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二人で結ぶ赤い糸の続き。



夢かなって思ったけれど、どうやら夢じゃなかったみたいだ。

「おはよう、真ちゃん。元気になった?」
「うーん、ちょっとは回復したかなって感じ。でも、仕事だから」
「無理はしないでね?」
「うん!雪歩、風邪うつらなかった?」
「大丈夫みたい」

次の日、真ちゃんは事務所に顔を出した。
その姿があまりにもいつもどおりで、ああ、昨日のことは夢だったのかな。夢なのに真ちゃんの唇は柔らかかったな、なんて思っていたら。

「……雪歩」
「なに?」
「昨日、さ。ボクの家に、来てくれたよね」

ああ、どうやら夢じゃなかったみたいです。神様ありがとう。
病み上がり、という理由だけじゃなく、真っ赤になった真ちゃんは。

「……夢、じゃなかったんだ」

私と同じこと、考えてくれてたみたいです。
常識じゃ縛れないくらい大きな大きな思いは花開く。
昨日のキスも告白も、片思いのはずが実は両思いでしたっていうのも、全部、夢じゃなかったみたい。

「真ちゃん、私」
「雪歩のこと好きなの、うそじゃないよ。本当だよ。嫌われるのが怖かっただけなんだけど」

真ちゃんも、私みたいに「嫌われるのが怖い」って言うのがあるんだな。
……そういえば、昔、いじめられていたことがあるっていっていたっけ。
なんだか急に胸が締め付けられたから、真ちゃんをぎゅ、と抱きしめた。

「私も真ちゃんの事好きだよ」
「ボクも」

なんだか、今までのことが嘘みたいだね。
そのままの格好で笑い合っていたら、なぜか小鳥さんがカメラをこちらに向けていた。



ソファがいつもよりふわふわしているように感じるのは、私の心がまだ夢の中にまどろんでいるからなのだろうか。
ぼんやりと温かいお茶を飲む。おいしい。

「ねえ、雪歩」
「なあに、春香ちゃん」
「雪歩って好きな人いるの?」

隣で私の出したお茶を飲んでいた真ちゃんが、勢いよくむせた。
噴出す、という最悪の事態は免れたようだけど、苦しそうだ。背中をさする。

「……へええん」
「え、何それ暗号?」
「なんで!?そうじゃなくって、雪歩の好きな人!」

春香ちゃんは、恋の話によく食いつくなあ。そんなところも「普通の女子高生」って奴なんだろうか。
最近は自ら普通の女子高生を名乗りだした春香ちゃんは、ニコニコ(否、ニヤニヤ)している。

「えっと、……いる、って言ったらどうする?」
「真でしょ、って言う」

……。……え?

「そっかあ。真の反応を見る限り、くっついたんだね。あっ律子さん!今日は赤飯ですよ、赤飯!」
「はいはい、からかわないの」
「からかってませんよう」

そういえば、律子さん私を一人にしてくれたっけ。
……じゃなくって!

「しってたの!?」
「知らないと思ってたの!?」

……何だ、二人でもやもやしてただけなんじゃないか。
真ちゃんのほうを向くと、真っ赤な顔で困っていたから、とりあえず笑っておいた。
バレバレって言うか、むしろ、お互いだけが知らなかっただけ?だったらしい。

どうしましょう、なんだかとっても恥ずかしいです。
でも悪い気はしないなあ。なんて。
なんだかんだいって嬉しそうな顔をしている春香ちゃんに、私と真ちゃんは、にっこり笑った。


二人の小指の間にある赤い糸は、今、確かに二人の手で結びなおされた。

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