目的地に辿りついたマサヒコはその部屋のインターホンを鳴らした。すぐにスピーカー
から返事が来る。
「来たわね。入りなさい」
 リョーコに言われたとおりにアパートに入るマサヒコ。なんだか難しそうな表情をして
いるリョーコのテーブルを挟んで対面の座るとマサヒコは問いただした。
「で、俺を呼び出すなんてどうしたんです?中村先生」
「ああ、うん、そのあのあれさ、ちょっと唐突だとは思うんだけどさ」
「何です?」
 マサヒコの表情が曇る。これは明らかにろくなことではない。とりあえず頭の中のスイ
ッチを対エロボケツッコミシフトに切り替えた。
「リンを女にしてくれない?」
「はじめから女ですね。はい終了、さようなら」
 すぐに腰を上げるマサヒコ。だがリョーコがその脚をつかみ食い下がる。
「ちょ、そういう意味じゃなくて!リンの処女を……」
「放せ、断る」
「まあとりあえず説明だけでも……、聞けっ!!」
 マサヒコは急にリョーコにものすごい力で脚を持ち上げられ、床に倒された。そのまま
捕まえようと腕を絡ませてくるリョーコと格闘するが、いくら相手が痴女とはいえ暴力は
振るえない。最終的にバテて首を後ろから絞められたマサヒコは降参し、改めて説明を聞
くことになった。
「ハァハァ、で、なんなんです、急に」
「ゼェゼェ、あー、その、あれよ。あの子が興味持ち出したのよ、アレに」


 ある日の学校
『ねぇ、カレシとアレからどう?』
『んー、最近ご無沙汰なのよね』
 大人びてきた友人たちの会話。それを通りかかったリンコが聞いてしまう。
『ん、アレって何?』
『え、ええ?!』
 確かに友人たちは子供っぽいリンコの前ではこういった話題は避けてきた。しかし、聞
いていて全く分からないとまでは思ってはいなかった。
『ねぇ、教えてよ〜』
『え、え、でもちょっとここでは……』
『うん、そうよね』
『じゃあ、後で教えてね』
『う、うう、リン。ちょっと耳貸して』
『?』
 言われて耳を差し出すリンコに友人は小声で告げる。
『セックスよ、セックス!』
『へぇ、セック』
『ちょっと!』
『フグッ、モガモガ』
 慌ててリンコの口を塞ぐ友人。
『シィーッ!声が大きい!』
『私、変なこと言った?』
『セックスなんて人前で言っちゃダメでしょう!!』
『?』
 ちゃんと保健の勉強もしているリンコはセックスの意味は分かっているつもりだ。男性
器を女性器に挿入して精子を出して卵子に受精させて子供を作ることだ。
『赤ちゃんできるんでしょう?』
『いやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!!』
 友人は大きな声で否定した。
『もう!そういうことじゃないんだから!!』
『えー、でも授業でそう習ったよ』
『あのねえ。セックスってのはオトナの遊びでもあるの!』
『大人?』
『そうよ。ある意味、セックスをしたらオンナのコじゃなくてオトナのオンナ、って言っ
てもいいかもね』
『す、凄い!わ、私もお母さんとか中村先生みたいになれるの!』
『そ、それはどうかな?中村先生って誰?』
『ねえ、セックスするにはどうするの?誰とすればいいの?』
『だから声が大きい!男なら誰でもいいわよ!あんたは小久保君と仲いいみたいだから相
談してみたら?』
 そう言って友人たちは去って行った。
 友人たちから取り残されたリンコは早速マサヒコに頼みに……、は行かずにこういう困
ったときはいつもするように中村リョーコに相談のための電話をかけた。


「と、まあこういうわけだったのよ」
 リョーコの説明が終わると即座にマサヒコは再び立ち上がろうとした。
「帰る」
「待ちなさい。リンがかわいそうでしょう」
「いやかわいそうってアンタ、まず止めろよ」
「何で?あの子もそろそろ経験しておく歳よ。実際アンタたちだってヤッてるでしょう?」
「俺とミサキは付き合ってるからいいでしょう。そんな処女捨てたいからなんて理由じゃ
いけませんよ。そもそも的山には貞操とか性教育とかからまず教え込まないと」
「テイソウ?何それ。性教育なら実地でアンタが教えなさい」
 
 ピンポーン

 ここで玄関のベルが鳴った。
「来たわよ。じゃ、後は若い二人に任せて……」
 リョーコが立ち上がり玄関に向かう。
「ちょ、じょ、冗談じゃない!」
「ああ、それから」
 ここで、マサヒコに意地悪い笑みを向けて、
「今日はあの子安全日よ。安心した?」
「それは確かに……、って俺は同意してない!ちょっと!」
 リョーコを止めようとしたところで、玄関のドアがあき、リンコの声が響く。
「こんばんは。先生!小久保君、もう来てますか」
「ええ、後は二人で頑張りなさい」
「はい!」
 リンコが部屋に入ってくるのと入れ替わりになって、リョーコは出て行った。

 呆然とするマサヒコの正面にリンコが座り、見つめ合う形になる。ニコニコとしばしマ
サヒコを見ていたリンコだったが、ふと何かを思い出し、顔を赤らめる。
「あ、あ、あ、ゴメン、小久保君。そうだよね、うん、まず、服を脱いで裸になるんだよ
ね……」
 そう言って、上着のボタンを外し始める。
「待て、待て!的山!!まず俺の話を聞け!!」
「え、あ、そうか、小久保君は自分で脱がせる派だったんだ〜」
「違う!そうじゃなくて、こんなことはやめろってことだ」


「こんなこと?セックスのことかな?」
「そうだ、悪いがお前とはやれない」
「何で?ミサキちゃんとはしてるんでしょ?どうして私じゃだめなの?」
 マサヒコの言葉を聞いて、リンコはやや悲しげな、また機嫌を損ねたような表情で問う。
「俺はミサキと付き合ってるからだ。お前とまでしたら浮気になるだろ」
「そうなの?」
 マサヒコはリンコの返答に頭を抱えた。
「あー、ほら、セックスってのは本来子供を作ることだっていうのは知ってるよな。だか
ら好きな人としか基本やっちゃいけないんだよ」
「でも、今日は私安全日だから赤ちゃんできないよ」
「それでもだ。とにかくお前も好きな人ができるまでセックスはするな。その、あの、こ
ういう大事なことの初めては好きな人とじゃないと……」
「私、小久保君のこと好きだよ」
「何だと?!」
 目を丸くするマサヒコ。
「だって、小久保君優しいし結構頼りになるし。男子の中では一番の友達だよ」
「いや、好きってのは友人としてという意味じゃなくて……」
「だから、やっぱり初めては小久保君じゃないと」
 そして、リンコは再び服を脱ぎ出した。
「待て!やめてくれ、的山!!」
 マサヒコが口で制止するが、リンコは止まらない。とうとう上着が脱げ、下着が露わに
なる。
「的山!!」
 さらに下着に手を掛けようとしたリンコの両腕をマサヒコが掴んで止める。
「うわ、乱暴しないで小久保君」
「頼む、頼むからやめてくれ的山」
「……、じゃあ他の男子紹介してくれる?」
「それは……、駄目だ」
「じゃあ、私が自分で声掛けるしかないんだ」
「!!」
 リンコのセックスに対する決意は固いようだ。本当にクラスの男子に声を掛けかねない。
リンコは身体的にも精神的にも幼いが、美少女だ。据え膳食わぬは男の恥とばかりに食い
つく男子も多いだろう。卑しい気持ちで蹂躙されればリンコの心身は癒えない傷を負うこ
とになるかもしれない。
 リンコのことを考えた結果、マサヒコは危うい決断をする。
「分かった。的山、お前の言うとおりセックスをしよう」
「本当?!」
「ああ、でも、嫌になったら諦めるんだぞ」
 いくら決意が固くとも、実際に性交に至るまでに嫌気が差して中断してくれるかもしれ
ない。マサヒコはそれに賭けた。
「じゃあ、すぐに脱ぐね」


 リンコが下着シャツを素早く脱ぎ去る。その下には必要あるのかというくらい小さいカ
ップのブラジャーが現れる。女性らしさのほとんどない体格だが、女体であることには変
わりはない。それに徐々に興奮しつつある自分をマサヒコは恥じ、やや目をそらした。
 だが、リンコを翻意させるにはむしろじっと見つめることで恥じらいを感じさせるべき
ではないかと考えなおし、視線を正面に戻した。
 やや前屈みになり、後ろ手にしてブラジャーのホックを外そうとしているリンコ。女性
独特の姿勢はどうしても男の欲情を誘う。それにできる限り耐えながら、見つめ続けるマ
サヒコ。そして、その目にリンコの両の乳房が入り込む。見慣れたミサキの胸よりさらに
薄い胸。しっとりとした肌が極めて緩やかなカーブを作り、わずかに乳首だけが女性であ
ることを示しているようにも見えた。
 ここでリンコが顔を上げたため、マサヒコと目が合う。裸の上半身をじっくりと見られ
ていたことに気づき、彼女の顔はいままで見たことがないほど真っ赤になる。反射的に両
腕を胸の前に回してうつむき、裸体を隠そうとする。
「いやぁ!小久保君そんなに見ないで!」
「でも、セックスは裸にならないとできないし、目をつむってするわけにもいかないだろ
う」
 わざと意地の悪い指摘をして追い詰めようとするマサヒコ。
「どうする、やめるか?」
「う、うううん。するもん、セックスするもん」
 半泣きになりながら、リンコは身を起こす。だが、胸は両腕で隠したままだ。まだ恥じ
らいが捨てきれないリンコをマサヒコは容赦なく見つめ続ける。
(これじゃあ、まるで俺が羞恥プレイで追い込んでいるみたいだ)
 図らずも、変態的なプレイに持ち込んでしまったかと後悔するマサヒコ。だが、これも
リンコのためだと考えなおし、視線に込める力を強める。
 だが、下半身にも力が入った。先の羞恥プレイの連想で興奮が強まってしまった。これ
では自家中毒のようなものだと再び恥じ入るマサヒコ。


 しばらく目を合わすこともできなかったリンコだが、2分ほどで心が定まったようでマ
サヒコの方に向き直る。数年の付き合いだが、これほど力の籠ったリンコの眼差しを見る
のは初めてだ。マサヒコは自分の作戦が失敗したかと思ったが、まだ本番までは手順があ
ると考えなおし、じっと見つめ続ける。
 リンコが組んでいた両腕を解き、スカートに手を伸ばした。ホックが外れるとすぐにス
カートは脱げる。その下にあったのは、薄い桃色でフリルが少しついた可愛らしくリンコ
によく似合ったパンツ。そこにはすぐには手をつけず、両足の靴下を脱ぎ出した。誰でも
普段から行う動作でも、裸の両脚となれば恐ろしい色気が出る。傷一つないきれいな脚が
官能的に折れ曲がり、伸びて絡み合うようだ。
 靴下はすぐに脱げ、リンコが身にまとうものは最後の一つになった。だが、リンコは躊
躇はしない。すっと手を掛けることでリンコの最後の秘所が大胆に現れる。目に見える毛
はない幼い女性器。割れ目がくっきりと見える。
 すぐに脚からもパンツは外れ、リンコは眼鏡を除けば完全な裸になった。その裸体を恋
人のものと比較してみるマサヒコ。胸は小さく、全体的に女性らしい曲線に欠ける。単純
に性的関心の強さからいえば、ミサキの方が上だろう。だが、童顔と相まって全体的に調
和し、美しさ、可愛らしさを感じさせる間違いない。そして、男の体は浅ましいものでど
うしても女性の体に反応するのが抑えられない。
 全ての束縛を解き放って生まれたままの姿になったリンコは再びマサヒコと視線を合わ
す。もはや全裸でいることへの怖れはない。
「次は小久保君が脱ぐ番だよ」
 リンコは今までになく固い声でマサヒコを促した。

 この無垢な少女に自分の体を曝すなど、ましてや欲情した自分の醜い物を見せるなどと
は本来であれば必死で避けるべきものである。しかし、今の状況で逃げるわけにはいかな
い。リンコが怖気づいて翻意するまでプレッシャーをかけ続けるチキンレースのようなも
のだ。だから、
「ああ」
 と短く淡々と答え、マサヒコは上着のボタンを一つずつ外していった。
 本来ならリンコは男性の裸に対して思うところなどない。しかし、今は自分が体験しよ
うとする行為までのカウントダウンのようなものだ。マサヒコが脱ぎ切ったらまさに性交
することになると思うと気が気でない。顔を赤らめながらも懸命にマサヒコを見つめる。
 上着に続き下着のシャツも脱ぎ棄て、マサヒコは上半身裸になった。すぐに手はベルト
のバックルに伸びる。カチャカチャと音をたてベルトを外しジッパーとホックを開けると、
下から盛り上がったトランクスが見えた。妙な隆起を見て、リンコはきょとんとした表情
を見せる。それを無視して、マサヒコはズボンを脱ぎ、さらにトランクスに手を掛けてす
ぐに下ろす。すると、
「ひゃあっ!!!」
 リンコは悲鳴を上げ、無意識に口を両手で押さえながら身をのけぞらす。トランクスの
下から現れたグロテスクな肉棒を見て、本能的に恐怖心・嫌悪感を抱いたようだ。
「こ、小久保君……。それ……、何?」
「男性器。ペニスとかチンチンとかいうものだ」
「え……?」
 答えを聞いてさらに驚く。オチンチンなら当然父親のものを見たことがある。しかし、
このように大きく屹立などしていなかった。
「な、何かおかしいよ?!」
「セックスする前、というか興奮するとこうなるんだ」
 こんなことを説明するのはかなり恥ずかしいことだが、マサヒコはできる限りあっさり
と告げる。
「で、セックスというのがどういうことをするかは分かってるか?」
「男性器を……、女性器に挿入して……」
「そうだ、つまりこれが」
「きゃあっ!!」
 マサヒコはリンコの肩に手を掛け、そのまま押し倒す。
「お前のそこに入るわけだ。いいんだな」
「ひ、ひぃ」
 急な展開に涙目になるリンコ。このままリンコが怯えてやめると言ってくれればこの一
件はおしまいだ。マサヒコは倒れたリンコの両脚を押し広げ、さらにプレッシャーをかけ
る。
「心の準備はいいな」
「きゃっ!……あ、でも」
 怯えていたリンコが急に素に戻る。
「シャワー浴びなきゃ」
「へ?」
 あっけにとられるマサヒコ。
「中村先生が、性行為の前にはできれば衛生面にも気を使え、って言ってた」

「それは……、まあ、そうだな」
 天然にはかなわない。マサヒコがこれまで積み上げてきた圧力をいっぺんに壊されてし
まった。かなりまずい空気だ。
「じゃあ、どっちが先に入るよ」
「え、一緒に浴びようよ」
「なんだと?」
「だって、もう二人とも裸だし」
「いや、確かにそうだが……、狭いだろ」
「嫌なの?」
 しゅん、と困ったような顔で見つめてくるリンコ。なんだかんだ言って優しいマサヒコ
はこういう表情には弱い。それに一応、理にかなってはいるし断る理由も見つからない。
「分かったよ。一緒に入ろう」
 しぶしぶとマサヒコは提案を受け入れた。これがますます状況を悪化させるとは考えず
に。

 リョーコの部屋の浴室は小さめのバスタブが設置されていた。さすがに洗い場に二人で
いるのは狭いのでマサヒコは空のバスタブの中に立ち、そこで体を洗うことにした。
「軽く流すだけでいいよな?」
「一応石鹸も使ってね」
 早速、ボディソープを泡立てながらリンコが答える。
「はいはい。じゃあ、こっちに貸してくれ」
「ねえ、小久保君」
「ん?」
「洗いっこしよ」
「何だと?」
「ほら、ね?」
 そう言って、リンコは泡立てた石鹸をマサヒコの体に塗りつけていく。
「お、おい」
「だってー、せっかく一緒に入ってるんだもん。楽しまないと、ね?」
 にっこりと満面の笑顔を見せるリンコ。不覚にもマサヒコはその表情にときめいた。そ
んな様子に気づかずに、リンコはどんどんマサヒコを泡まみれにしていく。
「あれ?さっきより小さくなってるよ?」
 手と視線を下の方に移動させていたリンコが疑問を口にする。
「いや、それは、時間が経ったから」
「ふーん」
 そのままリンコの手はマサヒコの股間に伸びる。
「おい、ちょっと待って!」
 マサヒコの制止を聞かず、リンコがマサヒコの性器を洗っていく。リンコの細い指は滑
らかな泡をまとい、マサヒコの性器に心地よい刺激を与えていった。
「わ、わわ、ちょ、やめてくれよ!」
「あー、何かまた大きくなってきた〜!」
 恥ずかしさに真っ赤になるマサヒコに対して、リンコの方は興味津津で目を輝かせてい
る。しつこくマサヒコの急所をまさぐってくるリンコ。
(うわっ!このままだと……、最悪『出る』!!)
 マサヒコのペニスは先ほどにもまして大きくそそり立っていた。その茎の部分を両手で
包んでこするリンコ。げに天然とは恐ろしい。

(これって……、いわゆる『ソープ』ってやつじゃないか?!)
 今更ながらに気づくと激しく動揺するとともに、この状況に興奮して勃起してしまう。
 そんなことがしばし続いてマサヒコが射精を覚悟したとき、リンコもようやく満足した
のか、さらに下、彼の両脚に手を動かした。
(助かった……)
 ほっとするマサヒコ。そんな彼にリンコが見上げて声を掛ける。
「ねえ、小久保君も私のこと洗ってよ」
「え、あ、ああ」
「あと、洗い合うのに不便だから、お風呂から出て」
「……わかった」
 浴槽から出て、ボディーソープを手に取るマサヒコ。リンコがかがんでマサヒコの脚を
洗っているので、マサヒコは立ったまま前屈みになり、リンコの背中を洗うことにした。
 マサヒコの脚も泡だらけにしたリンコが立ち上がり、マサヒコの背中に手を回す。裸の
ままで互いに背中に手を回し合う形になった。ギリギリ体は接触してないが、お互いの体
温を感じるようだ。
そんなマサヒコの気持ちは知らずに、リンコが指示を出す。
「もう背中はいいよ」
「じゃ、じゃあ次は……」
 この体勢だと次は正面しかない。
「どうしたの、小久保君?」
 動揺が思いっきり顔に出ていたようだ。
「い、いや、なんでもない」
 とりあえず、首と肩を洗う。それはすぐに終わった。背中に回された腕は洗いにくい。
となるともう逃れる選択肢はない。マサヒコは新たな一線を越えてしまう恐怖に震えなが
ら、リンコの胸に両手を伸ばした。
 ペタッ。起伏の全くないリンコの乳房。それでも初々しい女体は弾力があって柔らかい。
(ミサキとは感触が違うな)
 貧乳と無乳の差は曲がりなりにも掴めるかどうかだ。ミサキのときは5本の指と手のひ
らで揉みしだくのだが、この平らなリンコの胸は、背中をマッサージしてやるように、手
のひらだけで揉んでやるしかない。上げて、下げて、回して。女の胸は若い男にとっては
媚薬に等しい。知らず知らず、マサヒコは本来の目的を忘れてリンコの胸を恋人との感触
の違いを味わうように、ねっとりとこねくり回していた。
「ふぅんっ、ア、アンッ」
 揉まれるリンコの口から、おそらく人生で初めての嬌声が小さくこぼれる。性感を帯び
たその声に焚きつけられ、マサヒコの愛撫はしつこさを増していく。
「アン、こ、小久保君、わ、私、なんか変、アアッ!」
 初めての体験にとまどいながら喘ぎ続けるリンコに対し、マサヒコは止めとばかりに小
さな乳首をつまみ、軽く力を入れてくねった。
「ヒャァァァン!!!」
 これまでよりもさらに大きな声を上げたリンコ。マサヒコの背中に回した腕にも力が入
り、結果マサヒコを強く抱きしめてしまう。さすがに驚いてマサヒコは胸から手を離した。
「ハァハァ、小久保君、胸ばっかりいじらないで……」
 顔を赤らめ、息切れしながら抗議するリンコ。少し怒ったような、それでいて肉欲で呆
けたようなその表情が、今、リンコの腹部に当たっている自分自身を再び隆起させる。
「ゴ、ゴメンナサイ。今度はちゃんとやるから……」
「ん、別にいいよ。だって」
 そう言って、リンコは抱きついたまま体を上下に揺らし始め、
「小久保君の泡で洗えばいいじゃん」
「お、お前?!」
 マサヒコの体にリンコの肌が擦りつけられる。泡が摩擦を無くして滑るため、少女の肉
体がマサヒコの胴体全体を素早く、優しく愛撫する。

「こ、これ完全にソープだろ!!」
「ん?当然ボディーソープだよ」
 マサヒコのツッコミは天然ボケで軽く流される。
 マサヒコのソーセージがリンコの腹に犯される。硬く前に迫り出そうとするも、抱きつ
いてくるリンコの圧力に負け、結局二人の腹部の間できつくサンドイッチされっぱなしだ。
結果、裏筋ばかりが女体に嬲られている。
(こ、これは初めての感覚だ!!)
 ミサキとのこれまでのプレイで、様々な性感を与え、与えられてきたマサヒコだが、今、
この天然少女が無自覚に行っている性技にうっとりするような快楽を感じた。そして、当
然ながら初めてのことには耐性がない。不自然な体勢の性器もすぐに絶頂に達しようとす
る。
 そして、意図せずして攻撃側に立ったリンコも初めての快感に戸惑っていた。
 マサヒコの右腿にこすりつけている股間が熱い。
(何?どうしたの、私?)
 マサヒコの徹底した胸嬲りによって、無垢な女陰も感度が上がっていたようだ。マサヒ
コの肌にこすりつけるのが気持ちよくて止まらない。単に気持ちがいいというより、股間
から背筋を通じて脳を揺らして正気を奪い、全身の筋肉が張り詰めるような異常な快感だ。
さっきのおっぱいの時とは比べ物にならない。
「ウウン、ウン!アアン!ハァ、アン!」
 気持ち良すぎて変な声が出る。自分では止められない、止まらない。快楽を求め、もっ
と動きを激しくしようとしたが、
(私……、変な動物みたい)
 まだ優勢なリンコの正気が、自らの状態について客観的な評価を下す。リンコの感想は
『性の本能のままよがり狂う雌』という自分の痴態を的確に表していた。
(ダメ!このままじゃ、私……、私じゃなくなっちゃう!!)
 強い恐怖がリンコに現状を打破する力を与えた。動きを止め、ゆっくりと腕を放して、
「はい、洗いっこおしまい」
 と何食わぬ笑顔でマサヒコに告げる。顔は真っ赤だが、天然の魔女の偽装は少年に疑惑
を与えない。
「ううっ、また……、生殺しかよ」
「?」
 苦しそうに、悔しそうに呟くマサヒコ。リンコには理解できない。
「いや、なんでもない」
 ゆっくりと体を放す二人。その時、リンコの腹とマサヒコの亀頭の間には、ボディーソ
ープではない、ねっとりとした微量の液体による糸が一本垂れ下がっていた。

 体の内に湧き上がった欲情を抱えたまま、二人は全身の泡を流し、浴室を出た。二人並
んで体を拭く。風呂で慣れてしまったのでお互いに裸でいることにも、裸を見られている
のにも慣れてしまった。
「じゃあ……、小久保君。始めようか?」
 体を拭き終えたリンコがマサヒコを誘う。緊張はしているが、性交を嫌がるほどの恐怖
は見られない。
(これは……、さっきの手は使えないな)
 先程は急に押し倒して恐怖を与えて思い留まらせようとしたが、奇襲は二度も通じない。
今のリンコなら、自分から横になって股を広げてくるだろう(想像すると凄い光景だが)。
作戦を変えなくてはならない。
「分かった。じゃあ、先生のベッドを使わせてもらおう」
「え?なんで?」
「さっきは急だったけど、普通セックスはベッドでやるもんだ」
「へー」
 その程度の知識も持っていなかったリンコは素直に感心する。そして二人は寝室に向か
った。
 寝室に入ると、マサヒコはリンコにベッドに横になるように指示する。リンコは指示通
りにベッドに裸身を横たえると、
「えーっと、これ感じならやりやすい?」
 案の定というかなんというか、自分から大股開きになった。それを見て、溜息をつきな
がら、マサヒコはリンコの脚の間に座る。
「じゃあ本番に入る前に、体の準備をするぞ」
「体の準備?さっき洗ったよ」
「そうじゃなくて、お前の中に俺のが入りやすくなるようにほぐすようなもんだ」
「ふーん」
 ふんふんと無邪気にうなずくリンコ。そんな無垢な彼女の表情に強い罪悪感を感じなが
らも、マサヒコはゆっくり、恐る恐る、彼女の陰唇へと右手を伸ばした。


 マサヒコの指が触れた瞬間、
「アッ!」
 少女の口から、抑えきれず大きな声が出る。先程の浴室での刺激と違い、受動的なだけ
に衝撃は大きい。触れさせてはならない大事な場所を触れさせてしまった、そんな禁忌か
のような思いが自然と強くこみあげてくる。
「少し湿ってるな。お前も感じてたのか」
「感じる、っ、て?」
 マサヒコの言葉を聞いて、少し怯えながら問う。
「お前にどう言ったらうまく伝わるか分からないけど……、お前の体がエッチなことをし
たがってるってことさ」
「私の体、エッチ?」
「セックスもエッチなことだけどな」
 リンコにとって「エッチ」なことというのは、女の子の裸を覗くとか、スカートをめく
ったりするとかそういったことだ。理由は分からないがそういったことは「いやらしい」
から恥ずかしいし嫌悪感もある。
 だからマサヒコの言葉を聞いて、今更ながら自分が「いやらしい」ことをしようとして
いることを知って羞恥心を抱くとともに、体が勝手に「いやらしい」状態になっていたこ
とに驚きと恐怖を抱いた。
(なんか……、そんなの……、イヤァ)
 そんな、マサヒコが今一番聞きたいようなことを思ってしまう。しかし、
(これも……、大人になるためには必要なんだよね)
 という当初からの思い込みと強い願望、そして、
(私……、これからどうなるんだろう?)
 という自分の変化、いや隠れていた本性に対する興味、怖いもの見たさの気分が重なっ
てリンコはギリギリで耐えた。
 リンコの怯えはマサヒコにも十分に伝わった。
(ここが正念場だな)
 目を強くつむって身震いして耐えるその様を見て、マサヒコは確信した。ここを凌がれ
てしまったら、もう生本番に移行するしかない。ここでリンコの意思を完全に挫かなけれ
ば。それに、
(俺も、もう……、ダメそうだ)
 今まで獣性を抑えてきたマサヒコの理性も限界に来ている。魅力的な雌が自分を交尾に
誘っていて、先ほどまで性器を玩弄され、今は自分が相手を弄んでいる。こんな状況にだ
れが耐えれるというのだ。リンコを貫き、狂ったように激しく腰を使う自分の姿が目に浮
かぶ。今まさにそれを実現しようとするかのように、肉棒が震える。そんな自分を抑える
ように、より一層丁寧に、優しくマサヒコは指を動かしリンコに攻めかかる。
 まずは、秘所の割れ目に沿って撫でる。ほんのりと湿った肌が心地良い。
「う、ふーん、ふーっ、ん、あっ」
「どうだ。気持ちいいか?」
「う……、うん、多分……」

 気持ちいいというより、体が勝手に反応しているのに戸惑っているといった感じだ。体
は「快」と判断しているが、その種類が分からない。故に反応に困る。拒絶したくもある
が、ここはマサヒコを信じて耐え続ける。
「やっぱりこういうのは初めてか?自分でいじったりすることもない?」
「ふ、普段はタンポンを入れたりしたくらい」
「そうか」
 雑談を交えて相手の緊張を解きながら、マサヒコの愛撫は本格的になっていく。大陰唇
を押し広げ、リンコの隠れていた部分が露わになる。そして内側にある花びらを丁寧に指
を添わせる。
「キャッ、アッ、アーッ!!」
 刺激が強まって、喘ぎが悲鳴に変わる。本来なら、マサヒコは手を止めていたわりの声
を掛けるところだが、立ち直る隙を与えないために畳み掛ける。最大の急所である陰核を
つまみ、包皮をめくり上げるようにしながらこねくり回す。
「アーッ!アーッ!アーーーーーーッ!!!!」
 叫びとともにリンコの腰が突き上げるように浮いた。
(もう……、わけわかんないよ)
 体が頭の指示に従わない。いやむしろ、今突き出している股間の方が頭部として取って
代わったと言うべきだろうか。縦に裂けた口をヒクヒクとわずかに開閉しながら、淫らに
涎を垂らそうとしているケダモノ。脳髄の代わりに外性器と子宮が感情と指令を全身に発
し、末端の器官に追いやられた本来の頭部に刺し込みえぐるような痺れ・痛みにも近い快
感を与えてくる。
 それでも、マサヒコは責めを止めない。リンコが自分の指の動きに合わせて身悶えし、
叫ぶのをできる限り冷静に観察する。そして、リンコの動きが慣れて若干単調になり、十
分に体がこなれたところで次の行動に移った。
 一瞬、ほんの一瞬だけ責めが止まり、一息入りかけたリンコ。だが、そこをさらなる衝
撃に襲われ、肺の中の空気が全て絞り出される。
「ひぃ、あ、な、な、何ぃ、うぁああああああああ!!!!」
「暴れるな。危ないぞ」
 マサヒコの右の人差し指が膣口にゆっくりと入りこもうとした。一度振り払おうとする
ように動きかけたリンコの下半身をマサヒコは左手で抑え込みつつ警告する。おびえたリ
ンコの動きがピタリと止まる。
「う、ううぅ」
「力を抜いた方がいい。そう、落ち着いて。受け入れるんだ」
「う、ふぅ、はぁ、あっ、アッアッ、アッ」
 膣内にマサヒコの指が入る。落ち着いても未だ締め付けのきつい粘膜。安全のため、深
く入れずすぐに止め、リンコの反応を待つ。
「う、うぅん」
 落ち着いてきたリンコが体を持ち上げ、自分の身に何が起きているのかを確認する。
「指……、だよね?」
「ああ」

 自分の中での感覚と、見た目の大きさが一致しない。自分の体の入り口がパンパンに膨
れ上がったかのような存在感。しかし、実際は直径1センチ、長さ第一関節までで約2セ
ンチほどしか入ってない。
「う……そぉ」
 そんな小さなものに感じてしまう。全身いやというほど熱くなっているのに、冷汗が出
る。呼吸や鼓動による微かな振動で陰唇が動くだけでもマサヒコの指により体が弾けんば
かりの快楽らしきものが全身に響いてくる。
 慣れたころを見計らってさらに深く指を入れるマサヒコ。それだけでなく内側からこす
るように弄ぶ。悶えるリンコの肢体を力と体重で抑えつけながら、中に入れた指の動きは
どこまでも優しく丁寧だ。
「かっ、アッ、アーッ!アーッ!アーッ!アアーッ!!」
 指一本。直径2センチに満たないそれが、鉄棒で体の中身を掻き出されるように感じら
れる。恐ろしい。なのに何という快楽。恐怖で涙がこぼれるのに、嫌だとは言えない。こ
のまま快楽に飲まれて壊れてしまいそうなのに、それを望んでいる自分がいる。
 右手でリンコの秘所を愛撫しながら、彼女の上に覆いかぶさっていくマサヒコ。半身ず
らすようにして二人は上下に重なった。
(違う、んだな……)
 風呂場のときと違い、泡に邪魔されずに実感したリンコの肌。変な言い方だが、肌の肌
触りがミサキとは違う。どちらがいいというものではなく、どちらも心地いい感触だ。ど
ちらもいい、としてもそれは両方の女を体験して初めて分かることだ。そして違いを比較
して楽しむことができる。
 肌だけではない。今、指を入れている膣だって、処女で反応がぎこちないということを
差し引いても感触や濡れ方、構造、弾力、締め付けかたなどが違っている。
 ミサキを愛しているのも、ミサキの肉体が素晴らしいのも間違いない。だが、ほかの女
というのはまた別の良さがある。それをマサヒコは知ってしまった。知らなければ女に餓
えることもなかったのに。きっと、漁色家というのは女性を粗末にするのでも、浮気症な
のでもないのだろう。ただ、まだ見ぬ新たな女の味に魅せられてしまったある意味不幸な
男だというだけで。
 リンコの体を知ってしまった以上、それを味わい尽くそうという欲望を抑えるのは難し
い。さらに新しい反応を引き出そうとマサヒコは動き出す。挿入に移るのではなく、しつ
ように前戯を続けるのは、自制心の現れか。それともより多くの快楽を得るための貪欲さ
か。
 マサヒコの舌が、リンコのごく小さな右の乳首に向かう。
 ペロッ。
 素早く、さっ、とその小突起を舐めると、これまで性器を愛撫する指先の動きに合わせ
てリズムをとっていたリンコの動きが崩れる。具体的には
「アッ?!グッ、アァン!」
 呼吸と喘ぎのタイミングが崩れ、つぶれたような苦しげな声が出る。膣の締め付けも同
様だ。キュッ、キュッ、キュッ、っとほぼ等圧で締めてきたのが、キュッ、キュッ、グィ
ッ、と強さにムラがでる。性感体でない人差し指ですら、その違いに快感がますます掻き
立てられた。

 それに煽られ、マサヒコの動きはさらに大胆になる。左手をリンコの右脇下から背中に
回し、首裏を抑える。体はしっかりと密着され、口はリンコの胸に赤子でもしないように
しっかりと吸いつく。
「アアアアッ!!」
 性感に溺れ、蕩けたリンコの頭でも、今自分が胸を吸われているのはしっかりと理解で
きた。母と子を連想させるその行為。そして、母性と性感とがある意味直結しているとい
うのは体と本能が一番良く知っている。単純に乳首が性感帯の一つであるというだけでな
く、そんなリンコが理解できていない事柄によっても、知らず快感は激しく増幅されてし
まった。
 激しく身悶えし、体を激しくくねらせるリンコ。マサヒコの体も密着したままその動き
に沿う。それを続けるうちに、二人の動きはまるで絡まりあった蛇のように息が合ってく
る。右の乳首を口で犯すだけに留まらず、左の乳首、首筋、いやもう胸部から首に至るあ
らゆる部位をしゃぶり、舐め回し、吸いつくマサヒコ。そして、それを拒むかのように背
を反らしながらも、決して話すまいとするかのように、両手を男の頭に回し、しっかりと
抱きしめるリンコ。激しい体に汗ばむ女体。その汗すらも男にとっては美味であって、し
っかり味わうとともに、自らに体に擦り込んでいく。
 膣に入り込む指も、いつの間にか2本になっていた。リンコの膣は愛撫されるうちに柔
軟になり、女として迎え入れるべきものを迎え入れる体勢を整えつつあった。マサヒコは
うちに入り込んだ2本を突っ込んだり、広げたり、また、肉びらをつまんだりするなどし
て、彼女の肉裂をこのあとに待ち受ける、さらに激しい動きにも耐えられるように調教し
ていく。
 動きが一体となった二人はどこまで認識しているだろうか。リンコの動きは当初より遥
かに激しくなっている。はじめは湿らす程度だった愛液も、もはや潤滑油を越えて汲めど
も尽きぬ井戸のように溢れてきた。既に快楽に占拠されていたかに思えたリンコの意識に、
これまでを超える警報が響き、はっとしてわずかに理性を取り戻す。
「あああ!なんか、なんか来る!!来ちゃう!!!!」
 恐怖に本気で怯えるリンコ。例えて言うならば、頭と子宮にある堤防が、もはや決壊寸
前になるほど撓んでいるかのようだ。これらが壊れたら、リンコの精神はどうなってしま
うのか。だが、そんなリンコにマサヒコは荒い息使いながらも、丁寧に答える。
「それは“イク”って言うんだ」
「い、イ、イク?」
「そうだ。的山。これからお前はイクんだ」

 マサヒコにとっては既知の反応であることに恐怖が少しは薄れた。そして、素直に学習
するリンコは、たった今教えられたことを、直ちに発揮した。
「アッ!小久保君、私、私、イクッ、イクッ、イッちゃう!!!」
「ああ、そうだ的山!イけ!イクんだ!!!」
 そして、マサヒコが膣に一層深く指を突き入れた瞬間、リンコの堤防は決壊した。
「アアッ!…………」
 大きな喘ぎのあと、ずっと続いていたその声がいったん止む。
 その瞬間、リンコの体は限界までひきつって、橋を成すかのように背と首は反り返り、
両腕は全霊を込めてマサヒコの頭を締め付けた。
 体のひきつりに合わせて、股間は一層突き上げるような形になり、膣はこれまでになく
力強く引き締められた。そして、それと同時に、女の体の奥から噴き出す快楽と液。液は
相手の指と、自分の陰部をぐっしょりと濡らし、快楽は全身を痺れさせて脳に至り、思考
を快感と幸福感、幾許かの虚しさとで塗り潰す。そして、リンコは一瞬気を失った。


リンコの意識が覚醒を始める。リンコ自身には気を失っていたのが一瞬だったのか、そ
れとも長い時間だったのかは分からない。全身を包む、火照ったような熱と心地よい疲労
感。わずかに羞恥心を内包しつつも、リンコは『女』として扱われ、『女』としての反応が
できたことによる喜びと幸せさを、まどろみの中で感じていた。
 そんなリンコに覆い被さる影。明暗の変化と、息詰まるような荒々しさを感じ取り、リ
ンコの意識は急速にはっきりとし、その閉じた瞼を開かせる。
 目に映るのは天井でなく、切羽詰まったような苦しそうな表情をしたマサヒコ。息は荒
く、餓えた悲しげな獣を思わせた。
「的山……」
「小久保……君?」
「俺、もう駄目そうだ」
「えっ……」
 マサヒコは、限界を訴えながら泣きそうになる。両手をリンコの肩近くに置いて体を立
て、天井とリンコの間を遮る彼の体勢に、リンコは強く重苦しい圧迫感を感じた。
「もう耐えきれそうにない。もう、お前を犯してしまいそうだ」
「オ、カ、ス?」
「いや、お前とセックスしたくて止まらないんだ。少しでも気を挿れてしまうくらいに」
 “犯す”という言葉を理解できないリンコに対し、考えなおしてみると和姦(むしろ、
マサヒコが犯される側とも言える)なんだった、と表現を改めるマサヒコ。
「ああ」
 彼の恥を忍んでの告白を聞いて、リンコは意識から外れていた自分の本来の目的を思い
出す。そういえば、今までのはあくまで「セックスの前に体をほぐす」という程度のもの
だった。
「的山が……、今、はっきりと『止める』って言ってくれればまだ間に合う。だから頼む。
止めてくれ。止めさせてくれ」
 理性で体を止めながら、必死に懇願するマサヒコを見て、リンコはその方がいいのかな、
とも思った。自分は先程の前戯で女の悦びを知って、少し大人の女に近付けたと思う。体
力もかなり使ったし、これ以上無理することもないかもしれない。
 また、マサヒコは恋人以外とセックスをすることは浮気だ、と最初に言っていた。ここ
までの体験でよく分かる。たかが前戯でもあれほど、男を求めて体が、肉がうずくのだ。
心が、感情が全て引きずられ、巻き込まれ、もみくちゃにされかき消されてしまうような
快感。当然、男の側だってそうなのだろう。
 もし自分に恋人がいたら、そしてその男性が自分以外の女性と交わり、彼がそのように
相手の肉体に心と体を溺れさせてしまったら。自分はそれを許すことができるだろうか。
 ミサキの立場になって考えてみる。リンコと交わる時を今か今かと待ちわびるマサヒコ
の股間の怒張。指でリンコを弄び、しどけない悲鳴を上げさせながら、唇で乳首を、胸を、
肌を犯す様子。そんな行為に興じている恋人を許せるだろうか。許せるはずがない。
 自分の好奇心如きのために、愛し合う二人の間にそんな断絶を作るべきではない。それ
は理屈と体感でよく分かった。


 しかし、と、リンコは再び自分の今の状況に戻って考えてみる。
 一度絶頂を迎えて、肉欲を発散したはずの体は、相変わらずマサヒコと交わることを求
めている。今までの興奮はある程度収まったものの、静かに熱く、マサヒコのそれをリン
コの中に収め、本当の「女」にしてほしいと熱望している。
 そして、リンコは今回のことで、心と体が深くつながっていること、つまり、体が望む
方向に感情も流されてしまうことを学んだ。マサヒコと交わりたいという願望が心の奥底
から湧き上がり、止むことはない。
 無論、心というのはそこまで単純に割り切れるものではない。もし、これが誰かに無理
矢理愛撫され感じさせられたとしたら、どんなに卓越した技術であったとしても本当に心
から望むことはない。マサヒコがこれまでリンコの我儘に付き合い、そして優しく丁寧に
感じさせてくれた、その事実があるからこそ本当に心の奥底からマサヒコと交わりたいと
思えるのだ。恋愛と信頼の別はあれ、マサヒコを慕う気持ちは純粋だ。
 心と体が本気でマサヒコを求めている。マサヒコに「女」にしてほしいと希っている。
その機会を逃したくない。別の男性に「女」にされたくない。もうここまでの流れでリン
コを「女」にしていい男はマサヒコしかいないのだ。つまるところ、とっくに引き返せる
域を越えていたのだ。
 一方のマサヒコは、リンコを体では求めているが心では求めていない。リンコにもそれ
は分かる。だが、一度絶頂を迎えたリンコに対して、マサヒコは達することができていな
い。きっと、自分がイクまでに感じたあの壊れられそうで壊れられないあの段階でずっと
留まり続けさせられているのだろうと、リンコは自分に照らし合わせて想像する。
 ならば、自分は責任を持ってマサヒコをイカせてあげなくてはならない。そうすること
でマサヒコだって、今一時は確実に幸せになれる。2人とも求めるものが手に入るのだ。
 ここまで考えて、結論が出たリンコは小さな声で呟く。
「小久保君……、ミサキちゃん……、ゴメンネ」
「え?」
 なぜ自分の恋人に謝罪するのか、マサヒコが動揺しているうちに、リンコの口から決定
的な言葉が紡がれる。

「お願い、小久保君……、私を大人の『女』にして……」

「マ、ト、ヤ、マ?」
 驚愕のあまり、いや言葉が理解できないかのように呟きながら、目を丸くし、表情がお
面のように固まってしまうマサヒコ。だがそんな間にも、彼の下半身は許可が下りたとば
かりにリンコの陰門への距離を一気に3分の1まで縮めた。
 マサヒコは重大な決断をした相手の顔を改めて見つめなおす。少女の顔は前戯で上気し
て艶っぽく、恥じらいと緊張を感じながらも強い決意を持った表情をしていた。一見とぼ
けて寝ぼけたようなうっすらと開いたその瞳に、しっかりと現れる強さと艶めかしさ。そ
の強さは、少女の顔立ちを一気に大人のものに変じさせたように思える。
 男と交わるのにふさわしい、大人の女としての存在感。それに触れただけで壊れそうな、
いや今まさに壊されようとしている少女の儚さが合わさり、的山リンコは極めて神聖な、
侵すべからずして侵すべき、供物として捧げられる巫女のように感じられた。
 それでもマサヒコは理性の最後の抵抗、リンコへの説得を試みる。
「いいのか?!セックスは初めてだと凄く痛いんだぞ!血が出るんだぞ!気持ちいいとは
限らないんだ!!」
「ん……」
 初めて聞いた情報をリンコは軽く咀嚼する。結論はすぐに出た。
「いいの……。痛いのも、気持ちいいのも、全部小久保君のおかげだから……」


 「女」になるための儀式において、マサヒコから与えられる全ての感覚。その全てが愛
おしい。「痛み」とか「出血」だとかいう犠牲は相手がマサヒコだからこそ捧げられる。捧
げたい。
「だから……、シテ…………………………」
 マサヒコと見つめあったまま、リンコは両脚を開き、マサヒコを迎え入れる体勢を取っ
た。ベッドに横たわった時もした動作だが、その重みの差は桁が違うなどという言葉で表
せるものではない。
 「大人の女」になることを無邪気に願うだけの子供と、行為の重大性を理解したうえで
「大人の女」にしてほしいと心の底から思う女の違い。その違いは対面するマサヒコにも
感覚的に理解できた。
 その決意に当てられて、マサヒコの頭の中も、抵抗状態から心に重みを抱えたままでの
同意へとシフトチェンジした。
 恋人への裏切り行為だというのは百も承知。この先の人生、一生悔み続けるだろうこと
も分かっている。
 だが、今、自分はこの美しい少女と交わりたい。初めての男という栄誉を勝ち取りたい。
そして相手も強く望んでいる。
 いいじゃないか、と、自分の本能が自分にそう告げる。いや、やらなくてはならない、
とまた別の声が後押しする。やりたいんだろう?と唆す声もする。様々な声が頭のなかに
響き合う。それらはまとまった思考にならないまま、マサヒコを行動へと動かす。
「本当に、いいんだな?」
 「本当に」の部分の後に間を持たせることで、重みをつける話し方。確認を取るようで
いて、実際は意味を成さない言葉だ。相手がなんと答えるかは決まっている。言質を取る、
免罪符を得るためだけの確認だ。
「うん」
 即答。強い彼女がいまさら揺らぐはずもない。
 見つめ合う二人。リンコはマサヒコの目に変化を感じ取った。様々な感情や混乱した思
考が渦巻き合い、濁ったような物狂いのような瞳。だが、それらは総体として、一つの行
動に移ろうとしているのが分かる。リンコの胸が期待と緊張、不安で踊る。
「じゃあ」
 マサヒコは体勢を直す。一度、上体を引き、手はリンコの腰を掴む。そして自分の下半
身をリンコの下半身ににじり寄せる。
「いくぞ」
「うん……」
 まさにその時を迎えようとしている。リンコは頭を持ち上げ、自分とマサヒコの性器を
見つめる。
 硬く強く勃起し、時折力の入りすぎるあまりか震えるマサヒコのペニス。その大きさに
改めて驚く。
(だって……、指だけでああなんだもん)
 指1、2本ですらあの存在感。では、膣の径を確実に越え、肉穴を確実に押し広げてく
るだろうあの肉棒ではいったいどうなるのか、どうなってしまうのか。思わず固唾を飲む。


 思考はまとまらない、理性は未だミサキへの貞節について訴えている。でも体は動き、
それがなんだかすがすがしく思えるマサヒコ。例えば、テストで最後の一問悩みに悩んで
時間切れギリギリに答えを書き込んだとする。後で何度も後悔してしまうだろうが、それ
でも終わった瞬間は難題から解放された、全て終わったという開放感に包まれるのではな
いか。それに似た、決定的な変化により悩む必要がなくなったことによる開放感だ。
 近づく性器と性器、その2つがついに触れ合った。
「ん、あっ」
 快感に声を上げるリンコ。既に十分感じさせられ、一度達し、しばらくは感覚が鈍って
いるはずの女性器。それが、待ち望んでいた真の相手と巡り合い、刺激と快感が込み上が
る。
 マサヒコはじっとりとした女の肉の門の感触を自分の最も鋭敏な先端で感じ取った。女
性の柔らかい、それでいて弾力のある肉の感触。互いの鼓動が振動になり、その刺激が獣
を昂らす快感になる。
 リンコの股がしっかりと開いていることで、マサヒコの凶器はしっかりと門の合わせ目
を捕らえることができた。ほぐれた肉の柔らかさが分かる。押せばそれだけ入り込むよう
な状態だ。
「じゃあ、入るよ」
 一声かけて、マサヒコは挿入を開始した。鮮やかなピンクの花びらが押し広げられ、亀
のごとき先端を精一杯に受け入れていく。
「あっ、あああっ!」
 広がる、裂ける、壊れる。そんな言葉がリンコの頭の中を飛び交う。両の手は下のシー
ツを力いっぱいちぎれんばかりに握りしめる。
「大丈夫、落ち着いて」
 マサヒコの優しい声。リンコはそれで我に返る。改めて見ると、リンコの下の口がマサ
ヒコの亀頭部分を包んでいる。
 押し広げられたのに反発して、縮み、異物を押し潰そうとするリンコの性器。しかし、
マサヒコの頑強な一物がそれに負けるはずもなく締め付けられると押し返してくる。リン
コの反射的な動き自体が新たな快感を呼び込んでいる。
「少し入ったけど、どうだ?」
「あ、アン、き、気持ち、いい、かな?」
「まだ、先っぽだけだからな。力を抜いて楽にした方が多分痛くない」
「先っぽ?」
 その言葉を聞いて、リンコに3年前の記憶が蘇る。自分とマサヒコとリョーコが居て、
リョーコは別の生徒と電話をしていた。
「『やっと先っぽが入ったって』、だっけ?」
「あー、うん。あれは向こうでこういう状況だったってことだ」
 あの家庭教師、どう考えても常識というものがない。思い出して再認識した。
「まあ、それはいいとして。この先に処女膜っていう膜……、正確にはひだだってどこか
で聞いたような気がするけど、とにかく、それを破って進むことになる。痛いだろうけど
我慢してくれ」
「うん」
「一気に行っていいか?」
「小久保君に任せる……」

「じゃあ、いくよ」
 下手に時間をかけるより、一気に貫いてしまった方がいいと判断したマサヒコは、リン
コの腰を掴む手に力を入れ、膣道の傾きを考慮に入れて真っ直ぐに、リンコに極力負担を
掛けないようにしてペニスを突き入れた。

(んっ!!)
 リンコの内側が急激に押し広げられ、激しい熱と存在感を持つ何かに占拠されていく。

(ああっ!!)
 それは急速に侵攻し、リンコの内にある「何か」に行き当たった。

(う、あ、あああ!!)
 しかし、その「何か」は侵攻する物体の勢いに対して全くの無力であり、一瞬で痛みだ
けを残し引き裂かれる。

(あああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!!!)
 侵入者はリンコ自身も全く知らない、彼女の奥深くに突入し開拓していく。

(アアアン!!)
 底知れぬ深さまでそれは進んでいき、急に股間の入り口付近に発生した衝撃とともに停
止する。
「ぅ、あ、アッ……」
 内心の激動に比して、か細い喘ぎが漏れ出る。あまりの衝撃に肺と声帯はこれ以上の声
を上げる余裕がなかった。これが的山リンコが処女を失った瞬間であった。


「じゃあ、いくよ」
 声をかけた後の突貫。すでに指で十分に感じた後だけあって、膣肉はきつくはあるが、
堅くはない。潤滑油となる愛液も十分であり、力を入れればスムーズに進む。
 滑るように進む、マサヒコの肉銛。リンコの膣肉に自らが埋まっていくと同時に、埋ま
った部分が膣からの快楽を受け取る。
 途中、ほんの一瞬だけ使えるような何かがあった。処女膜だ。だが、それも圧倒的な力
と硬さの前では無力。プツン、と一瞬裂けた感触があっただけだった。
 初めてぶつかる二人の股間と股間。ついにマサヒコの「男」はすべてリンコの中に埋も
れきったのだ。先端は子宮口の柔らかさに包まれ、竿は引き締まる膣肉がしっかりと絡み
つく。
「ぅ、あ、アッ……」
 今、「少女」から「女」になったリンコが、か細い声で呻いた。

 呻き声を上げた後、リンコは荒い息を吐きながら耐えるように体をこわばらせる。しか
し、耐え難い何かがあるようで時折わずかに身をよじらせ、
「んっ……、うっ……」
と小さな、それでいて艶めかしい声を洩らしたりもする。
 そんなリンコを、マサヒコは自らは一切動かないように気をつけながらしばし見つめて
いた。
 時間にして1、2分経ってからマサヒコは優しく相手に声を掛ける。
「的山、大丈夫か?」
 マサヒコの声を聞いて、リンコはわずかに涙がにじんだ瞳を彼の方に向けた。
「んっ……、小久保君?」
 言葉の前後に、ハァハァという息使いが混じる。息が荒い、というよりも欲情している
と言うべきなのだろうか。
「やっぱり……、痛い……」
 処女が張り裂けた痛み。その傷口はマサヒコによって押し広げられたままであり、ジン
ジンと弱い痛みを放ち続けている。
「ゴメン、的山」
「!、う、ううん、小久保君のせいじゃないから、私がしてほしいって言ったんだから!」
 純粋に罪悪感から謝罪したマサヒコの言葉に対し、必死に言い返すリンコ。
「そうか、すまない」
「だ、大丈夫、痛いっていってもそれほどじゃないし」
 確かに張り裂けた瞬間のような鋭い痛みはしない。そして、今リンコの体には痛み以上
に激しい感覚が湧き上がっていた。
(信じられない……)
 指と比較した時点である程度は想像していた。しかし、現実は想像を遥かに上回るもの
だった。
 大きすぎる。膣が張り裂けるとかそういう生易しいものではない。まるで体全体がみっ
ちりとマサヒコの肉棒で埋め尽くされたかのよう。内臓も、肺も、心臓も、脳髄に至るま
で押しつけられ、支配されたかのようだ。もう少しで喉を突き抜け、口から飛び出すと言
われてもおかしくは思わない。
 そして、そのペニスで全身が制圧されたような状況が、全く不快でない。不快でないど
ころか明らかに体は望んでいる、悦んでいる。そして、もっと支配してほしい、激しく内
で荒れ狂ってほしいと願っている。
(何でだろう?)
 リンコには自分がどうしてほしいのか分からない。

 一方のマサヒコは、リンコの体を労わりながらも素晴らしい快感に酔っていた。
 初々しい美少女の処女。しかも、避妊具なしの生だ。ミサキとの初体験の時は、もちろ
ん安全のため避妊具を付けていた。これまでミサキとは何度も体を重ねてきたが、生は2
回くらいしかない。
 リンコの「処女」を「直接」奪ったというケダモノじみた荒々しい歓喜に、リンコの初
めての反応を生身で直接感じ取れる感激、そしてこれまで体験してきたミサキとは違う膣
内の感触。全てがマサヒコの欲望を激しく掻き立てる。相手を汚してしまったという罪悪
感も、背徳的な快感をもたらす。
 できることなら、今すぐこの欲望をリンコに叩きつけたい。勢いよく引き上げて、自分
とリンコを互いに擦り上げて、すぐさま深く、子宮まで抉らんばかりに突き込みたい。
 だが、マサヒコはどこまでも善良な男だった。傷ついたリンコを労わり、挿入したまま
微動だにしないでリンコの様子を見守る。
 そんな葛藤を抱えているマサヒコにリンコが問いかける。
「小久保君は……、どう?」
「俺か、俺は……」
 どう答えていいか少し悩んだが、ストレートに返事をすることにした。
「すごく気持ちいい」
「どう気持ちがいいの?」
 さらに問うリンコ。男の体を知らないリンコには、マサヒコがこの状態でどう気持ちよ
く感じるのかよく分からない。それで素朴な疑問が湧いてくる。
 根本的な質問ほど答えにくいものはない。さらに言うと、口に出すのがはばかられるよ
うな話でもある。それでもリンコのためにできる限り誠実に答えようと試みる。
「あの、その、俺のペニス、ペニスは刺激されると気持ちいいんだよ。お前のその、ヴァ
ギナ?みたいに。それで、その、ペニスがお前の中に入ってるから、その、お前の肉がこ
う、ギュッ、ギュッって締め付けてくるし、それに、しっとりとしてて感触がよくて、ま
あ、そんな理由かな?」
 多分、顔を真っ赤にしてしどろもどろに喋っている自分の顔は滑稽に映るだろう、そう
思いながらマサヒコはなんとか自分の快感を言葉で表現しようとする。これがいわゆる羞
恥プレイというやつだろうか。
 そんなマサヒコを上気してぼうっとしたような顔で見つめていたリンコは、しばし話の
内容を咀嚼したあと、
「ずるいなぁ」
 と言って微笑みを浮かべた。
「ず、ずるいって」
「だって、私は痛かったのに小久保君は気持ちいいんだもの」
「それは……、まあ、そうか」
 わざと拗ねたような表情を浮かべるリンコと戸惑いながらも一応は納得するマサヒコ。
確かに、女性に比べて男性は性交による快感を得やすい。さらに言うと、処女で快感を得
るのは難しいことである。

「なんか……、その、ゴメンな」
 再び謝るマサヒコ。そんな純朴な相手を見て、リンコの笑顔が一層明るいものになる。
そして照れたように、
「でも、私も気持ちいい、のかもしれない」
 と告げた。
「へ?どういうことだ」
「その……、まだよく分からない」
 笑顔が消え、照れの中に戸惑いと恥じらいが混じる。
「けど、小久保君が私の中に入って、その、あの、すごい押し広げられて、弾力があって、
固くて、わ、私のそこが絞まるたびに、その、小久保君のが押し返してきて」
 たどたどしく言葉を紡ぎ、一度区切って唾をゴクリと飲み込む。
「そ、そんなのが、いいのかもしれないな、って感じたりもする、かな?」
 自分の中の未知の感覚をなんとか言い切った。恥ずかしくなって思わず両手で真っ赤に
なった顔を隠す。未だ痛みが残る今の状態をなんと表現していいのか本当に分からない。
気持ちいいとは言い切れない。だが、今の状況に安住しつつあるのは間違いない。
「……、嫌ではないんだな?」
 マサヒコはリンコへ真顔で問いかける。
「……、うん」
 顔を隠した手を下ろしながら、こちらも真顔で答える。それを聞いてマサヒコはほっと
したように、
「じゃあ、しばらくこのまま待っててくれないか」
 と言った。
「うーんと、しばらくってどれくらい?」
「そうだな、的山がもう少し落ち着くまでだな」
「落ち着いたらどうするの?」
「お前を、気持ち良くさせてみせるさ」
「わぁ」
 “気持ち良くさせる”という言葉を聞いて、リンコは気恥ずかしさで居たたまれなくな
った。マサヒコの言葉が赤面物だというのではない。これまで感じてきた種類の“気持ち
良さ”がどうしても恥ずかしい物に思え、それを期待してしまうことに恥じらいを感じた
のだ。しかし、恥じらいは心身双方の期待を撥ね退けるほど強いものにはなりえない。リ
ンコの唇からは思わず、
「じゃあ、小久保君。お願い」
 という、うっとりとした声が漏れた。
「ああ、頑張るよ」
 爽やかな笑顔を返すマサヒコ。その表情が少しずつ大きくなった。その変化にはっとす
るリンコ。
 マサヒコの顔がリンコの顔の方へ近づいてきている。彼は左手をリンコの脇に置いて上
体をゆっくりと倒してきたのだ。膣内のペニスの位置も微妙にずれたことも、心身を揺さ
ぶったが、この状況でマサヒコが笑顔で顔を寄せてきたことがリンコの胸中に何か大きな
期待を抱かせる。

 そして、二人の間隔が頭一つ分くらいになったところで、
「う、んん?」
 マサヒコが右手でリンコの頭を撫で、前髪をかきあげた。
「小久保君、何?」
 リンコは何か期待を裏切られたような気分になりながら、マサヒコの突然の行動につい
て尋ねる。
「いや、ただじっとしててもつまらないだろ。かと言って、まさかまたあちこちいじり回
すと大変そうだし」
「まあ、それはそうだけど」
 確かに、今乳首をつままれたり首筋を舐められたりしたら、股間の状態を鑑みるとあま
りにも激しい刺激になるかもしれない。しかし、
「だからって頭をナデナデなんて、私、子供じゃないよ」
 とリンコは不満げに述べる。
「嫌か?」
 マサヒコは相変わらず笑顔だ。直感的にこれが一番無難かつ効果的だと確信しているの
だろう。実際リンコは、
「い、嫌じゃないよ。その、なんか安心するっていうか、ほっとするというか」
 これも性感とは違うが優しく心地よい刺激だ。マサヒコの体温と優しさが髪がかきあげ
られるたびに伝わってきて、リンコの心を安心させ、落ち着かせる。まるで、抱き上げら
れ撫てくる父母の慈しみを感じるかのようだ。
 既に書いたように、性交には快感だけでなく相手を慕う気持ちも重要だ。激しく動けな
い状態では相手を慈しみ、信頼関係を強める。その布石が後により一層強く高度な快感を
呼び寄せるのだ。リンコも本能的に、マサヒコの行動が正しいと理解している。
 理解しているが、どうも胸のもやもやが取れない。そして、その理由が先程マサヒコの
顔が近づいた時の期待感に由来していると気付き、動揺する。
(あの時……、私、何を考えてたんだろう?)
 その内容はまだ自分でもはっきりと分からない。それでも動揺してしまうというのは、
相当のことなのだろう。
(そうだ、小久保君の顔が私の顔に近づくから、これは何かよくあるような展開だなって)
 男女の顔と顔が近づき合う。その状況は漫画やドラマ、小説などでもよくある、そして
例外なく重要な一幕だ。核心に近づくにつれて、落ち着きを取り戻しつつあったリンコの
心臓は再び激しう脈打つ。
(カップルが顔と顔を近づけて、そのまま重なって…………、!!!!)
 とうとう答えに辿り着いたリンコは表情が変わるほど激しく狼狽した。
「的山、どうした?痛いのか?大丈夫か?」
 突然の変化にマサヒコが気遣って声を掛ける。マサヒコは気遣いの人だ。相手の心配や
混乱に優しく寄り添おうとする。しかし、マンガ的な天然女たらしによくあるように、肝
心なところで抜けていたりするので、リンコが先程どんな期待をしたのかまでは分からな
いし、それが後になって今の様な動揺につながったのも当然分からない。


「ううううう、うううん!大丈夫!なんでもないよ!?」
「そ、そうか」
 明らかになんでもなくないようなリンコの返答。これで安心しろというのは無理な話だ
が、どうやら痛いわけでも不快な刺激があったわけでもなさそうなのでこれ以上の追及は
止めておく。
 再びマサヒコはリンコの頭を撫で始め、リンコも表向き落ち着いてきたようだ。しかし、
内心はまだ混乱していた。
(私……、小久保君とキスしたかったの?)
 マサヒコとキス。リンコがあの時期待したのはそれだったのだ。その行為が意味すると
ころは子供でも分かる。“恋人”だ。
 だからキスとは心から愛し合う者同士でのみ許される行為。未だ童心を失わないリンコ
にとっては、馴染みの薄い“セックス”という言葉より遥かに重い存在だ。それを友人、
ましてやほかに恋人のいる男性に期待してしまうとは言語道断だ。
 あくまで自分は、マサヒコとは“セックスがしたい”というだけだったはずだ。ミサキ
の恋人を奪い取ろうとかそんなつもりはない。あの愛撫を経たあとだって、交わるべき相
手はマサヒコしかいないとは思ったが、寝取ろうなどとは考えなかった。なのに、何故。
 そんなことを考えながらリンコはマサヒコの顔を見つめていた。先程の狼狽を見て以来、
マサヒコの顔からは笑みが消え、真面目に、心配するような面持ちになっている。いらぬ
心配をさせてしまったことに負い目を感じながらも、どうしても意識はマサヒコの唇の方
に行ってしまう。
 そういえばマサヒコは前戯の際、あれほど激しく口を使ってリンコを攻め立てたのに、
彼女の唇どころか頬にさえ自分の唇を触れさせなかった。マサヒコの側も逆の意味でキス
を意識していたということか。それは“恋人以外とはキスをしない”、という 意識の表れ
でもあったろうし、“リンコのファーストキスを自分が奪ってはならない”という気遣いで
もあったのだろう。どちらにしろマサヒコは、リンコを明確に恋人“でない”、と区別して
接していたことになる。
 それは事実であり当然である。そのことを理解していても、リンコは悲しく感じた。
 そして、悲しく思い悩むうちに体にも異変が生じてくる。マサヒコのことを意識するほ
どに、股間もまたマサヒコの分身の存在を意識するようになる。内心涙が滲みそうな気持
ちが下半身には歪んで伝わるのか、それとも悲しみであれなんであれ相手を意識すること
全ては性欲と直結しているのか、リンコの秘所にはじゅくじゅくと愛液が滲みだし、マサ
ヒコの肉棒をしっとりと濡らしていく。
 体はどんどんマサヒコを受け入れる態勢を整えていき、それと同時に心でもマサヒコの
分身が体内にいることを受け入れていく。悩みや悲しみが呼び水となって、心身ともに性
交に対して馴染んでいくのがよく分かった。
 そして、気持ちの変化は肉欲の変化に繋がり、肉欲の変化は気持ちの変化に繋がる、と
いうことに思い至ったとき、リンコは自分を悩まされる原因が分かった。

(“体”が好きになっちゃった人は……、“心”でも好きになっちゃうの?)

 “純愛”と“性愛”は古来より、それこそギリシアの神話や哲学でも2つに分けられて
きたが、ともに同じく“愛”であることには変わりはないのはまごうことなき事実である。
 また、心や感情を司る脳は結局のところ一個の内臓、つまり体の一部に過ぎない。脳、
心が体を支配しているのではなく、脳は他の体の部位と影響・干渉しあう優劣の無い存在
だ。そして、心や感情というのは、進化の過程において体全体の便利のために作られたも
のに過ぎない。
 これらのことを考え合わすと、“性愛”が“恋愛”を導いたとしても何らおかしくはない、
肉欲から始まる恋もあるというわけだ。。

 簡単に言えば、的山リンコは友人である小久保マサヒコと性交したことが原因で、彼に
対して恋愛感情を抱いてしまったのだった。

 自分の思いに気付かされたところでどうなるものではない。既に2人の関係は“友人”
に過ぎず、マサヒコとミサキは“恋人同士”と定まっているのだ。
 リンコは初恋と失恋の苦悩を同時に味わうとともに、内心の葛藤が深まれば深まるほど
マサヒコのペニスの自分に対する影響力が強まっていくのを感じていた。ただただ大きさ
に圧倒されていたのが、今では全身に根を張り、溶け込んできたように感じる。悲しくと
も嬉しくとも、より一層存在感を強めていく“それ”。
 それは快楽という水脈となり全身の神経と感覚を絡み取ろうとしている。遠からずリン
コの体はこの1本の肉棒によって支配されてしまうだろう。
 そしてリンコは、いっそ快楽で塗り潰されればこの悩みも一時は忘れられるのではない
か、と肉の悦びに対して傾倒していった。


 一方のマサヒコは撫で始めてからのリンコの変化に当惑していた。撫でるという行為が、
親密感を持たせることでリンコの体が自分の性器を受け入れる助けになるとともに、相手
の心を落ち着けることができると思っていた。そして、徐々にリンコも感じ出し抽挿を望
むようになるはずだった。
 しかし、実際に起きたのは意外な変化だった。まず、撫で始めのころに不満らしき色を
見せた後、受け入れて大人しくなった。それでひとまず成功かと思うと急に狼狽し出す。
その後は悲しげな表情を浮かべ、膣はじっとりと濡れ出した。表情は蠱惑的に艶めいてい
るものの、マサヒコには何故リンコが悲しいのか、そして何故悲しめば悲しむほどに体が
感じているのかが分からない。
 グロテスクな自分の性器が、リンコの可愛らしい熟した桃の実のような性器の中でじっ
とりと濡らされている。清楚ささえ思わせる外観に反して、リンコの内側はねだるように
ひきつき、食事を待ちわびて涎を垂らし、マサヒコを舐め回すかのようだ。
 肌で直に感じ取る愛液。コンドームを付けていては味わえない極上の快楽だ。ほどよく
粘つく生温いソースは、膣肉の味を引き立てる。単に押せば退き、押し返すというだけだ
った初期の弾力に依存したような反応から、今ではまだ積極的にはなりきれないものの、
男を求め、本能だけでペニスに対する拙い愛撫を始めている。
 たとえ粗末なもてなしであろうと、一度だけのものはそれだけで価値がある。リンコの
肉体のこの反応は他のどんな男も決して味わえないというのは、マサヒコにとってさえほ
かの男に対する優越を感じさせるものである。
 そして、技巧は拙くとも、素材は間違いなく極上。膣内の凹凸、肉質、使われる筋肉の
部位、それぞれがマサヒコの性器に対して効果的に設定されている。
 リンコは内に何らかの葛藤を秘めたような表情のまま、体の方では激しい交わりに対す
る準備を整え終えたように思える。
「的山、そろそろいいか?」
 リードする側でありながら、動き始めていいのか判断がつかない。マサヒコは恥ずかし
ながら、リンコの判断に任せるしかないと思った。
「どうするの?」
 リンコは潤んだ目でマサヒコを見据え問い返す。
「俺のを、動かす」
「動かす……」
 リンコがゴクリと唾を飲み込む。指でやっていた行為をペニスで行おうというのだ。今
や、肉棒はリンコの全身に根付いた状態だ。それが引き抜かれたり、差し込まれたりすれ
ばどうなるか。大木を引っこ抜けば、地面もグシャグシャに崩れるだろう。それと同じこ
とが、快楽という形で自分の体に起こるのだ。今現在の“自分”という存在が崩壊してい
まうのではないか。恐怖で身がすくむ。

(でも、いい)
 一旦は恐怖に潰されそうになったが、リンコはそれを受け入れることを選んだ。自分は
“子供”から“大人”になりたかったのではないか。だとしたら、これはそのために必要
な過程の一つ。決定的な変化には過去との決別も含まれる。中途半端に止めるわけにはい
けない。
 どんな破滅的であろうと、一時は幸福感を味わえる。後のことはまだ考えない、一瞬で
いい、悩みも何もない幸福で今の状態を抜け出したい。
「わかった。お願い、小久保君」
 リンコは結論をマサヒコに告げた。その回答に、リンコの中にいたマサヒコの一片がい
ち早く反応を示した。膣の中で力強く上に反り返ろうとするそれ。相手の許しが出た以上、
本体が動く前から自分だけでもリンコを犯そうと示威行動を始めている。自分の膣壁を抉
り捏ね回すそれに、リンコはマサヒコが抑えている獣性を恐ろしさを感じ取った。そして
そのケダモノに貪るように食いつかれたいと望んでいる自分自身も。
 マサヒコはリンコの答えを聞いて、早速準備を開始した。理性で抑え込んでいても待ち
望んでいた時だ。この先に待つ快感を期待して身震いが起こりそうになるのを堪えつつ、
両手でリンコの腰を抑える。
「じゃあ、始めはゆっくりと動かすぞ」
 リンコの奥深くに根付いたようなペニスが、そろそろと後退する。女の肉と男の肉の摩
擦。潤滑液で緩和されたそれは双方へ至高の快感を提供する。
「ひぃ、あっ、アアアアッ、アッ!!」
 動き始めてすぐ、リンコが悲鳴を上げる。全身の細胞がのたうち回るような感覚。現実
は想像以上だった。体はすぐにリンコの理性の支配から解き放たれ、男根の奴隷となって
快楽に酔う。ゆっくりと引き抜かれるマサヒコこそが今のリンコにとっての全てとなった。

「ひぃ、あっ、アアアアッ、アッ!!」
 リンコの悲鳴とともに、マサヒコへの締め付けはさらに強いものになる。強いだけでは
なく、執拗さというか、内側の襞がマサヒコのペニスの急所急所を偶然にも的確にを責め
苛むという普段のこの少女からは考えられないほどの淫らさが感じられる。いわば持って
生まれた膣内の形状と処女の天然の反応、それにマサヒコとの相性が絶妙にマッチしてい
るといえる。
(凄いな、これは)
 わずかに3センチほど引き抜いただけでのリンコのこの反応。驚きと、これ以上の過剰
反応を心配してマサヒコは一度動きを止める。
「ハアァ、アァッ、アァッ……」
 一度張り詰めた体を弛緩させたものの、早鐘を打つ心臓の鼓動に合わせて痙攣するかの
ように、弱い緊張と弛緩を繰り返すリンコ。そのたびに彼女の下の口はクチュクチュと物
欲しげに、愛おしげに、そして寂しげにマサヒコの一物を舐め回す。愛液という涎もさら
に量を増している。
「的山、どうだ?」
 体の反応は嫌というほど分かっているが、彼女の心の方はどう思っているのかは定かで
はない。マサヒコは改めて確認を取る。
「あ、ああ……、小久保君……」
 快楽で一度崩壊しかけた意識をわずかにでも再生させながら、リンコは何と答えていい
かを模索する。
 マサヒコがほんの少し、再び少しだけ動かすだけで同じことが自分の体に起きる。それ
は間違いない。体と心が気持ち良さで壊れたうえに、さらに壊されてまた壊されて、とい
うのがマサヒコが満足するまで続くのだ。全てが終わることには自分はどうなっているの
だろう。入口の入り口だけを体験したリンコは再び恐怖に駆られる。
 だが、そんな衝撃的な体験は今日だけでも何度もあったこととも言える。
 男性の前で裸を曝すこと、シャワーを浴びながら抱き合ったこと、指での執拗な愛撫と
初めての絶頂、挿入に処女喪失。みなマサヒコのおかげで一歩一歩乗り越えることができ
た。そう考えて、理性は再び行為の続行を望む。
 肉体の方は初めから続行以外のことを考慮していない。わずか3センチ分の空虚すら一
度挿入された後は耐えられないらしく、マサヒコに腰を掴まれていなければ餌を求めて水
面から飛び上がる魚の如く、体を跳ね上げ食いつかんとしている。
「も、もっと」
 結果的に、リンコの口から出たのは極めて破廉恥な言葉であった。
「もっと、もっとお願い!もっと動いて!!」
 顔から火が出るような思いだが、もう口が止まらない。恥ずかしげもなく行為の続行を
願う少女。
 羞恥に赤くなりながらも自分を求めるリンコの声はマサヒコの心も燃え上がらせる。

「分かった。また動くぞ」
 そう言うとマサヒコは再び下半身に力を込め、ゆっくりと性器を少女から引き出してい
く。
「ハァァァァァァァンッッッ!!」
 嬌声。それとともに全身の力でマサヒコを締め上げるリンコ。だが、今回のマサヒコは
止まらない。きつく締められた状態で引き抜くことで、強い刺激が肉棒に加えられ、それ
はさらに激しい悦楽へと変換される。
「ふぁ、あああっ!」
 作用反作用で、それはリンコにとっても強い快感となる。狂気に駆られたかのようにビ
クビクと体が痙攣し、そのたびにマサヒコへ食いつく股間も一度緩めては激しく食らいつ
くという動きを繰り返す。
「う、ん」
 亀頭が3分の2ほどリンコの入り口に埋まったような状態になるまで引き抜いたところ
で、マサヒコは動きを止めた。
「ハァ、ハァ、アァ」
 リンコの荒い息使いが聞こえる。少し彼女を休ませるかのように間を置くマサヒコ。し
かし、実際には休ませることが主目的ではない。
 陰門の入り口でだけマサヒコを感じている状態のリンコ。本来なら少しづつでも落ち着
いてくるはずが激しい快楽の代わりに恐るべき渇望が彼女の心と体に湧いてくる。

『挿れてほしい』

 これまで自分の体に空虚な部分があると思ったことなどなかったが、男を知って初めて
膣から子宮までががらんどうのように感じられる。弾力のある膣壁は空虚を嫌ってすぐに
それを肉で埋めているはずなのだが。
 その自覚してしまった空虚さをリンコは我慢できない。さっきまでのようにマサヒコの
男で埋めてほしい。既に男根のない状態というのが考えられないほどの渇望だ。
 かつて男神と女神は余分な部分と足りない部分とを補い合うことで国を産んだという。
また、ギリシアではもともと男女は一体であり、故に分かれた半身を求めあうとも言われ
ている。かのように、女は男に挿入されたときこそが自然で満ち足りた状態なのかもしれ
ない。
「こ、小久保君……」
 すがるように相手の名を呼ぶリンコ。だが、マサヒコは答えない。
「小久保く〜ん!」
 泣き出しそうな目をマサヒコに向け、再び相手を求めるリンコ。
 ここまで相手の乾きを呼び起こしたうえで、マサヒコは再び動き始める。力強く、抜く
ときよりも緩慢に。


「ああああっ!!!」
 待ち望んでいた再挿入。体の虚しさが解消され、歓喜が全身を包む。知らず、リンコの
顔は泣き笑いの表情を形どる。
 ゆっくり、しかし着実で止まらない。マサヒコの固い物で再び体が支配されていく。し
かし全身の細胞は新たな支配者を歓迎し、歓迎の声を上げているかのようだ。
 一方でマサヒコはゆっくりとした歩みで、リンコの体内を調べ上げていく。一度の侵略
ではリンコの中を味わいつくすことはできない。これまで丹念に調べ上げてきたミサキの
中との構造上の違いを丁寧に上げていく。
 ミサキならここの形はこう、だからこんな刺激と快感が得られると知り尽くしているの
だがリンコの中は同じ女性とはいえ、微妙に形が異なる。1ミリ1ミリが未知の快感との
遭遇と言っていい。
 そのままマサヒコはリンコの奥地に再び到達した。全体を包む肉の感触に感じ入る。
 リンコも空虚がマサヒコで満たされたことで、大きな満足を得る。しかし、体は浅まし
く、すぐにもっと奥に入れてほしい、できることなら全身を貫通してほしいとまで思うほ
ど。果てなき欲望を抱き、淫らな微笑みを浮かべながら、リンコは次の快感を待つ。
 しかし、リンコの順応は速い。つい先ほどまで処女だったのにも関わらず、すでに痛み
を感じる様子もなしにマサヒコを求めている。一度目のピストン運動でそれを理解したマ
サヒコは徐々にペースを上げていってよさそうだと判断した。

 マサヒコが動く、再び抜かれようとする肉棒。先程よりも動きは若干早い。その速さは
威力となって、お互いの性器に新たな次元の快楽を味あわせる。
 そして、再々侵入。一度締まった膣肉は再び突き崩されるのを望むかのように待ち受け
る。そしてそれが果たされたとき、リンコは声を張り上げながら随喜の涙を流す。

 抜く、挿れる、抜く、挿れる、抜く、挿れる。一回ごとにスピードを上げていくマサヒ
コ。潤滑油も十分なので若い肉体の限界まで加速していく。

 スッ、パン!スッ、パン!スッ、パン!スッ、パン!スッ、パン!スッ、パン!スッ、
パン!
「アン!アン!アン!アッ!アッ!ア!ア!!!」
 マサヒコの加速に、リンコの嬌声はついていけなくなる。悶える体はマサヒコの手では
抑えきれず、すでに二人は荒馬乗りを思わせるかのような状態だ。女として学習し続ける
リンコの体は、単によがるだけでなく、男の抽挿にタイミングを合わせることでより深く
激しくペニスを迎え入れることを学んでいる。

「ヒィ、イィ、イク!イクゥ!!」
 リンコの口から知らず、あられもない声が零れる。

「どうだ、的山!満足できそうか!」
 相手の悦びを感じ取り、誇らしげに尋ねるマサヒコ。さすがの仙人もことの最中では豪
気な征服者のようだ。
「ハァ、イイの!イイッ、イッ!!」
 マサヒコの言葉は、頭が許容量以上の快感で塗り潰されているリンコには聞こえている
のかどうか。
 今のリンコにはこれまでの人生やここまで至る経緯といった過去もなければ今後の二人
の関係についての心配などといった未来もない。ただセックスという現在があるだけであ
り、それ以外の事物が存在したことなぞ頭の片隅にもない。
 本当に幸せだ。ぼんやりとした視界には興奮したマサヒコの顔が映る。愛おしい。交わ
っているから愛おしいのか、愛おしいから交わっているのか区別がつかなくなっているの
だが、男女二人で幸せな時間を過ごせるならば幸福感は2倍である。
「ヒィィ!アッ!ア!ア!」
 リンコの声の調子と、膣の締め付けの具合。マサヒコはそろそろリンコがイクと当たり
をつける。こちらが達するタイミングもそれになるべく合わせたい。慣れたミサキならや
りやすいのだが、初めてのリンコの場合は先ほど指でイカせたときの経験と照らし合わす
よりほかない。
(ここ……、だ!!)
 マサヒコは一度本当に先端だけがリンコの入り口にあてがわれているような状態まで引
き抜いた後、全力で突き込んだ。速いだけでなく、深く強い。お互いの肉と肉とが強く擦
れ合う。もし、リンコが十分に感じていなければ、苦痛を強いるだけの強引かつ暴力的な
挿入だったろう。しかし、リンコはその怒張を快楽としてスルリと飲み込んでいく。
「はぁっ!!!」
 子宮まで貫くような一撃に、リンコは目を見開いて大きく喘ぐ。ピキピキッ、と頭の中
で何かが壊れつつあるかのような感覚。先程の前戯での絶頂と同様の感覚ではあるのだが、
本番での絶頂は快感も精神に与える衝撃も桁違いであることが容易に推測できる。
 次の一突きで全て終わる、その確信が期待と不安を掻き立てる。
 マサヒコもまた、今のリンコの反応で自分の思い通りに事が進んでいることを確信した。
これまで我慢を強いてきた自分の方もそろそろ溜めに溜めた欲望を吐き出そうとしている。
マサヒコは素早く肉槍を引き抜くと先程と同等の勢いで止めの一撃を繰り出した。
「いけっ!的山!!」
 その衝撃が子宮を経由して全身を巡り脳まで響いた時、リンコは絶頂に達した。
「ファアアアアアアアアアアッ!!!」
 苦しく搾り出すような喘ぎ声とともに、大量の愛液が溢れ出す。そして、マサヒコの肉
銛を中心にリンコの全身の肉が快楽の渦となってうねる。中心にあるマサヒコもその怒涛
の前には一たまりもなく決壊し、若い欲望とともに自らの種をリンコの中に大量に放出す
る。
 限界を超えた快感の中、リンコは自分の中にマサヒコが熱い何かを放出したのを感じ取
った。意識は朧げではあるが、とても大事なものを受け取ったということは理解できたの
で、子宮でそれを温かく受け止める。
 リンコは本当に安全日だったのでそれらの種が実を結ぶことはないのだが、行為を最後
まで成し遂げたという強い満足感は得られた。

 絶叫とともに達した後、ぐたっとした状態のリンコの中に、マサヒコはまだいる。
 ビクッ、ビクゥッ、と性器が脈動しわずかにでも残った精液をリンコの中に放出しよう
としていた。
 射精の瞬間は、至高の快楽と中に出せた満足感がマサヒコの感覚を支配していた。性交
による快感というのは、言ってみれば子を成すという行為を奨励するために人間に擦り込
まれた本能である。そして、得られる満足感も男としての大事な使命を成し遂げたことに
由来するものだ。
 しかし、自らの性器の脈動が徐々に弱まっていくにつれ、マサヒコは素に戻っていく。
そして自分がしてしまったことに恐怖を覚え、背筋が凍る。
(中で……、出しちまった)
 リョーコは安全日だと言っていたが、リョーコからの伝聞に過ぎないし、若い女性の生
理からの推測というのは当てにならない場合も多いと聞く。
 今、リンコの中にマサヒコの精子が彼女の卵子を探し、大量に彷徨っている。確率は低
いとはいえ、この瞬間にも受精し新たな命が生まれてもおかしくはない。妊娠、責任、堕
胎、出産、結婚。そんな言葉が目まぐるしく頭の中を巡り回り、マサヒコはいやな脂汗を
全身からダラダラと流した。
 もし、相手が恋人のミサキであったならどうだったろうか。ミサキとの間に今子供がで
きたとしたらどうなのだろうか。おそらくマサヒコは戸惑い、混乱し、狼狽し、いろいろ
と見苦しい様を曝すだろう。
 それでもやはり、恋人との間の子供は『産んでほしい』という気持ちが一番に来るのは
間違いない。実際にそれが可能かどうかは分からない。マサヒコもミサキもまだ高校生だ。
結婚すらできない。それに、妊娠が知れたらミサキは最悪、学校を追われるかもしれない。
ミサキと子供を養うすべも今のマサヒコにはない。それでもやはり子供は愛おしいのだ。
愛する人と愛を交わし交わり合った結果が愛の結晶以外のなんだというのだろう。
 しかし、この相手がリンコであればどうだろうか。空気に流されて抱いてしまった負い
目はある。孕ませた責任も感じる。自らの血を引くわが子を粗末にはできないとも思う。
 それでもせいぜい『堕ろすというのは嫌、なのだが……』ぐらいの気持ちしか持ち得な
い。ミサキに対しての『産んでほしい』に比べればはるかに消極的であり、残酷な考え方
だ。結局は自らの体面や事の大きさに、子供を切り捨てることを選ぶのかのしれない。
 重すぎる可能性や自らの酷薄さを実感してさらにマサヒコの脳内は混沌としてくる。汗
だくになりながら、なんとなしに下になったリンコを見つめる。
 荒い、というほどではないが激しい運動の後だけあってリンコの胸は呼吸により大きく
上下している。肌色は普段より全体的にほんとうに若干だが赤味が強まり、全身にうっす
らと、それこそしっとりという言葉がふさわしい程度に汗が滲んでいる。
 表情は穏やかであり、若干疲れているようにも見える。微笑みが浮かんでいるわけでは
ない。しかし、どこか幸せそうに嬉しそうに見えた。

 今現在、リンコに意識があるのかどうかは定かではない。おそらく、放っておけば眠る、
少しでも声をかけたりすれば起きる、というような曖昧模糊な状態で快感の余韻と幸福感
に浸っているのだろう。
 両腕をやや肩上の方に広げ、全てを曝け出すような体勢でまどろむリンコを見つめ、マ
サヒコは、
(これは……、芸術的と言うのかな)
 という感動を覚えた。
 絵にしても彫像にしても撮影しても伝わりきらないであろう、少女の肉体の『美』がそ
こにある。そして、その状態を作り出すのに自分が関与したことをマサヒコはひそかに誇
らしく思った。
 しばらく芸術を鑑賞したところでマサヒコは素に戻り、いつまでもリンコの内に入りっ
ぱなしの自らの一部を遅まきながら引き摺り出した。先程まで過敏に反応していたリンコ
も、堅さを失ったペニスを感じ取ることは出来ないのか何の変化も見えない。だらりと伸
びて垂れ下ったマサヒコの一物が露わになる。リンコの愛がねっとりと絡み付き、リンコ
との間に糸を引く。
 濡れっぱなしはベッドを使わせている身としては失礼かと思い周囲を見回すと、さすが
に準備がいいというかリョーコの必需品なのか、すぐ手の届くところにティッシュが見つ
かった。マサヒコは苦笑しながら2、3枚抜き取り、自らの抜き身を清める。
 リンコの方をどうするかと見てみると、これまでマサヒコが安住していたその入口はほ
のかに色づいた桃にシロップをかけたかのように、ねっとりと艶めかしい外観になってい
た。
 拭いてやるべきかとも思ったが、デリケートな部分に下手に刺激を与えて起こすより、
多少周りが濡れようとそっとしておいてやることにした。そしてリンコの左隣に、彼女の
方を見ながら寝そべる。
 2、3分経った頃だろうか、
「んっ……」
 か細く喉を震わせながら、まるでマサヒコの存在を感じ取ったかのように自然に彼の方
を向いて寝返りをうつリンコ。2人の距離は互いの吐息が肌に触れるほどに近くなり、リ
ンコの温もりがわずかな距離を越えて伝わってくるかのようだ。
 安らかで可愛らしいリンコの寝顔を見ていたマサヒコは、なんとなしに再びリンコの頭
を撫で、前髪を軽く掻き上げてみる。
「うぅん……」
 今の状態を理解しているのかどうかは分からないが、撫でられて心地良かったのかリン
コの顔にわずかに微笑みが浮かぶ。そして、心地良さに釣られてかわずかにマサヒコの方
へにじり寄った。
 しばらく撫でられるがままだったが、少ししてリンコが薄目を開ける。そしてマサヒコ
の姿を認識した。ほんの一瞬、状況が理解できずきょとんとしたようだが、すぐに思い出
し破顔する。
「起こしちゃったか?」
 気遣いを見せるマサヒコ。リンコは首を軽く左右に振り、
「ううん。そんなことないよ。寝ちゃうつもりじゃなかったし」
 と返答する。それを聞いてマサヒコもまた破顔した。お互いに相手の笑顔を見るだけで
幸せな気分になれる。
「小久保君」
 リンコがマサヒコに声を掛ける。

「どうした」
 マサヒコが問うとリンコは、
「ありがとう」
 と答えた。
 唐突なことにやや面食らうマサヒコに対し、リンコが言葉を継ぐ。
「私を大人の女の人にしてくれてありがとう。私、小久保君が初めての人で幸せだよ」
 率直に感謝の意を伝えるリンコ。それに対してマサヒコは、
「いや……、俺はただ、その……」
 と言いよどみ、
「その……、なんだ?お前を相手に性欲を発散しちゃっただけというか、あの……」
「そんなの気にしなくていいよ。小久保君も私も凄く気持ち良かった。むしろ小久保君が
私とセックスしたいって感じてくれたことが嬉しい」
「ああ……、すまない」
 リンコのフォローを受けて、マサヒコは少し落ち着かない気分になる。
(何か、大人の反応って感じだな)
 これではリンコがマサヒコに処女を捧げたというより、マサヒコがリンコに筆下ろしを
させてもらったかのようだ。彼女の小さな体に柔らかな色気と温かな包容力が感じ取れる。
もっと甘えてしまいたくなるかのようだ。
 リンコの方でも甘えたいのは一緒だった。ただのすらりとした男子でしかないマサヒコ
が、一度情を通じ合った後だと逞しく思える。おそらく、あれだけ激しく男の強さと強靭
さを味わったからだろう。見た目以上の頼もしさが目の前の人物にはあるのだ。
 その逞しい胸板に、リンコは頬を寄せた。頭を撫でてくれていたマサヒコは、肘をつい
ていた右腕を伸ばしリンコを頭を抱きよせるような姿勢を取り、再び右手で彼女の頭を撫
でる。
 再び触れ合った2人の体。汗でしっとりとした他人の肌は心地良い。伝わる温もりにも
中毒性があるようで、もっと接触面積を増やしたくなる。自然に、リンコはマサヒコに抱
き付き、彼の体に自らを浸み込ませるかのように体を擦り付ける。マサヒコもまた、それ
を当然のように受け入れた。
 そんな風にしてマサヒコの肉体と体温を求めていたリンコだったが、ふと体の内の内が
冷ややかさを感じ取った。違和感。寒くもないのに何故そう感じたのか。
 理由は少しして理解できた。今が寒いのではない。さっきまでが熱かったのだ。マサヒ
コがいなくなって空虚さだけが残った子宮と膣。そこが『寒い、寂しい』と強く訴えて疼
いている。リンコは顔を赤らめる。知らず、右手がそれらの入り口部分へと伸びる。
 ペチャ。
 そんな擬音を感じる。リンコの股間は知らぬ間に謎の液体で濡れていた。視線をやると、
割れ目を中心にぐっしょりと濡れ、蛍光灯の光を反射しぬらぬらと光っている。
 おそらく、これはその割れ目から出たものだろうと見当は付くものの、いったいなんな
のか分からない。こういうときいつもするように、リンコは濡れた手をマサヒコの目に入
る方へ持っていき、
「小久保君、これ何だろ?」
 と質問した。

 相変わらずの答えにくい質問。しかし、リンコは大真面目に質問しているのだし状況が
状況だから答えざるを得ない。
「それは愛液、っていう液だ」
 と頬を紅潮させながら答える。
「アイエキ?」
「ああ、『愛する』に『液体』で愛液だ。女の人が感じると出る」
「カンジル?」
「その、あの、さっきのエッチで気持ちいい感覚のことだ」
「ああ、なるほど」
 前戯の時から涎でも出ているような感じだったが、本当に出ていたようだ。イッた時に
決壊したかのように感じたのもその通りだったらしい。
 リンコはしばらく愛液で照かる右手の指を物珍しげに見ていたが、再び股間に手が行く。
 ピトッ、と指が陰部に触れた。普段なら気にならなかったのだが、マサヒコに愛撫され
男を受け入れた後だったため感覚が鋭敏になっている。
「んっ……」
 っと艶めかしい声が少し漏れる。自分の指で触るのが気持ちいい。マサヒコの前で恥ず
かしい気持ちもあるのだが、欲望が勝る。触れた指を動かし、鋭敏な性器に擦り付ける。
「んっ、んんん!」
「的山?」
 マサヒコが彼女の声で奇行に気付く。
「んー、んーっ!」
「何やってるんだ?」
 問わずにはいられない。しかしリンコは答えない。指の動きは激しくなり、割れ目を押
し広げて中に入ったりもする。
「あ、ああっ!」
 マサヒコに抱かれたまま身悶えするリンコ。男の太い指で愛撫されるのと少女自身の細
く柔らかな指で撫で回すのとどちらが気持ちいいだろう、そんなことを考えながらさらに
指は深く食い込む。マサヒコは唖然として急遽開催されたオナニーショーを見つめるしか
ない。
 指を入れ、内側を擦り回すのが気持ちいい。リンコは快感に酔う。だが、それと同時に
虚しさも込み上げる。足りない、不十分なのだ。幾ら自力で頑張ったところで、自分の『雌』
の部分が求めているのは『雄』、マサヒコのペニスなのだ。代用には到底ならない。続ける
うちに虚しさに耐えられなくなり、リンコは指を股間から離してマサヒコの首に両腕を回
し強く抱き付く。
「小久保君!」
「何だ?どうした」
 マサヒコが問うも、リンコはハァハァと荒い息を吐くだけでなかなか答えない。だが、
しばらくして決心がついたようで、ゴクリと唾を飲み込んだ後に告げた。
「入れて」
 マサヒコに視線を合わせはっきりと言う。

「もう1回、私とセックスして」
 女性からの大胆発言に驚き、言葉も出ないマサヒコ。それを拒絶と受け取ったのか、リ
ンコは目を潤ませながら、
「お願い、私、我慢できない!小久保君が欲しいの!」
 と言って縋り付く。
 マサヒコはまだ若い。下半身はまだ余力を残していた。それに先程からリンコを抱きな
がら彼女の痴態を見せつけられていたため、すでに勃起している。
「いいのか?」
 ついつい、好物を出された子供のような口調で答えてしまう。言ってから自分を恥ずか
しく思うマサヒコ。彼の口調から相手も乗り気だと気付いたリンコは目を怪しげに輝かせ
ながら、
「お願い……」
 と再びねだる。2人の顔は拳1つ分くらいまで近寄り、胸部は密着。マサヒコの肉槍は
数センチ先にありリンコの下の口の方を差して脈動している。断る理由はない、むしろ望
むところ。先程の膣内射精で少し捨て鉢になっていたマサヒコは毒を食らわば皿まで、と
でもいうような様子で臨戦態勢に入る。リンコの両肩に手をやり、仰向けになるように倒
す。そして自らはそのまま上から被さるような体勢を取る。一度交わった後だから前戯は
要らない。むしろ、交わってからどうするか、だ。しかし、
「でも、その前に」
 と、リンコが出鼻を挫いてきた。今まさに彼女の両脚を啓かせようとしていたマサヒコ
は驚く。
「どうした?」
「その、あの……」
 先程、強く性交をせがんだのとは対照的に、恥じらうリンコ。マサヒコは不安になる。
何があったのだろうか。恐る恐る、リンコは言葉を継いだ。
「小久保君、キス……して」

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