「私もライヴいったよー」
「誰と行ったの?彼氏?」
「え、えぇ〜・・・ち、違うよ〜そんなんじゃないんだから!」
「うふふ、冗談よ冗談」
「あはは、リンちゃん顔真っ赤だよ」


アヤナの言葉に顔を真っ赤にするリンコ、その様子を見ておかしそうに微笑むミサキ
いわずもがな、元東丘中学での仲良し三人組である。

彼女らが東が丘中学を卒業して早一年の春休み、アヤナの帰国をきっかけに彼女らは再会を果たした。


父の海外赴任についていく形となったアヤナだったが、その父が早々にアメリカでのプロジェクトを終了させてしまう。

そうなると海外赴任の意味も特になくなってしまい、
アヤナ自身もアメリカでの暮らしに慣れた頃ではあったが、やはり故郷は恋しいものでこれといった反論もなく

そして一年と経たない内に帰国と相成ったわけである。

そんな理由で帰国する趣旨を、アメリカに渡ってからも連絡を取り続けていたミサキとリンコの二人に伝えると

「じゃあひさしぶりに集まろうよ!!」

というリンコの流れ一直線の意見により、日本の懐かしさを味わう暇もない再会となったのだ。


そして話は冒頭に戻り

「もーからかわないでよ!」

頬を赤く怒ったように手をパタパタと動かすリンコ
そんなリンコを見てアヤナとミサキの二人はクスクスと笑う。

「ごめんなさい、あんまりにも嬉しそうに言うからてっきり」
「うん、でもそんなに慌てるって事はやっぱり男の子と行ったの?」

口上では謝りつつも追い討ちをかける二人
何というか辺りに華やかな空気が漂い始める。

「う、う〜ん・・・男の子と言えば男の子だけど・・・」
「やっぱり的山さんもお年頃なのねぇ、中学の時は本当に心配になるくらいポヤーっとしてたのに・・・」
「ひどいよアヤナちゃん、あたしだってもう立派な大人だよ?もうちゃんと生えてるもん!」
「いや・・・正直リンコちゃんは・・・」
「・・・変わってないみたいね」

春からは高校二年生となるが中身は相変わらずのリンコ
だがアヤナとミサキは呆れた様子ながらもこの懐かしい空気に居心地の良さを感じていた。

「やっぱその子って同じ高校の子だったりするの?」
「うん、そうだよー」
「へぇー・・・二人っきりで?」
「う、うん・・・ていっても別にデートとかじゃなくて・・・」

再び話が戻され慣れない話に顔を紅潮させるリンコ
それぞれタイプは違えど年頃の女の子、恋愛話ならどんぶり三杯は余裕であり
なんだかんだ浮いた話の少ない彼女らはリンコの話に食いついてしまう。

「えー男の子と二人っきりで遊びにいったらもうデートじゃないの?」
「どう考えてもデートよね、相手の男も男で気がなきゃ行かないだろうし」
「え、そ、そうかなぁ・・・?」
「絶対そうだよ!リンコちゃんはその男の子の事どう思ってるの?」
「う〜ん・・・仲の良い友達?」
「的山さんの方は恋愛感情とかないの?」
「え、そんなこと、わ、わかんないよぅ・・・///」

アヤナの直接的な言い方に、もともと赤い顔をさらに紅潮させるリンコ

「でも私は男の子の方は少なくとも意識してると思うわよ」
「ねー、そうじゃなきゃ二人でなんて遊び行かないもんね」
「そ、そうなのかなぁ・・・えへ、えへへへへへ///」

今度は頬を両手挟むように抑えながらイヤンイヤンといった感じで顔を左右に降り始める

「ねぇねぇリンコちゃんが誘ったの?それとも向こうに誘われたの?」
「えっと、ペアチケットを友達からもらったからいるか?って、それで流れで一緒に行く事になって・・・」
「そんな子供みたいな口実で・・・これはもう確実なんじゃないかしら?」

「そ、そっかぁなぁ・・・もう小久保くんったら・・・えへへ」
「「・・・え?」」

それまで流れていた和やかな空気がリンコの一言によって固まった。
その発言をしたリンコ自身は今だ顔を紅潮させ自分の世界から戻ってはいないが。

「・・・ちょっとまってリンコちゃん」
「その一緒にライヴに行った男の子ってもしかして・・・」
「えへへ・・・うん、小久保だよ」
「で、でもさっき同じ高校の子って!」
「あたしと小久保くん、同じ高校だよ?」

そうなのである
中学時代から天然天然と頭の弱い子扱いされていた的山リンコ
そしてその彼女に対してツッコミをいれていた小久保マサヒコ
相反する役割のこの二人はなんだかんだ成績のレベルが近かったため進学先が同じであった。

「そういえばそうだったわね・・・っていうか天野さんあなた告白したんじゃなかったの!?」
「え、し、してないけど・・・」
「で、でも!小久保君の受験日に二人で手を繋いでたってお姉様が・・・!」
「あれは・・・単純に手袋失敗した慰めだったっていう・・・」
「?よくわからないけど・・・そこで終わっちゃうあなたもあなただけど、どんだけ馬鹿鈍いのあの男は・・・」
「そっかぁ・・・小久保くんあたしのこと・・・」
「ちょ、ちょっと待ってリンコちゃん!」
「そ、そうよ!やっぱり一緒に遊び行くくらいそんな珍しい事じゃ・・・!」

二人の前半の押しによってすっかりその気になってしまったリンコを慌てて二人が止めに入る。

「でもさっき二人ともさっきは・・・」
「いや、まぁ、でも、そんな珍しい事でもないかなぁって!」
「そ、そうそう!それに小久保くんでしょ?中学校から仲良かったじゃない?」
「それに!若田部さんなんかアメリカにいたんだからもっとすごい事とかあったんじゃないのかな!?」
「え!?あ、あたし!?」

予想外の流れで話を振られて焦るアヤナ
だが話を逸らそうと必死なミサキはそんなアヤナを気にする事なくその話題に突っ込む
リンコも話が逸れてきた事とアヤナのアメリカでの生活に興味が沸き好奇心溢れる眼差しをアヤナに向ける。

「あ・・・あたしは・・・そんなの別に・・・」
「でもアヤナちゃん綺麗だしモテそう〜」
「向こうでアタックとかされたりしなかったの?」
「・・・まぁないわけじゃないけど、どうも積極的すぎて肌に合わないっていうか」
「わーやっぱりあるんだーアヤナちゃんすごーい!」
「べ、別にすごくなんかないわよ、それにどいつもこいつも軽いというかナンパというか・・・」
「ふーん、そうなんだ?じゃあ彼氏とかはつくらなかったんだ?」
「まぁ、そういうのは特にいなかったわ」

へぇー、とリンコとミサキは相槌をうつ。
なんだかんだ貞操観念は強く持っているとは思ったが、
頭脳明晰で容姿端麗、そして家事全般をこなせる才女である若田部アヤナにそういった話がないのがやや意外であった。

「アヤナちゃんってどんな人がタイプなの??」
「え、そうねぇ・・・特にこれといってそういうのはないけど軽い人は嫌かしら、頭も性格も」
「へぇ、やっぱり誠実な人ってこと?」
「そうね、しいていえばあんまり男過ぎないのがいいわ、あたし暑苦しいの苦手だし」
「そっかぁ、小久保くんみたいな人がいいの?」
「そうね、なんだかんだ彼が一番あたしの好みにちか・・・って何を言わせるの的山さん!!」
「・・・若田部さん?」

リンコの(無意識による)誘導尋問に乗ってしまったアヤナの言葉でミサキの背後から炎のような闘気が放出される。

「な、何よ・・・そもそもあなたが中学の頃からちゃんとしてないから!」
「ち、中学からじゃないもん!もっとちっちゃい頃からだもん!!」
「なお悪いわよ!!」
「うう・・・」
「アヤナちゃんも小久保くんの事好きなの?」
「正直ちょっと気になってたっていうか・・・って的山さん!」
「やっぱり・・・」
「な、なによやっぱりって!」

アヤナは照れなのか先程のリンコに勝るとも劣らない程に顔を真っ赤にし、
リンコはわざとなのか無意識なのか・・・間違いなく後者だろうが場の空気を読まない誘導尋問を繰り返す。
それによってミサキはミサキで想い人に対するアヤナの隠された気持ちを知ってしまい、罪作りな想い人に対してジェラシーの炎を燃え上がらせる

結果的に話を逸らす前よりも場は収集のつかない状況となってしまったのだった。

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