スズの華奢で幼気な体を抱擁し、唇を重ねる。
唇を離し見つめ合うと、彼女の紅潮が一目で分かる。

「また明日……学校でな」

「うん、お休み」

明日は別の仕事がスズにあるため、一緒に登校することは出来ない。
だからこそ、彼女は別れが惜しいのだろう。
「ただいま」と家に戻っていくスズの姿を確認し、オレは帰路に着いた。


あることを決意してから一カ月が経ち、3人の女性と体を重ねてきた。
スズもその一人だ。
だが未だにオレの欲が満たされることはない。当然だ。
放課後に犯したシノ会長も、一カ月前から付き合うことになったスズも、オレが求める女ではないのだ。

全ては妥協なのだ。
会長やスズはオレを想っていてくれた、好きでいてくれた。だから相手をしただけ。
初体験に知った満たされる感覚はどこにもない。

通りすがるコンビニで、先程すれ違ったトッキーこと時さんが漫画を立ち読みしていた。
裏表紙から察するに、週刊少年マガジンであろうか。

そんなことを考えるうちにオレは自分の家へと戻ってきた。
インターホンを鳴らし、扉を開ける。

「ただいまー」


「おかえりータカ兄。お母さん達は今日泊まってくって」

ドアを閉めると同時に、コトミが迎えに来る。
両親のいつもの外出にため息をつきながらあがり、ふと気付く。

ウチの親ってどんな顔してたっけ……?

気が付くとコトミはいなかった。
リビングの向こうで笑い声が聞こえる。ソファーに横たわり、ポテチを食べながらテレビを見ているのだろう。

オレは階段を戻り、部屋でネクタイを外す。
シャツに蒸せた匂いを感じる。原因は分かってる、会長と体を重ねたことだ。

「ふうっ……」

窓を開けて、ベッドに座る。
情事の匂いを孕んだシャツを投げ捨て、自分の欲を知る。

おそらくスズのように、会長とも今までの関係ではいられない。
もしかしたら、2人とも失う事態に陥るかもしれない。

「構うもんか」

それでもオレは困らない。本命でもない女だ、心が痛むことなどない、ありえないのだ。
携帯電話を手に取り、スズのメールが来ていたことを知る。
時刻では会長とまさに情事に浸っている頃であろうか、廊下に忘れてしまっていたが誰にも見られてはいなかったようだった。

もし会長に見られていたら、彼女を失うことになる。
そう考えると、このメールも決して嬉しきものではない。寧ろ煩わしいものだと表しざるをえない。

スズはIQ180に不相応な、幼児体型をしている。それにもれず、精神にも幼い部分が多々見えている。
一カ月前の告白には惰性で受けてしまったものの、今となっては後悔している。
彼女の裸体はまさに幼児に近いもので、罪悪感すら抱いてしまう程だ。胸など論外で、とても満足できるものではない。
果物で譬えるなら蒼色のバナナ。早熟にて固いだけで味もない、食後に後悔してしまう。まさにそのものなのだ。

やはり充足を知るには、柔の肌に豊の胸。当たり前のことだ。

「タカ兄」

そんな混沌とした脳内を曝け出していると、突如コトミが部屋に入ってきた。


「どうした、勉強か?」

「タカ兄最近、変わったよね」

いきなり入ってきたコトミは、いつにない険しい表情でオレを問い詰める。
自分がある事件を切欠に変わったことは自覚している。オレは頷き、コトミに答える。

「変わったって……何が?」

「なんか最近、冷たくなったというか。色んなことに冷めてるみたい」

勉強はイマイチなくせに、どうもこういったことには鋭い。コトミの言うことは、大部分が当たりだったのだ。
コイツには、オレがスズや会長と関係を持ったことは伝えていない。

飾りなく話せる唯一の相手がコトミだった。
真面目なトコもなく、ぐうたら自適に過ごしているコイツと、とても波長が合うのだ。

「フラレたんだよ」

だからオレは、一切の隠蔽もない事実をコトミに伝える。

「……そっか」

コトミが返したのは一言だけ。
だがオレにとっては、それで充分だった。全てが救われる気がしたのだ。

「まあ女の子なんてイッパイいるんだから、次の人探しなよ」

背に目掛けて飛びついてくる。
コイツなりの励ましなのだろうか。相手は妹のため、流石に動揺することは無い。

「ああ……ありがとな」

オレからはコトミの表情は見えない。
でもきっと、いつものように笑っている筈だ。それがオレの好きなコトミだからだ。
華奢ながらも柔らかな温もりが背に届く。無論、成熟した胸も……。

腹や腕とは異なる、性を想わせる双のものは、オレの欲情を嗅ぎ立てるのに十二分だった。
下着の固さや、奥に秘めた柔らかさ、それを感じるにつれて大きくなっていくのを感じていた。

「コトミ……」

「ん?なに、タカに――」

立ちあがった瞬間、オレはコトミの唇を奪っていた。
スズの時とは違う、自分から奪いに行った唇だ。

昂った欲情が髪を撫でる、項を撫でる、そして胸へと到達する。
柔らかく、それでいて弾力のある胸。

「――っあ」

唇を離した一瞬、コトミが切なそうに声を漏らす。

「先に……シャワー浴びよ」

コトミはオレから離れて視線を下に落とすが、拒絶は見られなかった。
焦る必要はない、ゆっくりと堕ちていこう。オレはそう思っていた。


先にコトミが入り、次にオレが入る。
一緒に入ればいいのに、恥ずかしいのか一人でシャワーを浴びている。
お湯を出し、風呂場のタオルを使って、体を洗っていく。

そういえば、帰る前に会長とセックスしていたんだ。
渇いた汗でざらつく肌に触れ、嘗ての情事を思い出す。
弾切れの心配は杞憂なようで、オレは顔を洗って戦いに挑む。

「出たぞ」

体を拭き、下にタオルを巻く。
コトミが待っていたのはリビングだ。カーテンは開けっ放しで、
庭や道路が見えてしまっている。

「閉めなくていいのか?」

「だって、見られた方が興奮するじゃん」


ツインの髪を下ろし、タオル一枚のコトミは、とても扇情的に映っていた。

「タカ兄……」

自らタオルを掴み、結び目を解いた。裸体が目の前に飛び込んでくる。
一緒に入浴していたときとは全く違う、性を感じさせる胸や腰、そして秘所。
当然のように、己が猛ってしまう。それを見たか知らないが、コトミは間髪いれず明かりを消す。

暗闇が訪れ目が慣れない中、最初に感じたのは柔らかい口唇。
マシュマロのように柔らかく、唇の向こう側から微かに息を感じられた。
ようやく目が慣れると、そこには目を瞑り愛に浸るコトミがいた。
下ネタばかり言うマセた高校生ではない、当たり前に恋をする乙女だった。

オレは夢中でキスを続けていた。
コトミの右手がオレの腹を這う。タオルを外そうとしているのだ。
そして湿ったタオルが外れた瞬間、ソファーに押し倒していた。

「コトミ……」

彼女の名前を改めて言うことで、自分が妹を犯そうとしている事実に気付く。
背信的かつ背徳的で、鬼畜とも非道理とも捉えられる。だがそんなことどうでもいいと思える程に、彼女は魅力的だったのだ。
自分の分身に手が這い握られる感覚を覚え、コトミを見詰める。

「私、タカ兄が感じてるとこ……見たいな」

それが攻めの合図だった。
コトミは起き上がり、オレをソファーに横たわらせた。


電気が消えているため、月光だけが頼りだった。
寝ていても天井を捉えることは出来ないが、滾りを自覚することは出来た。
向こう側にはコトミがいる。『それ』をじいっと見つめ、時々握ってみる。その度にふるふると悦が押し寄せる。

「えと……それじゃあ舐めるね」

「あっああ……」

恐る恐る口を開き、分身を銜える。
唾液の滑りや口の暖かさが強い快楽を与え続ける。ゆっくりと上下に動かしていく。
たどたどしく、物足りないところもあった。だが幸せであることには変わりない。

「うっ……くっ……」

ゆっくりと、それでも確実に気持ちよくなりつつあった。男の喘ぎなど見苦しいと、声を抑えるのに精一杯だった。
次は口を離し、袋へと攻めの対象を切り替えた。
次なる快感がそこにはあった。左手で分身の茎を扱きながら、口で別を攻めていく。

自分を抑えることが出来なくなりつつあった。
ソファーの手すりを手で持つことに全神経を注いでいたのだ。

このままでは負けてしまう。
オレはすかさず次の手を打とうと、コトミに告げる。

「コトミ……お尻こっちに向けて」

背を撫でる。どうやら彼女は攻めることにだけ夢中だったようだ。
コトミが後ろを向き、ヒップをオレの顔に近づける。所謂『シックスナイン』と呼ばれるものだ。

茎への口撃に堪えながら、攻めに転じる。
興奮からか僅かに滑る陰唇を口に含み、下で撫でる。

「……ぁん!そんなっ……急にぃっ!!」

明らかに唾液ではない、別の液体が溢れてくる。
形勢は逆転していた。オレは支配される立場から、する立場へと変わったのだ。

兄妹というのは類似点が非常に多い。
顔も髪型も、だらしない性格も。マゾヒストいう性癖もそうだ。
電気を消しているといえど、カーテンを開けていれば傍目につくリスクが伴う。
そんなことでも、彼女は快楽に変えてしまう。

肉質のある柔らかな足を抱えながら、オーラルを続ける。
いつの間にかコトミは口淫を止めてしまい、オレの右足にしがみ付きながら悦楽に堪えていた。

「タ……タカにぃっ……もうガマン……できない」

かき消されそうなくらい掠れた小さな声が、重なりを求めていた。
我慢が出来ないのはオレも同じだ。口撃を止め、ソファーから起き上がる。


本能が早く爆発させたいと唸っている。対面する彼女もそうだ。
今、オレは実の妹を犯そうとしている。傍から見れば鬼畜同然、当たり前だ。
だがそんな目ですら、コトミの前では無に帰すのだ。

「コトミ……」

繋がる相手の名を呼び、唇を重ねる。
勿論、唇だけで触れ合うのではない。舌が絡まり、側から唾液が垂れる。
線のついた頬を、舌で丁寧に撫でていく。可愛げな顔が愛おしかった。
コトミの腰が微かに浮き、左手が分身を捉える。

腰を掴み、誘導していく。そして……。

「んんんん――ッ!!」

オレとコトミは、対面座位で繋がる。
目の前の彼女は目を強く瞑り、何かに堪えているようにも思えた。

「痛くないか?」

「大丈夫。すっごく……気持ちいいよ」

月夜に照らされた彼女の頬を知ることは無い。だが触れると熱を帯びていた。
彼女と同じく、オレも強い悦を得ていた。
ぬめりと共に締め付けられる感覚。僅かに痛く、快楽は数十倍だ。

どちらかとなく、無意識に腰を動かしていた。
お互いが抱き合い、しがみついていた。

「タカ兄……タカ兄……どこにも…行かないでよ」

「分かってる。オレはずっと……お前から離れない」

長いオーラルからの繋がり。それだけに気持ちよさも、今までの比にならない。
初めて心から快楽を求めていた。
だからこそ悲しいかな、終わりが近づくのも早かった。

「コトミ……もうオレ……」

「うん……いっぱい来て」

これ以上語ることはなく、お互いが意思を疎通していた。
更にオレはスピードを上げていき、膣が吸い上げるかのごとくキツくなっていくのを感じる。
瞬間、頭に脳内麻薬が届き、体が反動を起こす。
そして快楽はピークに達し、濃い液体がコトミへと何度も発砲していく。

その一つ一つを彼女は目を瞑って受け止めていた。その愛らしさにオレはもう一度、深い接吻を交わした。


眩しい明くる日の朝、オレは目を擦り起き上がる。
絨毯に横たわり、コトミは涎を垂らしていた。一糸纏わぬの姿であったが、再度オレが反応することはなかった。
妹との一線を超えてしまった、この事実はオレを苛ませる要因となっていくだろう。
オレは寝室から毛布を取り出し、コトミへとかけた。

「昨日は……ありがとな」

わだかまりがとけたような気がした。それと同じく、自分が進むべき道も。
オレは全てを背負って生きていく。会長もスズも、コトミも。
傍から見れば最低であるかもしれない、まさに優柔不断の極みだ。それでも構わない、何も捨てない、皆手に入れるのだ。

「行ってくる」

新たな決意を胸に、オレは家を後にした。


生まれ変わった日は、晴天だった。
ハーレムルート一直線に相応しい朝に、明るい声が背後から聞こえる

「おはよっ、タカトシ君!」

「三葉」

曇り一つ無い爽快な声を出す彼女は、三葉ムツミだった。

「朝練はいいの?」

「今日は休みだからさ、たまにはってことでね」

そういえば三葉と登校するなんて、滅多にないことだ。
オレはふと、彼女の顔を覘いてみる。

「ん?どうしたの?」

「いや……今日も元気だなって」

「あったりまえじゃん、今度こそ全国制覇狙ってるんだから!」

そう言って三葉は右腕に力コブを作ってみせる。
屈託のない笑顔を見ていると、秘めた自らのえぐい決意が恥ずかしくなってしまった。


学校へとつき、靴箱を開ける。
上履きの上には、一枚の手紙があった。

「なんだコレ?」

茶封筒に仕舞われた手紙。古風なものである。
何が書かれているのかと開けてみると、『話があるので、屋上に来て下さい。待ってます』と書かれていた。

「タカトシ君、それってラブレター?」

どこか残念そうな顔で三葉が覗きこんでいた。

「まさか……」

オレにはこんな手紙を貰う相手などいない。
生徒会のメンバー以外とは関わりはない、あるとすれば五十嵐先輩か轟くらいだ。
だがあの2人から好意を持たれているかと問えば……たぶんNOだ。

「とりあえず行ってみたら?」

「う〜ん……そうする」

相手が誰か分からないということに不安はあるが、興味もある。
いざとなれば力づくで逃げてくればいいんだ。そう強く決意を決め、階段を上っていく。


他に人がいないことを確認し、屋上の扉を開く。
屋上に上がった瞬間、秋風が吹き、微かな寒さが感じられた。
目を凝らすと、網に手をひっかけて空を見つめる少女がいた。

ここからでは誰なのか分からない。
オレは一歩ずつ歩き、彼女の背後へと立つ。

「手紙をくれたのは……キミ?」

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