「これは私個人の君へのプレゼントだ。
今年副会長としてがんばってくれたからな」
「ありがとうございます会長」
タカトシが礼を言った瞬間、ヴィイイイ、と。
箱の中から物騒な音が聞こえてきた。
先ほど出島さんからも同じ音がするものをもらったような……。
暗澹たる思いでプレゼントの箱を持っていたタカトシだが、
「え、うそ! な、なんで?」
「??」
シノの様子がおかしい。
驚きと、若干の悲しみが含まれた表情。
タカトシは包みを破り、箱の中のものを確認する。
「?? ケータイ?」
箱の中にあったのは携帯電話。
着信を知らすライトをチカチカ光らせながら振動している。
「あ、えっと……会長、これっていったい??」
プレゼントに携帯電話とはこれいかに?
そもそもタカトシはすでに携帯電話を持っている。
シノはぎゅっと唇をかんでうつむいていたが、やがて顔を上げる。
「私、だけの……」
今にも泣き出しそうな顔だった。
「私だけの、津田との、つながりがほしかったから……」
そういって顔を真っ赤にする。
「なのに」
そういって、またふにゃっと顔をゆがめ、振動を続ける携帯電話に目をやる。
「もう誰かがこの番号を知っているんだな」
「……」
タカトシはしばし絶句し、
「いやいやいや! 違うでしょ会長!!」
言うなり携帯電話を手に取り通話ボタンを押す。
「もしもし、電話番号間違えてませんか?……いえ、津田です。はい、はい……いえ、それでは」
通話を切り、シノに向き直る。
「間違い電話に決まってるじゃないですか」
「そ、そうなのか?」
「そうですよ。いつ俺がこのケータイの番号を人に教える隙がありましたか?
そもそも電話番号自体まだ知りませんし」
「む……言われてみればそうだな」
得心が言った様子で、いつものシノに戻る。
「うむ、つい取り乱してしまったようだな。すまん津田」
「それは別にいいんですけど……会長」
「ん?」
「あの、俺とのつながりがほしかったって……あれはいったいどーいう意味で?」
再びシノの顔がカーッと赤くなり、
「そーいう意味だ!」
起こったようにぷいっと顔を背けてしまった。
でも耳まで真っ赤。恥ずかしくって真っ赤。
タカトシもだいぶ照れたのだが、それでも言わなければいけないことは心得ている。
「ありがとうございます会長。大事にします……それと、番号は誰にも言いませんから」
タカトシの言葉にシノは背を向けたまま、
「当然だ」
満足そうにうなずくのだった。

END

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