2月3日(節分)編

「鬼は外〜! 福はうち〜!」
「カモーンラック! ゲットアウトオーガ!」
「なんすかそれは?」
「意味もなく英語にしてみたわけよ」
「せんでください」


今日は2月3日。
節分だ。
そんなわけで小久保家では豆まきの真っ最中。
一人息子たるマサヒコと、その元家庭教師にして近頃めっきりマサヒコの部屋に寄生中のアイ。
その友人たるリョーコとマサヒコマザーの四人で。
父は出張中で不在だ。
御都合主義とかゆーな。こんにゃろ。
「でも、ちゃんと炒り豆を投げるんですね、ここでは」
「そうね。最近だと落花生を殻ごと投げるなんてとこも多いみたいなのにね」
「落花生なんて投げるんですか? なんかそれって情緒が……」
「後々掃除が大変でしょ?」
マサヒコの言葉にふひ〜と鼻から息を吐きつつ、ちょっと小馬鹿にしたような物言いをするリョーコ。
「これだから実家暮らしは……あ〜やだやだ、苦労を知らないってやだわねぇ」
「まあ確かにそうですね」
特に怒るでもなく、ありのまま受け入れるマサヒコの様子に、
リョーコは不満顔でマサヒコの肩に腕を回す。
「ちょっとマサ、怒るとか不機嫌になるとかしなさいよ。つまんないでしょ?」
「んなこといわれたって中村さんの傍若無人っぷりは今に始まったことじゃないわけですし。はっきり言ってもう慣れました」
「……ふ〜ん」
マサヒコの言葉にリョーコは少しばかりの愕と少しばかりの悦を覚えた。
つねに自分勝手に振舞うリョーコは敬遠されることが多々あるからだ。
そんなリョーコの行状を慣れたと言って受け入れてくれるこの年下の友人の存在。
「友こそがかけがえの無い宝、か」
「は? なんすか?」
「何でも無いわよ。ほらほら、豆まきなさい……あんたも食べてばっかいないで」
「ふぇ?」
炒り豆を口一杯にほおばったアイ。
ハムスターみたいでちょっと愛らしい。
「そんな口一杯詰め込んでると詰まらせるわよ」
「んぐんぐ……ぷは。大丈夫ですよ〜」
「……でしょうね」
言い終わるなり再び豆を頬張ろうとしたアイを見てリョーコは苦笑する。
「けど、その辺にしときなさい。メインディッシュはこの後でしょ?」
「はっ! そ、そうでした! え〜っと、じゃあ。鬼は外ー」
手に持った豆を投げる。
「ぐは!」
全弾マサヒコに命中。
マサヒコの後部装甲中破。
「いてて……」
「あはは。隙ありだよ、マサヒコ君」
「後ろからとは卑怯ですよ……といいつつ福はうち!」
「はわっ!」
ぽいっとアイへと豆を投げつけたマサヒコ。
軽く投げたつもりだったのだが。
「痛い……酷いよマサヒコ君……」
なんとアイは顔を手で押さえてプルプルと震え出してしまった!
「す、すいませんアイさん。ちょっと強すぎましたか?」
えらいこっちゃと慌てて駆け寄ったマサヒコ。

「大丈夫ですか?」
「……隙あり!」
「後ろががら空きよマサ!」
罠です!
後ろからも敵が!
「「くらえー!!」」
「ぎゃぁぁ! さんだー!!」
……すごくわかりづらいネタです。
ゴメンナサイ。

さて。
豆まきだか豆合戦だかも終わっていよいよメインディッシュ。
「母さん、今年の恵方ってどっちだっけ?」
「冷蔵庫がある方向よ。ところでマサヒコ、あんたなんか顔が……その赤い点々なに? ジンマシン?」
「弾痕…かな」
「え、男根!?」
「……あ〜いや。なんでもないから」
なんか色々と諦めたマサヒコ。
さっさと太巻きを食べてしまおうと手に取る。

「えっと、無言で全部食べきるんだっけ?」
「そうそう。口を離しちゃダメなんだよ」
「きつそうだなぁ……アイさんなんかは楽勝っぽいけど」
「うん、私楽勝」
両手に太巻きを持って笑顔のアイ。
……両手?
二本食う気か!?
…………な〜んて。
考えてみたら今更驚くこっちゃ無い。
アイなのだから。
むしろ三本食べないことを驚くべきなのかも。
などと詮無いことを考えつつ、満面の笑みで太巻きにかぶりつくアイを横目に見つつ、マサヒコは太巻きにかぶりつく。
「……ねえマサ」
「??」
喋るわけにいかないので目線だけで「どうしました?」とリョーコに問う。
「マサの太巻きもこれぐらいなのかしらん♪」

 ぷふぅ!

「きゃ! ちょ、アイちゃん大丈夫!?」
アイが思いっきり吹いた。
それを見てゲラッゲラ笑い転げるリョーコ。
「あっはははは! アイってばサイッコー!」
そんなリョーコに忍び寄る影。
「あははははは……は?」
マサヒコ。
右手には太巻き。
「マ、マサ?」
マサヒコは太巻きをゆっくり、天へと突き上げ、そして……全力で振り下ろした。
……リョーコの脳天へ。
「ふぎゃ!」
「こ、こらマサヒコ! 食べ物を粗末にしない」
「うるせーうるせー!!」

以上が。
後に小久保家において「マサヒコは反抗期〜太巻きの乱〜」と語り継がれることになる一部始終である。

くだらね〜……

END

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