(こ、このまままじゃ・・・
このままだと私、おかしくなる・・・)
放課後の廊下で、シノはとぼとぼと生徒会室に向かっていた。
このまま自分が卒業するまでの残すところ約1年半、この状態が続くのか。
好きな男を前にし、その男が違う女との仲睦まじい姿を見せられる。
しかも二人とも近しい人間であり、これからも必然的に行動を共にすることも多い。
(自業自得、なんだよな・・・
これは私が悪いんだ、私があの時素直にならなかったから・・・)
シノは二人が付き合うことを聞いたその日からずっと同じことを思い、まるで思考そのものが袋小路に閉じ込められた様だった。
(そうだ・・・初恋なんて・・・
実らないのが大多数なんだ、私が特別不幸なんじゃない・・・
たまたま二人が幸運だったんだ・・・)
シノは必死に自分に言い聞かせた。
いや、言い聞かせなければこの先の学業はおろか、私生活にすら影響を及ぼすかもしれない。
まさか津田を今更アリアから奪うわけにもいかない。
無論津田が自分になびかないといけないという大前提があるのだが、そんなことを考える余裕は今のシノにはない。
こうするしか、もう自分にはないと。
(ああ、でもあの時・・・
あの時に少しでも違う行動や言動をしていれば、津田の横にいたのは私だったのかもしれないのに・・・)
また同じことの繰り返しだ、自分でも理解しているがやはりこの思考のループを繰り返さずにはいられなかった。
シノも年頃な女子である、素敵な恋愛をして、いつかはお嫁さんになるという憧れを持たないわけがなかった。
だがその恋心が、今や自分の心を冷たい鎖で締め付けているような感覚にまで陥ってしまう。
不意に来てしまった自分の初恋、なぜこうなってしまったのか。
それを知るタイミングが悪かったのも事実だが、やはり自分の気持ちに素直になれなかったのが一番の原因である。
(恋って・・・素敵なんだとずっと思っていたけど・・・
こんなにも、辛くて苦しくなる場合もあるんだな・・・
早く、忘れよう・・・
そう努力しよう・・・)
シノを捕えては離さない失恋による黒い感情、だがシノはその黒い感情に飲み込まれないようにと心を強くした。
せめて、せめて二人には自分の気持ちを悟られず、笑顔でずっと最後まで祝福し続けよう。
そして自分も、また新しい恋を探そう。
シノは必死に自制心を保つために自戒する。
だが本人が願ってのことなのかこの三人の関係は、そして覚悟を決めたシノの決意はこの日を境に脆くも崩れ去った。
それがシノにとって幸運だったのか不運だったのかは誰にも、そして本人にも分からなかった。




いつものようにシノはドアを開け生徒会室に入ってくる、するとそこには津田が座っていた。
「やあ津田、今日は早いな」
シノの言葉に津田は反応がなかった。
「ん?」
シノは津田の側まで接近し、津田は座った状態で上体を起こしたまま眠ってしまっていることに気づいた。
首をガクッとおとし、手は膝の上に置かれている。
「何だ、寝ているのか。
全く、生徒会役員ともあろう者が、こんな場所で居眠りするなど・・・」
津田を起こそうと、シノは体に触れようとする。
だがそれより早く、シノは津田の唇に目を向けてしまった。
無防備な唇、もうアリアとキスはしたのだろうか。
そう思うとシノは自らの唇に指を当て、高鳴る鼓動を感じた。
(わ、私は何を考えているんだ・・・)
津田とキスをしたい、いやそれだけではない。
自分も腕を組んで、手を繋いで歩いたり、人目を盗んで一緒にお弁当を食べたり、別れ際にはキスをしたり。
自分のことをシノと呼んでほしい、彼をタカトシと呼びたい。
二人のしているであろうことを考えると胸が切なく、そして痛くなる。
これまで意図的ではないにしろ、二人によって与えられてきた苦痛。
それを思い返すと、道徳観や友情、罪悪感は次第に薄れていく。
(寝ているよな・・・だったらせめて・・・)
シノは体を屈ませ、膝の上に置かれている津田の手をそっと握った。
津田の体温を感じシノの鼓動は加速度的に上がる一方、今日の今日まで蝕み続けられてきた心が一気に癒されていくのを感じた。
(津田の手暖かいな・・・)
津田と触れ合う、ただそれだけで自分の気持ちがここまで変化を及ばされるとは。
いつの間にかシノは津田の手を両手で握っていた。
自分でも不思議と思えるほどに感じる津田の暖かさにシノの鼓動は、そしてその欲求は次第に高まっていく。



ふと津田の顔を見る。
不意にこれほどの近い距離で見てしまった津田の顔。
シノの鼓動は強くなり、思わず息を呑んでしまう。
(いいよな、別に・・・
そもそも二人が付き合えているのは私のおかげなんだ。
このヘタレが勇気を出して自分の意思で告白なんて絶対に出来なかっただろう。
あの時私が背中を押さなかったら、こんな風にはならなかったんだぞ。
もうキスくらいしているだろうし、今更私とするくらい・・・)
シノは思いを巡らせながら、体を屈ませたまま顔を少しずつ近づけていく。
(うん、もう半月くらい経っているんだ、きっとしているさ。
それに津田は今寝ているし、もししていなかったとしても今ならノーカウントだろ。
私のファーストキスが津田だった、その事実が残るだけ・・・)
シノは意を決し、寝ている津田に顔を近づけた。
自分が津田の前に回り込まなければいけないので、多少体勢としてはおかしくなってしまうのだが贅沢は言ってられない。
俯いていては上手くできない、そっと優しく頬を両手で掴み、キスの出来る体勢に持って行く。
(津田・・・私は君が好きだ・・・)
そして、二人はキスをした。
優しく触れる甘いキス。
シノはその感触と罪悪感に胸を痛ませ、惜しみながら唇を離した。
顔を真っ赤にしながらも、シノはここ数日の欝を一気に晴らしたように軽い笑顔を見せた。
「津田、大好・・・」
「シノちゃん・・・?」
大好きと言いかけたシノに、今自分が一番いて欲しくない人物の声が響いた。
振り向くとそこには、ドアの前で驚愕したアリアが立っていた。
「ア、アリア・・・」
シノも言葉を返せない、どう考えても今自分のしたことはアリアに見られたことは明白だった。
「シノちゃん、今何していたの・・・?」
アリアは怒りを表情に浮かべながら、問い詰めるようにシノに迫った
「ねえ!!何していたのよ!!」
恫喝するようなアリアの声に、シノは目を背ける。
それが彼女の答えだったのは明らかだったが、それで納得できるアリアではない。
「答えてよ!!答えなさいよ!!」
「う、うーん・・・」
いつものアリアからは想像できないような声に、津田は寝ぼけ眼で起きてしまった。
「あれ、かいちょ・・・」
「来て、シノちゃん!」
津田が気付く前に、アリアはシノの腕を引き部屋を出て行った。
今の会話を彼に聞かれてはまずいのだ。
「あれ、今会長とアリア先輩がいたような・・・
ああーねみー。
もう、誰も来ないなら寝ちまうぞっと」
一度起きかけた津田だったが、今度は机に突っ伏して寝始めてしまった。
こんな形で寝ているのを見られては間違いなく叱りを受けるだろう。
そう思い座った状態で耐えていたのだが、先ほどはその状態で寝てしまった。
なかなか来ないメンバーに業を煮やし、今度は本格的に寝始めてしまう。
自分が原因で、今二人の女子の友情が壊れてしまいそうだというのに・・・



パァン!!
甲高い音がとある教室で響いた。
基本的に使われることが少ない、ましてや放課後ではまず人の来ないとある教室に二人はいた。
頬を引っ叩かれたシノは、痛みを伴う頬を手で庇い視線をアリアに向ける。
「ひどい・・・ひどいよシノちゃん。
シノちゃんが、そんなことする人だったなんて・・・」
アリアは鋭く、そして悲しみを含んだ視線を向ける。
今のアリアを支配しているのは怒りだけではない、友人に裏切られた悲しさが何より大きいのだ。
シノもそれが分かっている、だから何も言えないのだ。
「ねえ、どうしてあんなことしたの?
友達の彼氏のキスを奪うことが、シノちゃんのしたいことだったの!!?
答えて!!答えなさいよ!!」
肩を揺さぶり問い詰めるが、シノはやはり何一つ答えない。
自分が愚かだったことを、どう考えても自分だけが悪いことを理解しているからである。
「酷いよ・・・タカ君のファーストキスを・・・
私のファーストキスと一緒に、二人の記念にしようと思っていたのに・・・」
「!!?
まだ、していなかったのか!?」
アリアの言葉にシノは思わず声を荒げる、そしてやっと口を開いたシノにも、アリアは驚愕の表情を浮かべる。
そしてすぐさま、その表情は怒りに変わる。
「そうよ・・・でもそれが何?
もうしているなら、自分もしていいと思ったの?
友達の彼氏の唇を奪うことを!!」
シノの言葉はアリアを怒らせるだけだった。
(私が、津田のファーストキスの相手・・・
私にとってだけでなく、彼にとっても私が・・・)
シノは自分のした行為の大きさを思い知った。
「すまないアリア・・・
本当にすまない・・・
言葉でなんと言ったとところで、許されるとは思っていないが・・・
だが、一つだけ分かって欲しい・・・
私は決して、悪意や悪戯心などでやったわけではない。
私は・・・」
シノは津田が自分に恋の相談をしたことを打ち明けた。
そして自分が津田のことを好きだと自覚しているのにも関わらずアリアのことを推したことも。
「・・・何それ?
じゃあ自分のおかげで私たちが付き合うことにあったのだから、その仲を引き裂くのも、
邪魔するのも、後から横槍を入れる権利があるとでも言うの?」
事情を知ったアリアだったが、それで納得できるはずもない。
シノがどう思っていたにしろ、二人に付き合うことを推していたのは紛れもない彼女なのだ。
「・・・分かっている・・・さ。
でも、もう何を言っても言い訳にしからないな。
私にはもう何も言えない・・・
だから私を気が済むまで罵ってくれ、先ほどのように叩いてくれても・・・」
「甘えないで!!」
アリアの言葉にシノはビクッとする。
「何それ!?
カッコつけているつもり!?
そんなことで、私が、私たちが許すとでも・・・」
言いかけたアリアだったが、シノの涙を見てハッとする。
小刻みに震え、言いし得ぬ感情とどうやっても謝罪出来ない咎に身を焦がす。
その様子にアリアも理性が戻り始め、シノを軽く抱きしめる。



「ごめんねシノちゃん・・・
私も言い過ぎた・・・」
「いや、悪いのは私だ・・・」
「シノちゃんの気持ちも知らないで私、酷いこと言ってしまったわね。
・・・私たち、友達に戻れるかな?」
「そんな!!
私のほうこそ・・・許してくれるのか!?」
「ええ・・・」
「ありがとう・・・本当にありがとう・・・」
泣くシノをアリアは一頻り抱きしめ、自然に二人は離れ距離をとる。
「じゃあ戻ろうか・・・
タカ君も、スズちゃんも待っているわ」
「そうだ・・・」
ブーン
「・・・あ」
携帯電話のバイブ音がシノの衣服から聞こえた。
ポケットから携帯電話をシノが取り出す。
「萩村だ・・・」
アリアに目を配ると彼女は笑顔を向けた。
出てもいいという合図だ。
「もしもし、ああ私だ」
シノに伝えられたメッセージ。
それは生徒会の仕事が溜まっているというのに、
二人とも一向に来ないことでまるではかどらないということだった。
「ああ、ちょっとした野暮用だ。
すまない、すまない」
シノは萩村に謝罪し、苦笑しながらアリアに表情を向ける。
アリアも天使のような笑顔を見せる。
シノはひとしきり会話すると携帯をしまう。
「戻ろうか、萩村が悲鳴を上げている」
「ええそうね」
アリアは笑顔でシノと共に部屋を出て行く。
「すまないアリア。
先に行っててもらえないか、教室に忘れ物があることを思い出してな」
「ええ、分かったわ」
シノの言葉に最後までいつもの笑顔で答えるアリア。
それが図らずともシノには厳しくのしかかった。
(すまないアリア・・・
私は本当に最低な女なんだな・・・)
アリアを見送ったシノの心に押しかかる罪悪感。
シノには先ほどの電話の内容から一つの妙案があったのだ。




(おそらく、この辺のはずだが・・・)
シノは誰もいない校舎を徘徊する。
先ほどの萩村の会話の中。
「会長聞いてくださいよ、津田ったらですね。
何か眠くてたまらないからって、寝て来いって言ったら本当に30分ほど仮眠するとか言ってどっか言っちゃいました。
前、会長に校内を紹介されたときにあまり人が来ないところを
教えてもらったから、そこを使うとかで・・・」
あまりに眠そうだった津田を疎ましく思った萩村は、一度しっかり寝てこいと言って彼を送り出したのだった。
無論それはシノとアリアがきてくれれば多少彼が不在でも大丈夫だろうと言う予測があったからであるが、
結局二人とも萩村の期待を裏切ったのは言うまでもない。
津田は今、どこかの教室にいる。
まず確実に一人で。
このことを知ったシノは、罪悪感を抱きながらも煮え切らない自分の感情を優先してしまった。
(今なら・・・)
と思い彼女は津田を求めたのだ。
決して何か間違いを起こそうと、津田を奪おうなどと思ったのではない。
だが最後に、踏ん切りをつけるために最後に彼と二人で話したかったのだ。
それが何か具体的なことなど何もない。
しかしそれでも、シノは今、津田と二人で会いたくて仕方なかったのだ。


以前彼に教えた無人の教室。
シノの予想通り、津田は確かにそこにいた。
津田は机を寄せて簡単なベッドをつくり、そこに仰向けで堂々と寝ていた。
津田を見つけたシノは安堵の表情を浮かべる。
「まったく・・・机をこんな風に使って・・・
教育的指導が必要だな」
シノは苦笑しながら津田の下へ近づいてゆき、彼の真上にまでやってきた。
再び見る彼の寝顔、先ほどのキスの感触が甦り、シノの鼓動はみるみる早くなっていく。
「津田・・・津田・・・」
シノは泣きそうな顔で、津田の腹部の上に置いてある両手を握り、彼の胸板に頬を寄せた。
津田の鼓動と体温を感じると、シノの胸は言いし得ぬ安心感と高揚感を覚え、その心地よさに酔いしれていった。
「津田、私は君が好きだ・・・
自分勝手なのは分かっているし、君にもアリアにも本当に申し訳ないと思っている・・・
でもすまない、もう抑えきれないんだ・・・
だから・・・あと少し・・・
あと少しだけこのままで、このままでいさせて・・・
そしたらもう・・・」
シノはこれを最後に吹っ切ろうと考えていた。
これ以上、二人に迷惑をかけるわけにはいかない。
アリアに真実を吐露した今日この日が、初恋の相手を諦めようと踏ん切りをつける日だと。
「あれ・・・会長?」
津田は意識が朦朧としながらも、寝ぼけ眼でうっすら見える会長の姿を口にした。
津田の声にシノも顔をハッと起こす。
「津田、起こしてしまったか・・・っあ!」
シノは友人同士では決してありえない距離感を持っていたこと気づき、慌てて距離をとる。
「会長、今何を・・・
それにさっきのこと・・・」
「津田聞こえていたか・・・?」
津田はゆっくりと首を降ろした。
聞かれてしまった、そう思ったシノだったがそれが彼女の感情を爆発させた。
言い訳も考えたが上手く思い浮かばない。
ここで本心を告げては津田を苦しめるだけ。
そんなことは、そんなことはシノ自身が重々承知していた。
しかし・・・




「驚いてしまったか津田・・・
まあ無理もないか・・・
でもすまない、私はもう抑えきれないんだ。
君のことが好きだ、こんなにも、どうしようもないほどに好きなんだ・・・
こんなこと今更言われても迷惑なのは分かっている、
でも、でも・・・」
一瞬沈黙が流れた。
シノの精一杯で、これ以上ないほどの愛の告白。
今更こんなこと言われたところで津田は困るだけだろう。
それは分かっていた。
だがこのまま気持ちは嬉しいと断られても構わない、シノにはそう言われるだけの覚悟があった。
いや、むしろそう本人の口から断ってくれたほうが良かった。
「津田、すまなかった・・・
私が馬鹿なだけなんだ、君は気にせずこれからもアリアと・・・」
「・・・なーんだ、俺また変にリアルな夢見ているのか・・・」
「・・・え?」
思わぬ言葉にシノはきょとんとする。
「だって有り得ないもんなあ、俺の告白を応援してくれた会長が俺のこと好きなんて。
まあそれでなくても、会長みたいな凄い人が俺なんかをね」
津田の言葉がシノには何気に深く突き刺さっていた。
そう、確かに津田のアリアへの告白を応援したのは紛れもないシノ本人なのだ。
だが、これはある意味好都合なのでは?
シノにある一つの妙案が浮かび始める。
これを利用すれば、先ほどの接触も言葉も嘘に出来る。
「しかし、俺アリア先輩と付き合っているのに酷いなあ。
会長が俺のこと好きなんて言う夢を見るなんて。
こんなこと、アリア先輩は勿論会長に聞かれでもしたら大説教だろうな」
「そ、そんなことないぞ!」
「え?」
思わぬ言葉に、津田は不思議そうに返事を返す。
「君は健康的な高校生だ。
いくら付き合っているからって、まだキスもしてないのでは欲求が溜まるのも無理ないだろう」
「・・・」
シノは精一杯笑顔を作り彼を説得した。
本当にこんな言い方でいいのか、これで彼を納得させれるのか。
それだけでも不安だった。
しかし彼はある勘違いをしている。
いくら夢と思っていることとはいえ、このままでは津田は本人の言うように酷い男になってしまう。
ここでおかしな勘違いをさせては彼に申し訳ない。
シノは必死に取り繕うとする。
「はは、やっぱこれ夢だ。
いくら下ネタばかりの会長でも、アリア先輩と付き合っている俺にそんなこと言うはずないし。
それに俺たちがまだキスしてないこと知っているはずないもんな」
何も事情を知らない津田のストレートな言葉。
悪意の決してないその言葉に、シノは先ほどから少しずつだが罪悪感を覚える。
何も知らない彼の言葉にはシノを締め付ける痛みが伴っていた。
その罪悪感と苦しみが徐々にシノにある感情を抱かせる。
(アリア、私は・・・私は・・・!)



「津田、どうだろうか?
私でよければ、君の欲求を解消してあげるが」
言ってしまった。
(すまないアリア・・・
でも私は、もう耐えれない!!)
夢の中と本人は思っている、これはあくまで夢の中の話だ。
だからこの場でシノと何をしようと津田本人が責を感じる必要はない。
シノだけが満足するだけで誰も損はしない。
シノは先ほどのキスのときと同じように、またも自分の気持ちを優先的に考えていた。
今さっき、アリアと和解をしたというのに・・・
「ええ!!
でもいくら夢だからって、そんなアリア先輩を裏切るようなこと・・・」
「夢なのだから問題ない!
それに一度してしまえば、もう二度とこんな夢を見ることはないぞ。
何度も同じような夢を見ては、君も目覚めが良くあるまい」
「・・・」
津田は起きているのか寝ているのか分からない微妙な表情で沈黙を続けた。
「・・・いや、やっぱ駄目だ・・・
ここでそんなことになったら、いくら夢の中だからってアリア先輩だけでなく会長にもやっぱ大目玉だもんな」
あくまで潔癖な彼の姿に、シノは苛立ちを覚える。
その反面、予想以上に誠実だった彼の真面目さに悲しさを覚える。
(津田、君はそこまで真面目な男だったのか・・・
やはり、アリアの応援をすべきではなかったな)




夢の中で彼と結ばれる。
それなら津田にとってはあくまで夢幻。
自分だけが満足できて誰も不幸にならないと考えていた。
だがこんなくだらないことを考えた自分が愚かだった、そう諦めかけたシノだったが、遂に強硬な手段を思いついた。
(待てよ・・・今彼はこの状況を夢だと思っている・・・
なら、今彼の意識をコントロールするのはたやすいのでは・・・)
諦めかけていたシノの意識は徐々に変化を生じさせた。
そしてシノのアリアと津田本人への罪悪感は次第に薄れていく。
シノは考えを巡らせる間にも、体は自然に机の上へと動いていた。
「あーもう!!
早く起きろよ俺!!
こんな夢、さっさと覚めないとアリア先輩や会長に・・・」
瞳を閉じながら必死に自戒する彼の口は強制的に塞がれた。
いつの間にか机の上に乗り、津田の体をまたぐ体制になっていたシノが彼の唇を強引に塞いだのだ。
「んん!?」
突然のことに津田は眼を見開くが、彼の目にはやはり思わぬ人物の顔のアップが映る。
(ちょ!!?何これ!?)
さしもの津田も意識的に手や顔を動かすが、顔はシノが両手で封じる。
手は腕をシノが膝で押さえ込み、まるで動けない。
(俺の体!何で動かないんだ!!
やっぱ夢の中だと、上手く動けないのか・・・)
津田の腕には確かに圧迫感がある、しかし夢の中だと思い込んでいる津田にとってそれは夢の中における独特な窮屈間と誤解していた。
成すがままにされた津田は抵抗をやめ、シノとのキスに身を委ねた。
気持ちよいのは否定できない、しかしそれでも何とかそれを悟られないように強張る。
抵抗を諦めたことを感じたシノは、舌を津田の口内へ侵入させ、津田の舌を求めた。
「んんん!!」
思わぬことに津田は困惑しながらもうめき声を上げる。
(う、嘘だろ!?
でも、夢なのに何でこんなリアルに・・・)
唇から伝わるシノの柔らかく暖かい肌触り。
舌を支配する滑りを帯びた感触。
シノの息遣いまで伝わってくる。
とても夢とは思えない、リアルな衝撃に混乱する。
(アリア、津田・・・すまない・・・
でも、気持ちいい・・・
何て気持ちいいんだ・・・
さっきとはまるで別物だ・・・
止まらない、止まらない!!)
シノは津田とここまで大胆なキスをできた喜びと悦楽に浸り、罪悪感を感じながらも欲望のままに彼の舌を貪る。
(ヤバイ・・・夢のはずなのにメッチャたまんねえ・・・
もうこれ、完全に下半身が反応してるよ・・・)
津田はその快感に負け、素直に反応してしまっている下半身に情けなさを感じる。
そしてきっとそれを見られ、何を言われるのかと次なる不安を考えていた。
ひとしきり終えた後、シノは口惜しそうに口を離した。
その深みを現す透明の糸が、二人を最後まで繋げた。


「フフ、美味しかったぞ津田」
「・・・」
津田は顔を背け、必死にシノに対し抵抗の意思を見せた。
本音を言えば、今のキスは彼にとっては極上の快楽だった。
今のは彼にとってのファーストキス、とはいえ現実世界で既にシノに奪われていた上に、今彼は夢の中と思っているのでそれは色々と間違いなのだが。
自然と津田の股間は膨らみを見せ、出来ることなら自分からも舌を絡ませ初のキスの味を堪能したかったのが本音だった。
それが夢でも。
しかし、そのことを認めてはアリアに示しがつかない。
何を言われようと、津田はシノの行為を受け入れないようにと心を強くした。
「ほう、そうか。
随分と満足いったようだな津田よ。
そんなに良かったかな?」
「な、何を!
俺は、別に・・・」
そんな津田に対し、シノは下半身を指差した。
「ではそのズボンの膨らみはなんなのかな?
「・・・」
やはり痛いところを突かれた。
おそらく指摘されるであろうことは予測していたが、それでも彼にとっては痛いところだった。
「気持ちよかったんだろ?
ん?もっとして欲しいんだろ?
この、私にな」
シノは津田を問い詰めるように顔を迫らせる。
普段なら決して有り得ない顔の距離だ。
今自分には彼女がいるとはいえ、いくら親しくても異性がここまで顔を接近するなんてことは有り得ない。
津田はやはりこれは夢だと確信し、そう自分にも言い聞かせていた。
必死に抵抗の意思を見せる津田に対し、シノはだんだん別の愉しみを覚えていた。
ここで彼女は、知らず知らずのうちに自分が加虐の愉しみを感じる人間だと感じていた。
「・・・」
対する津田は断固としてシノの言葉に耳を貸さず、顔を背け少しでも興奮が鎮まるように必死だった。
「フフ、あくまで意地をはるか。
それじゃあ・・・」
津田の腰に腰をかけていたシノは後ろを振り向く。
「ちょ、ちょっと!!」
津田は思わず動揺する。
シノが躊躇なく津田のズボンのジッパーを開けたのだ。
トランクスの穴を掻き分け、待ってましたと言わんばかりに津田の男の性が反り立った。
「ヒ!い、嫌だ!!
見ないで!!見ないでください会長!!」
津田はまるで女性のような悲鳴を上げシノに哀願した。
これは夢であり、今のシノには何一つ抵抗できない。
そう勝手に思い込んでいた津田には、シノに哀願する以外何も出来なかった。
本来ならシノはその女性のような悲鳴に突っ込むところだったが、それはなかった。
シノの耳に津田の声は聞こえていなかったのだ。
物心ついて始めて見る男性の部位に、シノは思わず圧倒され息を呑む。



「これが男の・・・
これが津田の・・・」
「会長!!
それはマズイですって!!
ちょっと落ち着いて!!」
津田は必死に叫んだ。
もしこれからされるであろうことを考えると、最早シノの思い通りにならない自信はなかった。
津田はこれが夢だと思っているが、それだけに理性が効かないと思っているのだ。
またシノにこんなことをさせる夢を見ていたこと自体が罪悪感で一杯だったのだ。
一方のシノは津田の言葉を一切無視し、ただ津田のモノを凝視していた。
本来なら先ほどのように「こんなにも興奮しているじゃないか」
と津田を弄ぶところだったが、そんな余裕は彼女になかった。
男性器なら子供の頃父親や、いれば異性の兄弟との入浴中に複数回見ているのが当たり前だ。
しかし思春期真っ只中である彼女が今目にするにはあまりに衝撃的だった。
間近で見ると言いようのない迫力に圧倒される。
そして鼻につく独特な匂い。
これは臭いと言ってしまえばそれまでなのだが、シノは何ともいえない気分を味わっていた。
好きな男の部位だからなのか、それは彼女には分からなかった。
ひょっとしたらガソリンやオイルのような、臭いのだけどどこかクセになるような匂いなのか。
シノは何ともいえない緊張感を胸に、体の位置を変えながら津田のモノを凝視する。


「会長、いい加減に・・・って
っぶ!!」
津田の妙な声を聞いたシノは後ろを振り向く。
すると津田はまたも顔を背けていたが、何やら様子がおかしい。
「津田、今の声は何だ?
何があった?」
「・・・別に何でも」
「何でもということはないだろう。
話せ」
「・・・」
津田はあくまで返答を拒んだ。
しかしシノには途中で分かった。
少なくとも津田のモノは先ほどよりも反り立ちを見せた。
ということは興奮する何かがあったのだ。
そしてシノは自分の体勢を改めて見て、彼が何を見たのか理解した。
それはシノのスカートの中だった。
シノが前屈みになり、津田のモノを真上からではなく真正面で見る位置になるため体を津田の顔の方に向ける必要があった。
少しずつシノの下半身は津田の顔の上部に移動していき、津田は男子にとっての神の領域を目撃してしまったのだ。
最終的には津田の顔の上部にシノの股間が接近するようになっていたのだ。
もしその状態でシノが腰を下げていたらシックスナインの状態になっている。
それでなくとも彼女のスカートの丈は女子高生としてはそれなりに普通だが、短いと言えば十分短い。
そんな彼女が多少気を緩めれば、その中身が容易に見えてしまうのは必然だった。
パンチラどころではなくパンモロを、しかもこの距離で見てしまっては津田の中の男の性が反応するのは必然だった。
「フフフ、そうか津田。
私のパンツを見て興奮したんだな」
「な、何で・・・」
「これは君の夢だ、その夢の中の
君が作った私に、この世界で分からないことはない」
無論これはハッタリである。
しかしこれは夢であることを彼に思い知らせるにはいい機会だった。
彼女の思惑通り、津田は自分の心が見透かされたような錯覚を植えつけられた。
さすがに下着を丸見えにさせるのは気が引ける、というかまるで露出狂の変質者のようで嫌だったシノは、腰を津田の腰に下ろし振り向きざまに彼に言い放つ。
「フフ津田。
別にいいんだぞ、君が望むなら私の下着を見ても。
あんな風に見るのは初めてだったんだろ?」
「・・・」
「津田、いい加減素直になれ。
パンチラ程度ならともかく、こんな間近に下着を見れるなんてそうそうないぞ?
何なら今度同じ体制になったら顔を近づけてみると良い。
私だってこうして君のをガン見して、ちょっと匂いを嗅いでしまった。
同じことをする権利くらいはあるぞ」
(早く目を覚ませ俺!!早く目を覚ませ俺!!!)
津田はとにかくこの夢から目覚めようと必死だった。
津田も勿論健康的な男子高校生。
意志の弱い男ならとっくに堕ちていてもおかしくない、そう考えれば彼はよく耐えていた。
(津田め、あくまで抵抗しようと言うのだな・・・
まあいい、これはこれで楽しいからな。
・・・って、これじゃあまるで嫌がるのを無理やりして楽しむレイプ魔のようだな・・・)
シノは今更ながらに自分のしている行為を考え直した。
これは普通に逆レイプも同然である。
シノ自身は純粋に津田が好きだったことは事実だが、彼のアリアに対する思いを頑なに
守ろうとする姿に、多少の寂しさを感じながらも好きな相手を辱め弄ぶ快感に目覚めつつあった。


「津田、正直に答えてみろ。
君は生徒会室、いや自分のクラスでも言い。
制服の女の子を見るたび、スカートの中のパンツを見てみたいとは思わなかったのかな?」
「・・・思ってません」
「本当かな?」
「・・・」
「ふむ、まあいい。
私は君の深層心理が生んだ存在だからな。
君の事は手に取るように分かる。
・・・なるほど、アリアより私の方のスカートばかり狙っていたな。
このムッツリめ」
「な、何を!!」
「違うのかな?
アリアはどうしても胸に目がいってしまうからな。
その分貧相な私は、スカートの中が見えないのかと思っていたのか。
やれやれ、男と言うのは直ぐ女をそういう目でみるのだな」
「そ、そんなこと」
「ない、と言い切れるのか?」
「そ、それは・・・」
確かに津田はどうしてもアリアの胸に目がいくことは多かった。
そしてシノのスカートの中を意識したことも一回や二回ではない。
これが夢だと勘違いしている津田にとって、シノの言葉は本当に真実のように聞こえた。
「さて、これ以上やっただのやっていないだの水掛け論をしてもしょうがないし」
言いながらシノは再び津田のモノに目を配る。
「ちょ、かいちょ・・・う!!」
それに感づいた津田だが今度は真正面にシノの尻が直撃する。
先ほどは位置関係上腰を浮かせていたシノだったが、今度は津田のモノを上から見下ろす形になっている。
そのため先ほどよりシノの腰の位置は津田の肩幅辺りに当たるようになった。
シノの尻がパンツ越しに丸見えという状態だった。
今度はシノがわざとスカートを捲れさせ、津田の真正面に見えるように仕向けたのだ。
(大サービスだぞ津田・・・)
シノは多少の羞恥心を感じながらも、自らの体を使って津田を落とそうと画策する。
シノのスカートの中はこちら側に突き出され下着が尻肉に食い込み、これ以上ないほど官能的な光景に津田はもう正面は見れない。
シノは必死に理性と戦っている津田を無視し、何も言わず恐る恐る舌を這わせる。
「うう!!」
思わぬ刺激に津田は敏感に反応する。
津田は思わず両手を挙げ、そのとき自分の手が普通に動くことに気づいた
(あれ?俺の手動いてるぞ)
だが今の彼にはそのことを考える余裕はなかった。
手が動くとはいえ、シノを無理に引き離して良いのか。
むやみに女性の体を触ること自体恐れ多くて出来ない彼にとって、手が動かせることは何の意味もなかった。
津田の手はパントマイムのように無駄な動きしか出来ない。
そんな何も出来ずもがき必死に耐える津田の様子が、逆にシノは楽しく感じさらに嘗め回し刺激を与え続けた。


「会長!!
お願いです、もう止めてください!!
これ以上されたら俺!!」
容赦なく襲い来る官能の波。
キスから始まり、間近で女子高生のパンモロを直視し、遂にはフェラをされる。
自分一人で性欲の処理をしたことはあっても、他人にされることなどなかった津田はあっという間にリミットを迎えそうであった。
「も、もう駄目・・・」
津田の声を聞いていたシノは止めとばかりに一心不乱に津田のモノを頬張った。
舌だけではなく、口全体を駆使し彼の全てを搾り取るように吸い上げた。
思わぬ快感に津田は一気に限界を迎え始める。
「うう!!」
津田が吼えると溜めに溜めた性の本流が解き放たれ、シノの口元を覆った。
シノはこぼれないよう口を広げ、手の平でこぼれた精液を取り逃さないようにし、全てを舐め取った。
「美味しかったよ、津田・・・」
本音を言えば決して好んで味わいたいと思う味ではない、だが好きな男の物であれば彼女にとって何も不満はなかった。
それは極上の味になる。
笑顔のシノと相反し、津田は右腕を正面を向いた顔の上に乗せ、その腕の下でいたたまれない表情でいた。
「何で・・・何でこんな、酷いことを・・・」
津田はショックを隠せないようにボソボソと言葉を発する。
まるでレイプされた後の女性のようだ。
いや、無理に射精させられた彼はレイプされたと言っても過言ではないが。
「おやおや、まるで私が君を襲ったとでも言いたげだな」
「違うって言うんですか!?」
津田は怒りを交えながらシノを問い詰めるが、シノは涼しい顔で返答する。
「ああ違うな」
「え?一体何を・・・言って」
「フフ、じゃあ何で早く起きないんだ?」
「え?」
シノの言葉に津田は言葉を失った。
「先さきほど言ったことと重複することだが・・・
もう一度考えてみたまえ、今の私は君の夢の中の私だ。
つまり、今私がしていることは君の欲望そのもの。
今私としたこと、それは君が望んでいることなんだぞ」
シノはいやらしい笑みを浮かべ、津田を逆に追い詰める。


「そんな、俺・・・
これ、俺が望んだことなのか・・・
アリア先輩がいるのに、俺は・・・」
シノの言葉に津田は自己嫌悪に陥っていく。
自らが好きだった女性と付き合っているのに、本当の自分は他の女性との肉体的な関係を望んでいる。
あまりに不純なことに、津田はショックを受け顔色までも変わっていく。
ここまで彼が思い込むとは、これはシノの計算違いだった。
「待て津田。
そう悲観的に考えることではないぞ。
ではなぜ君はこんな夢を見ている?
それを考えてみろ」
「え?」
「だってそうだろう。
夢の中の君は、アリアではなく私との関係を望んでいる。
別に君が浮気性なのではない、君の本当に好きなのはこの私だったんだ」
「俺が、本当は会長のこと?」
「そうだ、最初はアリアが好きだったのかも知れない。
でも実際付き合ってみてどうだったんだ?
恋愛感情における好きと、彼女のお嬢様としての憧れや魅力の眩しさを混合していたのではないか?」
「お、俺は・・・」
シノの言葉に津田は言葉を失った。
「しかし津田よ、それは恥ずべきことではない。
男は年上の女性と言うものに潜在的に好意を寄せてしまうものなのだ。
それが特にアリアのようなお嬢様、それも高貴な魅力を兼ね備えた女性なら尚更な。
無論それが恋愛としての好意な場合もあるし、その感情で恋人になることもあるだろう。
しかし君の場合はどうなんだ?
現に夢の中でこんなはしたないことをしたいと願っている今の君の相手は誰なんだ?
私は誰なんだ?」
「天草、シノ会長です・・・」
津田は困惑しながらも、とりあえず顔色は先ほどより良くなり始めた。
自分の本当の気持ちはなんなのかという混乱は生じたが、先ほどのような申し訳なさが無くなり始めたのだ。
(よし、もう一押しだ・・・)
シノの先導、それにより津田の意識がぶれ始めた。
まさかこのような茶番がここまで功を称すとは、シノは順調にいっている今の状況が自身で少し怖くなるほどだった。
「津田タカトシ、君が本当に好きなのは会長である天草シノだ。
この私、即ち現実世界の天草シノ。
彼女は尊大な人間だ、君が誠意を持って自分の気持ちに素直になれば、きっと彼女は気持ちを汲んでくれるぞ」
「俺・・・は・・・」


シノの言葉に津田は促されるようになっていく。
困惑はしているが、先ほどより顔色は変わっていく。
(おおー、怖いほど順調にいっているな・・・
言葉だけでここまで揺さぶれるなら、次は・・・)
その間にもシノは、シャツを脱ぎブラジャーをずらすと自らの乳房を露にする。
自ら衣服を脱ぎ他人に肌を晒すなどというようなはしたないことを、彼女は本来する人間ではない。
下ネタは言うがそこは別問題である。
しかし今までの苦痛の日々から抜けれるかもしれない、彼の正式な彼女になれるかもしれない。
そんな強い希望が彼女を大胆にする。
「どうだ?私の胸は・・・」
シノは大胆に自分のあられもない姿を津田に見せた。
津田は先ほどまでと違いそのシノの成長過程でありながらも形の良い乳房に目が釘付けになる。
「その・・・何て言ったらいいか分からないですけど・・・
綺麗な形で、十分魅力的だと思います・・・」
津田は素直な感想を述べる。
先ほどまではアリアへの申し訳なさで必死に理性と戦った。
しかし、シノの言葉で潜在的な感情を揺さぶられたことにより、彼の意識が変わったのだ。
もし本来の彼ならば、理性に打ち勝ち絶対に目を合わせないようにしていたはずである。
一度射精したにも関わらず、津田のモノはまた硬さを取り戻していった。
その言葉にシノは満面の笑みを浮かべ、気分が一気に高揚する。
「やっと素直になり始めたようだな・・・
じゃあ、大サービスだ」
津田に自分の体が見られている。
自分の体で、津田が興奮してくれている。
そう感じたシノは快感を味わい、彼女をもっと大胆にしていく。
先ほどはスカートの中を丸見えにさせるのは多少気が引けていたが、今や津田のためだったら何でも出来る勢いだった。
膝で立ちながら遂には下着を脱ぎ、スカートを少しずつずらし、きわどい所でストップする。
「見たいか?私の全て・・・」
シノは妖艶な表情で津田を挑発するように言い放つ。
続きが見たいのなら、哀願してみろということだった。
津田は餌を与えられる前の動物のようにいても経ってもいられない状態に追い込まれる。
「お願い・・・します」
津田はそれほど間を置くことなく、シノの言葉に流され欲望の虜になってしまう。
(本当に素直になったな・・・
本当はもう少し楽しみたいところだがその素直さに免じてやる・・・)
シノはもっと津田にみっともない言葉を要求し、それを楽しんでやろうと画策していた。
だが津田の意外なほど素直な反応に嬉しくなり、悪戯心が薄れていった。
そして自分の大事な部分を津田に見てもらいたいと強く思い始めていたのだ。
欲望に負けていたのは津田だけではなかった。
シノは遂に誰にも見せたことのない秘所を顕にした。
津田は思わず息を呑んだ。


この年になって女性の乳房、そして性器を生で見たことに圧倒されたのだ。
津田は夢の中であることを忘れ、その光景から目を離せなくっていた。
そしてシノは彼のモノを秘所にあてがうギリギリのところまで持っていく。
津田のモノは完全に再び勢いを取り戻した。
このまま本番にまで今にもいけそうな勢いである。
そのことにシノは悦楽に浸り、津田の心にとどめを刺すために言葉を続ける。
「津田タカトシ、君は本当は私とこの続きをしたいと思っているのだ。
君が自分の気持ちに素直になれば、きっと君の願いも叶う。
この続きが現実に出来るぞ」
津田はただただシノの言葉に耳を傾けていた。
始めて生で見る女性の秘所、そこに興奮しながらも、自らの気持ちを必死に整理していた。
「ただし、今ここで見た夢は絶対に他言無用だ。
分かるな?」
「・・・はい」
ここだけは絶対に釘を刺しておかなければならない。
無論このようないやらしい夢を見たことなど、他人に言うわけはないくらいのことは理解していたが。
だが万が一このような夢を見たことをアリアに伝わられたら、アリアはシノが何かしら津田に吹き込んだと確実に感づくだろう。
しかしこの後津田と別れ、津田がシノと一切会っていないと津田に証言させれば、津田一人で
アリアとシノへの感情を考え直したことになる。
津田のいた場所をシノが探し当てれた証拠は何もない。
それに津田自身がシノと会っていなかったと言い切れば、アリアがいかに勘ぐろうとそれ以上のことは分からないだろう。
津田一人で考えを改めた以上、アリアがどう不信に思おうとそれはただの憶測に過ぎない。
津田は誠実な男だ、夢の中でのことはアリアには絶対に言わず胸に秘めておくだろう。
そう講じていた一方で、シノはある一つの考えを抱き迷っていた。
(どうしよう、そうは言ったものの。
いっそのことこのまま彼と既成事実を作ってしまう方が良いのではないか?
彼が現実世界で本当に私に振り向いてくれるか、そんな保証はない。
ならいっそ、このまましてしまっても・・・)
シノは葛藤する。
だがやはり自分の始めてを、好きな男相手とはいえ相手が夢だと思っている状況でささげるのはさすがに気が進まなかった。
状況は非常に不確定要素が多く、どうにも踏ん切りがつかない。


そんな葛藤をしている中。
ブーン
携帯電話のバイブ音が鳴った。
その音にシノはハッとして、慌てて取り出すと動作を止めた。
一瞬沈黙が続く。
だが耳を澄ますとどこからか、駆けてくる足音が聞こえる。
そしてもう一度携帯が鳴った。
「そこね!!」
それと同時にアリアが教室へ入ってきた。
片手には携帯電話を持っており、彼女が鳴らしたのは明白だった。
「・・・やっぱり
そういうことしてたのね!!」
二人の状況を見てアリアは今の今まで二人が何を、シノが津田に何をしようとしていたのか十二分に察することが出来た。
「キスの次は寝取り!!?
シノちゃん、随分と姑息なことをするようになったものね。
とても生徒会長としての気品さを持ったあなたとは思えないわ。
いえそれ以前に、さっきあんなこと言っておいて、ものの数分も経たないうちに裏切られるとは予想外だったわ!!」
アリアは怒れる感情を抑え、少しでも理性的にシノに言い寄った。
シノは言葉を返せずひたすら呆然としていた。
「アリア、何故ここが・・・」
「スズちゃんと生徒会室にいてもちっともシノちゃんが来ないから。
でも私は信じていたんだよ!?
さっきあんなことを言っていた人がまさかそんなことするなんて予想だにしていなかった!!
でもさっきスズちゃんが、タカ君がどこかの教室に行ったっきり帰ってこないことを
シノちゃんに伝えてたことを聞いて、直ぐ分かったわ!!
この卑怯者!!」
シノにとって計算違いでもあった。
直ぐに帰れなければアリアが自分のことを疑うという可能性は考えてはいた。
しかし、シノと津田が会っていたという事実が残らなければ後はどうとでも言い訳が出来る。
彼女に決定的な場面さえ見つからなければ・・・
そう考えていたのだ。
そしてお世辞にも行動力がそこまであるとはいえない彼女が、ここまで早く居場所を見つけ出すとは。
携帯電話を使うことまでは計算外だったとはいえ、考えの甘さを痛感する。
余談だが二人の携帯のバイブ音は二人で共にお気に入りのパターンを吟味しあい、互いに気に入ったものを選んだのだ。
なのでアリアは静かな校内とはいえ、音量の小さいバイブ音を辿ることが出来たのだ。
やはりこの二人にとってバイブの音というのは拘らずにはいられない物であり、皮肉にも二人で決めたこのバイブ音が決定的瞬間を目撃させるきっかけになったのだ。
「とにかく離れて!!」
さすがに机の上から突き通しては危ないということもあり、アリアは突き飛ばさない程度にシノを津田から引き離した。


「タカ君!起きて!!
大丈夫!?シノちゃんに何されたの!?」
アリアは夢と現実の区別のつかないままの津田に必死に呼びかける。
「アリア・・・先輩・・・」
「もう!
こんな時まで先輩つけなくて良いのに!!」
寝ぼけながらも彼らしく律儀な津田に苦笑しながら、アリアは津田の体を起こす。
「俺・・・今まで何を・・・」
「タカ君・・・あなたはシノちゃんにね・・・」
その直後津田の視界には服をはだけ、思いっきり胸の見えているシノが写りこむ。
パンツもずれている状態だが、そこまで気づく余裕はなかった。
「わわわ!!
か、会長!!何しているんですか!!
って、俺も何でチャックが!?」
起き上がった津田は素早く後ろを向くものの、自分のモノがそそり出ていることにも気づき津田はパニックを起こす。
「タカ君、落ち着いて聞いてね。
彼女はね、あなたが寝ているのをいいことに寝取ろうとしたのよ」
「・・・え?」
「話すと長くなるのだけどね」
アリアは全ての顛末を津田には話した。
「じゃあ・・・
さっきまでの俺が夢だと思っていたのは・・・」
「そう、彼女の自分勝手な戯言よ、あなたを惑わしていたのよ。
まるで子供みたいな手だけど、よくもまあ恥ずかしげもなくこんな茶番をしたものね」
「アリア先輩・・・
でも俺・・・」
「タカ君は気にしなくていいの!!
タカ君は優しいから、彼女の言葉に惑わされたんでしょ!!」
「それは・・・」
沈黙が流れる。
夢だと思ってのことはいえ、彼はアリアを裏切ることをしてしまった。
いや、夢と言う本人の願望が強く現れる設定を、それを受け入れたことが彼の感じる責任だった。
「フフフ・・・」
シノは含み笑いを始めた。
津田とアリアはシノに視線を向ける。
「そうだぞ、アリア。
確かに彼の抵抗は立派だったよ。
私のキスにも、フェラにも最後まで抵抗した。
でもな、どんなに抵抗しても所詮彼も男だ。
私のテクニックで彼は見事にイッんだぞ」
シノの言葉にアリアはショックを受ける、まさかシノがここで開き直るとは。
怒りがこみ上げる前にショックでたまらなかった、そしてその反面津田は顔が険しくなっていく。
だがそのことにシノは気づいていなかった。
「そして私は言ったんだ、これは君の夢。
つまり君は私にこうして欲しいと潜在的に思っていたのだと。
そしたら彼は本気で悩んでな、本当に私のことを本心では好きと
思っているのか真剣に考えていた。
その後の彼はそれはもう素直だったぞ。
それからは自分から私の胸などを見て興奮していたんだ。
それに私がパンツをスカートを履いたまま下ろしてな、その中を見たいかと聞いたら彼は素直に見たいと答えたぞ。
そして彼のモノはそれはもう立派な立ち具合だった。
挿入される寸前ではビンビンで・・・」
シノはそのまま言葉を続ける、だがそこに、
「もう止めろ!!」
津田の怒号にシノはビクッとし、言葉を止めた。


「もう止めろ・・・
俺が不甲斐なくて、アンタにイカされたのは事実だよ。
アンタの言葉で自分の気持ちを揺るがされたのも事実だよ。
不覚にもアンタの体に興奮して、見たいって言ってしまったのも事実だよ!!
言われなくたって認めるよ。
けどな、やっぱアンタのことを好きとは到底言えない!!」
津田は鋭い眼でシノをにらんだ。
その射るような視線、そして優越感から叩き落とされたシノは絶望的な表情になっていく。
「俺が好きなのはアリアだ。
それは間違いない、どう言われようとそれは変わらないさ。
アンタが姑息なことをしようと、俺の気持ちを汚すことは出来ない!!」
津田はアリアの方に手を回し、自分の胸板に引き寄せる。
「タカ君・・・」
初めて呼び捨てで呼んでくれた津田に、アリアは彼の胸に身を委ね津田も彼女の肩を更に強く抱く。
そして自然と二人は手をつなぎ、その結束の強さを見せ付けた。
「アンタに全ての責任があるわけではないかもしれない。
けどな、やっぱりアンタのしたことは最低だ!!」
「・・・うう」
シノは立っていられる力を失い、その場に座り込んだ。
これで全ては決まった、たとえどうなろうとこの三人の関係は変わらない。
誰もがそう確信していた。
シノすすり泣きだけが聞こえる。
短い沈黙の後、最初に口を開いたのはアリアだった。



「タカ君・・・
もう大丈夫だとは思うけど、念のためにもお願いがあるの」
「・・・何?」
「私を抱いて・・・今この場で、
私を本当にタカ君の物にして欲しいの・・・」
「・・・」
津田は沈黙を続けた。
「気持ちは分かるけど、本当にいいのかい?
もっとちゃんとした場所で、きちんとした段階を踏まえたほうが・・・」
「だって!!
もうこれ以上タカ君の初めてを奪われたくないもの!!
私たち、恋人同士なんでしょ?!
だったら、遅いか早いかより、その関係を守りたいの!!」
「分かった・・・」
津田の同意に、これから二人が何をするか理解したシノは去ろうとする。
「す、すまなかったな二人とも・・・
じゃあ、私は・・・」
服を調えたシノはそのまま去ろうとする。
「待ちなさい、天草シノ!!」
初めて呼び捨てにされ、シノは怯えたたように振り向いた。
「あなたはここで、一部始終を見ていなさい。
目を背けず、今これから起きることをその眼で漏らさず見ていなさい。
それが、私たちの関係を踏みにじったあなたの贖罪よ!!」
アリアの言葉に、シノは何も言えなかった。
アリアが津田に視線を配ると、
「・・・あまり良い趣味とは言えないと思うが・・・
本当にいいのかい?
初めてなのに人に見られてなんて・・・」
「いいのよ!
あの子に見せ付けてあげて!!
私たちの、ありのままの姿を・・・」
「分かった・・・でも・・・」
津田は多少言いよどんだ。
「何?」
「その・・・
さっき見たとは思うんだけど、会長にされかけたことで俺、
寸止めだったからかなりキテるんだよね・・・
二回目とは言え。
だから、もしアリアが途中で嫌になっても俺、自分を制御できるかどうか・・・」
津田はあくまでアリアの心配をしていた。
もしアリアが嫌がっているのに、自分の欲望を優先して彼女を傷つけてしまったら。
そう考えると津田も不安なのだ。
「フフ、優しいのねタカ君。
でも大丈夫よ、勿論ちょっと怖い気持ちもあるけど、
タカ君と一つになれるのなら、私は平気よ。
例え痛くて途中で嫌になったとしても、私から言い出したんだもの。
絶対に後から文句を言ったりはしないわ」
「分かった」
言うが早いか津田はアリアの腰に手を回し、もう片方の手で顎を引き寄せ、彼女に勢いよく口づけをした。


「ん!!」
いきなりのことに驚いたアリアではあったが、直ぐにそれは悦びに変わり津田の腰と背中に手を回す。
それが彼女のOKサインだった。
必然的に舌を含ませ、アリアもそれを受け入れる。
シノのときとは違い、津田とアリアは互いに荒々しく舌を絡ませ、互いにその感触を味わう。
「・・・あ・・・あ・・・」
その光景をシノは呆然と見つめていた。
そして、自然と涙が溢れてきていた。
(津田、君は私の・・・)
そう思いたかった、例えそれが友人を裏切ることになっても。
だがその願いは完膚なきまでに叩きのめされ、打ちのめされた。
その現実を今眼前で見せ付けられる。
「んん・・・あむぅ」
まるで獣のように互いを求め合う二人を見る、それはシノにとって残酷な拷問に近いものだった。
津田にはそういった気持ちはなかったのだが、アリアはシノに見せ付けるように情熱を燃やした。
二人は互いの唾液を送りあい、自然と二人の口からは溢れ出た。
一頻り時が経つ、二人は自然に口を離した。
「どうだったかな・・・?
アリア」
「最高だったわタカ君・・・
ガムシャラなキスって、こんなに気持ちよいものなのね」
「嬉しいね、それは・・・」

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