『今度は若田部か…』

『??今度は??』

『ちょっとそれどういう意味よ小久保君』

………………………………

期末テストを消化し暑い暑い言いながらも登校しつづけた1学期も終わり、世間は夏休み。

いつもの集合に向かおうと駅に向かうその矢先二人のアヤナと出会った訳である。
さすがに3度目ともなるとすっかり慣れてしまっているマサヒコと初めての事なので少し強めのリアクションをとったアヤナとのやり取りが冒頭の物である。

今回は今までとはちょっと違っている。

というのも…

(今回はどっちがどっちかわかりやすいなぁ。)

普段接しているアヤナは普段通りである恰好も昨年の夏に見かけた物とそこまで相違無いのである。

そしてもう一人の方のアヤナは体育の時のような後ろで髪の毛を束ねた状態。
所謂ポニーテールというやつで、服装こそアヤナとは大差ないものの、凛とした顔立ちながら、目尻はアヤナほど鋭くなく、どこか冷めた印象すら覚えるほどのものだった。

『納得いく説明をしてもらいたい物ね。』

アヤナがマサヒコをまくし立てる。

その問いには答えずにマサヒコが尋ねる。

『若田部の双子の姉妹か?』

『なんかはぐらかされた感があるけどまぁ、良いわ。そうよ、私の姉のアヤネよ。』

『…若田部アヤネ。よろしくマサヒコ。』

突然下の名前で呼ばれた事に面食らいつつも、差し出された親愛の印である握手に律儀に答えるマサヒコ。

『ち、ちょっと、姉さん!!初対面なのに下の名前で呼ぶなんて失礼よ。』

『…問題無い。アメリカでは常にファーストネームで呼ぶ。これ常識。アヤナこそ固い。』

『ちょっと面は喰らったけど、そう呼ぶならそう呼ぶで構わないぞ。よろしくな、アヤネ。』

今度は若田部姉妹が面を喰らう番だった。

『さて、そろそろ行かないとあの理不尽大王に何言われるかわかんねーぞ?今日はアヤネも来るのか?』

『…行く』

『そっか、行こうぜ。』

3人は改めて集合場所に向かった。

………………………………

『遅いわねー、早く無ければ良いってもんじゃ無いわよ。』

集合場所に着いたのはマサヒコ達が一番最後だった。
『というか、来て早々下ネタはどうかと…』

いつものやり取りをしてる横では

『アヤナちゃんが二人いるよー』

『若田部さんって双子だったのね…』

同い年二人が食いついていた。

『若田部アヤネ。よろしく。』

マサヒコに対してしたそれのように二人に対して手を差し出すアヤネ。

そのもう一方の当事者はというと…

『な、なによ、わ、私なんか一度も呼び捨てにした事なんか無いわ…そ、それに付き合いは私のほうが長いのになんで初対面の姉さんを呼び捨てなのよ…』

等々顔を真っ赤にしながら呟いている。

『うっひゃーぁ!アヤナちゃんはツンデレだけど、アヤネちゃんはクーデレだぁ!』

『いや、リンちゃん、ツンデレ、クーデレって…』

『…??クーデレ??』

『な、なによ、的山さんまで。いきなり下の名前で呼び捨て??わ、私だってそれぐらい…』

3人の会話の遥か後方に置いていかれながらアヤナはなおも呟き続けていた。

………………………………

『で、マサ姉妹丼の味はどんなもんだった?言ってご覧なさい?』

(ちょっ、決まってる!!決まってる!!)

一方マサヒコ、リョーコはというと、集合一発目のボケとツッコミから、あらぬ話しをリョーコがでっちあげ、マサヒコを玩具にしていた。

今はマサヒコから二人に関して聞き出そうとチョークスリーパーをかけている。
その刹那。

『っま、マサヒコ!!…』

響き渡る大音声のアヤナボイス。

突然の事に驚いた全く向こうの会話に参加などしていなかったマサヒコ、リョーコ、そして、妹の突然の大声に何事かを感じたアヤネの3人。

2人より復帰の早かったマサヒコはこれを期にリョーコから脱出。

驚いて固まっていたリョーコから抜け出すのに、力を込めている体制から抜け出すのと同じぐらいの力加減で抜け出してしまった為、マサヒコはよろめく。そして掴んだ…

アヤネの胸を。

『きゃああ〜〜!!』

今度はアヤネの大音声ボイスが響き渡る。

その直後にはパシーンという渇いた音が響き渡った。

………………………………

『…っ、痛……くない』

思わず頬に手を当てながら体を起こすマサヒコ。

いつもの如く気づけば自分の部屋だった。

『双子であるからには本質は一緒か…』

アヤナとアヤネには容姿や性格といった大きな違いがあった。

しかしながら、マサヒコからのセクハラ(?)に対するリアクションは同一人物のそれだった。

『中村先生の時で学んだはずだったんだけど…』

ここまでひとりごちてマサヒコは思う。

所謂夢の中の出来事で自分が過去の教訓を生かし行動できる可能性は皆無であるそれならば…

そこまで考えマサヒコは再びベッドに潜る。

(せめて、現実の若田部にはひっぱたかれないように行動しないとな。)

そんな事を考えながらマサヒコは眠りに落ちていった。

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