当wikiは年齢制限のあるページです。未成年の方は閲覧をご遠慮下さい。

「はぁぁぁ……」
「ど、どうしたのよ、美希!?」
「あっ、律子……さん。
 前に言われたように真くんに対して引いてみてるんだけど
 真くんに冷たくするのってすごくつらいの……」
「引いてみるって……あー、あの時の」

そういえば、そんな事を言った気もするわ。

「って、冷たくするってどういう事?」
「だって、いつも押してばかりだから引いてみろって事はいつもと逆の態度を示せば良いんだよね?」
「いや、だからって冷たくするまでやるのは……」

ちょっとやり過ぎじゃないかしら。

「律子がそうしろって言ったんだよ!?」
「律子”さん”!
 大体、私は引いてみろって言っただけで冷たくしろとは言ってないわよ」
「むー、じゃあどうすれば良かったの?」
「それは……ほら、あんたいつもは真に抱き着いてばかりだったでしょ。
 そうじゃなくて、普通に話すだけでも十分引いた事になるわよ」

それまでがそれまでだけに、普通に話すだけでも引いてる事になるわよね。

「え、それだけで良かったの?
 じゃあ、ミキは……。
 はわわ、どうしよう。ミキ、真くんにいっぱいひどいことしちゃったの!」
「どうしようって、そんな事言われても知らないわよ……」
「元はといえば、律子がミキにちゃんと言わないからなの!
 だから律子もミキと真くんの仲直りの作戦を考えて!」
「勘違いしたのは、あんたの勝手でしょ……。
 まぁ、ちょっとは負い目も感じるから少しは協力しても良いけど……。
 ってか、律子”さん”!!」
「ありがとうなの、律子さん!」
「ったく本当に現金ね……。
 あんた、そこまで真の事が好きなの?」

この際だし、ちょっと前から気になっていた事を聞いてみた。
美希は真に対して好きとは言ってるが、この子の『好き』がどこまでの物か今一掴めないところがあった。

「もちろんなの!1番大好きなの!」
「それは女として?それともただの友達として?」

もし、ただ単に真の事がカッコイイからとか、真の事を男性の代わりに見立てているだけなら何としても止めないといけない。
真のためにも、何より美希自身のためにも。

「!……それは」
「……」
「……最初は単純にカッコイイなって思ってたの。
 それで、初めはちょっとからかうつもりで言ってたの。
 でも、そんな美希にも真くんはいつでもレッスンのやり方を丁寧に教えてくれたし、
 他にも会う度にいつも優しくしてくれた」
「……」
「それでね、いつもみたいに真くんと一緒にレッスンしてた時なんだけど、その日はミキが失敗してばかりだったの。
 でも、その時のミキは失敗しても別に何とも思ってなかったの。
 失敗しても、別に良いやって。
 それでも、真くんはミキが出来るように丁寧に教えてくれた。
 その時のミキは早く終わらないかなって思ってて、別に出来なくても良いよって言っちゃったの。
 ミキね、他の人にもそんな事をいつも言ってたから、あっまた怒られるんだろうなって思っちゃった。
 でも真くんは、『出来なくても良い事なんて無いよ。美希はきっと自分の力の出し方を忘れてるだけだよ』
 って優しく言ってくれたの。
 ミキ、それまでそんな風に言われた事が無かったからその時の言葉はすごく印象に残ってるの。
 それから真くんの言う事をちゃんと聞くようにして、レッスンもがんばってやってみたの。
 そしたらね、それまで出来なかった事も少しずつ出来るようになったの。
 もちろん、出来なかった事が出来るようになってミキも嬉しかったけど、真くんはミキ以上に喜んでくれたの。
 『おめでとう、やったね!』って。
 それを聞いたらミキもすごく嬉しくなったし、その時の真くんの笑顔はそれまでのどんな表情よりもかっこよかったの。
 ミキの気持ちはその頃から単なる”カッコイイ”から、ホントの”好き”に変わったの」
「……要するに、単純な気持ちだけじゃ無いわけね?
 でもあんたそれを真に伝えた事あるの?」
「……まだちゃんとした気持ちは伝えてないの。
 だって、真くんは女の子から好きって言われても困るって思うし……」

まぁ、確かに真はいつも女の子たちから告白されたりしてるから迷惑に思うかも知れないわね。
でも、美希はその子たちとは違う。
真だってもしかしたら……。

「美希、そこまで想ってるんだったら、ちゃんと伝えるべき、いえ伝えないとダメよ」
「でも……」
「そんなに逃げ腰でどうするの。
 いつものあなたなら攻めて攻めて攻めまくるでしょ?」
「攻めて攻めて攻めまくる……。
 ミキ、ちょっと弱気になってたかもなの!」

美希の顔にいつものような明るさが戻る。

「そうと決まればこうしてられないの!
 真くんを探しに行かなきゃ!
 あっ、相談に乗ってくれてありがとうなの、律子!」
「だから”さん”を付けなさいって言ってるでしょ!?」

ったく、ホントに世話のかかる子ね……。
真に同情したくなるわ……。
結局、二人をくっつけるように働きかけちゃったけどこれで良かったのよね?
あっ、でもまだくっつくと決まったわけじゃないか。
もし真に振られたらまた慰めてあげるとしますか。
でも、慰めるのもめんどくさいんだからうまくやりなさいよ、美希……。


…………


「はぁっ、はぁっ……」

美希はどこにいるんだろう。
いつもは何気ないところでよく見かけてた気がするんだけど、いざ探してみると見つからない。

「参ったな……」

諦めかけて事務所に帰ろうしたその時、ふと公園が目に留まった。
あれ、今ブランコを漕いでたのって……。

「はぁ、真くん見つからないの……」

やっぱり美希だ!
やっと見つけた!

「美希!」
「!?ま、真くん!?きゃっ!!」

美希はびっくりして思い切り漕いだブランコから危うく落ちそうになる。

「あ、危ないっ!」

とっさに抱き込むようにして美希を助ける。

「っつ〜。美希、大丈夫?」
「真くん、ありがとうなの。ミキは大丈夫。
 あっ、でも真くんが……」

美希は無事だったが、ボクの方が軽い擦り傷を作ってた。

「このくらいどうってことないよ」
「そんな事ないの!ちゃんとしないと!」

そう言って美希は傷口を吸い出した。

「ちょっと、美希!?何してるの!?」
「だって早くしないと傷口にばい菌が入っちゃうの!
 今は消毒液が無いからおーきゅーしょちって奴なの!」

だからってそんな事をしなくても……。
幸いここは公園だったので水飲み場で軽く傷口を洗い流してちょっと小さいけど絆創膏を貼っておいた。
事務所に戻ったらちゃんと処置してもらおう。
今はそれより大事な事がある。

「美希、ちょっと聞いてほしい事があるんだ」

しっかりと前を向いて、まっすぐに伝える。
もしかしたら美希はもうボクの事を何とも思ってないかも知れない。
だけど、これだけは、この気持ちだけは伝えたい。

「……ミキも、真くんに聞いてほしい事があるの」

美希も?もしかして……。
だ、ダメだ!弱気になるな菊地真!

「でも、真くんの方が先にミキを見つけてくれたから、真くんの話から聞いてあげるの」

美希……、ありがとう。

「うん、それじゃ話すよ。
 単刀直入に言うね。
 ……美希!」
「!……は、はいなの!」

よし、言うぞ!
せーのっ!

「好きだ!!」
「ご、ごめんなさいなの!」
「や、やっぱり……」
「え?あれ?ま、真くん、今なんて?」
「え?いやだから美希の事が好きだって……」
「え?えぇぇぇぇぇ!?真くんが?ミキの事を?えぇぇぇぇぇ!?」
「え?え?ど、どういう事?」

ボクも美希も混乱してしまった。
どうなってるのかさっぱりわからない。

「えっと、ひ、ひとまずボクの話は置いといて、美希はボクにどんな話をするつもりだったの?」
「ミ、ミキは……その、真くんの事が好きって改めて伝えたくて」
「え?じゃあさっきのごめんなさいは?」
「あの、最近真くんに冷たくしてたから、その事を怒ってるのかなって……」

話を整理してみるとなんてことは無かった。
美希の勘違いだったらしい。

「それじゃあ、結局ミキは……」
「ミキは真くんの事が大好きなの!
 嫌いになるなんてありえないって感じなの!」

良かった、いつもの美希だ。
ホッとすると、ボクの目から涙が流れてきた。

「あ、あれ、おかしいな、また涙が……」
「真くん、ね、さっきの言葉もう一度聞かせて欲しいな」

美希からちょっと恥ずかしいお願いをされた。

「ま、また?」
「さっきは良く聞いてなかったの。
 だから今度はちゃんと聞くから、ね?」

そんな風に可愛くお願いをされたらもう一度言うしか無いじゃないか。
美希はずるいや。

「へへ、それじゃ言うよ?
 美希……、好きだ!!」

今度は目を合わせるのが恥ずかしくて、美希を抱きしめながら言った。
きっと今のボクは耳まで真っ赤だと思う。

「真くん……。ミキ、すごく嬉しいの……」
「美希……」
「真くん、ミキも改めて言うね?
 ミキは真くんの事が大好きなの!」

そう言って美希はボクをギュッと抱き返してきた。
美希の気持ちが伝わってくる。
すごく暖かい、そしてすごく優しい気持ち。
ボクたちは一つになれた気がした。
これからはもうずっと美希から離れない。
いや、離さない、絶対離すもんか。


…………


しばらく抱き合ったあと、ボクのケガの事もあるし事務所に帰る事にした。
事務所に向かう間、ボクと美希は手をつないでいた。
どちらからという事もなく、互いに自然と手を伸ばしていた。
手が触れ合った時、二人して軽く照れ笑いなんかもしたけどすぐに気にならなくなった。

「真くん、事務所に戻ったらその傷はミキがしょーどくしてあげるね♪」
「えっ?いやこれくらいなら自分で出来るし、悪いよ」
「だってその傷はミキのせいでしちゃったみたいなものだし、真くんのために何かしてあげたいの」
「美希……、ありがとう。
 それじゃ、お願いしちゃおうかな」
「うん!任せてなの!」

事務所に着くと、律子がそわそわしながら待っていた。
ボクと美希が手を繋いでるのを見ると、ホッとしたような少し残念そうな顔をしていた。

「あ、あのね、律子、さん!真くんがケガしちゃったの!救急箱ってある?」
「真がケガ?」
「ちょっと擦りむいただけなんだけどね」
「ふーん、ちょっと待ってなさい」

律子が奥の棚にある救急箱を取りに行く。
その救急箱を美希に渡すと、律子はちょっと用事を思い出したとか言って出ていってしまった。
その時、美希とすれ違い様に何か言ってた気がするけどボクにはよく聞き取れなかった。
美希は小さく頷いていたようだった。

「何て言ってたの?」
「んと、内緒なの♪
 さ、さっきの傷見せて。ミキがしょーどくしてあげるの!」

まぁいいか。
美希は消毒液を染み込ませたガーゼでボクの傷口を拭き始める。

「……つぅっ!?」
「だ、大丈夫?」
「ん、大丈夫だよ」
「これからは真くんがケガしたらミキが全部診てあげるね♪」
「えぇ、だったらケガしないように気をつけないと」
「むー、何でそういう事言うの?」
「だって美希にばかり迷惑をかける事になっちゃうだろ?」
「別に迷惑なんて思わないの。真くんのためなら何でもしてあげるよ」
「美希……、ありがとう。
 ……よし、新しい絆創膏も貼ったしこれで大丈夫だよ」
「んー、あっ、大変なの!真くん顔にもケガしてるの!」
「えっ、どこ!?」
「ここなの♪」

ちゅっ

「えっ……?」
「えへへ……♪」

今の感触って、もしかして……。

「ミキのファーストキスなの♪」
「……美希!?ボ、ボクもファーストキスだったんだよ!?
 どーせファーストキスをするならもっとムードとか……!」
「怒っちゃ、や!
 じゃあ、セカンドキスは真くんからして欲しいな♪」
「うっ……」
「ね、ほら、はーやーくー」
「う〜!わ、分かったよ!」

ちゅっ

「んむ……ん、んっぷはっ。
 真くんってばいきなり激しいキスなの」
「ふんだ、お返しだよ」
「じゃあ、ミキもさらにお返しなの♪」

ちゅっちゅっちゅーっ


…………


「ど、どどど、どうしよー!?
 帰ってきてみたら事務所の中ですごい事してたんですけど!?」
「はわわ、真ちゃんと美希ちゃんがいつの間にかあんな事まで……」
「ゆ、雪歩!こ、こういう時はどうすれば良いのかな!?」
「ふぇ!?そ、そんな私に聞かれても……」
「そうだよねー。って、うわぁ、今度は真から……あわわ、そんな事まで……」
「春香ちゃん、結構ノリノリだね……」
「え!?そ、そんな事ないよ!?あははは……」
「もう、春香ちゃんったら……。
 ねぇ、春香ちゃん。
 あのね、真ちゃんと美希ちゃんのあんなのを見たら、私もちょっと当てられちゃった」
「雪、歩……?」
「春香ちゃん……、ごめんね」
「ちょっと、雪歩!?あっ、ダメだよ、私たちはそんな!んっ……!」





終わり
このあと、千早と律子は真と美希を優しく見守り続けてあげる事になります。
今回はちょっと損な役割な気がしますが、この二人にもいつかきっと良い相手が見つかるはずです。
まだしばらくは引きずっちゃうかも知れませんが。
もしかしたら傷心同士で、なんて事も……?

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます

メンバー募集!