「で、相談ってのは?」
 中村リョーコは目の前の少女に尋ねた。
 ここはリョーコの部屋。仕事が終わり家に帰ろうとしたところに、相談があるので会い
たいというメールが届いたのだった。
 リョーコに促されても少女はもじもじするばかりで、なかなか口を開かない。うつむい
た顔は問いかけるほどに赤くなっていく。
 全く手間のかかる娘ね、と思いながらリョーコは彼女を見つめる。そもそも、相談の相
手が他の知り合いでなくリョーコである時点でだいたいの想像はついているのだが。
「で、マサヒコとの性生活がどうしたって?」
「へ、えっ、ああ、何で?!」
 耳まで真っ赤にして天野ミサキは大声を上げた。

「私を誰だと思ってんのよ。さあ、ちゃっちゃと悩みを語りなさい。あいつは早すぎるの?
それとも避妊してくれないとか?高校生らしく発情したサルみたいに求めてくるとか?」
「ち、違います…。そうじゃなくて…」
「じゃあ何?できちゃったとか?」
「違うんです…、あの、その…」
 しばらくモジモジしながら、意を決してミサキは話し始めた。
「その…、なんて言うか、マサちゃんが淡白というか…」
「下手なのね」
「違います!マサちゃんは上手いです!私なんて毎回、…」
「毎回?」
「いえ、なんでもないです。言い方が悪かったですね。なんか、その、マサちゃんは私と
してもあんまり興奮してないって言うか、淡々としてるっていうか」
「倦怠期ね。高校2年で、っていうのは一見早いように思えるかもしれないけど、男女の
間では歳に関係なく起きることよ」
「…、気になるからマサちゃんに『良かった?』って聞いてみるんです。微笑んで『良か
ったよ』とは言ってくれるんですけど、なんかいつも私一人で興奮してよがってるような
感じで」
「ふーむ」
 リョーコは思案していた。教え子(厳密に言うと違うが)が困り果て、恥を忍んで自分
を頼ってきているのだ。一肌脱がなくてはなるまい。それに、ミサキがこの問題で他に相
談できる人間は他に…、マサママくらいか。それはそれで面白そうだが。しかし、具体的
にどうこうでなく、相手の態度だというのでは漠然とし過ぎていて対処しようがない。
「ん、なるほど。いい考えがあるわ」
「え、本当ですか!」
 ニンマリと笑いながらリョーコは指示を出した。

 翌日。マサヒコの部屋にて。
 帰りにミサキは、「マサちゃん、今夜…、どう?」と電話をかけた。照れと恥じらいの混
じった言葉の意味するところは言うまでも無い。
 服を脱いだ二人はベッド中に入る。ミサキは両脚を広げマサヒコを受け入れる体勢を作
る。その上に覆いかぶさり唇を塞ぐマサヒコ。ミサキはマサヒコの背に腕を回し、軽く抱
きつくような姿勢になる。
「う、マサちゃん…」
「ミサキ」
 執拗に唇を求め合い、舌を絡める二人。マサヒコの左手がミサキの秘所に伸びる。しっ
とりと濡れかけていたそこに、指が入り込み内側から撫で回す。ネチョ、クチュっとした
感触がマサヒコの指に感じ取れる。
「あ、アン、マサちゃん!イイ、気持ちいい!」
 身をのけぞらしてよがるミサキ。さらにマサヒコは唇を放し、ミサキの胸元に向かう。
「ここはどうだい、ミサキ?」
「あ、アア、うん、そこもお願い…」
 ミサキの乳首を吸い、舐めまわすマサヒコ。愛する少女が内側からどんどん熱くなって
きているのを感じる。自分もまた彼女を求めて熱くなっていく。

 今すぐにでも事に及びたくなるが、マサヒコは性行為を本当に楽しむ、いや完遂するに
は念入りな準備が必要なことを分かっている。
 男は所詮、棒一本を少しいじればばそれで達する生き物である。いま事に及んでも自分
は容易に達することができるだろう。しかし、それでは自慰と変わらない。恋人と対峙し
て行う行為といえない。もっと、自分自身が止めようがないくらい熱くなり、ミサキを求
める気持ちとミサキをいとおしむ気持ちを込めて行わなくてはならない。
 また、女性は男ほど達しやすくない。ミサキが悦んでくれないのならばこの行為には一
切の意味が無い。ミサキが自分を求めてくれている以上、満足のいくような働きをしなく
てはならない。だからマサヒコはこれまでも一生懸命ミサキを喜ばすように努力してきた。
どこをどうされれば悦んでくれるのか、華奢な体をどう扱うべきか、どのタイミングで挿
入すべきなのか、と。
 乳首に絡ませていた舌を、上に移動させる。ミサキの体がビクッと跳ねる。こうやって、
乳首から乳房、首筋を伝いまた唇に至るように舐め上げるのとミサキが感じてくれるのを
マサヒコはわかっていた。アアン…、とミサキが悩ましげな声を上げるのを聞いて、マサ
ヒコはミサキが自分の行動に満足しているのを察するともに、自分の中でミサキを求めて
獣心が騒ぎだすのを感じた。

 ミサキはマサヒコの愛撫に身を任せ、いつも通り快楽の泥沼に嵌りつつあるのを感じて
いた。ここまでくると自分は達するまで加速度的に快楽が高まっていく。そろそろ自分が
一匹の獣になってよがり狂うことが分かっていた。しかし、今回はリョーコの指示がある
ので、初めての時の次の次くらいに緊張している気がした。

 いつもより少しミサキが緊張しているようなのをマサヒコは気にしていた。『どこかまず
いところがあっただろうか?性器を乱暴に扱いすぎたとか?』少し不安になりながらも、
ミサキが十分に濡れ、自分を待っていることも確かなので、行為に移ることにした。
「ミサキ、行くよ」
「うん…、来て、マサちゃん…」
 既にマサヒコの物にはゴムが被せられている。きっと10年以内にはこれを無しで動物と
して正しい行為を行うことになるのだろうが。その袋を被った自分の物を、ミサキの下の
口に添えた。何度やってもこの瞬間は、暴発しそうな興奮と、こんなことをしてしまって
いいのだろうか、という後ろめたさに襲われる。マサヒコは出来る限り慎重に、その先端
を割れ目に押しこんでいった。

 ゆっくりとマサヒコが侵入してくる。指とは違う存在感。うすいゴムの皮膜越しにマサ
ヒコの熱が伝わって自分の膣を中心に体が沸騰するような衝動に襲われる。自分の体が内
側から押し広げられ、それとともに抑えようも無いような快楽と淫らな感情が湧きたって
くる。

「ぁぁ、ぁん」
 押し広げ、押し開き、押し進んでくるマサヒコの陽根。耐えがたく声を出してしまう。
あさましいほどに自分の膣はマサヒコに食らいつき、涎をあふれさせている。マサヒコの
背中に手を回し、脚を絡ませながらも体と頭は逃げるように反り返ってしまう。入ってき
た長さに比例して悦楽は増す。亀頭が子宮口を押し塞ぎ、二人の股間が完全に密着すると
もはや思考が出来なくなってしまった。男の一部で女の全身に手綱をかけられ乗っ取られ
た形だ。もうミサキはマサヒコの乗る荒馬にすぎない。

 ミサキを貫いたマサヒコは自分の物全体を間接的に包んだ肉壁により、精を搾り取られ
るような感覚を覚えた。一瞬でも気を抜くとあっけなく放出してしまいそうだ。しかし、
男として、ミサキの恋人としてそのような情けないことはできない。名残惜しそうにミサ
キに収まった自分の一部をゆっくり引き出していく。

 折角食いついた獲物が抜けていく。しかし、ミサキの膣道は肉銛の返しに擦られさらな
る快楽に燃え上がり、。こするだけの微弱な振動が何万倍にも増幅されてミサキの全身をこ
わばらす。
「あぁ」
 もう理性の抑えのないミサキからは声が大きく響く。

 竿の3分の1を引いたところで、マサヒコは、すっ、っと素早く突きだす。互いの下半
身同士がかるくぶつかり、パン、っと小さく音を出す。
 不意打ちを受けたミサキの体が声すら出せずに反り返る。直ちに次の前後運動。今度は
素早く先端まで抜いてから中ほどまで埋める。
「ハァアンッ!」
 さらに甘ったるく大きな嬌声が轟く。
 マサヒコの銛裁きは止まることを知らない。時にはゆっくりと壁面をなでるように引き、
次は間髪入れずに突き込む。完全に出るほど引くこともあれば、2、3センチしか引かぬ
ことも。ときには亀頭を二度三度陰唇で出し入れするだけのこともある。
「ひ、アッ、イヤ、アン、アー!アン、マサちゃん、イイ!イッちゃう!ふわぁ、ア」
 まさに荒馬の如く淫らに狂うミサキ。一突き味わってもまた違う一突きがミサキを人間
からケダモノへと堕落させる。

 その狂える牝馬の上の荒馬乗りは、快楽の渦の中にいても思考を止めない。荒荒しく杭
を打ちつけ子種を出さんという本能に抗い、ミサキを喜ばそうと次の動きを考えている。
 ただ深く・速く出し入れするだけでは女性の体は満足しない。膣が女性の快楽の源泉と
はいえ、棒切れ1つあれば汲み出せるというものではない。同じ動きは避け、同じ場所を
擦りつけるのも避け、決して単調にならないように動かさねばならない。それも、相手の
女性の反応を見て瞬時に次の動きを取らなくては。ミサキの表情と体の動きと膣の締め付
け、それらとこれまでの経験を照らし合わせて最善と思った動きをするのだ。言ってみれ
ば、大波小波次々とくるミサキの快楽の波を適切な動きで最大限押し上げるようなものだ。

 当のマサヒコにとっても負担は大きい。ミサキの膣に突き込み、擦りつけるだけでも己
の限界近い快楽を味わうのに、下であえぐ美しい恋人のあまりに淫らで扇情的な姿を見せ
られるとあれば、いつ漏らしてもマサヒコを責める者はいまい。
 それでもマサヒコは耐える。体中の血を集めて堅くなった自分の性器にさらに力をこめ
てガチガチにしながらミサキへの奉仕を続ける。
 この恋人に忠実・誠実な精神と本人の努力、そして持って生まれたとしか思えないテク
ニックにより彼は知らぬうちに性技の玄人といえる域に達しかけていた。

 突く、引く、擦る、撫でる、止まる、浅い、深い、速い、遅い。ありとあらゆる動きに
よりミサキの膣のあらゆる反応を全て探り出そうとするかのようなマサヒコの動き。一つ
一つの動きがミサキに今まで感じたことのないような新しい悦楽をもたらす。
 マサヒコがミサキの腰を掴んでいた両手を放し、ミサキに抱きつく。やや動きは単調に
なるものの、臨機応変な肉棒の動きは止まらない。
「愛してるよミサキ」
「アン!マサちゃ、ア、アアン!」
 喚き続けるミサキの唇を強引に自分の唇で塞ぐ。体だけでなく舌と舌もグチャグチャと
絡み合う。
 汗だらけの二人の体。油断なくミサキの体を撫でつけ、胸を揉みしだくマサヒコの両手。
彼はまだ自分の技術に満足していない。ありとあらゆる手段でミサキにさらなる快楽をも
たらそうとする。右の乳首を軽くつままれた時、ミサキは下半身とは違った快楽に喜悦の
涙を流した。

「ハァン、ア、行ク、死ぬ!アン、死んじゃう!イッちゃう!マサちゃ、アン!私イッち
ゃう!イク!イクから!」
「ああ、ミサキ」
 快楽の果てに来るのは、全ての感覚が無くなるほどの快楽。マサヒコの全力での勢いあ
る突きとともに、ミサキの頭は真っ白になる。全体力と引き換えにするような最大の快楽
と幸せ。上にいるマサヒコを跳ね飛ばさんばかりに体をビクッとそらし、ミサキは行った。

「ンアアッ、アン!」
 恋人の最後の絶叫と膣の締め付けを味わって、マサヒコは彼女が満足いったことを知っ
た。これまでの狂乱が嘘のようにおとなしくなるミサキ。荒い息で力なく自分に腕を回す
彼女に、最後の攻めを行う。大きく引いて、力強く、速く。ミサキからは耳に聞こえるよ
うな声は出ない。
「ミサキ!俺もイクぞ!」
10回前後でマサヒコも達し、避妊具の内に大量の子種を放った。

 しばらくまったりと恋人同士で横になる。
「なあ、ミサキ、今日はどうだった?」
「うん。良かったよ」
 会話とマサヒコの肌の感触を楽しみながらも、ミサキは机にあがっている自分の荷物が
気になっていた。

 翌日。
『ひ、アッ、イヤ、アン、アー!アン、マサちゃん、イイ!イッちゃう!ふわぁ、ア』
「ふむ、ほほう。おっ、フフフ」
「そんなまじまじと見ないでください中村先生…」
「何を言ってるの。これは大事な分析よ」
 再び中村宅。テレビに映されているのは若い男女の愛の営み。もちろんマサヒコとミサ
キである。
 リョーコの「いい考え」とは、二人の交合をビデオで撮影して分析するというものだっ
た。バッグの隙間からビデオカメラを回すという古典的な手段で。
「それにしても…、大きな声よねアンタ」
「…」
 顔を真っ赤にするミサキ。反論の余地はない。
「それより!分析の結果はどうなんですか!!」
「まあ落ち着きなさい。これからゆっくりと教えてあげる」
 と、いいながらリョーコは思案する時間を稼いだ。
 ぶっちゃけ、この状況だと多少問題はあるが双方楽しんでいるのは明白なのでほっとい
てもいいとは思う。

 しかし、それではつまらない。

 それに、折角ミサキが(性的に)成長する機会を得たというのに放っておいてはいけな
い、という妙な使命感により、リョーコは自分の分析を述べ始めた。

「マサヒコはセックス上手いわね」
「やっぱりそうなんですか?」
「そう。それに持ち物の立派な部類に入るわね」
「持ち物って…、アレですか」
「ええ。テクニック・持続力に関しては偏差値68、大きさは偏差値65といったところかし
ら。学業より優秀ね」
「それはどういう根拠の数字なんですか」
「私の集めた134のサンプルとの比較からおおざっぱに出したのよ」
 沈黙。134という数字は99より35多い。
「ん、どうした」
「中村先生はまだ豊田先生と付き合ってるんですよね?」
「そうだけど…、どうかした?」
「いえ、いいです」
「じゃあ、問題点は何か?あなたがマサヒコは淡白だと思った理由は何か言うわね」
「はい」
 ミサキが息を飲む。

「アンタが下手」
「え」

「え、あ、それどういうことです?!」
「下手というより怠慢というべきかもね」
 動揺するミサキにきっぱりと告げるリョーコ。
「まあ、自分でもこれを見なさい」
 ビデオを再生する。

『ハァン、ア、行ク、死ぬ!アン、死んじゃう!イッちゃう!マサちゃ、アン!私イッち
ゃう!イク!イクから!』
『ああ、ミサキ』

「さて、このテンションの差はどこから来るのでしょーか?」
「マサちゃんが…、楽しんでない?」
「ブー。マサヒコは楽しんでいるわ。マサヒコは快楽に流されているだけのあなたと違う、
というのが正解」
 身を乗り出し、ミサキに顔を突き付けるリョーコ。
「いい?普通、この年の男のセックスなんてのは、ただサルのように腰振ってすぐ出しち
ゃうのを回数で誤魔化してなんとか相手を満足させようとする程度の物なの。にもかかわ
らずマサヒコは懸命に自分を抑えて、あなたを楽しませるように動いてる」
「そうだったんですか…」
 しょんぼりと俯くミサキ。
「そりゃ、アンタはこんないいパートナーを持ってうれしいだろうけど、それに見合う動
きをしていない。正直、高校生カップルでイかせてもらえるなんてどれだけ贅沢なことか」
「…」
「アンタは一回イッて満足。相手も一回で満足、なんて甘くないのよ。ここを見なさい」

 早送りして再生されたのはミサキが達してからマサヒコが達するまでのシーン。
「この最後の激しい動きに注目。これだけ動けるのならマサヒコはその気になればぐった
りしてるアンタをまたヒイヒイ鳴かすことができるわね。さすがに2度はイかせられない
でしょうけど」
「そうなんですか…」
「さらに!さっきも言ったように本来このくらいの歳の男はまだ1、2回は出せるわ」
「えっ!?」
「一回は出してるんだからそれでいいという考えもあるけど、相手に余力を残させるよう
なセックスでいいの?嫌でしょう。どうせなら双方燃え尽きるようなエッチがしたいでし
ょう?!」
「…、はい」
 とまどいながらも真剣な眼差しで答えるミサキ。リョーコの言葉を聞いて、自分が怠慢
だという理由は納得した。マサヒコが自分にしてくれているほどのお返しを自分は彼にし
ていない。恋人として至らない自分が恥ずかしくなった。だからマサヒコにふさわしい女
になりたい。
「どうすればいいんですか。中村先生」
「ふむ、それはね次の言葉に集約されるわ」

「『イかされる前にイかす』よ!」

「イかす、ですか?」
「そう」
 威張ったようにリョーコは断言する。
「本当は『犯られる前に犯れ』って言おうおかと思ったんだけど、これは誤解されそうだ
からね。あ、どう誤解されるかって言うと相手を犯すつもりでセックスしろと言ってるの
であって本当に強姦しろと言ってるんじゃない、ということよ」
「はあ…」
 ミサキの表情が曇る。やはりこの人の感覚にはついていけそうにはない。
「いい、性交というのは男と女の本能の全てと知識と技術の全てを込めた究極の娯楽・快
楽にして、人類の最大の目的よ。古来より中国の房中術やギリシア・中東の神殿での性秘
術が研究されてきたのがその証拠よ。そして、その全てを込める、というのは互いに競い
合うことでしか実現しないわ。マサヒコがあなたをイかそうとしているように、あなたも
マサヒコを昇天させようとする。この二人の体と精神がぶつかりあうことによって二人の
性行為と愛情はさらなる高みに登るわ」
「はあ、なるほど」
 全てを理解したわけではないが、だいたいのところ納得してしまうミサキ。リョーコの
弁舌はいつものことだが、詭弁というより強弁。正しい点を押し通すことで他の問題も強
引に納得させるような説き伏せかただ。
「じゃあ、具体的に私は何をすればいいんですか?」
「特訓よ」
「特訓?」

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