「んッ……はぁッ、いい……」
ナツミが悶えている。初めて見る、切なげな、女の顔で。
「あッ……いい……そこ、もっと……」
"ちゅッ……かぷッ"
「あ……ダメ……噛まないで……シンジ君、跡が残っちゃう」
城島君が、ナツミの首筋にキスをして……甘噛みした。
言葉では嫌がりながら、ナツミはひどく甘い表情をしている。
城島君はそのままナツミの胸を揉みしだきながら、スカートの中を掻き回している。
「うん……あッ……シンジ君……」
"ごくッ"
思わず唾を飲み込んで、それが実際よりずっと大きな音がしたような気がして私は慌てた。
(城島君…………ナツミ……)
私は、生まれて初めて、覗きなんて行為をしていた。
―――――それも、親友のナツミと友達の城島君が、しているところを。

その日は部活が結構遅くて……稽古を通しでやって、終わる頃には人も少なかったから、
私は一人で舞台関係の装置を旧体育倉庫に運ぶ最中だった。
そこは最近演劇部の倉庫に決定した所で、それまでどこの部活にも使われずに放置されていた。
なにせグランドからも体育館からも結構遠い上にボロボロなので、
誰からも半ば忘れ去られていたのを顧問の緒方先生が強引に演劇部の物にしたのだが、
古くて遠くて不便だというので部員からは大不評の施設で―――
いつの間にか副部長である私が主にここの管理をすることになってしまっていた。
まあ、貧乏くじを引かされたというわけだ。
もう日もすっかり暮れてしまい、元々真昼でも人通りの少ないこのあたりだから、
元々怖がりの私は少し気味の悪い思いを抱きながら倉庫に向かっていた。
そしたら………声が聞こえた。驚いて、最初は飛び上がった私だったけど……

「はあ……あっ………」
そう、そこで私が見たのは城島君とナツミが……倉庫の中で、エッチしているところだった。
「ナツミ……ブラ、脱がすよ?」
「うん……」
"する"
城島君がナツミのブラをとる。形が良くて大きなナツミの胸が露わになる。
体育の時間の前の着替えのときとかにふざけて下着の上から触りあいっことかしたことがあるけど、
生のナツミの胸は本当に、すごく……キレイだった。
城島君が両手でそのナツミの胸を、激しくこねるように揉む。
ぷるり、としたナツミの胸が城島君の手の動きに従って形を変える。
「あッ……くあ……触って……もっと、シンジ君……」
「ナツミ、声おっきいよ……聞かれちゃうって………」
「だって……シンジくぅん……」
潤んだ目で、ナツミが城島君を見つめる。普段なら、絶対誰にも見せない顔で。
ふたりが付き合っている、ってのは私もなんとなくだけど気付いていた。
それまでの、ただの仲の良い友達どうしっていう感じからやっぱり空気が違うっていうか……
ふとしたときに幸せそうに微笑みあうナツミと城島君の間には、
穏やかな愛情みたいなものが感じられたから。
(新井君はそんなことも気付かずに相変わらずナツミにボコボコにされていたけど)
でも、今私が見つめているのはそんないつもの教室で見ていたほんわかとしたふたりじゃなくて、
まるで見知らぬ人のような表情で激しく求め合うふたりだった。
「あッ……ねえ……お願い……シンジ君……」
「……欲しいの?ナツミ……」
「うん……お願い……シンジくうん……」
「なにが欲しいのか、言って……」
「欲しいよお……シンジ君のおちんちん……」
「……じゃあ………」
城島君が学生服を脱ぐ。トランクスをずらすと、中からすっかり大きくなったアレが出てきた。
§


(!!うわぁ…………城島君って………あんなボ――ッとしている風に見えて……)
前カレのより、全然大きかった。初めてアレをみたとき、
グロテスクっていうよりなんだかマヌケなモノに見えたけど……城島君のは、すごく……
"じゅ……"
(え?わ、私……)
股間から、なにか湿った感じがして慌てた。
(嘘……そんな……濡れちゃったの?……)
そう、城島君とナツミのエッチを見ながら……私は、濡れ始めていた。
震える指でそこに添えると、明らかに熱を帯びていた。
(あ……違う……私は、そんないけない子じゃない……)
だけど私のそんな思いとは裏腹に、
私の指はショーツの中に入ると自分の意志を持った別の生き物のようにそこを撫で始めていた。
くちゅくちゅ、といやらしい水音が私のあそこから漏れる。
友達から聞いてオナニーってのを試したことはあるけど、そのときは全然良くなかったのに……
今私はごく当たり前のようにあそこをいじりながら体の芯まで痺れるような感覚で満たされていた。
(あ………はぁ……ダメ……城島君とナツミのえっちを見ながら、こんなことしちゃ、ダメ……私)
ナツミが床の上でよつんばいになると、後ろから城島君が貫いた。
"ず……"
「あ!あああああッ!いい……いい……」
「ちょ、ちょっとナツミ……挿れただけなのに、そんなに締め付けたら俺……」
「は……はぁああ ・ ・ ・ ・ だ、だって……シンジ君の、すっごく大きくて……」
「う……うわ……ダメだって、そんな腰動かすなよ」
「あんッ……うふ……ねえ、シンジ君?気持良い?私の中……」
「あ、ああ……すごく……良いよ、ナツミ……」
「じゃあ……お願い……」
「うん……」
"ぐッ、ずぷッ、ズッ"
「あ……中で……お……きくなって……あ!そこ……当たってる……ア!イイ… のぉ」
「すごいよ、ナツミ……お前の奥、びくびく動いて……あ、い、生きてるみたいに動いて……」
「気持ち……あッ、い……シンジ君……シンジ君」
「ナツミ……俺……もう、このままいっちゃうよ……」
「あッ……私も……イク……のぉッ!あああッ!」
(あ……ああッ!ダメ……私も……いく……イクぅ!!!!)
体中が震える。頭の裏が痺れる。瞼の裏で鋭い光が走る。
生まれて初めて……前カレとのエッチなんて痛いだけだったし、
オナニーでも一回もイッたこともなかったのに……私は、初めて「イク」っていうのを体験した。

「おっはよ〜〜〜ケイ!」
「あ……、おは……よう、ナツミ」
次の日、いつものとおり元気良く挨拶してくるナツミ。私は少しぎこちなくそれに答える。
「どうしたの?私の顔になんかついてる、ケイ?」
「う……ううん、ゴメン……なんでも……ないの」
「?元気ないね……風邪とか?」
ナツミが少し心配そうな表情になって、私のおでこに手をつける。
……優しい。そう、ナツミは優しくて美人で性格もさっぱりしててしっかりものでおまけに強くて……
下級生の女子の間で、ファンクラブがあるって噂があるくらい男女問わずに人気があった。
私も一年の頃から友達だけど、ずっと、ずっと……大好きだった。
でも………昨日の、あれを思い出すと、体の芯から火照ってしまいそうになっていた。
「う〜〜ん、顔も赤いしなんだか熱っぽいよ、ケイ?今日休んだ方が……」
「あ……だ、大丈夫……ゴメン、ナツミ……ちょっと昨日寝不足で……」
そんなことを考えながらちょっとボ―ッとしてたら、ナツミが本気で心配してきたんで慌ててしまった。
「そうなの?でも無理しちゃダメだよ?ケイは真面目すぎるんだから……」
とてもじゃないけど、昨日あなた達を見てオナニーしてましたなんて言えなかった。
……それに、寝不足の原因は……その、夜も……したからなんだけど。
それも、何回も、何回も………
§

「お〜〜〜い、今岡ぁ、わりい、ココなんだけど……」
「もう……宿題くらいキチンとやってこないとダメじゃない、城島君……」
教室では、普段通りのふたりだった。確かに、以前より仲の良い感じだけど……
それでも、ふたりが付き合っているってのに気付いているのはクラスで私くらいだろう。
(………でも)
ナツミは城島君のドコが良かったんだろう、と私は思っていた。
確かに優しそうだけど……だってナツミは本当にもてるのだ。
去年の卒業式のときも何人かの先輩に告白されてるのを見てるし、
同級生に告白されたことだって一回や二回じゃないはずだ。
(?………どこが、良かったんだろう……)
そんなことを考えながら、城島君をじ――――っと見ていたら、
「?木佐貫、どったの?」
「わ!う、ううん……なんでもないの……」
突然彼に声をかけられて、また慌ててしまう私。
……ダメだ、あんなことがあったせいか今日は思いっきりキョドリまくってしまっている。
「あ〜〜今日ね、ちょっと調子悪いみたいなんだ、ケイ」
「あ……そうなのか、大丈夫?木佐貫」
「う……うん、城島君……」
ちょっと心配そうな顔をする城島君。……やっぱり優しい。それに………
(ふうん……でも、こうして見ると……)
普段そんな風に意識してなかった、っていうか私が全然男として見てなかったんだけど……
城島君って顔立ちは結構整ってるし、声も低めで男っぽい。
昨日見た感じだと、裸も案外筋肉質で……その、ソフトマッチョな感じっていうか……
それに……エッチも上手そうだし……もしかして、ナツミもそういうところが良くて……
(※!@?な、なによ、「ナツミも」って……「も」って……)
「……?なあ、本当に大丈夫か、木佐貫?お前赤くなったりブツブツ独り言言ったり……」
「察してやれよ、シンジ。きっと木佐貫、あの日だから……」
「カズヤあああああ!!!!!!!!!!」
"ドシャッ、ベッキ、ブシャアアアアァァァァァ!!!!"
私たちの目の前でいつもどおり新井君の公開処刑が始まる。
すっ、と城島君が私の前に立って目隠ししてくれた。
「こういう怖いのダメだったよな、木佐貫?」
「……ゴメンね、城島君……」
「いいんだけど……はは、しかしカズヤも懲りねえっつーか……」
そう言いながら、苦笑いする城島君。……やだ、本当に優しくて可愛い。
ちょっと気になりかけてきたじゃない……。
「お〜い、今岡、木佐貫の目もあるからそんぐらいで……
って、カズヤもう原型とどめてねーじゃん……しょうがねえな……」
「あ、ごめ〜〜〜ん、ケイ」
爽やかな笑顔のナツミだけど、その足下では新井君が血だるまになっているわけで。
「お〜〜〜い、授業始まるぞ〜〜〜」
小宮山先生が教室に入ってきて、科学の授業が始まった。席に着く私たち。
……でもいつも不思議なんだけど、
さっきまでほとんど再起不能なくらいボコボコにされていた新井君は、
なぜ当たり前のようにケロッとした顔で席に着けるんだろう?
小宮山先生も科学教師なら、彼の回復能力を解析すべきだと思うんだけど。
相変わらず先生の授業は下ネタ満載で始まって下ネタで終わるのだった。
「じゃあ金曜日は井川君からかけるから、しっかり予習しておくように。
あと顔にかけるのは精液だけにしておくように」
………しかしなんでこの人、教師になったんだろう。
それはともかく、放課後はいつも通り部活に行った。
中間試験が近いせいもあってか、今日も集まりが悪い。
そして………やっぱり、舞台装置を片付けるのは私の役割になってしまうのだった。
(……まさか、今日もってことは……だ、大丈夫だよ……ね?)
誰に言うでもなく、呟いていた。
§


「はぁ………あ……はぁん……シンジく………ん」
「もう?………すげえよ、ナツミ……下、ぐっちょぐっちょ……」
「ヤダ……そんなこと言っちゃ、やだぁ………」
「へへ………ナツミってさ、乳首触ると一番反応するよな?感じるんだ?」
「や……そんなこと、ない……もん……」
「そう?じゃあ……」
"きゅッ……"
「あ…………あああッ!」
「へへへ……ほら、そんなすげえ反応してる……やっぱココ、弱いんだろ?」
「あん……やだ。シンジ君、なんでそんなイジワルするのぉ……」
「お前がそんなエッチな顔で可愛い声出すからだよ……なあ、ナツミ?そろそろ俺のも……」
「うん……」
ナツミが城島君の学生服のファスナーを下ろす。中から城島君のアレがまた顔を出す。
なんだか……昨日より、ずっとおっきく感じられるのは気のせいなのかな?
"ぷちゅ……"
ナツミが、一気に城島君のを口に含んだ。
普段のしっかりもので強気なナツミが嘘みたいに……うっとりと、目もうるうるさせちゃって。
「んッ……ふッ、ンぐ……ふ…あ……」
"ずッ……じゅぶ。じゅ……ずっ"
かげになって良く見えないけど、ナツミが私の想像以上にフェラチオ上手なのは分った。
口いっぱいに頬張りながら、涙目になって城島君を見上げている。
……可愛かった。すごく。女の私が見ても、キレイだった。
"ジュう……"
(あ……やだ、私、また………)
………もう認めてしまおう。私は、今日ここに来るとき、少し期待していた。
ナツミと城島君がエッチしているんじゃないか、って。
指をショーツの中に入れる。そこはやっぱりしっとりと熱く、濡れ始めていた。
(あ……あ……)
"くちゅ……ちゅく"
私の中を指が泳ぐ。体が熱くなる。震える。ぐるぐる頭の中が回る。
(ダメ……のぞきながらこんなことしちゃ……見つかったら、ヘンな子だと思われちゃう……)
そんな理性の声が全く聞こえないかのように、私の指はひたすら私の中を踊っていた。
"つぷ………"
ようやく、ナツミが城島君のを口から離す。
「ねえ……シンジ君、もう……我慢できない、私。お願い、ちょうだい……」
「ああ……」
城島君がコンドームの包みを取り出して破ると、それを自分のにつけた。
(あ……あ……おっきい……城島君の……)
城島君が私を貫くのを想像する。私が優しく城島君のものを口に含むのを思い描く。
「いくよ……ナツミ……」
"ず………"
「んッ……あ……はあああぁぁ」
「入ったよ……ナツミ」
「あッ……熱い……シンジ君の……おっきくて……熱いぃ……」
「う……熱いのは……ナツミの、体と……なかだよ……あ……」
ナツミがいやらしい顔で乱れる。城島君が切なげな声で喘ぐ。
(あ……いい……私も……いい)
二人が体を離すのを惜しむようにお互いの体を絡め合う。舌先をもつれさせるようにキスをする。
ナツミが彼の上に乗って縦横斜めに腰を振る。二人のつながったところからエッチな音が漏れる。
「ゴメン、俺…………そろそろ……いくよ、ナツミ……」
「………んっ、アッ、はああァ……私ももう……いい……来て、シンジ君…」
「あッ……ああッ!!!」
(ああッ!はあああッ!ナツミ……城島君ッ!!私も……私も、ああッ!!!)
ふたりが達したのとほとんど同時に、私も達していた。
指の股にべっとりとエッチな液がついていた。腰が抜けちゃうかと思うくらい、気持ちよかった。
§

それからも………私は覗きを繰り返すようになった。
城島君とナツミがここでするのは風紀委員のある日って決めているらしく、
水曜日と木曜日の七時くらいになると、旧体育倉庫に来て………
(ダメ………ダメだよ、こんなの……今日で、終わりにしないと……)
ここに来る前は、いつもそう思っているのに。止めようと思っているのに。
私は、その日になるといつの間にかそこに足を運んでいるのだった。

「あッ……はああッ……、シンジ君……そこ、いい……」
「ナツミ……こう?」
「あぐッ、そう。そこ………ああ……」
(あ……あッ、ナツミ……城島君……いい…私も……)
そして、二人の激しいセックスを覗き見しながら、オナニーして果てるのが日課になっていた。
―――ふたりのセックスを見ていると―――
普段は頼れるお姉さんタイプのナツミが、実は結構甘えんぼなMっぽいセックスをするのだとか、
ちょっと頼りなさそうな城島君がセックスの時はムチャクチャ激しくてリードするタイプなのだとか……
普段教室では見せない、意外なふたりの顔が見れてそれでまた私は興奮してしまうのだった。

みんなの知らないふたりを、私だけが知っている。
みんなの知らないエッチなふたりを、私だけが………

そう思いながらするオナニーは、今までに感じたことが無いくらいのものすごい快感で―――
私はそれを繰り返しながら、いつしか自分が病みつきになり始めていることに気付いていた。

「はぁ………シンジ君……いい……そこ、擦れて……」
「こう?ナツミ……」
その日も、私はふたりのセックスを覗いていた。
(……ええと……あれって確か、松ぼっくりじゃなくて……そうだ、松葉崩しって……)
ふたりが、折り重なるような体位のまま交わっている。
「あ……はぁッ……そう……お願い……あッ、シンジ君、動かないで……」
「そう言ってもさ、ナツミ……お前の中、熱くって……溶けちゃいそうだから……」
「んっ……だってえ、シンジ君……」
甘えるような表情で、ナツミが城島君を見つめる。女の私から見ても、すごく色っぽい。
(ナツミ………こんな表情を、するんだ……)
あの日以来、何度もふたりのセックスを見てきたけど、
こんなにとろけるような顔をしたナツミは初めてだった。
………違う。私の前だけじゃない。友達の前でも、誰の前でも……
こんな表情を、ナツミは見せたことがないはずだ。ナツミのことを、私は……私は……
(…………………え?)
どきり、とした。城島君に、嫉妬していた。
(…………?違う、どっちに………)
親友のナツミをとったから?それとも、城島君のことが気になりかけているから?
でも、それでナツミに嫉妬するのは分るけど、私は、なんで城島君に………

「ねえ……ケイ?そこ、人が来たりしたら危ないよ?」
「!!!!!えッ?????」

そんなことを考えながら、混乱してしまっていた私だったけど………
気が付くと、ドアの手前……私のすぐ目の前に、ナツミが来ていた。
「??!?あ、あの……な、ナツミ………」
「ホラ……いいから、入って……」
いつの間にか下着をつけて軽く制服を羽織ったナツミは、
私の手を取ると倉庫の中に強引に引き入れた。
「あの……ナツミ、あの……私……ゴメン……」
「いいからいいから。いつも私たちのしてるの見てたでしょ、ケイ?」
!!!!!!!!!!バレてたんだ!
§


「あ、あれは……えっと、演劇部の片づけにきたらね、あの……あなたたちが……」
「ふふ……でも、何回も……何回も見てたよね、ケイ?そうでしょ?」
「あ…………」
責めるような感じじゃなく、子供がイタズラしたのをからかうような口調だった。
それが全部事実なものだから、私は真っ赤になって言葉を失うしかなかった。
「それくらいにしとけって、ナツミ。木佐貫が可哀想だろ」
「いいから……うふ……ねえ、ケイ?怒ってなんてないから聞いてもいい?」
無言で私は頷く。
「ケイ………シンジ君のこと、好きなの?」
「!………私は…………私は……」
好きだった。あのことがあってから、ここでのふたりのセックスを覗き見るようになってから……
いつの間にか、私は教室で城島君のことを目で追うようになっていた。
自分の気持ちに気付いた私は、ナツミの言葉にこくり、とまた無言で頷き返す。
(でも………違う、それだけじゃ……)
「ホラ〜〜〜、やっぱそうだったじゃない、シンジ君?」
「え?」
「………そうだったの、木佐貫?」
「ははは、ゴメンね、ケイ。だってシンジ君たら、
ケイは自分じゃなくて私の方を見てるなんて言うから……」
「いや、だって木佐貫さ、なんだか俺じゃなくてナツミの方ばっか見てる感じだったから……」
胸が、痛かった。城島君には………分っていたんだ。この人は……鈍そうに見えて……
「違うの…………ナツミ」
「?どうしたの、ケイ?」
「私……私、城島君のことも好きだけど……ナツミのことも、好きなの」
「………え?」
ついに、言ってしまった。今まで喉につかえていたなにかを吐き出すように……私は、話した。
「どうしよう、って思ってたの。私……城島君のことが気になっていたのもほんとうだけど、
ナツミのこともずっと……ずっと、好きになってた。ふたりがするのを見て……
すごく……すごく、ドキドキして……ふたりとも好きで……城島君が好きで、ナツミも好きで……
どうしよう、私、ヘンなのかな……私、おかしいのかな……」
止まらなかった。涙を流しながら、話し続けるしかなかった。
"ちゅ"
「え?」
ナツミが、優しく私にキスしてきた。
「私も、好きだよ?ケイ」
「ナツミ……」
にっこりと微笑むナツミ。女の子にキスされたのは勿論初めてだったけど、全然嫌じゃなかった。
「俺も……俺たちも、木佐貫が好きだ」
そう言うと、城島君がふわり、と私の頭を撫でる。
「俺らさ、木佐貫が覗いてるのに気付いてたんだけど、でもなんか……嫌じゃなくて。
それどころか、見られてる、ってのでスゲー興奮したりして、その……良かったりしたんだ。
なんていうか……もしかして、俺らって変態なのかなって思ったりして……」
「ふふ……最初はさ、すごく驚いたんだけどね。あの清純派でお姫様のケイが、
私たちのセックスを覗きながらひとりエッチしてるなんて、って思って」
「あ……それも、バレてたの?」
かあああっ、と恥ずかしさで身が縮まる。体が熱くなる。
「俺はでもさ、やっぱり木佐貫はナツミのコトを見てるんじゃないかって……」
「私はシンジ君のことを好きなんじゃないかって思ってて……でも、そっか。
ケイは私のこともシンジ君のことも好きなんだ?ふふ、私たちのセックス、気持ち良さそうだった?」
「……う、うん」
「うふ、可愛い、ケイ……」
ナツミが私をぎゅっと抱きしめる。さっきまで城島君としていたせいか、
ほんのり汗ばんだ匂いと、レモンっぽいフレグランスの匂いが混じって、すごく良い香りがした。
「ねえ?ケイ……じゃあさ、三人で……してみよっか?」
「え?」
§


「お、おいナツミ!いくらなんでもソレは………」
「い・い・の。うふ……ケイ?」
"ちゅ……"
ナツミがもう一回キスをしてくる。うっとりとするくらい、柔らかい感触。
「ふふ、こんなこと言いながらさ〜〜、シンジ君ったら、
最近ケイのことが気になってしょうがないなんて私の前で言ったりしてるのよ?」
「!!!!!」
「※!&!!だ、だからナツミぃ!!!!」
「いいじゃん、ホントのことなんだし。失礼だよね〜〜?こんな可愛い恋人がいるってのに、
無神経に他のコが気になるなんて堂々と私の前で言うんだからさ〜〜〜」
「あ、あれは……その……」
楽しげに、ナツミが城島君を責める。でもそれは私に対する嫌味とかじゃなく……
純粋に、恋人同士がじゃれあってるみたいな、なんとなく微笑ましい光景だった。
「だからね、ケイ?私は前からケイのことが大好きだったし……
シンジ君も好きだって話なんだから、なにも問題無いと思わない?」
「……あのな、問題は大ありだと……」
「いいの!もう、うるさいこと言わないで……はい、シンジ君?」
くい、とナツミが私の顎の先をつまんでシンジ君に差し出す。
「ケイってさ、実は……一時期軽い男性恐怖症だったんだ」
「……え?そ、そうなの?」
「………うん」
少し迷ったけど……私は頷いた。
それは、親友のナツミにしか話したことがなかったけど……紛れもない事実だった.。
「前に付き合ってたヤローがね、キスもセックスも全部自分のしたいようにやるっていう、
すごい自己チュー野郎だったみたいなのよ。おまけに束縛もキツかったみたいでね。
ホラ、ケイって真面目で大人しいから、そいつの言いなりになって……
結局嫌になって別れたらしいんだけど、一時期男の子と話すのさえダメになってたんだから」
……二年の頃、付き合ってた演劇部の先輩のことだ。
部活で一緒にいる分には、そんな強引なところも男らしく思えたし、
少なくともふたりっきりでいる分には――特に、セックスをする前は優しくしてくれた。
けど、セックスが終わってしまうと面倒くさそうに冷たい目を向けるところや……
自分が合コンに行ったりするのは平気なのに、
私がナツミと遊びに行くのにさえいちいち報告を義務づけたりだとか。
そんな自分勝手なところに疲れて別れてしまったのだった。
それ以来、確かに私は恋愛に臆病になってしまったのかもしれない。
「………そうだったんだ、木佐貫」
「だからね、シンジ君と私がケイに教えてあげようよ?恋愛は楽しいってことや、
ホントはキスやセックスってすごく気持ち良いってことを」
「でも、それとこれは……」
「いいから!はい、ケイ……シンジ君、結構キス上手だから任せて………」
ためらったけど、ナツミの言葉に従って唇を突き出して城島君を待つ。
迷っている城島君だけど、私は目を閉じて彼が来るのを待つ。
"ちゅ"
いくらか時間が空いたけど、さっきのナツミの唇とは違う感触が私の唇に触れる。
少し冷たくて、固くて、でも心地よい。
"ちゅ……つ"
城島君のものだろう手が私の肩に回され、軽く抱かれる。
彼の唇が私の唇を弱く吸い出す。ちろり、と舌先が私の唇を舐める。
ちょっとくすぐったくて、気持いい。
"ちゅ……んむぅ……"
優しく舌先が私の口の中に入ってくる。舌と舌が絡まる。
彼の薄い舌がゆるやかに私を誘う。一転、貪るような勢いで舌を吸われたとたん、
私のなにかがくにゃり、と溶けたような気がした。
「あ………」
体中から力が抜けて、思わず城島君に体を預けてしまっていた。
§


No Title妹1:郭泰源氏 後編

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