季節は冬。桜才学園の放課後はゆっくりとした時間が流れていた。
外には午後過ぎから降りだした雪のせいで地面が徐々に白くなりつつある。

「ふーむ、このまま降り続けば明日はホワイトクリ○リスだな」

「やめて聖なる夜を汚さないで」

「ナニ、性なる夜とな?よーし、津田もノッてくれたことだし一句詠んであげよう
ラブホテル 満員御礼 セイなる夜 どうだ。季語もちゃんと入ってる。いいだろう」

「もうだめだこの人は…」

今日は12月24日金曜日。クリスマスイブ、である。一年に一度の恋人たちのお祭りが今日から開かれるのである。
クリスマスはどんな人にも影響を与える。カップルであっても、独り身であっても。
それが良い影響かどうかは分からないが…

「シノちゃん絶好調ねー。クリスマスだからうきうきしてるのね。分からなくもないよ。
私だって冬なのにノーパンで登校しちゃったもの」

「それはいつものことなんじゃ…」

「そうだ!今年もクリスマスパーティをしようじゃないか!
それだ!それがいい!受験勉強の中にもヌキヌキは必要だ!」

「それは良い案ね。今年も私の別荘でしましょう。私も最近勉強ばかりで疲れちゃったし」

「じゃぁ決定だな。明日明後日でいいか?」

「私は多分大丈夫です。去年も普通にOKだったし」

タカトシは困ってしまった。というのもタカトシはもう独り身ではなく、恋人がいるからである。
その恋人の名前は五十嵐カエデ。先日、雨の中告白して結ばれたばかりだ。
今年のクリスマスはカエデと一緒に過ごしたい、とタカトシは思っていた。
だから先週あたりからデートの計画を綿密に立てていた。ちゃんとプレゼントも考えていた。
というかもう買ってしまっている。このままパーティに行くと言えば全てが水の泡だ。
しかし断れば生徒会役員共のことだ。
どんな手を使ってでもタカトシのクリスマスを暴きにかかるだろう。どうすべきか…
と、そこへ扉を叩く音が飛び込んできた。


「失礼します。風紀委員会です。見回り終わったので報告にきました」

「おお、そうか入ってくれ。」

会長に促され風紀委員長であるカエデが部屋の中に入ってくる。一瞬、タカトシと視線が交錯する。
生徒会と風紀委員会との合同の見回りは終了していた。それは先週のことだった。
もう校内における見回りの改善すべき点は出尽くしたのではないか、
との生徒会が申し入れてきたので風紀委員会もそれに納得し、
校内巡回強化期間は終了した。
しかし、カエデは生徒会が見回りの改善にも大きな役割を担っていたことを知っていたので
今後とも改善点を探す手伝いはしてくれないかと頼んだところ、了承の二文字が出されたのだ。
と言う訳で今の校内巡回はカエデが一人で見回り、
生徒会と風紀委員会どちらにも報告、という形で進められている。

「今日は特に異常ありませんでした」

「そうか。ご苦労様」

「か、会長!」

「なんだ津田?」

「五十嵐さんもクリスマスパーティに誘ってみてはいかがでしょう?」

「は?」

タカトシは一か八かの勝負に出た。生徒会のクリスマスパーティにカエデも呼ぼうというのだ。
カエデは当然、驚いた。生徒会のメンバーも驚いた。
しかし、タカトシにとって何の憂いもなくカエデとクリスマスを過ごす方法はこれしかないのだ。
カエデも来れば2人は一緒には居られるのだしプレゼントも当日に渡せる。
カエデも一緒にパーティをする。この選択が今の状況で考え得る最小公約数的な選択だった。
カエデはタカトシの真意を測りかねて視線を向ける。
タカトシは事前にクリスマスは一緒に過ごしましょうとの連絡を入れておいた。
だが今はこうすることが一番良い。タカトシはお願いします、とアイコンタクトを送った。

「そうだな、あまりない面子と親睦を深めあうのもいいかもしれん。どうだアリア、大丈夫か?」

「全然オッケーだよー」

「五十嵐も大丈夫か?」

「えぇ、じゃぁ参加させていただきます」

こうして、タカトシの目論見は上手くいった。

「すみません、急にあんなこと言っちゃって…」

帰り道、タカトシとカエデは一緒に下校する。もうすっかりお馴染みだ。
雪が降っているので2人とも傘を差して歩く。カエデは花柄の女の子っぽい、タカトシはあのビニール傘だ。
カエデと付き合うようになって以来、雨の日は絶対この傘を使うようにしている。


「ホント、びっくりしたわよ。どうしたのいきなり」

タカトシは自分の考えを説明する。
クリスマスパーティに行くのを断ると勘ぐられて関係が露見するかもしれないこと
2人が一緒に過ごすということでは、この方法が一番安全だと思うこと、など。

「あの一瞬でよくそこまで考えられるわね」

「はは、普段頭使ってないですから」

「もう、そんなこと言って。しっかりしなさい。でも楽しみだな、パーティ」

タカトシとカエデが付き合っていることはみんなには秘密である。
桜才学園の校則には学外での交際までは規律していないものの
公言するのは憚られた。何といっても風紀委員長と生徒会副会長の大物カップルだからである。
変に解釈されると、最悪の場合2人とも解任、という事態もありうる。

「来年は、2人きりで過ごしましょう」

「私もそれを望んでるわ」

そしてカエデの家の前に到着する。降りしきる雪と家の中から漏れる光が良い具合にマッチしていた。

「それじゃ、また明日。楽しみにしてるわ」

「ええ、楽しみにしててください。絶対に楽しいですから。それじゃ――」

そういって2人はキスを交わす。別れ際のキスはもはや習慣的なものになっていた。

カエデの家から帰る途中、タカトシは小物屋で明日のクリスマスパーティ用のプレゼントを一つ買って行った。


「着いたー!」
コトミが車から飛び出す。空は晴れ渡り、辺りは一面の銀世界。そして目の前に鎮座まします豪邸。
まるでおとぎ話の世界にでも入り込んだかのような錯覚を受けてしまう。
冬にここに訪れるのは何回かあったが今でも慣れない。言葉を無くしてしまう。

「うわぁ…」

初めて来たカエデも同じように言葉を失っていた。
目をキラキラと輝かせてファンタジーのような世界を眺めるその姿は、優美だった。
タカトシはカエデの傍に行った。
「どうですか五十嵐さん、綺麗でしょ?って言ってもこれは本来七条先輩の台詞なんですけどね」

「とっても…キレイ…来てよかったわ…誘ってくれてありがとう」

「いえいえ」

「よーし、じゃぁみんな一旦荷物を置いてくるぞー」

シノの一声で一同、荷物をまとめて別荘へと向かって行くのだった。


昼間はソリや雪合戦、かまくらを作ったりして遊んだりした。
カエデも、コトミや出島さんとすぐに打ち解けることができた。
打ち解けると言っても…

「うわっぷ!あちゃー、五十嵐さんに顔射されちゃったー♪」

「その表現はやめてー!!」

「顔射…最近ご無沙汰ですね。私にもしてくださいませんか」

「全力でお断りします!」

ツッコミ役として相性がいいということなのかもしれなかったが。

「なぁ萩村」

「なぁに、津田」

「今日は楽だな」

「そうね、新戦力が加入したから」

いつもつっこみ役を任されている2人にとって今日は安息の日だった。


夜。出島さん手作りの豪勢料理に舌鼓を打った後、プレゼント交換が行われることになった。

「お次はお待ちかねのプレゼント交換です!!」

サンタのコスプレをしたコトミが大はしゃぎで音頭をとった。
去年のように明かりを落とした部屋でプレゼントを回すという方法で行うようだ。
タカトシはこの時のために準備しておいたプレゼントをとりだした。カエデのためのプレゼントは別にある。
後で渡せばいい――そう思っていたのだが。

「またこれだった…」

去年に引き続き、タカトシはまたバ○ブを貰ってしまった。今度はアリアからのプレゼントだった。

「津田」

スズに呼びかけられた。手にはタカトシのプレゼントがある。
どうやら津田のプレゼントはスズの手に渡ったようだ。
今年、タカトシが準備したのは犬をモチーフにした可愛らしい筆箱だった。

「俺のプレゼントを貰ったのは萩村だったか」

「ええ、ありがたく使わせてもらうわ」

ふとカエデがいる方に視線を向けると、カエデも楽しそうにコトミと談笑していた。
どうやらカエデはぬいぐるみを貰ったらしい。…変なラッピングがされていたが。


「あー忘れてた!」

と、いきなりコトミが大声で周囲の空気をストップさせた

「さっき、こんなの拾ったんだったー。なんかプレゼントっぽいんだけど…」

――!
コトミが頭上に掲げている小箱、それはタカトシがカエデのために用意したプレゼントだった。
鞄に入れておいたのを、何らかの拍子に落としてしまったのに違いない。タカトシは冷や汗が流れるのを感じた。

「ふむ、誰のだ?」

「分かりませーん」

誰もが困惑した表情で周囲を見回す。もちろん誰も名乗らない。そりゃそうだ。それはタカトシのなのだから。
ここで安易に自分のだと名乗り出ればどうなるだろう。自然、誰に渡すつもりだったんだ?という質問が飛んでくる。
それは避けたい。いやしかし言わなければ…
タカトシがどうするかどうするかと焦っているうちにコトミがとんでもないことを良いだした。

「っと言う訳でー、このはみ毛しちゃってるプレゼントも、マワしたいと思いまーす!」

そしてコトミの痛烈な宣告。
最後の最後で大失敗をしてしまった…
タカトシは自分を恨んだ。


「やったー♪あたったー♪」

結局タカトシのプレゼントはコトミのものになってしまった。ちなみに中身はネックレスである。
「カエデ」という名にちなんで、赤い楓のネックレスをチョイスしたのだったが…
タカトシはカエデに申し訳なく思った。カエデだって何かを期待しているはず。
それを「すみません、それ妹が持ってます」なんて言えるわけがない。でも、謝らないといけない。
嘘をつくよりもカエデはタカトシに素直に堂々と生きることを望んでいるに違いなから。
タカトシが意気消沈する中、ポケットで携帯が震えた。

From五十嵐さん
To津田タカトシ
Sub(non title)
みんなが寝たら、外で。


「うぉ、さぶっ」

その後、カラオケ大会やら罰ゲームあり人生ゲームなんかを経て宴はお開きとなった。
そして各自風呂に入って就寝。その二つが本日最後のプログラムだ。独り身にとっては。
タカトシは別荘内の電灯が全て落ちるのを見て、部屋から居間から外へと抜けだしてきた。ただ今午前1時。
外は当たり前に寒い。雪が降っていないのが不幸中の幸いか。
タカトシは寝巻のスウェットの下にも何枚か下着を着ていたがあまり効果がないように思えた。

ガチャ――
ドアが開く音に振り返ると、カエデがいた。
いつものみつあみじゃなく、ストレートに下ろした美しい金髪に灰色のパーカーを着ていた。


「津田君」

「あ、五十嵐さん…」

「どうしたのそんなにこっち見て」

「いや、髪を下ろしても綺麗だなって…」

「ばっ…あ、ありがとう」

2人で向かい合う。こんなことは何回もしているのにでも、慣れることがない。
恥ずかしさで視線を固められない。
するとカエデがタカトシに何か差しだした。

「あの…クリスマスプレゼント…マフラー作ってみたの。初めてだから、上手く出来てるかどうかわかんないけど…」

サンタとトナカイが賑やかに飾る、クリスマスを醸し出した包装のプレゼントを受け取る。
タカトシは自分にこんなにも尽くしてくれるカエデを抱きしめたくなった…が、今はやらなくてはならないことがある。

「あの…俺もプレゼント用意してたんですけど…諸事情により渡せません!すみません!」

「それって、アレでしょ?今日コトミちゃんが拾ったって言ってたの」

「あれ?なんで分かったんですか?」

「あのとき津田君チラっと見たら顔から血の気引いてたからね。あーって…」

「本当にすみません…せっかくのクリスマスなのに俺だけプレゼント貰っちゃって…」

「いいのよ、あなたは私をこんな素晴らしいパーティに紹介してくれたじゃない。それが一番のプレゼントよ。…でもね」

カエデはタカトシに寄りかかってきた。体の体重をタカトシに預けてくる。カエデの温かさ、しなやかさを十分に感じる。
不意にそんなことをされたのでタカトシの胸の鼓動は高くなる。
そして手をタカトシの胸に置き、消え入りそうな声で言った。

「でもやっぱり悔しいな…あなたのプレゼント、他の女性がつけるなんて…ねぇ、津田、いやタカトシ君」

「は、はい?なんですか?」

「私、プレゼント要らないって言ったけど…や、やっぱり欲しくなっちゃった」

カエデの顔が赤くなる。何を言い出すんだろう、
でもどんなプレゼントを求められても買ってあげようとタカトシは思った。

「あ、あああああなたが…ほ、ほしい…かも」

「 」

タカトシは爆発したかと思った。


「ね…ねぇ!なんとか言ってよ!は、ははは恥ずかしいじゃない!」

「あ、あぁすみません!意識が飛んでました」

「で…でで、どうなの…?」

タカトシは視線を下げて胸の中にあるカエデを見た。顔はいつか見たときのよう、
それは告白した時のように真っ赤で視線はあやふやでふわふわしていた。
これも一種の告白だ――本来なら男がするべきであるはずの。
それをカエデにさせてしまった。自分の不注意のせいで…
でもそれほど自分を想っていてくれることが、嬉しい。
タカトシはカエデをギュッと抱きしめた。それが答えだと言わんばかりに。

「俺も、カエデさんが…欲しいです」

カエデは壊れかけた人形のようにぶんぶんと頭を縦に振った。


2人はタカトシの部屋に来ていた。部屋は暖房が効いていて暖かい。ベッドの上で2人は向かい合う。

「ねねねねねぇ、わ、私のこといやらしい…とかって…お、おおもってない?」

タカトシはきょとんとした。どうしてそんなことを言いだすのかわからなかった。
タカトシはカエデが言葉を続けるのを待った。

「わ、わたしはもうあなたの手を握っても、あ、あなたを抱きしめても怖くないわ。
で、っでもそうなったのもつ、つい最近のことじゃない?
そんなわたしが、そ、そ、そそその…セッ…だ、だなんて…そ、そそ…」

最後は恥ずかしすぎて言葉にならなかったようだ。
カエデは自分の変化に戸惑いを覚え、素直になれないのである。
18年間の男性不信、そして数か月でのタカトシへの反応、そしてこみ上げる愛おしさ。
その変化がカエデを不安にさせていた。自分が分からなくなっていた。
でもその戸惑いを不安を、タカトシの愛で断ち切ってもらおうと、カエデは願ったのだ。
自分勝手な愛かもしれない、カエデは思う。でも、でもでも!私はこの人が好きなのだ!
好きな人を欲しくなって…欲しくなって!欲しくなって…悪いの…だろうか…
カエデはそう考えて涙が出てきた。訳のわからない衝動とともに恋の涙をカエデは流すのだった。

「カエデさん…」

タカトシは言葉に詰まり涙を流すカエデをずっと黙って見ていた。
手を膝をついて握り締め、流れる涙を拭わずずっと、下を向いている彼女を。
こうなったら、男であるタカトシが女であるカエデにできることはただ一つだった。
ただ――

「あ…」

「カエデさん、俺はあなたのこといやらしいなんてこれっぽっちも思いません。
というか、もっと、あなたのことが好きになりました」

――抱きしめた。
――そしてそっと唇を重ねた。


そっと、唇を合わせた後、タカトシは舌をカエデの口腔に侵入させていく。
カエデも体をビクッと震わせた後、目を閉じてそれを受け入れる。

「ん…ふぅ…はぁ…んぅ…」

タカトシはカエデをその力強い両腕に抱きしめ、固定し、その舌を注いでいく。
カエデはタカトシの口から流れ出てくる唾液を嚥下していく。唾液がまるで媚薬のようにカエデの体を火照らせていく。
随分長い時間キスしていたように感じた。けれど時間にすれば5分もないかもしれない。
2人はお互いの唇を離す。細い唾液の線がお互いを結んでいた。

タカトシはカエデの着ているパーカーのファスナーを下ろしていく。
中にはもう一枚、薄いピンク色のキャミソールが着られていた。形の良い胸が一枚を隔てていてもはっきりと分かる。
生唾を飲み、タカトシは、ゆっくりとした手つきでパーカーを脱がせ、キャミソールにも手をかけた。
すると、今までじっとしていたカエデが

「ま、まって!こ、これは…じ、自分で脱ぐ…から」

とタカトシを制し、おずおずと自分でその一枚を脱いだ。
カエデの体を覆うものはそれで、最後だった。目の前に現れたのは、暗闇でも薄く光る美しい裸体。
ほどよく膨らんだ女性の象徴。まるで真珠のようで、あってとても魅力的でいやらしかった。
カエデはキャミソールを脱ぎ終えた後、胸を隠そうとした。だが、何かを思い直し、止めた。

「ど、どどうぞ、タ、カトシ君…す、すすきに…してください」

目を瞑って声を振り絞るように告げるカエデ。タカトシの興奮は最高潮だった。
しかし、最後の理性が彼をまだ獣にさせていなかった。
タカトシはもう一度カエデに唇を寄せて行き、左手で彼女を抱擁し、そしてそっと右手で彼女の胸に触れた。
優しく、いたわるように。

「んっ…」

人差し指、中指、薬指、と一本ずつ丁寧に着陸していき、そして表面を撫でまわす。
幼い子供が貰った風船を割らないようにとするように、タカトシもゆっくりと右手に力を入れる。
治まっていたカエデの吐息が再び荒くなっていく。感じてくれているのか?タカトシには分からない。
タカトシも童貞だ。何をすれば良いかなんて全然分からない。AVやら何やらの知識を総動員してのペッティングだ。
それでも彼女に気持ち良くなって貰いたくて、愛撫を続ける。

「タカ、トシ君…はぁっ…な、なんか…く、くすぐったい…んっ…で、でもあっ…気持ち、いい、よ…」

だからこう言われたとき、救われた気分になった。もっと気持ちよくさせてあげたいと、そう思った。

カエデから唇を離し、それをまたカエデに近付ける。今度は、耳たぶに。耳たぶを啄ばむように愛撫する。
そして、手も胸だけでなく体全体を愛でるように動きをシフトさせていった。

「やっ…そんなっ…!こそばゆ…あっ…んんっ」

「…」

「て、ても…な、なんだかぁ…えっちだよぉ…あんっ…」


カエデは未知の感覚に身を蕩けさせていた。好きな人に直に触られることがこんなにもくすぐったくて気持ちよかったなんて!
タカトシのゴツゴツした男らしい手のひらが自分の体を撫でるたびにそこに全神経が行ってしまったかのように敏感になる。
タカトシが自分の体の一部を舐めたり食んだりする度に体の奥から熱くなってくる。
カエデは普段抑えているものが霧散していくような、そんな感じがしていた。


「カエデさん…下、脱がしてもいいですか…?」

「(こくこく)」

タカトシはズボンを脱がしていく。晒されていく真っ白なカエデの両足、純白のカエデの大切な部分を守る布。
そして、手をその純白の布に触れさせる。

「…んんっ!?」

「あっ、すみません!大丈夫ですか!?痛かったですか!?」

「う…うん、だ、大丈夫よ…なんか…電気が走ったみたい…だった…痛くないから…うん…続けて…ね?」

そっと、触れたときカエデの腰が痙攣したのを見てタカトシは慌てた。
しかし、それは痛みのせいではなかったようだ。
続きを促されたタカトシはホッとして股間への愛撫を再開する。そしてカエデを不安にさせないよう、キスも。

「ん…ふぅっ…んぁ…んぅ…はぁ…」

普段聞くことのできないカエデの声がタカトシの耳に飛び込んでくる…
それはまだ小さいけど、タカトシをもっと興奮させた。
股間に指を滑らすうちに、ある変化に気付く。触れている所がだんだんと湿ってきたのだ。

「カエデさん…脱がして…構いませんか…?」

「はぁ…ぁ…うん…いいよ…」

体全体に朱色が差し、目もトロンとしてきたカエデは妖艶な笑顔を浮かべそう言った。
普段の姿と大きなギャップを感じさせるその微笑みにますますタカトシはときめいていった。

パンツを脱がし、その秘部に目をやる。薄く生え揃った恥毛と、艶めかしい割れ目が目に映る。
カエデは恥ずかしそうにもじもじと足を擦り合わせている。

「カエデさん…綺麗だ…」

「えええ、そそんなこと…は、はじかしい…」

「触りますよ…」

「う、うん…ひゃっ!?んぁ…っ!?あんっ…あっ」

布越しに触れるのと、直接触るのではやはり感触が違った。その逆もまた然り、だった。
タカトシはその独特の手触りに、カエデはさらに強まった快感に、身を悶えさせていた。
タカトシは人差し指を一本、カエデの割れ目に中に入れた。

「あッ!?」

異物の侵入にカエデは驚きの声をあげる、が止めはしない。タカトシの行為をそのまま受ける。
タカトシもカエデから抗議の声を受けなかったのでそのまま彼女の中へと指を進ませた。

「あっ、あん…ゃ…ん…あ…んんっ!」

中の温かな肉壁をこするたびにカエデが矯正をあげる。もうずいぶんと慣れてきたのだろうか?
タカトシはそろそろ自分の猛りを我慢できなくっていた。


「そろそろ…いいですか…?」

「へっ…あ、あぁ、う、うん…いい、よ」

タカトシが服を脱ぐのを待つ間、カエデは考えていた。自分が男性の性器を見ても大丈夫だろうかと。
…中に入っても大丈夫だろうかと。
これまでの行為は触れることの延長線上にあった。でも今度はそれとは、違う。
でも、これを乗り切らなければタカトシとは結ばれない。
女の初めては、痛いという。私は男性恐怖症だという。それが、なんだ。
私は、この人の先輩であり、彼女なのだ!
こ、こんなときこそ、お姉さんらしさを見せなければ!

タカトシが全裸になる。いきり立ったそれがカエデの目に入り込んでくる。
初めて見るそれは目を逸らしてしまいたくなるほどにグロテスクだった。
こ、これが…私の…中に…

「あの…大丈夫ですか…?」

「え?ええええだ、だだいじょうぶよ!あはは、いやいやこのくらいうん!っそっそうだいじょうぶだいじょうぶ!」

カエデはそう言うものの声は上擦って、明らかに大丈夫でなさそうである。
タカトシはそんなとき、いつもするようにカエデをそっと抱き寄せた。

「無理なら、無理しなくてもいいんですよ。カエデさんが、大丈夫になるまで俺、待ちますから。
それが今夜中じゃなくても」

裸で抱き合う2人。でもそこに漂う雰囲気はエロチックなものではなく、むしろ清純に近いものがあった。
互いが互いのことを思う。そのことの再認識、それはカエデにとって大きな安らぎになった。
これからの行為の成功を思わせる、優しさがあった。

「うん…ありがとう…でも私は今日がいい…だから…このまま…きて…」

タカトシは頷くとそのままカエデを押し倒す。そしてペニスをカエデの秘部に合わせ、腰を進める。

「くぅっ…」

さっきよりも大きい異物感にカエデは痛みと軽い吐き気を覚える。でもじっと耐える。

「大丈夫ですか?本当に無理しないでくださいね??」

タカトシが念入りにカエデの様子を伺う。カエデは声を発する余裕はないものの頭を横にぶんぶんと振って、続けるように促す。
女の子がここまで言うのならいくしかあるまい、タカトシは腹を決めて一気に挿入した。

「いっ…つっ…」

カエデの処女膜が裂ける。破瓜の証がベッドのシーツを汚していく。
せめて痛みを和らげるようにと藁をもつかむ思いでカエデが背中を強く抱きしめてくる。
無意識のうちに爪までたててしまう程強く。
タカトシはカエデの処女貫通の痛みがせめて少しでも自分の痛みになるよう願いながらその傷を甘受した。
そしてそのまま動かず、じっとしていた。カエデの痛みがひくまで待っていようと思ったのだ。


「タカ…トシ君…?」

「もう…痛みは治まりましたか?」

「うん…だいたい…は…」

「カエデさんの中、あったかくて…包まれてる感じがします…」

「え…そ、そうなの…?それって褒めてるの…?」

「そうですよ。幸せだなぁ…」

「私も…幸せだよ…好きな人と、こうやってすることが…こんなに優しい気持ちになれるなんて…
タカトシ君…動いて…いいよ…」

「じゃぁ…動きます。痛くしないように頑張ります…」

「う、うん、んっ…いっ…あっ」

タカトシはゆっくりと腰を動かし始める。なるべく痛くならないようにしながら。
カエデが痛みに集中しないようにキスや、胸への愛撫も交えながら行為を続けていく。
タカトシにテクニックなどあるはずがない。あるのは純情な愛だけだった。愛だけがテクニックだった。

「はぁっ…!ふぅっ…!んっ…っああっ…」

カエデの目尻に涙が浮かぶ。痛々しいとは思いながらも、タカトシは自らの劣情を止めることができなかった。
そうして、終わりの時を迎える。

「カ、カエデさん…!お、俺もう…」

「あ…イ、イクってやつ…?い…あっ…ふっ…いいよ…!い、イッていいよ…!」

「くっ…!」

タカトシは絶頂の瞬間、腔内から肉棒を引きぬき、カエデの下腹部で射精した。
体を何度も震わせ、荒い息をしながら達するその姿にカエデはエロチシズムを感じた。

「はぁっ…はぁ…すみません…俺ばっかり気持ちよくなっちゃって…」

「ううん…いいのよ…」

カエデは自分のお腹に振りかかった精液を人差し指ですくい、一舐めして

「こ、これから…ど、どんどん上手くなってくれればいいんだから…」

ウインクしてみせた。精いっぱいの強がりとともに。
――お姉さんらしいけど中途半端なのが、この人の可愛さなのかもなぁ
倦怠感の襲われる頭の中でぼんやりとタカトシはそう思った。


「おはよう諸君、みんな揃っているか」

朝食の席でシノが全員着席しているか確認する。
終わった後、2人はいそいそと片づけをすませ各自の部屋で睡眠をとった。否、とれるわけがなかった。
興奮で寝付くことができなかったのだ。おかげで2人は徹夜明けである。
しかしそこはカエデ、全くの平常を装っている。徹夜明けなど微塵も感じさせない。
一方タカトシは眠くて仕方がなかった。今もあくびを必死に噛み殺しながら着席している。

「ん?なんだ津田。眠そうだな。昨日寝付けなかったのか。全く子どもだな」

「すみません…」

「あらシノちゃん違うわ。津田君は全く大人なんだよ。」

え?マジ?タカトシの目が一気に冴える。アリアの言葉の言外に含まれる意味はもしかして――
カエデも目の色を何か含みのある言い方に勘づく。まさかそれって――

「おかげで私も寝不足だわ。うふふ」

「ん?アリアどういう意味だ?」

「んーとね、それはねー今日の朝一時ごろ――」

「し、ししし七条先輩!あ、朝ご飯、朝ご飯はまだなんですか!?俺腹減っちゃって!」
「七条さん!わ、私お腹がすいちゃったな!で、出島さんのおいしい手料理が早く食べたいですます!」

2人一斉に立ち上がって話題を逸らしにかかる。
あ――
立ち上がった2人、目が合う。着席する。静寂に包まれる。

「なるほど。では今からここで生徒会緊急会議を行うと思う。議題は五十嵐と津田の関係についてだ。異論は認めない。
さぁまずは証人喚問といこうじゃないか。さぁ君たちしゃぶりたまえ。あ、もう五十嵐はしゃぶってるのか」

結局こうなって…いや待てよ。
タカトシはおもむろに立ち上がり、隣で目を輝かせて事の成り行きを見守っているコトミに話しかけた。


「なぁコトミ」

「なぁにタカ兄?はっ、もしかして早速乗り換えるの!?しかも実妹に!?」

「その首からかけてるネックレス、ちょっと見せて貰えないか」

「スルーですか…って、これ?うん、いいよ」

「サンキュ」

コトミからネックレスを受け取とるとタカトシは席を立ち、
アリアとシノの両方からすでに質問攻めに合って何も答えられずブルブル震えているカエデの元に歩みよっていった。

「カエデさん」

「はわわわわ…え?な、なに…?まさかタカトシ君まで私を…!?」

「そうじゃないですって…はいコレ、渡し損ねたプレゼントです。…メリー、クリスマス」

振り向いたカエデそっとネックレスをかけてあげるタカトシ。ほう、やぁん♪、キザねー、なんて感嘆の声が周囲から漏れるが気にしない。
もうバレちゃってるのだから、思いっきり見せつけてやる。

「ほぇ!?あ、ああありがとう…うん…」

少し勇気を出して、タカトシの手を握った、あの夕暮れの玄関のこと。
それを物語るかのように赤い楓はカエデの胸元で静かに揺れるのだった。


〜あふたー〜

「そうか…もうそんなだったのか…2人ともイカ臭いぞ」

「それを言うなら水臭い」

「いや、実際イカ臭いぞ」

「「え」」

〜終わり〜

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