…」
「おろ〜♪弱気になってきたじゃん、マサ?もしかして女の子には性欲なんて無いって思ってる?
ざ〜んねん!男と同じくらい…いや、下手したらそれ以上に、女の子にも性欲はあるのよ?
そうじゃなきゃ、この世界は成立しないでしょ?アイだって…アンタに抱かれることを…」
「そ、それ以上言うな!」
「ふふふ…。若いわねえ、マサ。でもね、そんな風だと…アイだって愛想尽かしちゃうかもだよ?」
「…」
反論すらできず、言葉少なになってゆくマサヒコ。
§

「あたしもね、無理矢理ヤれって言ってるつもりじゃないよ?勿論、
アンタがアイを傷つけたら許さない。ただね、『守る』ってことに固執して欲しくないんだ。
もしアイがそういう関係を望むなら…。アンタも拒否したりせずに、思いに答えてやって欲しい」
「…」
「ま、お姉さんの余計なお世話だと思ってくれればいいよ。邪魔したね」
「い、いや…こっちこそ…すいませんでした」
(ふふ…。こういうときは、最後に本音を少し混ぜると…効果絶大なのよね…)
小刻みな右フック連打の最後に、強烈なアッパーカット。策士中村、流石の試合巧者である。
マサヒコはなにも言い返せぬまま、固まってしまっていた。
「じゃね、マサ…。あ、コレ、最後にプレゼント」
「はい?…ってコ@こ?こ&コ、コレは?」
「はれ?コンちゃんの実物見たことないの、マサ?」
「こここ、こんなもん、見たことあるわけ…」
「なんなら、つけ方教えてあげよっか?あたし結構上手だけど?」
「い、いい加減にしろぉぉぉ!**もヴァ?」
「ストップ!マサ!」
マサヒコの口を右手で塞ぐと、中村はそれまでのニヤニヤ顔から一転、真剣な表情になった。
「?…?」
「さっき、アイを守るって言ったよね?あたしも、アンタがアイを傷つけるのは許さないって言った…」
「ふぁ、ふぁひ」
「セックスは…悪いことじゃないわ。それを、マサもわかって欲しい。
本当に好きなもの同士が愛し合うことは、むしろ自然だし素晴らしいことよ。ただね…。
快楽と同時に、取り返しのつかないリスクもある。だから、キチンと避妊すること。わかった?」
「…ふぁ、ふぁふ」
最後に強烈なボディーブローまで喰らったマサヒコは、
中村の帰った後なにもできずにしばし呆然とするのだった─。
§

「ま、マサヒコ君、いらっしゃい…」
「あ、はあ…どうも…」
またも舞台はアイのマンション。8月1日、マサヒコの誕生日を祝うため、
アイが彼を部屋に招待した─。勿論、彼女には中村の策が完璧に効いていたわけである。
「15歳の誕生日、おめでとう、マサヒコ君。さ、入って入って」
「あ、ありがとうございます、先生」
「じゃあ…ちょっと待っててね?お祝いのケーキ持ってくるから」
「あ…はい」
例のストーカー事件の前後にはマサヒコもアイの部屋に一時期通っていたものの、
以来久々の訪問である。今更だが、若い女性の部屋の持つ独特の空気に少々戸惑っていた。
「おめでとう、マサヒコ君。じゃ〜ん、ケーキで〜す♪さあ、ローソク吹き消して?」
「な、なんか子供っぽいですよ」
「いいの…だってさ、初めてだよね?ふたりっきりで…こんな風にお祝いするの」
そう言って、アイはじっとマサヒコを見つめた。
(な、なんだか…今日の先生、妙な雰囲気だぞ?まさかまたメガネに…吹き込まれたか?)
さすがはマサヒコ、この場の雰囲気に飲まれることなく冷静な判断である。
「あのですね、先生?もしかして…」
「えーっと…じゃ、あたし歌うね?はっぴぃばーすでぃ、とぅ、ゆう〜♪はっぴぃばーすでぃ、
とぅ、ゆぅ〜♯、はぴいばーすでぃ、でぃあ♭マサヒコ君♪はっぴぃばーすでぃ、とぅ、ゆう♪」
少し気恥ずかしげに頬を染め…それでもマサヒコのために歌うアイ。
そんな健気な彼女の様子を見てしまえば、さすがにマサヒコも…。
“ふーーーーーーーっ”
それ以上は言えず、ノってしまうわけである。
「わーい、おめでとう、マサヒコ君」
「あ、ありがとうございます」
「じゃあ、ケーキ食べよっか?マサヒコ君…はい!」
§

満面の笑みでケーキを取り分けて差し出すアイ。
その無邪気な表情に、それ以上なにも言えなくなるマサヒコであった。
(この笑顔見せられたら…反則だよ…)
そう、この笑顔にヤられたんだよね、マサヒコ君?
「ねね、マサヒコ君、早くこのケーキ食べてみて?」
「あ、はあ…あ、美味しいですね、これ」
「わーい、褒められちゃった♪昨日からあたし頑張って作ったんだから♪」
「!?って、手作りだったんすか?」
「ウン!頑張った甲斐があった〜♪」
(ええ?け、結構大きいし…凝ってるよ?)
驚き、感謝するとともに…マサヒコの心の中に芽生えたのは、アイへの純粋な愛おしさ。
(先生って…本当に、可愛い…よな)
にこにこと笑顔のまま、ケーキを頬張るアイの様子にマサヒコは少しの間見とれていた。
「…ねえ、マサヒコ君?ケーキあんまり美味しくないの?」
「?いや、美味しいですって…なんでですか?」
「だってあんまり食が進んでないみたいだし…」
「そ、そりゃ先生に比べれば…」
「あ、ひどーい」
「い、いや…だって…あの…すいません」
怒ったふりをするアイに向かって、マサヒコは手をあわせて謝る。
しばらくそんな状態を続けたあと─顔を見合わせて─ふたりは微笑んだ。
「でもさ、マサヒコ君と初めて会ってから…もう2年もたつんだね」
「そうですね…もうそんな前になるんですね」
「…ありがとう、マサヒコ君」
「え…なにがですか?」
§

「あたし…上京してきて、右も左もわからなくて…知り合いって言ったら先輩くらいで。
でね、先輩のすすめで家庭教師のバイトして、マサヒコ君に出会ったんだ」
「…そうだったんですか」
「それから…毎日がすごく楽しくなったんだ。ふふ…今思えばさ、あのときからだったんだよね」
「?なにがですか?」
「…初めてマサヒコ君に会ったときから…可愛い子だな、って思ってたの。
あのときから…あたしは、恋に落ちていたのかも…」
「!」
突然の告白に驚くマサヒコ。アイは顔を赤くしながらも…どこか楽しそうに続けた。
「ふふ…。運命のひとってさ、出会った瞬間にもう…決まってるんだね」
「せ、先生…」
それは少女のように夢見がちな言葉だったかもしれないが─。アイがうつむき、
恥じらいながら言う姿は可憐そのものだった。そして、マサヒコの心にも強く響いていた。
「俺も…初めて会ったときから、きれいなひとだなあって…」
「ふふ、マサヒコ君、無理しなくても良いんだよ?」
「無理なんて…してません。先生は、俺の初恋の人なんですから」
ふたりは互いに見つめ、微笑み─、吸い寄せられるように近づくと…。
“ちゅ…”
ゆっくりと、気持ちを確かめあうように…味わうように…唇を重ねた。
「好き…マサヒコ君…すきぃ…」
「俺も…好きです…せんせい…」
そう呟くと、ふたたび…みたび…ふたりは唇を重ねた。
「マサヒコ君…今日のキス、甘い…」
「え?あ…そりゃそうですよ、さっき俺らケーキ食べたし…」
「ううん…マサヒコ君のくちびるが…甘くて…柔らかくて…美味しい…」
とろん、と目を潤ませてマサヒコを見つめ、そのまま貪るようにマサヒコの唇を吸うアイ。
§

普段お色気ゼロなどと言われるアイだが…。女のウェポン乱発射である。
(う…うわ?な…なんだ?今日の先生…いつになく…超色っぽいぞ…?)
戸惑うマサヒコだが、実際、彼女の肉体には既に火が点いてしまっていた。
アイの右手が─ゆっくりと、マサヒコの来ているTシャツへと伸び、それを脱がそうとしていた。
「?!?ちち、ちょっと先生!待って!ストップ!」
「…マサヒコ君?…ダメ?」
「あ、あの…ダメとかじゃなくて…」
膝を崩した形で座り、悲しげに…マサヒコを見るアイ。その少し濡れた瞳の色っぽさに、
マサヒコは頭の裏が痺れるような…激しい欲望を覚えつつも、なんとかそれを抑え込んだ。
「先生…メガ…中村先生に、なんか言われたでしょ?」
「え…」
「やっぱり…あのね、先生。俺は、そういうんじゃなくて、
お互いが…自然にその…そういう状態になるまでは…」
「今じゃ…ダメ?」
「だ、だから…」
「あたしたちさ、付き合うようになったのは最近だけど…もう、2年以上も一緒にいるんだよね?」
「は、はい。それは…そうですけど…」
「だったら…自然じゃない?あ…もしかして、マサヒコ君…。
六つも年上なのに、処女って…気持ち…悪い?」
「!?い、いや、別にそんなことは…」
「そうなんだ…そうだよね、あたしみたいな女はやっぱり…」
自虐モードに入ろうとするアイを、マサヒコは慌てて止めた。
「ち、違いますッ!あの、先生は十分すぎるほどに魅力的ですよ?あの、ただ…。
俺の気持ちの整理がつかないっつーか…それに、俺は先生を守るって約束したんだし…」
「マサヒコ君の気持ちはね、嬉しいの。…でも…」
噛み合わない会話が続き、それにアイは少し苛立ち始めていた。
§

「ねえ…マサヒコ君、あたし…初めてのひとは…君って、決めてたんだ…」
上目遣いで、ねっとりとした視線をマサヒコに向けるアイ。女のウェポン2発目発射。
「え…」
「だから…えっと…もう、女の方から、なに言わそうとしてるのよッ!」
…せっかく雰囲気出したのに、アイ、逆ギレ。
(だ、だから…言ってんのはさっきから、そっちだって…)
そして更に戸惑うマサヒコ。この期に及んで妙に冷静なそんな彼の態度に、
アイはなぜかまた激しく─キレた。突然、彼を押し倒した。
「?!せ、先生?」
「う〜、マサヒコ君!」
「は、はい」
「あたしを守るとか…そんなことは、どうでもいいの!君は…本当に、あたしのこと、好きなの?」
「そ、そりゃ…好きですって。さっきもそう言っ…」
「ならどうなの!あたしと…エッチしたくないの!」
「!@%はあ?」
「あたしの…おっぱい触りたくないの?あたしの…お尻やあそこに、…もが?」
さすがにそれ以上は聞きたくなかったマサヒコは、アイの口を両手で塞いだ。
「あの…先生、はっきり言います。そりゃ、俺だってしたいです。…いいんですね?本当に?」
「う…うん」
いざとなると、急にしおらしく女の子っぽくなってしまうアイであった。
マサヒコは上体を起こすと…。アイをじっと見つめ、そのままキスをした。
“ちゅッ…”
アイは、嬉しそうだった。マサヒコは、アイの艶のある黒々とした髪を軽く梳いた。
「初めて会った頃より…先生、髪伸ばすようになりましたよね…」
「ふふ…マサヒコ君も…なんだか最近、伸ばすようになったよね?
あたしたち…姉弟みたいに似てるって先輩にからかわれたこともあるんだよ?」
§

「…俺もクラスの奴に、『お姉さんか?』って言われたこと…でも、そうじゃなくて良かった」
「?あー!、あたしみたいなお姉さんじゃ嫌だってコト?」
そう言ってふくれっ面を作るアイ。だが、マサヒコは微笑んだままアイの髪を撫でた。
「だって…姉弟だと、キスも…こんなことも…エッチもできないでしょ?先生」
「…う、うん」
マサヒコの優しく穏やかな笑顔に見とれ、思わずふにゃ〜っとした表情になってしまったアイ。
「先生…」
マサヒコは、キャミソールの肩ストラップに手をかけ、外した。
“する…”
淡いグリーンのブラがマサヒコの目に飛び込んできた。
そして大きすぎず…小さすぎず…。だが、男の欲望を刺激するのには十分なサイズの、
アイの胸の谷間がそこにあった。マサヒコは、思わず唾を飲み込んだ。
「きれいですね…先生の、胸」
「あ…ありがとう、マサヒコ君。でも…えっと…」
「…じゃ…外しますよ?ブラジャー」
なかなか自分からは言い出せず、もじもじとしているアイの意を察したマサヒコは、
ブラのホックに指先をかけようとしたが…思っていたところにそれが無く、手間取ってしまっていた。
「クスッ…」
「あ…えと…すいません、先生…あの…」
ビギナー丸出しの自分を笑われたのかと思い、恥ずかしさで真っ赤になってしまうマサヒコ。
「えへへ〜…嬉しいね、こういうの」
「へ?」
「マサヒコ君ってさ…大人びてて、クールで…あたしよりよっぽど慣れてそうな感じだったけど…。
やっぱり、初めてなんだよね?あたしと同じで。…ウン、嬉しいよ、マサヒコ君!」
マサヒコは、そんなアイの言葉に少しホッとしていた。
「あのね…コレ、フロントホックなの」
§

“ぱちん”
アイは胸の谷間にあるホックを外した。白く、見るからに柔らかそうな乳房が露わになった。
(うわ…思ってたより…ぜんっぜん…すげえ…きれいだよ…)
マサヒコはそう思いながらアイのそれに手を伸ばした。
“すふ…”
(わ…やわらかい…)
すべすべとしたその肌触りと、張りのある桃のようなふくらみに言葉を失うマサヒコ。
「んっ…」
頬を染めたアイは、マサヒコの手のひらの感触に軽く声をあげた。
「あ…あの、先生…」
「な…なに?」
「先生のおっぱいに…口を…つけても…いいですか?」
「う…うん」
雪のように白いそこに手を添えたまま…ゆっくりと顔を近づけ、マサヒコは乳房にキスをした。
“ちゅ…”
「あ…」
「先生…可愛い…です」
“ちゅ…ちゅ…”
そのまま、マサヒコは円を描くようにキスを続け…薄桃色の乳首に口づけようとしたが…。
「…マサヒコ君、ごめん…ちょっと…」
アイの言葉にさえぎられてしまった。
「…先生?俺もしかして、あの、下手…ですか?」
「ううん…違うの…その…あたしも初めてで良くわかんないんだけど…えっと…」
そう言ったあと、悪戯っぽい微笑みを浮かべたアイは、テーブルの上に置いたままの
ケーキのクリームを両の人差し指で拭い、そのまま自分の乳首に付けた。
「?せ、先生?」
§

「へへへ〜、…実はね、これ…やってみたかったの…マサヒコ君、あたしをめ〜しあがれっ♪」
(な…なんの…AVで見たんだ、この人は…)
さすがに呆れるマサヒコだが…笑顔で彼の到着を待つアイのノリノリの表情に、仕方なく…。
“ちゅぷっ…ちゅ”
「あ…んっ…」
(甘い…のは、当然か)
声をあげるアイとは対照的に、マサヒコは少し冷めながら…だが、実は結構楽しんでいた。
“ちゅろ…ぷちゅ…”
「はんっ…は…」
マサヒコは、集中して生クリームのついたアイの乳首を舐め続けた。
その度に、アイが艶めかしい声をあげ、彼の興奮も徐々に高まりつつあった。
“すっ”
マサヒコは、キャミソールをそのまま膝下まで下ろした。
ブラと同色の、グリーンのパンティの中におそるおそるといった感じで手を伸ばす。
「…マサヒコ君?」
「あ、すいません…まだ、あの…嫌ですか?」
「ううん…そ、そうじゃなくて…そろそろ…ベッドに…。それに…マサヒコ君も、脱いで…」
「あ…そうですね」
どこかぎこちなく…ふたりは言葉を交わしていた。そんな部屋の空気を変えようとしたのか…。
マサヒコは、立ち上がろうとしたアイを手で制すると、彼女の首と腰に手を回して抱き起こした。
「ま、マサヒコ…君…」
「いいから…俺が…先生を…運びます…」
うっとりと、マサヒコのその言葉を聞くアイ。
“ふぁ…”
身に付けているのはパンティ一枚。乳首にはまだ少しクリームの跡のあるアイの裸体。
それがやけに卑猥にマサヒコの目には映っていた。なぜか急いでマサヒコもトランクス一枚になった。
§

“ちゅ…”
もう一度、唇を重ねると…マサヒコは、そのままアイの体に覆い被さるように身を重ね、
首筋から胸にかけて顔を埋めた。
「…先生…それじゃ…」
「う、うん」
健康的な、肉付きの良い太腿の内側をゆっくりとこすりあげながら…。
マサヒコは腿の付け根まで手を移動させた。そしてそこへと近づくにつれ、
汗や─それ以外の、なにかの湿度を手のひらの上に感じていた。
思い切って、マサヒコは布越しにそこに触れてみた。
“ぷじゅ…”
やはり、そこは既に十分に湿っていた。わずかだが、布地に染みを作ろうとしはじめていた。
「マサヒコ君…お願い…もう、脱がして…恥ずかしい…」
懇願するように、腰をずらしてアイが言った。こんな格好のままより、早く脱がしてもらいたいようだ。
「…先生、もう少し…もう少しだけ…」
マサヒコは指の腹をそこにのせた。
細い筋の谷間と、固い恥毛の感触を指で味わいながら…そのまま、ゆっくりと往復させる。
「あ…ん…やだ…ダメ…ショーツ…汚れちゃう…」
指先からは少しづつだが湿り気が拡大しつつあることを感じていた。
しかし─マサヒコは、指の動きをぴたりと止めた。
「本当に…止めて…いいんですか?先生?」
「え…」
「すっごく…可愛くて…エッチな顔になってますよ?止めても…いいのかな?」
悪戯っぽくマサヒコが微笑む。頬を赤く上気させたアイは、涙目で訴えた。
「ひ…ひどい…よ、マサヒコ君…だって…」
「さっきは、先生のリクエストに俺が答えましたからね…今度は、先生の番ですよ?」
どうやらさっきの生クリーム舐めのお返しのつもりらしい。マサヒコは、言葉を続けた。
§

「止めろって…言われれば、俺、止めてあげますよ。でも…して欲しいんだったら…」
「…」
「きちんと、言葉で言って下さい。どこをどうして欲しいのかって」
マサヒコ君、結構酷い男。てかドS?
「…わ、わかった…」
「じゃ…どうして欲しいんです?」
「あたしの…あそこに、触って欲しい…」
「それだけ?」
そう言って、マサヒコはパンティ越しのそこに指を置いた。そのまま、全く動かそうともしない。
「ショーツを脱がして…あたしの…あそこに…触って…中から…もっと…動かして…」
「良く、できました」
にっこりと笑ってそう言うと、マサヒコはアイの下着を脱がした。
「先生…染みに…なっちゃったね」
「…言わないで…やだ…」
そのまま中指をアイの裂け目の中へとゆっくりと入れていった。
“じゅわ…”
指先に、なま暖かい粘液が絡みついてきたのがわかった。
マサヒコは、意を強くすると更に奥へと指を伸ばす。そしてぬるり、とした感触の部分に達した。
「んはぁッ!」
が、そこに触れた瞬間、アイの体が一瞬激しくびくん、と痙攣した。
「あ…すいません、先生…大丈夫?」
さすがに不安になったマサヒコはアイの表情をうかがうが…。
「ううん…そ、そのまま…そのまま…して」
アイは小さく首を振り、ぎゅっとマサヒコの胸に顔を埋めた。
戸惑いながらも、マサヒコはその暖かい感触の中へと分け入っていった。
裂け目にはねっとりとした液が溜まり、幾層もの肉の襞が指にまとわりついていた。
§

(…ん?なんだ、コレ?)
指を抜こうとした瞬間、裂け目の上あたりにこりっとした感じの─。
小さな芯のような感触をマサヒコはみつけた。それがなにかもわからぬまま、
直感に導かれてマサヒコはそれをコリコリとくすぐってみた。
「!んん…はぁあ…うっん…ああ!」
その愛撫に、アイはひどく艶やかな声で応えた。より甘みを増したその声に力を得たマサヒコは、
その部分を押したり…擦ったり…ときにはつまみあげるようにして愛撫を続けた。
「やぁ…ひゃああ!!…あああッ!!!」
鋭い声をあげ、体を弓なりに反らした後…アイがぐったりと体から力を抜いた。
「先生…あの…大丈夫?」
「う…ウン、だ…大丈夫…」
少しの間、目も虚ろで動こうとしなかったアイだが…。
マサヒコに声をかけられる頃には、なんとか答えられる程度には回復していた。
「じゃ…先生…あの…」
「うん…来て…マサヒコ君…」
マサヒコはトランクスからペニスを取り出すとそれに手を添え…指でもう一回裂け目に触れ、
入り口を探り、その源を目指すようにして先をゆっくりとアイの中へと滑らせた。
「あ!ああッ…くうゥ…ッ…」
なんとか先端が納まろうとした瞬間、マサヒコはアイの苦痛に満ちた叫び声を聞いた。
「す…すいません、やっぱり…痛いんですよ…ね?先生?」
「う………い、痛い……けど…いいから…続けて…お願い…」
途切れ途切れに訴えるアイに、どうしてよいのか分からなくなるマサヒコだったが…。
(じゅうぶんに…濡れてる感じだから…このまま一気にいってもいけそうだけど…)
あくまでアイの体のことを考え、ゆっくり、用心深く、絡めるように小刻みに先端を前後させた。
(…なにか…固くはないけど…なにかが…阻んでる…)
マサヒコは、無理強いせず…優しく、ノックする要領で先端を震わせるように動かした。
§

「マサヒコ君…だ、大丈夫…だから…そ、そのまま…はあッ…」
アイがマサヒコの腰に足を絡めてきた。マサヒコは同じようにアイの腰を両手で抱き、
しっかり固定したままもう少し勢いをつけて、攻めた。
“ぐしゅっ…みり…みりりぃ”
すると、何度目かの反動の末、突き抜けたような感触があった。
「はぁあ!あ!あああッ!」
狭い道だったが…ペニスがめりこんでゆく。
(もしかして…今…処女膜を…)
アイの中はうねるように収縮し、ペニスを先端から根本まで包み込んでいた。
「…動いても…いいですか?」
マサヒコの囁きに、アイは涙目のまま小さく、こくん、と頷いた。
“じゅ…じゅぷぅ”
ゆっくりと…ゆっくりと、中を前後させた。肉と肉の、擦れ合うような音をマサヒコは聞いていた。
「はあ…ああ…うぅん…」
(先生の中…あったかい…)
生まれて初めて女の子の中に入った感動を、マサヒコは味わっていた。そして…。
(さっきから…先生、ずっと爪を俺の背中に立てたまんま…表情も…。よっぽど痛いんだな…)
アイの苦悶の表情に同情しつつ…。今更自分の中に燃えさかった欲望を止めることもできず、
いっそうその動きを強めていった。─男とは、因果な動物である。
「当たってる…うッ!マサヒコくぅん…マサヒコ君、当たってるのぉ!」
アイの奥は、ざらざらとしていて、呼吸をするたびにマサヒコのペニスを締めつけ、吸引していた。
ふくらみ…ちぢみ…マサヒコの動きに同調しようとするように、収縮運動を繰り返していた。
やがて、完全に同調したふたりの動き。アイの中は、ペニスをねじるように締めあげ、
マサヒコのペニスはアイの奥底のさらに深くを…えぐり、杭を打つように突いていた。
「ま…マサヒコ君、あたし…もうダメ…こ、壊れちゃうよぉ…」
「先生…俺も…ぶっ壊れそう…」
§

そう言い合ったあと、ふたりはまた貪るようなキスを交わした。
舌を絡め、マサヒコは、アイの汗にしっとりと濡れた乳房を揉みしだき、
アイは更に強くマサヒコの背中に爪を突き立てる。
アイの乳房は焼けるような熱を持ち、マサヒコはその全てを味わうかのように動いていた。
「ふぁッ…ああ…マサヒコ君…あ、あたし…もう…」
その言葉を聞いたマサヒコは、最後の気力を振り絞ってアイの最奥を貫いた。
とろみのついたそこは…優しく包む込むように…。
しかし、貪欲にマサヒコのペニスの根本までがっちりと食らいついて離さなかった。
「先生…俺…」
「ま…マサヒコ…くぅん…」
ふたりは、会話にならない言葉を交わしたまま…ほとんど同時に、絶頂に達していた。
「お、お願い…マサヒコ君…そのまま出して…あ、あたしの中に…今日は、大丈夫な日だから…」
言われるまでもなく、マサヒコの理性はとっくに吹っ飛んでいた。
“どぷっ…ぐるっぷ…ぴゅ…”
精液が、マサヒコのペニスから溢れ出していた。すさまじい快感を覚え、
体中が弾け飛ぶような感覚に満たされながら…マサヒコは、アイの体に崩れ落ちていた。
アイも、目を閉じ、精液を一滴も漏らすまいとするかのように…。
マサヒコの腰に、両脚を絡めたまま、なにもできないでいた。
─どれくらいの時間が過ぎただろうか。やっと、アイが目を開く。
そこには、力尽きたようにうなだれる、マサヒコがいた。
「マサヒコ君…」
アイは、マサヒコをしっかりと抱きしめた。ふと目をやると…マサヒコの肩に、
小さな傷跡があることに気付いた。あの、ストーカーによって付けられた跡だった。
(マサヒコ君…マサヒコ君…)
気が付くと、アイはマサヒコのそこに口をつけ、舌で舐めていた。愛おしかった。
この世界の全てよりも…マサヒコが、そしてその傷跡が、愛おしかった。
§

「…先生?」
やっとそのアイの行動に気付き、怪訝そうな表情を浮かべるマサヒコ。
「…ふふ。これで…おあいこだよね、マサヒコ君」
「?なにが…ですか?」
「あたしのせいで…マサヒコ君のここを…傷つけちゃったけど…」
「…」
「マサヒコ君は…あたしを…キズモノにしたんだもんね?だから…おあいこ…?きゃん?」
アイの最後の言葉を待たず、マサヒコは強い力でアイを抱きしめていた。
表情は─なぜか、怒ったようだった。
「あ…あの…怒ったの?マサヒコ…君」
少ししょんぼりとしたアイが言った。
「先生は…せんせいは、キズモノなんかじゃない!」
「え…」
「先生は…俺の、タカラモノなんです。だから…もう二度と…そんなこと言わないで下さい」
「マサヒコ君…」
アイの双眸からは、喜びの涙が溢れ、こぼれ落ちた。
しかし、マサヒコは…。
(あ…やべ…結局、メガネにもらった…コンドーム、使わなかった…)
何故か、そこだけ妙に冷静に後悔していた─。



END

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