最終更新:ID:x+fcxmK6Bg 2008年06月01日(日) 00:07:43履歴
この時期になると、どこの商店街も赤と白とで彩られ、クリスマスソングが鳴り響く。
そう、あと一週間ちょっとで、サンタが皆の家にやってくる。
「ローソクは買い忘れてない? マサちゃん」
「ああ、大丈夫」
北風がぴゅうとアーケードを吹きぬけていく中、一組の男女が肩を寄せ合い、歩いていく。
栗色の髪の少女が天野ミサキ、そして収まりの悪いやや長めの髪の少年が小久保マサヒコだ。
二人が手に抱えている紙袋には、一週間後に行われるクリスマスパーティのためのツリー用電飾、
クリスマスキャンドル、クラッカー等がたっぷり入っている。
「まったく、皆で集まってパーティするのはいいけどさ、何で俺たちが買出ししなきゃならないんだろ」
「いいじゃないマサちゃん、中村先生も濱中先生も忙しいんだし」
銀行員の中村リョーコも、中学教師の濱中アイも、年末ということで仕事に追われる日々だ。
買出しに行けない代わりに、リョーコはパーティ費用を、アイは会場として部屋を提供することになっている。
「いや、別に今日じゃなくても良かったんじゃないか、って話さ」
「え?」
「だって、的山も若田部も別の用事で来れないってんだから」
「あ……」
ミサキは立ち止まった。
風が強く吹いてミサキのおさげをさらりと揺らす。
「どうした、ミサキ?」
「あ、あのね、マサちゃん……」
「?」
「今日、リンちゃんと若田部さんが来れないっていうの……嘘なの」
「え? 嘘って……何で?」
マサヒコはびっくりしてミサキの顔を見た。
マサヒコの視界の中で、ミサキの頬がどんどん赤くなっていく。
「マサちゃんと……二人で行きたかったから」
「えっ?」
「マサちゃんとね、二人だけで買出しに行きたかったの」
「ミ、ミサキ」
頬どころか顔じゅう真っ赤にして俯いてしまうミサキ。
釣られて、マサヒコも顔を朱に染める。二人とも、今にも湯気が出そうな勢いだ。
「最近デートしてないし、それで、リンちゃんと若田部さんには特別にことわって……」
「じゃあ、前日になって二人が揃って「行けない」と連絡してきたのは、ミサキが……」
マサヒコはミサキの告白に驚いた。
確かに、ここ最近はこうして二人で外出する機会が無かったのは事実だ。
だが、それにしてもこうまで大胆なことをミサキがするとは、マサヒコは欠片も思っていなかった。
「ゴメンね……」
「ミサキ……」
先程とは一転して、ミサキは申し訳無さそうな表情になる。
「……いいよ」
「えっ?」
「俺も、ミサキと二人だけで出かけられて、本当は嬉しかったんだ」
マサヒコは一瞬にして、ミサキの表情からその心中を理解した。
マサヒコと二人だけになりたかったという思い。
嘘をついたことに対する後ろめたさ。
そして、やっぱり嘘をついたままではいられない、という気持ち。
「じゃあ、寒いけどもう少し歩こうか。……そう言えば、ミサキは駅前広場に巨大クリスマスツリーが出来たの知ってる?」
「え、あ、う、ううん。し、知らない」
マサヒコはニコリと微笑んだ。
そして、紙袋を右手で抱えなおすと、空いた左手をミサキへと差し出した。
「オッケー、じゃ、それを見に行こう」
北風がぴゅうぴゅうとまるで囃したてるようにアーケードを吹き抜けていく中、一組の男女が手を繋ぎ、駅前広場へと歩いていく。
栗色の髪の少女が天野ミサキ、そして収まりの悪いやや眺めの髪の少年が小久保マサヒコだ。
赤と白とで彩られた商店街、耳に届くクリスマスソング、恋人たちを見下ろす巨大なツリー。
あと一週間ちょっとで、サンタが皆の家にやってくる―――
F I N
そう、あと一週間ちょっとで、サンタが皆の家にやってくる。
「ローソクは買い忘れてない? マサちゃん」
「ああ、大丈夫」
北風がぴゅうとアーケードを吹きぬけていく中、一組の男女が肩を寄せ合い、歩いていく。
栗色の髪の少女が天野ミサキ、そして収まりの悪いやや長めの髪の少年が小久保マサヒコだ。
二人が手に抱えている紙袋には、一週間後に行われるクリスマスパーティのためのツリー用電飾、
クリスマスキャンドル、クラッカー等がたっぷり入っている。
「まったく、皆で集まってパーティするのはいいけどさ、何で俺たちが買出ししなきゃならないんだろ」
「いいじゃないマサちゃん、中村先生も濱中先生も忙しいんだし」
銀行員の中村リョーコも、中学教師の濱中アイも、年末ということで仕事に追われる日々だ。
買出しに行けない代わりに、リョーコはパーティ費用を、アイは会場として部屋を提供することになっている。
「いや、別に今日じゃなくても良かったんじゃないか、って話さ」
「え?」
「だって、的山も若田部も別の用事で来れないってんだから」
「あ……」
ミサキは立ち止まった。
風が強く吹いてミサキのおさげをさらりと揺らす。
「どうした、ミサキ?」
「あ、あのね、マサちゃん……」
「?」
「今日、リンちゃんと若田部さんが来れないっていうの……嘘なの」
「え? 嘘って……何で?」
マサヒコはびっくりしてミサキの顔を見た。
マサヒコの視界の中で、ミサキの頬がどんどん赤くなっていく。
「マサちゃんと……二人で行きたかったから」
「えっ?」
「マサちゃんとね、二人だけで買出しに行きたかったの」
「ミ、ミサキ」
頬どころか顔じゅう真っ赤にして俯いてしまうミサキ。
釣られて、マサヒコも顔を朱に染める。二人とも、今にも湯気が出そうな勢いだ。
「最近デートしてないし、それで、リンちゃんと若田部さんには特別にことわって……」
「じゃあ、前日になって二人が揃って「行けない」と連絡してきたのは、ミサキが……」
マサヒコはミサキの告白に驚いた。
確かに、ここ最近はこうして二人で外出する機会が無かったのは事実だ。
だが、それにしてもこうまで大胆なことをミサキがするとは、マサヒコは欠片も思っていなかった。
「ゴメンね……」
「ミサキ……」
先程とは一転して、ミサキは申し訳無さそうな表情になる。
「……いいよ」
「えっ?」
「俺も、ミサキと二人だけで出かけられて、本当は嬉しかったんだ」
マサヒコは一瞬にして、ミサキの表情からその心中を理解した。
マサヒコと二人だけになりたかったという思い。
嘘をついたことに対する後ろめたさ。
そして、やっぱり嘘をついたままではいられない、という気持ち。
「じゃあ、寒いけどもう少し歩こうか。……そう言えば、ミサキは駅前広場に巨大クリスマスツリーが出来たの知ってる?」
「え、あ、う、ううん。し、知らない」
マサヒコはニコリと微笑んだ。
そして、紙袋を右手で抱えなおすと、空いた左手をミサキへと差し出した。
「オッケー、じゃ、それを見に行こう」
北風がぴゅうぴゅうとまるで囃したてるようにアーケードを吹き抜けていく中、一組の男女が手を繋ぎ、駅前広場へと歩いていく。
栗色の髪の少女が天野ミサキ、そして収まりの悪いやや眺めの髪の少年が小久保マサヒコだ。
赤と白とで彩られた商店街、耳に届くクリスマスソング、恋人たちを見下ろす巨大なツリー。
あと一週間ちょっとで、サンタが皆の家にやってくる―――
F I N
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