最終更新:ID:QIGMy54DzQ 2008年05月30日(金) 23:12:59履歴
…あの日から数日。
私の足の調子は、だいぶ回復してきた。
でも、まだ足首を強く曲げようとすると激痛が走る。
…この痛みで、私はある事を思いだすのだ。
怪我をしたあの日―。
私は、小久保君に抱きかかえられて帰宅した。
そして…彼と別れた後、私は濱中先生と恋敵になる誓いをたてた。
…そして、そんな事を知る訳も無く、
怪我をした翌日も、小久保君は私のお見舞いに来てくれた。
…天野さんやお姉様達も一緒に。
「早く治して、また一緒に勉強しような」
…帰り際の彼の笑顔や言葉が、目を閉じる度にリフレインする。
「……ふぅ…」
煮え切らない思いがつのり、自然とため息がこぼれ落ちた。
窓から望む景色は、外で降り続く雨で歪んだ車の照明しか確認できない。
もう夜中の1時だというのに、私はなかなか寝付けなかった。
ザアザアと雨の降る音がとても耳障り。
所々で雷鳴が鳴り響き、その都度心臓が飛び出しそうになる。
……でも、今の天気はどこか今の私の心中と似通っていると思うと、親近感が湧いてきた。
何をするでもなく、机の上に置いていた茶色の日記帳を開く。
――書いてあるのは、小久保君の事ばかり。
笑った顔や冷めた顔。
ページをめくり、目を通わせると、それらが浮かび上がっては消えていく。
「…はぁ……」
私は、再びため息を吐いた。
窓に当たった息が、白い煙のような水滴の集まりをガラスに作っている。
「……ん」
何故か、指が勝手に動きだす。
先端が、やけにヒンヤリして気持ちが良い。
曇った部分が、人差し指で徐々に減っていく。
「……あ…」
無意識に書かれた落書き、それは―――。
窓ガラスに私のパジャマ姿が投影される。
顔はトマトみたいに赤く、気のせいか少し挙動不審だった。
「…あ…消えちゃった…」
落書きの方を見返すと、水滴が既に幾分か滴り落ち、もう原型を留めていない。
…空虚だ。そう、私は感じた。
ポッカリ空いた穴がギュッと締まり、狂おしいほど私を苦しめる。
埋められる物は分かっているのだけれど…。
「……きゃあっ!?」
不意に、物凄い轟音と閃光が私を襲った。
目を瞑って、恐怖に耐える。
…どうやら、近くに落ちたようだ。
窓に目を向けると、先ほどよりも雨は強くなっていた。
「…明日は……晴れるかしら…」
見上げた先にある、照る照る坊主と相談。
「きっと‥晴れるよ!!」
‥そう微笑みかけてきたような気がした。
……明日は、小久保君とお姉様の家にワインを届けに行く約束をしている。
だから、なんとしても私達を見守る空は、爽やかな青空であって欲しい。
残された時間は、後僅か。
余裕なんて言葉は、そこに存在しない。
「………いいわ、止むまで待ってあげる…」
私は、勉強机から運んできたイスに座り、窓枠に肘をかけた。
「…小久保君と…楽しみ……」
そんな事を言って、漆黒の空に微笑みかけた。
降り止む気配の無い雨を見つめながら、私は考えることにする。
……これから始まる過酷な闘いの日々の事を。
私の足の調子は、だいぶ回復してきた。
でも、まだ足首を強く曲げようとすると激痛が走る。
…この痛みで、私はある事を思いだすのだ。
怪我をしたあの日―。
私は、小久保君に抱きかかえられて帰宅した。
そして…彼と別れた後、私は濱中先生と恋敵になる誓いをたてた。
…そして、そんな事を知る訳も無く、
怪我をした翌日も、小久保君は私のお見舞いに来てくれた。
…天野さんやお姉様達も一緒に。
「早く治して、また一緒に勉強しような」
…帰り際の彼の笑顔や言葉が、目を閉じる度にリフレインする。
「……ふぅ…」
煮え切らない思いがつのり、自然とため息がこぼれ落ちた。
窓から望む景色は、外で降り続く雨で歪んだ車の照明しか確認できない。
もう夜中の1時だというのに、私はなかなか寝付けなかった。
ザアザアと雨の降る音がとても耳障り。
所々で雷鳴が鳴り響き、その都度心臓が飛び出しそうになる。
……でも、今の天気はどこか今の私の心中と似通っていると思うと、親近感が湧いてきた。
何をするでもなく、机の上に置いていた茶色の日記帳を開く。
――書いてあるのは、小久保君の事ばかり。
笑った顔や冷めた顔。
ページをめくり、目を通わせると、それらが浮かび上がっては消えていく。
「…はぁ……」
私は、再びため息を吐いた。
窓に当たった息が、白い煙のような水滴の集まりをガラスに作っている。
「……ん」
何故か、指が勝手に動きだす。
先端が、やけにヒンヤリして気持ちが良い。
曇った部分が、人差し指で徐々に減っていく。
「……あ…」
無意識に書かれた落書き、それは―――。
窓ガラスに私のパジャマ姿が投影される。
顔はトマトみたいに赤く、気のせいか少し挙動不審だった。
「…あ…消えちゃった…」
落書きの方を見返すと、水滴が既に幾分か滴り落ち、もう原型を留めていない。
…空虚だ。そう、私は感じた。
ポッカリ空いた穴がギュッと締まり、狂おしいほど私を苦しめる。
埋められる物は分かっているのだけれど…。
「……きゃあっ!?」
不意に、物凄い轟音と閃光が私を襲った。
目を瞑って、恐怖に耐える。
…どうやら、近くに落ちたようだ。
窓に目を向けると、先ほどよりも雨は強くなっていた。
「…明日は……晴れるかしら…」
見上げた先にある、照る照る坊主と相談。
「きっと‥晴れるよ!!」
‥そう微笑みかけてきたような気がした。
……明日は、小久保君とお姉様の家にワインを届けに行く約束をしている。
だから、なんとしても私達を見守る空は、爽やかな青空であって欲しい。
残された時間は、後僅か。
余裕なんて言葉は、そこに存在しない。
「………いいわ、止むまで待ってあげる…」
私は、勉強机から運んできたイスに座り、窓枠に肘をかけた。
「…小久保君と…楽しみ……」
そんな事を言って、漆黒の空に微笑みかけた。
降り止む気配の無い雨を見つめながら、私は考えることにする。
……これから始まる過酷な闘いの日々の事を。
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