業界のトップに躍り出るために打たれた一世一代の大博打、
トリプルブッキングの処女喪失AV撮影は、ようやく第一関門を終えた。
この先、メンバー一人一人の貫通式という最も重要なイベントが
三人分も残っているというのに、もう井戸田は疲れ切っていた。
メンバーの処女膜をカメラに収める、ただそれだけで
休憩時間も含めてもう二時間近く経過している。
休憩は各半時間程もとっていたにしても、
実際の撮影時間は一時間かかっている計算だ。
これが編集されて十五分以内に収められるのだから、
彼の苦労の四分の三は、映像では無かった事にされてしまうようなものだ。
しかし多くのドラマやバラエティ番組の撮影も、事情は同じだ。
一時間のドラマであっても、撮影には何日もかかっている。
それを思うと不平は言っていられないと身を引き締める反面、
何で俺は役者でもないのにこんなに苦労してんだ……とも言いたくなった。

「十時過ぎから撮り始めたのに、もう正午近いですね」
撮影そのものは一時間程度だが、
途中に挟んだ休憩を含めると二時間近くかかっている。
九時の始業から一時間は小池マイの早送りAV鑑賞にあてていた。
レイコに飲まされた精力増強剤のせいで股間が破裂しそうになりながら、
井戸田は意識的に平静を保とうとしていた。
目の前にはギリギリまで丈の詰められたスカートを穿いたカルナに、
二―ソックス以外完全な全裸のシホ、そしてスク水のユーリが居る。
自分は冷静だ、自分は冷静だと自身に言い聞かせていなければ、
とうに誰か一人くらい押し倒していてもおかしくない精神状態だった。
「今日一日はこの撮影にスケジュールをあててるから、
 もっと時間がかかっても大丈夫なくらいよ。
 その代わり撮り終えるまでは全員残業だからね」
隣の部屋でその声をマジックミラー越しに聞いていた三瀬は、
唯一撮影と関係の無い通常の事務作業をやっている自分まで
まさか残業に付き合わされるのだろうかと懸念した。
今日はブログを更新する予定の日なので、
少女達が定時までに撮影を終えてくれる事を期待する他無い。



本日既に三度目となった休憩を終え、本番撮影の時間がやってきた。
商品化された映像では年功序列でカルナ、シホ、ユーリの順に収録されるが、
撮影段階ではどんな順番でも構わない。
誰が一番手を務めるかはまだ決まっていなかったので、
トリプルブッキング三人はその場で即席の話し合いを持った。
「ユーリはどうしたい? 痛いから後回しにするか、先に終わらせて休むか」
カルナが気遣うのも無理は無いと思えるくらい、ユーリはまだ回復していなかった。
三人の中で一番指を入れるのが痛く、ハードな体位までしている。
十分休んだくらいで覚悟が決まる程、体も性感も発達してはいない。
「あたしが先に済ませようか? オナニー慣れてるから一番馴染みやすいかも」
さらっとデカい声で何言ってんだコイツ……と井戸田がツッコむ。
「でもシホちゃん、次の撮影はコスプレえっちだから、メイド服着直さなきゃ」
「あ、ホントだ! これ着るの面倒だから結構時間かかっちゃうんだよねぇ」
「ってか休憩時間中に全裸でくつろいでないで、さっさと着てれば良かったのに。
 アンタさっきユーリにローションかけた時すら裸だったじゃない」
「いやだって、ほら、着るのメンドイじゃん、メイド服って」
そういう話し合いは休憩中に済ませておきなさい、とレイコが文句を挟む。
やがて、年少者を気遣うカルナとシホの意思に反して、
ユーリが立候補の手を挙げた。
「私、出来れば早く済ませたいかも……」
「大丈夫なのユーリ?」
カルナとシホが心配する声をかけるが、レイコとしても
今更押し問答を続行してほしくなかったので、そこで話し合いを打ち切らせた。
「ユーリが一番時間がかかりそうなのは事実なんだし、
 アンタら二人が予想以上に時間かかった場合、ペース配分が難しくなるわ。
 時間かかっても良いから先にユーリを終わらせて、
 シホとカルナはそれからパパッと済ませましょう」
簡単に言うが、ユーリ以外の二人だって処女なのだ。
パパッと済むかどうかは断言出来たものではない。
レイコの狙いとしては、最年少者のユーリが頑張る姿を見せつける事で、
シホとカルナに余計な尻込みをさせず覚悟を決めさせるつもりだった。

社内で撮影している事を印象づけるために長テーブルを用意していたものの、
いざセックスとなれば、固いテーブルの上では処女相手に気がきかない。
小田が休憩時間中にテーブルを全て廊下に出し、
代わりに三人掛けのソファを運び込んでくれていた。
一人でやるには結構しんどかった筈だが、さすがは巨漢と言うべきか、
両手でがっしりと腰だめにソファを持ち上げる様は圧巻だった。
井戸田も手伝おうとはしたのだが、それはレイコに止められた。
曰く「中途半端な腕力じゃ小田にはただの足手纏いにしかならない」だそうだ。
「小田さんありがとー」
小田が運び込んでくれていたソファに座りながら、ユーリは感謝の言葉を述べた。
他に何も置いていない真っ白な会議室に、ただ一つ置かれたソファ。
それに腰掛けるスク水の小学生女子というのは、
言葉で表す以上に背徳的なものがあるように感じられる。
しかも当の本人が、それが背徳的であるという自覚があるのか無いのか、
無邪気に微笑んでいるともなれば尚更だ。
ユーリの着用しているスク水は予め胸のパットが抜かれている。
とは言え小学生の乳首はBB弾並みに小さく、しかも固くなっていないため、
表面上はどこをとっても平坦な胸にしか見えない。
むしろ女児特有の、少し膨らんで曲線を描いた腹部の方が目立っている。
これを今から犯すのかと考えると、精神状態をまともに保てという方が無茶だ。
井戸田はまだよく我慢している方と言えた。
「えっと、もう準備は良い……のかな? ユーリちゃん」
ユーリは頬を染めながら小さく頷いた。


相手がただの処女であってさえ、気を遣って細心の注意を払い、
時間をかけて丹念に固さをほぐしてやりたいところだ。
ましてや相手が小学生ともなれば、それは尚更だろう。
井戸田は学生時代に一度だけ処女と付き合った時の事を思いだした。
あの子の時でさえ、初めては一日じゃ済まずに、何度もリトライして
三回目のラブホでようやく何とか挿入出来たのに……。
そんな事を思い返しながら、彼はユーリに並んでソファに腰掛けた。
女子高生相手ですらあれ程時間と日数がかかったのに、
ユーリを一日で、ものの数時間で貫けと言うのは、あまりに困難だ。
隣り合う井戸田の顔を見上げ、全幅の信頼をもって見つめてくる女児の表情は、
恐怖に似た感情を眼差しに覗かせていた。
大陰唇を開いて内側を見せるだけでもあんなに痛がっていたのだから、
怖くないわけがないのだ。
「それじゃ、なるべく優しくするからね」
「ん……」
「痛くなったり、途中で止めたくなったら、すぐに言ってね」
「……止めてもらえるんですか?」
答えにくい質問だ。
これが仕事である以上、中止には出来まい。だが中断なら出来る。
とは言え、中断と言うのは、いつか再開しなければならない事を意味する。
その事実を今この子に告げるのは酷な気がした。
「大丈夫だよ、ユーリちゃん。
 いざとなったら、社長に怒られてでも……」
それが本心だったのかリップサービスだったのかは、彼自身にも分からない。
それに、言葉の続きも分からない。
社長に怒られてでも中断させる、と言おうとしたのか。
社長に怒られてでも延期させる、としか言うつもりが無かったのか。
もし後者であったら情けない男だと、なりゆきを観察していたレイコは思った。
もっとも、仮に前者であったとしても、中断などさせるつもりは無いのだが。
「今の彼の台詞、臨場感があって良いから、カットしない方向でいくわよ」
レイコの言葉に、小田は無言でこくりと頷いた。

ユーリは意を決し、井戸田に向けて少し顔を上げ、
顎を持ち上げ、瞳を薄く閉じてみせた。
唇を突き出せないのは、ファーストキスすら経験していない故の臆病さだろう。
目も完全に閉じているわけではなく、うっすらと相手の顔を見ている。
全体から滲み出す動きの固さも含めて、全てが少女の恐怖の証左だった。
井戸田は片腕を伸ばしてユーリの肩を抱き寄せた。
ユーリはソファの上に両足を閉じて、両手をグーのまま腰かけている。
リラックスしていない……と言うより、強張っているのがよく分かる。
井戸田はユーリのグーの上からそっと手を被せて、優しく包み込んだ。
そして、そっと唇を近付ける。
(キス一つにここまでビビるのなんて、何年ぶりだ?)
男でもファーストキスには結構勇気がいるものだったのだと、
そんな風に学生時代の思い出を呼び起こしながら、彼は少女に口付けた。


キスも初めての小学生相手に、長かったのか短かったのか、
それとも丁度良い時間だったのか、よく分からないまま井戸田は唇を離した。
ただ、唇をつけている間に、まるで雪の塊に湯をかけたかのように、
少しずつユーリの緊張が抜けていくのが、そのか細い肩から伝わってきた。
「キスのお味は?」
井戸田が尋ねると、ユーリは恥ずかしいのか、井戸田の耳元まで近付いた。
「……ん?」
集音マイクでも拾えない程の小さな囁きは、
一番近い位置にいる井戸田にすら聞き取れなかった。
「キスの最中に他の女の人の事考えてたでしょ」
ドキッとした
……と言う表現が、今程しっくり来る瞬間は無いと、井戸田は思った。
自身のファーストキスの時の事を思い出していた事が、ユーリに筒抜けだった。
のみならず、それを指摘してきた時の彼女の、立派なオンナの声。
何も言い返せないまま井戸田が黙っていると、ユーリは撮影用の台詞を口にした。
「えへへ、恥ずかしくて味なんかよく分かんなかったです」
そう言ってカメラから目線を逸らしながら頬を染める少女の顔は、
たったのキス一つでもう大きく成長したのだなと、井戸田に思わせた。

キス一つでここまでオンナ度が上がるのなら、
セックスを済ませたら一体どうなるのだろうか。
かつて処女と事に及んだ時は、相手も同い年だったから、
それ程「大人になった」という印象は抱かなかった。
せいぜい下ネタに対する耐性が強くなった程度にしか見えなかったが……
と、そこまで考えて、井戸田は思考を振り切った。
他の女の事など考えていてはいけないと、たった今指摘されたばかりじゃないか。
「大人の階段を上るのって、こんな感じなのかなぁ」
意味深に井戸田を見上げるユーリの表情には、
ある意味でシホよりもカルナよりも大人びたものがあった。
またしても井戸田が他の女の事を思い出していた事を、
目を見ただけで見抜いているかのよう……そしてその事に、
早くも諦めの感情を抱いているかのようだった。
本当は嫉妬心を剥き出しにして怒りたいのに、これが撮影だからか、
それともどの道言っても仕方の無い事だからと分かっているからか、
寂しく思いながらも何も口にしない、そんな大人の女の目だった。
「見違えるようだよ、ユーリちゃん。
 まだディープキスすらしてないのに、ほんの数秒でレディになったみたいだ」
井戸田は本心からそう言った。
褒めているというよりは、恐々と感想を口にしただけだ。
その証拠に、よく見ると彼の額にうっすらと冷や汗が滲んでいる。
しかし井戸田とユーリの間に現在張り巡らされている心理戦は、
傍目にはレイコ程の百戦錬磨の者にすら気取れない。
誰の目にも、ただの井戸田の気障な台詞回しにしか聞こえていなかった。


いつまでも含みを持たせた目で見つめ合っていても仕方ないので、
井戸田はリードし、ディープキスを済ませる事にした。
先程と同じように抱き寄せ、先程と同じように彼女のグーに掌を被せ……
しかし今度は、先程のような緊張は心なしか見られなかった。
ユーリ自身の固さが抜けていっている感がある。
勿論、こなれてきている、とまでは言わない。
いくら何でもそんなに早く順応出来るわけがない。
昔の女の事を思いだすまでもなく、処女というのは最初から最後まで、
徹頭徹尾不安と緊張でガチガチに固まっているものだ。
処女ばかりでなく、初めて寝る相手に対してはどんな女性でも概ねそうだ。
しかし今のユーリは、今まで井戸田が出会ったどの女性よりも、
早い段階で覚悟を決めてしまっているように見受けられた。
それは錯覚ではなく、レイコの目から見ても同様だった。
「ん……?」
小さく呟いたレイコの疑問符には、傍に居たカルナも気付かなかった。
(さすがは芸歴最長。土壇場での覚悟の決め方は早いわね……)
それが良い事なのか悪い事なのかは別として――と、
もやもやした感想をレイコは抱いた。
もっとも、実際にユーリを抱き寄せている井戸田や、勘の鋭いレイコ以外は、
ユーリの気持ちの変化に気付けていない様子だ。
唯一小田だけは気付いているのかいないのか掴めないが、
少なくともシホとカルナ、そしてマジックミラーの向こうの三瀬も、
恐らく全員、全く気付けていない筈だ。
これなら視聴者の大半も気付かずに済むだろう。
もしも気付かれたりしたら、処女のくせに初々しさが欠けているという理由で、
Am○zon辺りで悪いレビューをつけられるかもしれなかった。

大学も卒業している立派な大人の舌と、
小学校すら卒業していない女児の小さな舌とが絡み合う様は、
シホが慌てるくらい生々しかった。
慌てると言っても、元々こういうネタには耐性のあるシホの事だから、
せいぜい生唾を飲み込みながら目を見張る程度で済んでいる。
カルナは平生と変わらぬ無愛想な顔で事態を見つめているのみだ。
一番危険だったのは三瀬で、防音の壁の向こう側で、
ガチャガチャと事務用品を落として散らかしてしまっていた。
「あわわ……ユーリちゃんがディープキス、ユーリちゃんが……」
あまりの動揺に眼鏡がズレている事にも気付かず、
三瀬は散らばったペンやフラッシュメモリを必死で拾い集めていた。
とは言っても、そこはやはり所詮小学生の処女と言うべきか、
それともカメラの前だから抑えているのか……前者であって欲しいが、
ユーリの唇はあまり大きく開けられていないし、舌も突き出されていない。
どちらかと言えば、勇気を出してちょっと唇を開け、
ねじこまれる井戸田の舌の先端をただ口の中に入れているだけという感じだ。
もっとも、これ以上に積極的になられても、レイコとしては困る。
後で自分の音声だけカットさせるつもりで、レイコは口頭で指示を出した。
「ユーリちゃんも少しだけ舌を突き出してみなさい。
 ユーリちゃん1、井戸田9くらいの割合で」
少しはユーリが舌を出しているところも見せた方が、視聴者にとっては良い。
しかもその割合を極度に低く抑えておけば、その分初々しさは維持出来、
視聴者にとってもそのシーンの貴重さが増す事だろう。
「社長、もう声出して良いんですか?」
カルナが小声で問いかけると、レイコは「三瀬の手間が増えるだけよ」と答えた。


これだけ身長が違えば、座高もかなり差がある。
同じ高さのソファに腰掛けていても、必然的に井戸田の方が
上から見下ろすような形でキスする事にはなる。
顔を上げて青年の舌を口中に迎え入れるユーリの唇の端から、
一筋の唾液が頬を伝って垂れた。
影になって見え辛いが、ちゃんと井戸田とユーリの舌が
ユーリの口の中、入り口付近で擦れ合っているのも見える。
無論それは、小田の巧みなカメラワークによって、画面中央に捉えられていた。
照明が蛍光灯のみというのが少しばかり心許ないところではある。
役者根性が座っているというべきか、ユーリはまるでカメラが存在しないかのように、
それでいてちゃんとカメラの方向を意識しつつ、舌を動かしていた。
簡潔に言えば、井戸田の舌で自分の舌が隠れないように気を遣っている。
それは直接唇を重ねている井戸田こそが一番よく理解出来た。
ディープキスと言えば、互いに舌を縦に横にと蠢かすものだが、
ユーリはカメラから見た自分の舌が、井戸田の舌の影にならないようにしている。
それ故に動きがワンパターンになりがちなのだが、
それが露骨過ぎていないため、恐らく井戸田以外誰も気付いていない。
こうした細かい部分での演技への気遣いのせいか、
井戸田は一瞬、相手が小学生である事を忘れてしまった。
そして、かつて恋人が居た頃にしていたのと同じように、
キスを続けながらごく自然な動作で彼女の胸に手を伸ばした。
「やふっ、く、くすぐったぃ……」
「あ、ご、ごめっ」
小さい……と言うよりは、平たいと言っても差し支えない胸。
この子は子供なんだ、だからなるべく優しく、ゆったりリードしなくては。
改めて自分にそう言い聞かせるも、一抹の不審が脳裏を過ぎる。
(この子、本当に子供なのか?)


その不審は錯覚に過ぎない。
そんな事は十分承知している。
どれだけ肝が据わっていようと、どれだけ演技力があろうと、
所詮はまだ小学四年生でしかない。
今一度それを頭に刻みつけるよう、井戸田は意識的に、ユーリの胸ばかりを弄った。
パットのないスク水とは言え、撫でていても乳首の位置が掴めない。
その事が殊更に、この子は子供なんだと、井戸田に思い知らせた。
カメラが、二人の顔から視点を下げ、ユーリの胸を大写しにする。
ほんの僅かな突起すら見当たらない、スク水に覆われた平らな胸板と、
その表面を無意味にまさぐる男の手。
こんな映像でも興奮する人がいるんだろうな……などと井戸田が思っていると、
突如ユーリのディープキスが激しくなった。
「!?」
井戸田も、周りで見ていた者達も、一様に息を飲んだ。
胸元にカメラを向けている小田でさえ、名シーンを逃がしてしまわないよう、
カメラの方向とは別に視線は隙無く縦横に走らせている。
この時小田は、急に積極的になったユーリの顔にカメラを戻すべきか迷った。
が、敢えてカメラが外れてから積極的になったのは、
何かユーリなりの考えがあっての事だろうと踏んで、胸元を写し続けた。
ユーリは、まるで井戸田の舌をフェラしているかのごとく、
小さな唇全体を使って舌をシゴいている。
かと思えば口を大きく開けて井戸田の唇全てを包み込むように吸い付いたり、
舌先を彼の歯茎に這わせたりまでしている。
ついたった今まで、自分の唇より先には舌を突き出してすらいなかった娘が。
――遠慮なんかいらないよ。大人相手と同じように扱って――
声にこそ出さないが、ユーリの舌遣いには、そんなメッセージが込められていた。
勿論、積極的とは言ってもそのテクニックは拙く、
井戸田やレイコから見れば無理をしているのが丸わかりだった。
とは言え、ここまで覚悟を持って臨んでいる者に対して、
手心を加えるのは確かに野暮な話だとも思い直す。
積極性とは裏腹に怖がって震えている幼女の眼差しを真正面に捉えながら、
井戸田は覚悟を決め直した。
他の女の事など勿論頭の片隅にも思い浮かべないし、
ユーリに対しても、もう遠慮はしない。
それが今自分の最も為すべき事なのだと。


覚悟を新たにしてからの井戸田は、ふっきれたような勢いがあった。
殆ど膨らみのないユーリの胸を揉みしだき、五本の指で鷲掴みにする。
時折ユーリが痛がって身を捩じらせた。
「コイツあんまりセックス上手じゃないわね」
ぽつりと呟いたレイコの声は、井戸田の耳に的確に刺さった。
ただでさえユーリの胸は、本格的に鷲掴みに出来る程ボリュームは無い。
本当ならば、掌と指で撫で回すようにするのが最適だったろう。
乳首の位置を探し当てられない焦りのようなものが、井戸田にはあった。
それを察してか、ユーリはまたも集音マイクにすら聞こえない程の小声で、
ひっそりと井戸田に言葉をかけた。
しかし今度の言葉は、嫉妬ではなく助言だった。
「……人はひゆびの位置」
「え、なに?」
傍目にはディープキスと胸への愛撫を同時進行しているだけにしか見えない。
そしてディープキスを続行しながらの呟きなので、
ろくろく日本語としての体をなしてもいない。
だがユーリが「人差し指の位置」と言ったのであろう事は井戸田にも分かった。
「もふこひ、みひ」
も少し、右……と言っているのだろう。
井戸田とユーリのどちらから見て右なのか分からなかったが、
ユーリの事だから恐らくは相手本位で考えてくれている事だろう。
井戸田は自分から見てやや右側に、不自然でないよう指の位置をズラした。
「ひょっと、ひら」
ちょっと、下。
言われるままに指を動かした先には、確かにほんのりと、
他と違ってやや立体感を感じる豆粒程の面積があるようだった。
言われなければ気付かない程だ。
井戸田はようやく探り当てたそこを、集中的に弄り始めた。


爪の先を立てて、値札を剥がす時のようにカリカリと引っ掻かれると、
ユーリは思わず逃げるように上半身を井戸田から離した。
「ひゃっ」
反射的とは言え、自分から誘導しておいて逃げるのはまずかったかもしれない。
そんなユーリの不安を、しかしレイコはやんわりと否定した。
「良い感じよ、ユーリ。そのぐらいの反応の方がファン受けするわ」
ユーリは少しばかりホッとしてから、再び上半身を井戸田に近付けた。
しかし井戸田の方としては、もう加減はしないと先程決めたばかりだ。
一旦指は離れてしまったが、乳首のおおよその位置は感覚で記憶している。
彼は再びユーリの胸板の上の豆粒を探りあて、指で突いた。
と同時に、もう逃げられないように、彼女の背中に片腕を回してしまう。
ユーリは大人の腕にがっしりと背中側から抑えられながら、
無遠慮なディープキスと乳首責めで追い立てられた。
「んっっ、ふっ……ひ、うぅ……」
決して感じて喘いでいるわけではない。
くすぐったさと、それから逃れようとして果たせない、もどかしさの産物だ。
それは周りの目から見てもよく分かる。
ユーリはデンデン太鼓のように体を振りながら身悶えし始めた。
覚悟はとうに決めているし、プロ根性で撮影を割り切ってもいる。
それでも体が脊髄反射で逃げようとしてしまうのだった。
「こんなに逃げられたんじゃなぁ」
井戸田はユーリの唇から顔を離すと、今一度にっこりと彼女に微笑んだ。
「ふぇ?」
口の端から涎の糸を引きながら、少女は呆然と男を見つめ返した。
しかし、その瞳を見つめ返したと思ったその瞬間、
男の顔が視界から消えた。
「やっ!? ちょっ!」
井戸田は隙をついて姿勢を大きく曲げると、ユーリの胸にしゃぶりついた。
ユーリは慌てて彼の首を胸元から引き剥がそうとしたが、
引き剥がそうとしているのか、それともより強く押し付けようとしているのか、
もはや区別がつかない程アタフタとした、理屈にあわない挙動になっていた。


苦い……。
それが井戸田の第一の感想だった。
スク水を舐めるというのは初めての経験だったが、
想像していた通り、繊維だか何だかの科学的な味しかしない。
だが料理ではないのだから、味はこの際何の関係も無い。
幼女の乳首を、スク水の上から舐め回す、という事が重要なのだ。
「やだぁっ……気持ち悪いよぉ……」
それはユーリの率直な感想だった。
井戸田に悪いとは思いつつも、ベロ全体で乳首を、
しかも布地越しに舐め回されれば、気持ち悪いと感じる方が普通だ。
そしてまたユーリにとって都合の悪い事に、
井戸田の首、ひいては上半身が先程までよりもっと密着しているため、
彼女の背中や腰に回される腕の力はより強固なものになっている。
つまり彼女からしてみれば、余計逃げられなくなっている状態だった。
もはや身悶えするだけの隙間さえ与えられず、
ユーリは小刻みに肩を震わせる事しか出来なくなった。
「あら、思ったより早かったわね」
レイコのその独り言の意味が、井戸田にはすぐに理解出来ていた。
ユーリの乳首が、立っている。
「あれ? ユーリ、ちゃんと感じるんだ?」
「そんなワケ無いでしょ。多分、寒気とか悪寒で立ってるだけよ」
シホとカルナの、そんなとりとめのない会話が聞こえてくる。
井戸田に責め立てられたユーリは、背筋にゾクゾクとした感触を覚えながら、
不可抗力で乳首を固くしこらせてしまっていた。
それは撮影上も、井戸田個人にとっても、非常に望ましい状態だ。
口の中で大きくなったそれを、井戸田は舌の先で撫で続けた。
と同時に、もう片方の乳首にも指を這わせ、
指先で押し潰したり引っ掻いたりして弄ぶ。
その度ユーリの演技力の仮面が少しずつ剥がれていった。

不安、恐怖、緊張、そして嫌悪感。
今のユーリの表情を彩る要素はいくらでもあったが、
快感や恍惚といったものだけは微塵も介在していなかった。
大人と同じように扱って欲しいと思っていたのも束の間に過ぎず、
今はそんな覚悟は容易く吹き飛び、ひたすら怯えきっていた。
泣きだしていないのが不思議なくらいだ。
相手が井戸田でなければ、例え撮影であっても、泣いて嫌がっていたかもしれない。
油断すると歯の根が合わず、カチカチと音を立てそうになる。
「こんな表情で、果たしてファンは肯定的に受け止めてくれるんですか?」
友人としてユーリを心配しながらも、建前上は仕事の心配をする素振りで、
カルナはレイコに尋ねてみた。
出来ればここで止めてあげたいと、正直にそう思っていた。
しかしレイコの目に迷いは無い。
「あーいう顔の方が、嗜虐芯を煽る効果があるものよ」
レイコとてユーリを全く心配していないわけではない。
ただ、アイドルが嫌がったから中止しますというのでは、握手会すら成立しない。
社長という立場からすれば、心を鬼にするしか無かった。
「あぁう……うぅっ……うあぁ……」
ユーリの声はもはや呻き声や嗚咽に近い。
間違っても嬌声や喘ぎ声などの類では一切無い。
それを分かっていても、井戸田は手心を加える事なく彼女の乳首を
指と舌とでスク水越しに虐め続けた。
手を抜かない事が、結果的には早くユーリをこの状況から救ってやれる
唯一の手段だと理解し始めているが故だった。



井戸田は乳首責めに飽きると、一旦彼女から体を離した。
ようやく解放されるかと安堵したユーリに、しかし、
マネージャーは非情な行為に出た。
スク水の両サイドの肩紐に手をかけ、ユーリが「あ」と呟く間に、
いっきに腹の辺りまでそれを脱がせる。
「やっ、いきなりっ」
ユーリの声に、井戸田は一瞬我に返った。
レイコから投与された薬の影響で理性を失いかけていた事を自覚する。
台本では、もっとゆっくり、視聴者を焦らすように脱がせる予定だった。
まずい……とは思ったが、レイコはリテイクの指示を出さなかった。
そのまま進行させた方が良いと判断したのだろう。
井戸田にとっても、ここでペースを落とす事は難しかった。
「可愛い乳首だねぇ」
「そんな事言わないで……」
「どうして? 褒めてるんだよ」
ユーリの乳首はフリスク一粒波に小さく、乳輪は五円玉のようだった。
これ程小さな乳輪はさすがに見た事が無い。
やはり小学生の体は、大人とは別物だ。
井戸田はわずかに取り戻しかけた理性や冷静さと、
一方で職務に対する忠実さや、何より男としての本能とを、秤にかけた。
しかしレイコから盛られていた精力増強剤の効果には抗えなかった。
理性よりも、科学の力で無理矢理増幅された野性の方に負けた形になった。
心の中で「ごめん!」と呟いて、ユーリの乳首に直接キスをする。
「あっ、ひ……ベトベトするぅ……」
井戸田はユーリに一言も返さず、無心で乳首を吸い続けた。
右の乳首を舐め続け、思い出したように左に移り、しばらくしてまだ右に戻る。
あまりに夢中になり過ぎて、乳首が左右に一つずつある事すら失念しかけていた。
右を舐めている時は、もはや右の乳首、その一点にのみ意識が集中していた。
空いている左の乳首を指で責めるという事さえ忘れていた。
その事に思い至ってすぐさま左を舌で責めても、
今度は代わりに右がおざなりになるだけだった。
しかしそうこうしている内に、いつしかユーリの乳首は、
左右ともびっしりと井戸田の唾液で湿らされていた。


思えばスク水を脱がす前は、まだマシだったのかもしれない。
その時は何だかんだ言っても、ユーリの肌が殆ど露出しておらず、
ただのディープキスと布地越しの乳首責めしかしていなかった。
視覚的効果としても、あまり直接的な要素は無かったと言って良い。
だが今ユーリは、上半身を剥かれてしまっている。
可愛らしい乳首が直接拝める状態だ。
それを最も間近で見たせいで、井戸田の理性は吹き飛んでしまっていた。
その結果、弊害が二つ発生した。

一つは、スク水を着ていた時よりも乳首責めが単調になった事。
計算よりも本能が勝り、なけなしのテクニックすら忘れてしまっている。
そしてもう一つの弊害は、井戸田のペースが急速に早くなった事だ。
指で乳首を弄るという事をすっかり忘れてしまっていた井戸田は、
むしろユーリがスク水を着ていた時よりも余程早く、先を求めるようになった。
「はぁ……はぁ……」
井戸田の目はいつの間にか血走っていた。
まるで童貞を捨てた時のように、ただ一つの事しか考えられなくなっていた。
ただ一つの事……即ち。
「やだっ、お兄っ、あっ、そこはダっ……」
井戸田はユーリの股間に手を伸ばし、筋に合わせて指を這わせた。
「ヒロ君ペースアップしたね。さっきは乳首だけであんなに時間かけてたのに」
シホの独り言に、レイコが答える。
「童貞はあんなもんだったわよ。最初はビビってるから何でもトロいくせに、
 どっかでいきなり火がついて、入れる事しか考えられなくなるの」
「えぇっ!? それじゃあヒロ君童貞!?」
「んなワケないでしょ……や、多分だけど。
 まぁ薬とか、小学生相手とか、いろいろ刺激が強過ぎたかしら」
脇で繰り広げられるそんな雑談や考証も耳に届かず、
井戸田はただじっとユーリのマンコを見つめながら、手で擦り続けた。


乳首を吸っていた時ですら、舐める事にかまけて
指で弄る事を忘れていた程だった。
それが今や、乳首の事さえ忘れてしまっている様子だ。
ユーリの顔さえ見ず、胸さえ見ず、ただひたすら、
スク水に隠れた股間だけに目線が釘付けになっている。
本当ならここでキスなり、胸への愛撫なりをしてやるべきなのだろうが、
レイコの言う通り、今の井戸田は本当に下半身にしか意識が向いていない。
「お、お兄ちゃんったら……擦り切れちゃうってばぁ……」
ユーリの訴えも聞こえないまま、井戸田は手マンし続けた。
先程の処女膜撮影の時に舐めた、あの柔らかい肉の部分。
早くあそこに入れたいのに、あぁ、何故まだ濡れないんだ、
何故まだ入れられる状態にならないんだと、焦る気持ちばかりが先走る。
処女なのだから濡れる筈がないのだし、
実際先程はそれが理由でローションも使った。
今の井戸田は、その事すら忘れてしまっているような有様だった。
「ヤバイかもね、あれ。暴走しちゃってるわ」
「暴走って……」
いかにも事態が軽いかのようにボソリと呟いたレイコの声に、
カルナは目敏く反応した。
「大丈夫なんですか?」
「んー、平気じゃない? 勢い余ってスク水全部脱がせたりしたらリテイクだけど、
 今の所焦り過ぎて逆にそんなまどろっこしい事しなさそうだし」
コスプレエッチがテーマの一つではあるので、
TB三人は挿入の段階に入っても衣装は脱がないように、と指導されていた。
スク水セックスを謳っておきながら本番で全裸になる事を、
フェチ達は恐ろしく嫌うものだ。
レイコの返答はそれを心配しての事だったが、カルナの意図とは違っていた。
カルナは純粋にユーリの体や心の事を心配していた。


レイコの見立て通り、井戸田は決してスク水を脱がせなかった。
脱がせる手間や時間さえ惜しいといった風で、
ユーリの股間の布地だけを横に引っ張って、マンコを露出させる。
決して、撮影のコンセプトを気にしての事ではなかった。
「……舐めても良いよね?」
「えっ、えっ、駄目ぇっ!」
そんなユーリの返事――抵抗と言った方が近い――すら聞き入れず、
井戸田は少女をソファの上に押し倒すと、無理矢理足を開かせた。
小田がすかさずポジションを変え、ベストアングルを探り出す。
「う、うわちょっ、井戸田さん!」
マジックミラーの反対側にいる三瀬は、思わず止めに入ろうかとさえ思った。
合意の上での撮影だった筈が、半ば無理矢理になりかけている。
濡れてもいない小さな穴、その入り口に、井戸田は思い切りキスをした。
いや、キスと言うには生温い。
舌を前後上下左右に蠢かし、音を立てて吸い付く様は、
さながら膣に対するディープキスといったところだ。
愛液一滴たりとも分泌されない処女の入口は、
彼がどれだけ音を立てて吸おうが、出ないものは出ない。
それでも井戸田は、さながら砂漠で一粒の水を渇望するかのように、
一心不乱にソコを吸い続けた。
「ふぅう……んうぅっ……」
ユーリには役者根性がまだ辛うじて残っているのか、
両手はスク水の腹の辺りでギュッと握りしめられている。
必死で耐えているのだ。
顔を両手で覆い隠したいとか、股間を貪る井戸田の頭を引き剥がしたいとか、
思うところはいくらでもあるものの、何とかそれだけは我慢している様子だ。
あるいは、ここでそんな事をしてしまったらリテイクを食らい、
余計に撮影時間が伸びてしまうかもしれないと危惧していたのかもしれない。

井戸田はクンニもそこそこに上半身を起こすと、
もどかしそうに服を脱ぎ始めた。
もはや自分が周りからどう見えているかなど気にもしていない。
いつもより手間取りながらワイシャツのボタンを外し、
手が絡まりそうになりながらベルトを外し、
焦り過ぎてスラックスの内側で膝が引っ掛かってさえいる。
「あぁっ、くそ」
男優が冷静さを欠いている場面など見ても、視聴者は別に嬉しくも何ともない。
もっとスマートに服を脱ぐか、もしくは最初から脱いでおけば良かった。
「うっわーめっちゃグロレスクじゃん」(噛んだ)
「あんまりマジマジと見るのは当分慣れそうにないわね……」
興味津々といった顔のシホと、目を背けるカルナ。
井戸田のイチモツに対する二人の反応は見事に対極的だった。
隣室の三瀬は誰にも見られていないのを良い事に、
マジックミラーにかじりつくようにして凝視している……鼻血を出しながら。
「ちょっとヒロ君。ゴムつけんの忘れんなよー」
レイコがそう指摘するまで、井戸田は不覚にもその事を失念していた。
性知識に疎い若者達に、避妊を疎かにしてはいけないという
メッセージを伝えるために、これ見よがしにゴムをつける場面を撮る。
それが芸能人出演の無修正AV撮影のための最低条件だった。
「えぇと、ゴム……ゴム……」
井戸田は、用意していたコンドームをどこに置いたかすら忘れていた。
そして、ワイシャツの胸ポケットに入れていた事を思いだす。
適当に放り出していたシャツを急いで拾い上げ、四角い小さな包みを取り出した。
封を切る事も、製品の上下を確認する事も、装着そのものも、
何もかもが今の井戸田にとっては煩わしかった。
彼が急いで避妊具をつけている間、ユーリは涙と鼻水が出そうになるのを
長い芸歴で培った気合い一つで抑えつけていた。
「お兄ちゃん……早く……」
その言葉は、これからの行為に対する期待ではなく、
兎に角さっさと済ませて欲しいという逃げ腰な姿勢からくるものだった。


井戸田はコンドームを装着すると、次にその上からローションをまぶした。
「ホットドッグにケチャップかけてる状態に似てるね、カルナ」
「……シホ黙りなさい。もうホットドッグ食べられなくなるじゃないの」
私程の女ともなるとホットドッグはむしろフェラを想起させて大好物になるのよ、
とレイコは言いかけたが、敢えて言わない事にした。
井戸田は更にユーリのマンコにもローションをぶちまけた。
本当はローションを万遍なく垂らしている、この時間すらもが勿体ないのだが、
なるべくすんなり入れられるように下準備しておいた方が良いと判断しての事だ。
それは理性による計算などではなく、半ば本能による判断に近かった。
「はぁ……はぁ……それじゃ、入れるよ……」
入れる前からハァハァ言ってんじゃないわよ、気持ち悪い男ね。
レイコは誰にも聞こえないように、ごく小さな声でそう囁いた。
「……」
ユーリは無言だ。
半泣きの顔と怯えた目。
井戸田に足を開かされ、スク水の布地を横合いに無理矢理引き伸ばされ、
とうとうその敏感な部分に彼を受け入れる時が来た。
「いぎっ……!」
「くっ、キツ……」
ローションを潤沢に塗布しても、処女の膣はそう簡単に貫けるものではない。
十分に解したのならいざ知らず、井戸田はその行程を殆ど飛ばしてしまった。
レイコにとっては撮影時間が思ったより短縮出来るから良かったが、
小学生相手にこれではやはり無理があり過ぎたのかもしれない。
「あぁぁぁ痛いっ! 痛いよぉ!」
突如、ユーリが泣き出した。
演技の仮面も、プロとしての根性もかなぐり捨てた、本気の叫びだ。
「ご、ごめん! すぐに抜――」
「我慢しなさい、ユーリ!」
慌てて引き抜こうとした井戸田をも制止するように、レイコが声を張り上げた。
「まだ先っちょも良いトコよ? カリ首すら入ってないじゃないの」
そんな事を言われても、ユーリはそもそも「カリ首」の意味など知らない。
ただ、身が張り裂けそうな程の激痛を感じているのに、
まだ全然奥まで入ったわけではないという事だけは分かった。
「そ、そんな……」


それから挿入まで、ゆうに十分以上はかかった。
井戸田は抜きこそしなかったが、ユーリの痛みを慮って、
しばらくは動きを止めていた。
あれ程暴走しかけていたのによく自分を止められたと思いもするが、
それだけユーリの絶叫が堪えたのだろう。
とは言え、薬の効果か男の本能か、愚息は一向に萎える気配が無い。
せめて少しでも萎んでやれれば、ユーリの痛みを軽減する事も出来ただろうに。
やがてユーリは涙をためた瞳を井戸田に向けた。
一言も発さなくとも、それがOKサインだと誰もが分かった。
小田のカメラが結合部を映し続ける中、
井戸田はゆっくりと慎重に、膣壁の中を突き進んでいった。
こんなにサイズが合わないのでは内壁を傷つけてしまいそうだった。
実際、処女膜を突き破った時の手応えは確かにあったが、
それ以外でも常に「ブチ、ブチ」といった感触が伴っていた。
それは「ズブ、ズブ」といった生易しい感触ではなく、
まさしく「ブチ、ブチ」という、何かが千切れていく音だった。
まだ処女膜に到達する前からこんな感触がしているのでは、
明らかに女体に悪いのではないかと思える。
井戸田は途中何度も結合部を見下したが、処女膜に到達するまでの内は、
どうやらどこかが切れて出血しているような様子は見受けられなかった。
もっとも、血が表にまで滲んできていないだけかもしれなかったが。
そしてとうとう処女膜が破られた時には、ユーリは
「ひぁぐっ!!」
と、一際大きな声で鳴いた。
今度は見るからに明らかな血の滴りが、結合部から漏れ出てくる。
間違いなく膜を貫通した証拠だった。
ユーリの膣は浅く、井戸田のモノは決して平均より大きくなかったにも関わらず、
根本までずっぽりと収まる事は出来なかった。
「ユーリちゃん、大丈夫かい?」
「……も……ちょとだけ……待って……」
挿入だけでも十分以上かかったのに、動けるようになるには更に五分かかった。

やがて、ピストン運動が始まった。
快感など微塵も窺わせない、苦痛に歪んだ表情。
カメラはユーリのそんな顔を、克明に映し出していった。
「はっ……はっはっ……ふぐっ……は、うっ……ぎっ……」
歯を食いしばっている事が視聴者に見咎められれば、
商品の評価が下がってしまうかもしれない。
そう考えて唇をきつく引き結んで歯を隠そうとすると、
今度はうまく呼吸出来ず、鼻で荒い息を噴き出してしまう。
そこでやはり唇を開けて口で呼吸するのだが、
そうすると元の木阿弥で、食いしばった歯が露呈してしまう。
井戸田が覆いかぶさってキスでもしてくれればユーリの口元も隠れただろうが、
視聴者にとっては男優の体など見ても何も面白くない。
ピストン運動の際に抱きしめ合わないようにと言うのは、
撮影前からレイコが厳しく指示していた事だった。
ジュプ、ジュプ、と水音が立つには立つが、これはローションによるものだ。
愛液は粘膜を保護するために最低限の分量が滲み出ているのみ。
むしろ未成熟な固い尻に井戸田の腰がぶつかる音の方が大きく聞こえるくらいだ。
腹の辺りまで脱がされたスク水の布がピストン運動に合わせて揺れ、
破瓜の血が纏わりついた陰茎がモザイク無しでカメラに収められる。
幼女の足が腰の振りに合わせてブラブラと揺れる様は、
まるで公園のブランコで戯れる様子を思い起こさせた。


井戸田の射精は、かなり早かった。
「はっ、はっ、はっ、はっ、はっ……ウっ!」
テクニックも何もない単調な動きの果てに、井戸田の体が一瞬硬直する。
ユーリは薄いゴム越しに伝わる温度に、異変を感じるのが精一杯だった。
「ど、どうしたの?」
「……イっちまった」
膣がキツければキツい程早く射精出来るのは、男にとって常識だ。
まして井戸田は事前に危ない薬を飲まされている。
一度は理性を失って暴走しかけてもいる。
ものの二分かそこらでイってしまうのは、無理からぬ事と言えた。
そしてユーリにとっては、早く済んでもらえるのは大歓迎だった。
小田がカメラの電源を切る。
「はぁっ……はっ……やっ、と……終わった……」
ゆっくりと引き抜かれた井戸田の先端に、白いものが凝っているのが分かる。
これが精液というものかと、ユーリはいやに感心した。
それと同時に、自身の股間を両手で押さえる。
恥ずかしさなどではなく、骨格がズレたのかと思う程の痛みがあったからだ。
「よいしょっ、と」
ソファから降りて立ち上がったユーリは、しかし、
不自然な挙動でヒョコヒョコと歩き出した。
「うぅ……何か骨が曲がったみたい……」
「錯覚よ。でもその痛みは明日になっても引き摺るけどね」
「そんなぁ……大人になるって、大変……」
レイコの容赦ない指摘に、早くも気が滅入りそうになるユーリだった。


「やったねユーリ! よく頑張ったじゃん!」
「さすがだわ。本当、よく耐えたと思う」
あまり言いすぎると井戸田を批難する形になりそうだとは思ったが、
シホもカルナもまずは素直にユーリを褒め称えた。
「え、えへへ……思ってたよりずっと大変だったよ……」
涙を拭いながら微笑むユーリ。
井戸田は全裸のままではみっともないと思いつつも、
立ち上がって頭を垂れ、彼女に謝罪した。
「ごめん、ユーリちゃん! こんな……何と言えば良いか……」
「やだなぁお兄ちゃん。私はお兄ちゃんが最初の人で良かったよ?」
半脱ぎのスク水をいそいそと着直しながら、ユーリは笑いかけた。
そこへレイコが、破瓜の血を拭くためのティッシュを持ってくる。
「二人とも何言ってんのよ。後でもう一発ヤってもらうからね。
 ラストの4Pとは別に、ユーリだけもっかいリテイクよ」
「「……え!?」」
叫んだのは二人同時だった。
シホとカルナと三瀬も、それぞれ呆然としている。
「し、社長! 何で……」
「だって井戸田早過ぎだもの。リテイクって言うか、もう一度シてもらって、
 後で映像をツギハギして一回のプレイに編集し直さなきゃ」
「そんな……」
「一分ちょっとの本番シーンで、視聴者がヌケると思ってんの?」
いや、まぁ、そうかもしれませんけど……と井戸田は口ごもった。
「本当にごめんね、ユーリちゃん。俺が不甲斐ないせいで」
今一度申し訳なさそうに頭を下げた井戸田に、ユーリは首を振った。
「痛かったけど、もう一度お兄ちゃんと出来るのなら、良い……かな」
先程ユーリは「お兄ちゃんが最初の人で良かった」と言ったが、
仕事でファンに抱かれる事を除けば、「最初」も何も、今後もずっと一生、
彼にこそ抱かれて生きたいと、ユーリは密かに思っていた。

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