カナミ達を背後に感じながらもなんとか私達は花火を見る場所へと辿り着いた。
なんかすっごい疲れた‥‥
カナミ達に会ってから、私達のデートは、いつもの日常に浸食されていった。
射的の夜店で、独特の射撃方法を用いて品を撃ち落とす先輩(回りの視線がかなり冷たかった)を見掛けたり。
人気のない雑木林の近くで友人と思しき人物の荒い息遣いを聞いたり。
事あるごとに後ろの某2人組にエロボケを飛ばされたり。
ホント私の回りって変態ばかりなのね。
私とシンジさんって不幸の星の下に生まれたのかも‥‥‥
溜め息をついて私達は腰を下ろす。
まぁ後少しでシンジさんと花火が見れるんだから気を取り直さなきゃ。
花火が上がりだすのを私達は話をしながら待つ。
「そーいやアキちゃんはなんで浴衣着ないの?確か前も1人だけ着てなかったよね」
会話を交わしていると不意にそんなことを聞かれた。
今日の私はタンクトップにデニムにスニーカーという、いかにも普段の私服という出で立ちだ。
「う、うちの家族、誰も帯の結び方分かんないんですよ。だから‥‥ね?」
なんか無理がある答えかもしれないな‥‥
シンジさんも不思議そうな顔してるけどこれで誤魔化させて貰おう。
ホントの理由は、言いにくいし‥‥
「胸が大きいと浴衣は似合いませんからね」
「誰かさんとは違って、私達ってラッキーだね〜マナカちゃん」
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
まぁお前らはそういう奴だよ。
私の本心はさらりと後ろの悪友達に答えられてしまった。
「‥‥答えにくい質問、代わりに答えてくれてありがとう」
微塵もそんなこと思わないで後ろを振返る。
「やっほ〜アキちゃん♪」
「奇遇ですね、アキさん」
とっくにバレてるっての!
目的地に着いたからであろう、2人は姿を隠すことなく私達の目の前に現れた。
はぁ‥‥またいつもの面子に。
表情が曇っていくのが分かる。せっかくシンジさんと2人で花火見れると思ってたのに・・・
2人には悪いけど、つい恨みがましくなってしまう。
「お前らもここで一緒に見るつもりなのか」
シンジさんも同じ事を感じてくれたのか、ちょっと非難めいた言い方で訊く。
「せっかく2人っきりなのにそんな野暮な真似はしませんよ」
「ちょっとお兄ちゃんに用があってね」
「ん?俺?」

「ちょっとここじゃ‥‥アキちゃん、お兄ちゃん借りてくよ」
そう言って彼女達はシンジさんをどこかに連れていった。
私は1人残され、連れ去られた恋人が帰って来るのを待つ。
何話してんのかな?どうせ碌なことじゃないと思うけど。
そんな事を考えていたらシンジさんだけが戻ってきた。
「お帰りなさい。なんの話だったんですか?」
「う‥‥‥それは‥‥まぁ‥‥」
なんか歯切れが悪いな?なんかそわそわしてるし・・・
気の毒に、私が思ってた様なことを言われたのだろう。
「また変なこといわれたんでしょ。心中ご察しします」
そう言って笑って見せたが、ハハハハハと乾いた笑いが返ってきた。
???
ホントになんの話だったんだろ?

ドーーーーーン
そんなことをしていたらいきなり後ろの空から轟音が聞こえてきた。
音のした方を見やると暗い空に緋色の華が咲いていた。
「「うわぁ〜‥‥‥」」
思わず感嘆の声を私達は洩らした。期日を延ばしただけあって本当に去年よりすごい。
次々に打ち上げられる彩鮮やかな光。
暇なく漆黒の夜空を彩り、幻想的な光で私たちを照らす夏空の華。
「綺麗ですね」
「あぁ」
私達は身体を寄せ合い、言葉を忘れて、その儚い華達に魅入っていた。

「終わっちゃったね」
「そうですね・・・・・・・・・じゃあ、帰りましょうか」
すべての花火が打ち上げられたのを見届けて私達は腰を上げる。
腕を組んでそれぞれの家路に着くために待ち合わせをした駅に向かう。
「なんか花火が終わった後って寂しいですよね」
「そうだね。時期も時期だけに夏が終わったって感じがするよ」
そう、もう夏が終わる。二人で初めて一緒に過ごした夏が。
今年の夏は本当にたくさんの思い出を彼と創ることができた。それがとても嬉しい。
駅までの道のり、私はこの夏に起きた出来事を思い出していた。シンジさんも何かを考えていて何も話さなかったので、私達はほとんど会話することなく夜道を歩んでいった。
駅に着くと流石祭りとでも言おうか、家路につこうとする人々の群れで溢れかえっていた。
こりゃ中に入って行くのは酷かもしれない。
私の家はここから歩いて少しなので、駅の前ででシンジさんを見送ることにする。
「・・・・・・・それじゃあね、お休み」
シンジさんがそう言って駅の中に入っていこうとする。
さっきまで考えてたことがあれなだけに、このままさよならするのは寂しいな・・・・
私はシンジさんの後ろにこっそり寄って、そっと彼の名前を呼ぶ。
振り返って私の方を向くシンジさんの頬に私は不意打ちのキスを。

「へへへへ。おやすみなさい。いい夢を」
なんか照れくさいけどこういう日だからアリよね。
シンジさんは驚いて私の顔を見つめてくる。どんな反応してくれるかな、と思ったが彼はずっとそのまま。
ど、どうしたんだろ?なんか決まりが悪いんですけど・・・・・・
そんな反応取られるとさっきしたことが、だんだんと恥ずかしくなってきた。きっと私の顔は茹蛸みたいになってるだろう。
「アキちゃん」
「ハ、ハイ!?」
いきなり名前を呼ばれ、驚いてしまった私は上ずった声を上げる。
「もしよかったらさ・・・・・・・ウチに・・・・来ない?」
「シンジさんのですか?いいですよ。今年も去年みたいにみんな集まるんですね」
何を言われるかと思ったらそんなことだった。ちょっとドキドキしちゃったよ。
どうやらシンジさんがカナミに言われたのはこの事みたい。なんで言い難そうにしてたのかは疑問だけど。
ちょっと眠いし、また今日の話で弄られるかもしれないけど、まぁこういう日は楽しむべきよね。
「いや・・・・・今日は俺だけ。カナミは今日帰って来ないんだ」
シンジさん1人?カナミ、マナカの家に泊まってくるのかな。つまり家に行くのは私だけってことになるのか。
じゃぁ行くのは私だけか・・・・・・・・・・・・・・ん?

シンジさんの誘い×私1人=恋人2人きりin城嶋家=すなわちこれは・・・

真剣な表情で見つめてくるシンジさん。
私は今、旅行での告白並の、いや、それ以上の決断を迫られていることに気付いて。
祭り帰りの人達が奏でる音が、急に私から遠ざかっていく。
変わりに近づいてきたのは、次第に大きくなっていく私の胸の鼓動。
「あの・・・・・・・・・・その・・・・・」
ついにこの時が来たんだ。ちょっと怖いけど、勇気出せ私・・・・!
自分を奮い立たせて、口からなんとか言葉を搾り出す
「・・・・・はい・・・・い、行かせてもらいます」

残り僅かとなった今年の夏。もう秋がそこまで来ている。
しかしながら、私の気持ちは、あの海の夜に感じた熱さをまた取り戻していた。


「お、おじゃましまーす‥‥‥」
「た、ただいま〜」
ついに家に着いちまった。あれから電車に乗って家に着くまでの間、俺たちは会話らしい会話を交わさなかった。
ケンカとかそういうものではない。家に着いた後のことを想像し、緊張していたからだ。
アキちゃんを先に家に上げて、俺は玄関の施錠をする。
「親に連絡入れなくちゃいけないんで電話借りますね」
彼女はそう言うと居間に入っていき、親御さんに連絡を入れる。
「もしもしお母さん?うん、私。今日さ、あの〜〜・・・・友達の家に泊まってくから。・・・・・もう、分かってるって。うん・・・・うん・・・」
彼女の電話を玄関で聞いていよいよもって現実味が帯びてくる。同時に心の中には如何ともし難い後悔の念が募ってきた。
今更ながら思う。なんであんなことしたんだよ俺‥‥‥

事の発端はカナミに呼び出されたところまで溯る。
「一体何なんだよ」
アキちゃんの所からいくらか離れたところでカナミの手を解く。
「今日ね、私マナカちゃんの家に泊まりに行くから」
「あ〜そう、親御さんに迷惑掛けんなよ。マナカちゃん、こいつお願いね」
「はい、分かりました。お兄さんも頑張ってくださいね」
ん?何の事言ってるんだこの娘は。
訝しんでるんでいる俺にカナミがさも当然のように答える。
「今日家に私いないからアキちゃん誘うチャンスじゃない。こういう機会ないとあっちの方全然進展しないでしょ」
「は!?ちょっ、って待て、まだ行くなー!!」
カナミ達は言いたいことを言って手を振りながら、さっさと遠ざかっていってしまった。
「避妊はしっかりね〜〜〜」
更に追い討ちまでしていきやがった。嗚呼みなさん、そんな目で俺を見ないで・・・
と、とにかくいつまでも佇んでるわけにはいかない。取り合えずアキちゃんの所に戻ろう。
まさに針の筵、あまりの居心地の悪さに、早々と俺はこの場から立ち去った。
ったく、なに考えてんだよ。お前の頭の中はそれしかないんか。
心の中で愚痴を垂れながら歩いていくと、一人待つアキちゃんの後姿が見えた。手を上げて声を掛けようとした。が、
『アキちゃん誘うチャンスだよ』
アキちゃんを見たら急にその言葉が思い出されてしまい、言葉に詰まってしまう。
気配を感じたのだろう、アキちゃんは振り返って俺に笑顔を向ける。
「お帰りなさい。なんの話だったんですか?」
うっ!いきなりそれを聞きますか・・・俺は明らかに不自然な立ち振る舞いをしてしまった。
かなり怪しげな返答をする俺に、アキちゃんは不思議そうにしていたが、花火が上がりだしてからはそちらの方に意識が向けられた。
あのまま追究されてたら泥沼に嵌っていただろう。GJだよ花火!
俺はそれに安堵し、同時に、カナミ達が言っていたことを花火が上がってる間もずっと考えていた。


花火が終わってからも俺はその考えをやめることが出来なかった。
カナミが言ったとおり、こういう機会を利用しないと俺たちの関係(ぶっちゃければ身体の)は多分進まないんだろう。
なんだかんだ言ってこういうことには不慣れな俺達だ。きっかけがなければどちらもそういう行動に繰り出せないと思う。
でも・・・・・以前考えていた〔気持ち〕の事を思い出すとやっぱり踏み込めない自分。

めちゃくちゃ格好悪いな、今の俺・・・・

そんな不毛な考えを繰り返してるうちに駅に着いてしまった。
あ〜〜どうしよう・・・・でもよ、まだ悩むってことは、まだ時期じゃないって事、じゃないか?
・・・・・・・うん、そうだよ。そうに決まってる。
そう納得させて今日は帰ろう。自分の臆病さにはほとほと呆れるが仕方が無い。
アキちゃんの家はここからすぐらしいので、彼女とはここでお別れだ。
人たくさんいるから駅の中で別れるのもアレだし。
彼女もそれを分かっているので駅に入る前に彼女に別れを告げることにした。
なんだかんだ言って名残惜しいけど、まぁ仕方ないよな。
駅の方へ足を向ける。が、そこで不意に名前を呼ばれた。
ん?なんだ?
振り返るとそこにはアキちゃんが。どうしたんだろ。何かまだ・・・・・・
そこで俺の思考は中断。その代わりに感じたのはコロンの甘い匂いと、頬に触れる柔らかな感触。
ほんの数秒後、その心地よい感触たちは俺から離れていき、代わりにいつもの眩しい笑顔が目の前に現れた。
その瞬間、俺を抑えていた何かが切れた。なんか頭の中が変に冷めてくる。
俺は彼女が・・・・・欲しい。
俺はさっきまで悩んでたのが嘘のようだ。
さっきまで言おうか言うまいか悩んでいた言葉が、拍子抜けするくらいにさらりと口から出た。
「もしよかったらさ・・・・・・・ウチに・・・・来ない?」

以上、回想終了。
まんまその場の感情に任せたって感じだな、今思えば。
これが故人が残した言葉、若さ故の過ち、とか言うやつなのだろう。
あんな笑顔見せられたらなぁ。なんだかんだ言って俺はアキちゃんに溺れてるみたいだ。
告白こそ彼女からされたが、それは俺が以前から抱いていた想いを気付かせるきっかけだったのかもしれない。
彼女のいろいろな表情、仕草、言葉に触れて、彼女への想いが自分でも戸惑うくらい大きくなっていた。
「シンジさん?どうかしました?」
考え事に耽り過ぎて結構時間が経っていたらしい。電話を終えたアキちゃんは訝しんでこちらを見てきた。
「あ〜〜なんでもないよ。先に部屋行ってて。飲み物持って上がるから」
そう言って先に彼女を俺の部屋に行かせ、俺はキッチンに行き麦茶をコップに注いだ。
コップを持って部屋に入ると彼女はテレビを眺めていた。
「どうもです。それじゃいただきます」
俺は床に二つのコップを置いて、アキちゃんの隣に腰を下ろす。

彼女はコップを取り、麦茶を口に含んで気持ちよさそうに息をつく。
俺もそうだったがやっぱり彼女も喉が渇いてたらしい。
それはただ熱いからということじゃない。緊張が更に喉の渇きを強めたのだ。
俺は半分くらい一気に麦茶を呷ってから一緒にテレビを眺めることにした。
人気の若手芸人がなにやら怪しげな企画をやるというくだらない内容だ。
テレビの内容など欠片も頭の中に入ってこない。それは彼女にも言えることだろう。

やはり今日は止めといたほうがいいんじゃないか。今は頭の中をその考えばかりが頭の中を駆け巡っていた。
こんな曖昧な気持ちでことに及んだら俺は彼女にずっと後ろめたい思いをするんじゃないか。
いずれその思い自体忘れる日が来るかもしれない。でもそれを思うと気が楽になるどころかそうなってしまう自分に激しい自己嫌悪を覚えた。
『今日はもう寝ろ。焦る必要ないじゃないか。彼女も不安に思ってるはずだ。
俺が彼女を思うならばここは自重するところなんだ』
頭の中にもう1人の俺がいてそう囁かれてるような気分だ。
俺は自分に暗示をかけるように、ひたすらその言葉を頭の中で反芻していた。

いつのまにか番組が終わっていた。いやに余裕無いな、俺。
隣に目をやると更に緊張の色を張り付かせた顔をしている恋人の顔が。
もう考えは纏まった。決意が揺らがないうちに早速・・・・・
「アキちゃん」
「・・・・・はい」
「俺下で寝るからこの部屋使っていいよ。なんならカナミの部屋でもいいし」
「え・・・・・・・あ、ちょっと」
有無も言わせないくらい一気に言葉を並べて、俺は部屋を出ようとする。
あまりにも自分が情け無さ過ぎてこの場にいるのが辛い。
足早にドアの方に向かい、おやすみを言うためにドアを開けてから彼女の方へ振り向く。
しかし俺はその言葉を口に出せなかった。あまりにも予想外のものを見て、言葉がどこかに吹っ飛んでしまった。
彼女は、瞳に涙を溜めていた。そして堪え切れなくなった雫は彼女の頬を伝っていった。
何が何だか分からない。どうしてそんな顔してるんだよ。
ひとまずドアを閉め、彼女に声をかけるために近寄ろうとする俺。
「ひどいですよ、シンジさん・・・・・」
不意に放たれた言葉に足が止まってしまう。更に彼女は言葉を重ねる。
「・・・・家に誘われて・・・・・・・・すごい、迷いました。
こういうこと初めてだから、不安で押しつぶされそうにもなりました。でも・・・」
感情を押し殺して話す彼女だったがそこで一端言葉を切り、その直後、自分の心の内を俺にぶつける。
「でも・・・シンジさんになら、って・・・決意したからここに来たんです。
 なのに・・・・うぅ・・・そんなのって・・・・・ない・・・・ですよ・・・・!」
抑えていたものが我慢の限界に達したのだろう。彼女はその場で泣き崩れてしまう。
そんな彼女を見て、俺は後悔やら自分に対する怒りやらの念に襲われた。
・・・・・・・・俺は、馬鹿だ。
自分のことばかり考えてて彼女の気持ちを全然考えてやれなかった。
俺は自分勝手な考えで彼女の気持ちを逆に傷つけてしまった。
彼女のことを大事に思うなら、彼女の気持ちを汲んでやらなければいけないってのに。
俺は泣いてる彼女に近づき、膝を付いてそっと抱きしめる。俺が傷つけた気持ちを、少しでも癒したくて。
彼女はそうされると俺の胸に額を押し付けてさらに声を上げた。
俺は彼女が泣き止むまで、何も言わずにただただ彼女を抱きしめていた。


どれほどの時間が経ったのだろうか。
彼女の泣き声は次第にすすり泣きになり、しばらくしてそれも止んだ。
「楽になった?」
「・・・・・はい・・・・・すみませんでした、取り乱しちゃって・・・・」
「いや、いいんだよ。全部俺が悪い」
俺のせいで君がこんな思いをすることになったんだ。
彼女にだけ胸の内を語らせるわけにはいかない。俺も、正直に話そう。
「俺がさ、その・・・・・しない理由、聞いてくれる?」
そして俺はぽつぽつと、自分が悩んでいたことを腕の中にいる少女に語った。
本当は君と一つになりたかったということ。
君が気持ちさえあればいいと言ってた事をカナミから聞いていたこと。
それ故に自分の気持ちがどこにあるのか悩んでいたこと。
気持ちがはっきりしないうちに抱いてしまっては君に失礼だと思っていたこと。
そんな俺の告白を彼女は黙って聞いてくれた。怒るわけでも、悲しむわけでもなく、ただただ黙って。
言いたい事は全部言った。俺は彼女の反応を待つ。
どんなに罵られたとしても仕方がない。甘んじて受けよう。
しばらくの間、沈黙が俺の部屋を支配する。聞こえるのは時計の秒針が進んでいる音だけ。
「・・・・・バカ」
沈黙はその単純な二文字の言葉によって終わりを告げた。
「バカバカバカ・・・・ホント〜〜っにバカです」
う・・・・そんなに言わんでも・・・・
どんな言葉でも来いと思っていたが、変に難しく言われるよりこっちのがある意味堪える。
ちょっとショックを受けて項垂れる。まぁ俺が悪かったし、馬鹿ってのも事実なんだけど・・・・
「そんなことで悩んでたんですか?」
え?
驚いて彼女を見る。どこか呆れている思いが感じ取れる笑みを浮かべているアキちゃん。
「ホントに律儀な人なんだから。まぁそこもシンジさんの良い所でもあるんだけど」
「え?あの・・・・・もっと、こう・・・怒ったり呆れたりしたんじゃ?」
「怒ってませんよ。ちょっと呆れましたけど・・・・」
呆れはしたのか・・・・
「でも、シンジさんが悩んでたってのが分かって、私、嬉しかったんです。
 シンジさんにとって私は特別な存在でいられてるって実感できて。
だって、普通どうでもいい相手ならそんなに悩まないでしょ?
そう悩んでくれたのなら、もう悩む必要なんてないんですよ。なんか言ってること矛盾してますけど・・・・・」
彼女は自分の言った言葉に疑問を感じたのか、バツの悪い顔をし、照れたように頭を掻いた。

ホント、この娘は・・・・・・・・
心の中の迷いがすうっと無くなっていく気がした。夜の闇が夜明けに近づくにつれ薄まってゆくかのように。
俺は彼女にこんなに好かれていて。今になって改めて気付くなんて本当のバカだよ。

「じゃあお互い言いたいこと言ったんで、テイク2といきましょうか。ね?シンジさん」
先ほどの緊迫した雰囲気から一転、アキちゃんは戯けながら微笑んだ。
もう俺には迷う理由はない。あるのはアキちゃんに対する愛しい気持ちと、ただ一つになりたいという純粋な思いだけ。
今度こそ俺が男にならなければいけない時だ。


「アキちゃん、俺は・・・・・君と一つになりたい」
そして腕の中の彼女と自然に唇を重ねる。愛を確かめるように何度も何度も。
キスは次第に激しさを増していき、どちらからともなく、お互いに求めるように舌を絡め合う。
彼女の味、彼女の温度が俺の口内に広がっていく。
付き合ってからキスは何度か交わしたがここまで熱く、深く、互いに貪り合ったことはない。
やっべぇ・・・・・・頭変になりそう・・・・
たっぷりと彼女を味わって唇を離す。
彼女の目は潤んでいたが先ほどの涙のものではないことはすぐに分かった。
「‥‥はぁ‥はぁ‥‥んっ、ふぅ・・・腰、抜けちゃい・・・・ました・・・・」
意識してやってんだかやってないんだか。そんなこと言われて黙っていられるわけないだろ。
俺は彼女を強く抱きしめ、それからお姫様抱っこの要領でベッドへ運ぶ。
静かにベッドの上に彼女を下ろして自分もベッドに上がる。いつも1人で使っているベッドが軋む。
彼女に近付いて至る所に唇を落とす。額、頬、耳、瞼、首筋と満遍なく。
手持ち無沙汰になっていた手は服越しに彼女の身体を這わせていく。
彼女は声を出すのを我慢し、甘い吐息を洩らしていたが、掌が胸に添えられたとき、彼女は声を洩らして身体を震わせた。
服の上からだというのに、彼女の豊満なそれは、この世のものとは思えない程の弾力を感じさせた。
服越しに掌に収まりきれない乳房を弄ぶ。
「ん‥‥‥ふぅ‥‥あっ‥‥‥はぁ‥‥」
時には優しく、時には強くと強弱をつけて彼女の乳房を揉みしだく。
俺が手に力を加えるごとに彼女は一際甘い声をあげる。
「はぁ・・・・く・・・はぁっ!・・・・シン・・ジ・・・さぁん・・・・・!」
こういう反応を見るのも楽しいのだが。
愛撫を行っている内に俺の興奮のボルテージも高まっていた。
もう1人の自分も信じられないくらい熱く脈打ってるのが感じられる。
そろそろ生で彼女と触れ合いたい。
「はぁ・・・服、脱いで」
彼女へのキスをひとまず止め、服を脱ぐように促す。
初めてで俺から脱がすってのも、なぁ。
アキちゃんは身体を起こし、衣服を脱ぎベッドの下に落とす。
大して着ているものがなかったので、すぐにアキちゃんは白い下着姿になる。
そこから脱ぐのは流石に恥ずかしそうだ。まぁ初めてなんだから仕方ないか。
俺は彼女の背中に手を伸ばし、彼女の胸を覆うブラのホックを外し、それをベッドの端によせる。
彼女の胸を隠すものが無くなり、彼女はショーツ1枚だけの姿になった。
彼女は腕で胸を隠していたが、
「腕、どかして。しっかり君を見たい」
と言うと、これ以上は無理なんじゃないかと思えるくらい顔を赤く染めて、ゆっくりと腕を腹部の方へ下げていった。
露になった彼女の裸体を見て思わず息を呑む。
本当に・・・・・綺麗だ・・・・
いつもビデオで女の裸は見慣れている。が、彼女の身体はそんなものと比べることが出来なかった。
肌は陶器みたいに滑らかで。彼女の乳房はただ大きいだけではなく形も素晴らしいものだった。
身体全体の均整も見事なもので、まるで一つの芸術作品を見ているようだった。
そして・・・・・
俺の好きな娘が、他の誰の為でもなく、俺の為にこの姿を見せてくれていることが・・・
何よりもも俺の心を揺さぶり、ヤバイくらい幸福な気分にさせてくれる。


「そんなにじっと見ないで下さい・・・・・すっごい恥ずかしい・・・」
「ごめん、でも無理・・・・凄すぎて、目、離せないわ」
彼女の申し出をあっさり却下。
流石にこれには気分を少し悪くしたのか。恨みがましい眼で俺を見つめる。
んなことされたら逆効果だってのに・・・
我慢しきれなくなり半ば無理矢理彼女の唇を奪う。
「むぅ!ん〜〜!」
唐突にしたものだから彼女は戸惑って抵抗するが、俺はそれを意に介さない。
彼女の頭を両手で押さえ、無理矢理に舌を差し入れ、舌を求めた。
彼女のそれは小魚なように逃げ回るが、そんなことは許可しない。どこまでも追っていき、強く舌を吸う。
そうしているうちに彼女もその気になったのか、あきらめたのか。
アキちゃんからも積極的に俺の舌に自分のそれを絡めてくる。
室内に口付けから紡ぎだされる淫らな音が響く。
1,2分互いの唇を貪り合って、俺は彼女の唇から自分のものを離す。
「ふぁ・・・はぁ・・・・いきなり、なんて・・・んっ・・・酷いです・・・・」
俺を見つめる瞳にはもう非難の色は無く、焦点の合ってない潤んだものへと変わっていた。
今度はむき出しになった彼女の乳房に手を向かわせた。
服越しでも彼女のそれはなんとも言えないものだったが、直に触れた豊満な乳房の感覚はそれを遥かに凌ぐものだった。
ただ柔らかいだけではない、程よい弾力を残したそれを俺は夢中で揉んだ。
「んんっ!・・・つぅ・・・・」
夢中になりすぎて少し力を入れすぎた。彼女の口から思わず声が漏れる。
「ご、ごめん!」
「もっと・・・・優しく、お願いします・・・・・」
今度はもっと慎重に。優しく豊満な果実に力を加える。
「はぁ・・・・き、気持ち、良いです・・・・もっと、して下さい・・・」
そう言われたのならリクエストには応えねば。指で軽く胸の先端を摘む。
硬くなった乳首を摘まれて、彼女は思わず身体を震わせる。
「あぁぁん!ちょっ・・・・それは・・・・!」
どうやらそこが弱点らしい。じゃあそれなら・・・・・
俺は彼女の乳房に顔を近づけ、左側の乳首を舌で刺激する。案の定アキちゃんは一際大きな声を上げる。
「はぁぁぁっ!!シン、ジ・・・・さぁあん!!」
予想以上の反応。味を占めた俺は執拗にそこを責め続ける。
「あぁぁぁ!!ダメぇ!それ以上・・・・・やったら・・・・!」
そんなこと言われても。こんなの見せられて止められますか、いや、止めれませんよ。
かまわず俺は彼女の乳首を甘噛みする。
「は、はぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
すると彼女は思い切り声を上げて、上体を反らしぐったりしてしまった。
あれ、もしかして・・・・・いっちゃった・・・ってやつでしょうか?
彼女の反応を見て俺は驚きと共に、感動を覚えてしまった。
初めてなのにこんなに感じてくれるなんて・・・・
しかしこのままじゃなんともできん。アキちゃんが回復するまで待つとするか。


深まる想い・後編

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