「かんせ〜い♪」
「は〜い、嬉しいのはわかるがまだ食べるなよ〜。一応これ調理実習なんだからな〜。
それじゃあ各班一つづつ先生のところにもって来いよ〜」
「「「は〜い」」」
各班より持ち寄られた力作を一つ一つ試食する家庭科教師。
見た目、味などを評価してノートにつけていく。
「よ〜し。みんな上手に出来てたぞ〜。後はもう食後のデザートにでもしてくれ〜。
それじゃあ後は片付けが出来た班から解散〜」
そう言って部屋から出ていく。
残った生徒たちはそれぞれの行動をとる。
友達同士で交換して批評したり。
黙々と道具の片づけをしたり。
あるいは、
「おいしく出来てよかったねぇシノちゃん……あれ? シノちゃん?」
友人を探してキョロキョロしたり。


「あ、会長。どうしたんですか? 4時限が終わったらすぐに生徒会室に来いだなんて。
しかもわざわざメールで知らせるなんて。俺、なんかしました?」
「む……その……これだ」
もじもじしながら差し出されたのは先ほどの実習で作ったお菓子。
「カップケーキ、ですか?」
「調理実習で作ったんだ」
「へ〜……」
「……」
「……」
そこでいったん会話が止まる。
「食べたくないのか?」
「はい?」
「たっ、食べたくないのなら無理しなくてもいいんだ! べ、別に津田に食べさせたかったとか、そんな他意はないんだ。
ただ……ただ、見せたかっただけで……だから……そんな……よ、呼び出して悪かったな!」
「OK。落ち着きましょう会長」
シノの肩を手でぽんぽんと叩き、落ち着きかせる。
肩に手をやった瞬間、シノの顔が赤く染まったのは目の錯覚だろう。
「それ、俺が食べていいんですか?」
「う……うん………食べてくれ」
「んじゃ、遠慮なくいただきます」
「(じ〜〜〜)……」
「……あの、見られすぎると食べにくいです」
「む……すまない」
「では改めて……」
「(じ〜〜〜)……」
「………」
もう、無視して食べることにした。

パクっと一口。
「うん、うまい」
「ほんとか!?」
「はい。甘くてふわふわしてて。おいしいですよ」
「ほんとにほんとか?」
「ほんとですって」
「ほんとのほんとにほんとか?」
タカトシは苦笑して、
「じゃあ自分でも確かめてみてくださいよ」
シノ作のおいしいカップケーキを一口かじり、
「ふっ――!」
シノに食べさせてあげる。
手は使わない。
じゃあどうやって食べさせたか?なんて野暮は言いっこなし。
「ほら、おいしいでしょ?」
「……だめだ。これは失敗だ」
「は? どこがですか?」
「だって……これは甘すぎる」
「そうですか? そんなことないと思いますけどねぇ」
「食べてみればわかるさ」
「食べてみればっって……さっきから――!!?」
シノはタカトシからケーキを奪い取り、タカトシと同じ手段で食べさせてあげる。
「……な?」
「たしかに……でも」
「??」
「これは……後を引く甘さです」
「む……そうだ、な」
「と、言うことで。もう少し味わいたいんですけど」
「……少しだけで満足なのか?」
「……満足行くまで食べるとなるとそれなりの覚悟を決めて欲しいんですけど。
いいんですね? 言ったのは会長ですからね。今更「だめ」なんて許しませんからね。それでは遠慮なく」
「ま、まて! やっぱり少し――っん!!」

その後に生徒会室内で何が行なわれたのかを記すってのはそれこそ野暮ってものさね。


END

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