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「美希さん、起きてくださいよ〜」
「あふぅ、今日は学校で体育の授業あったから眠いのぉ」
「レッスン、始まっちゃいますよ?」
「一日ぐらい行かなくたってへーきなの」
「ダメですよぉ」
起こそうとしてるやよいには悪いけど、ミキは本当に眠いんだ……。それに、765プロのソファーって、すっごく寝心地いいんだよ? やよいもいっぺん寝てみればいいと思うな。今はミキが寝るところだから駄目だけど。
「プロデューサーに怒られちゃいますよ?」
それでも、やよいは起こそうとするのをあきらめない。しかも、プロデューサーの名前まで出してきた。そりゃ、プロデューサーとお仕事するのは楽しいけど、それじゃ、なんかミキがプロデューサーにべったりみたいなの。
それに、その言い方が、なんか菜緒お姉ちゃんみたいで、ちょっとムカついたから。ミキはちょっとだけ目を覚ますことにした。
「やよいはさあ……」
「あ、美希さん、起きてくれたんですか?」
「いい子ちゃんだよね」
「えっ?」
やよいの声が止まる。ふふっ、ちょっといい気味なの。
「そんなにがんばってさ、プロデューサーや他の人たちの言うことばっかりきいて。疲れない?」
「そんな、私はただ……」
「ミキはね、そんなにがんばれないの。だから、今日はやよいだけ行ってていいよ。ミキのことはサボりって言っていいから」
そう言って、再び目を閉じる。
「美希さん……」
やよいの声が少し震えているのがわかった。ちょっと言い過ぎちゃったかな? でも、目を閉じてるから、やよいがどんな顔してるかなんてわからない。
少し間を開けて、やよいが声を発した。
「それじゃあ、私、先に行ってますね……」
そのすぐ後に、ドアの閉まる音。
いつもの元気な声はどこかに消えてしまったみたいだった。後で謝っておいた方がいいかもしれない。
そんなことを思いながら。意識がすっと幸せな眠りの中に落ちていく。


「美希さん、起きてますか?」
やよいの、小さな声が聞こえた。
それに気がついた、ってことは、まだあんまり時間は経ってないはず。きっと、最後にもう一回様子を見に来た、そんなところだろう。
もちろん、レッスンになんて行きたくないから、眠ったふりをすることに決めた。実際、頭の中、半分くらいは眠ってるし。
「美希さん……起きないと、いたずらしちゃいますよ?」
再び、小さな声。今度は、さっきより近いみたい。
いたずらってなんだろう。額に肉、とか、鼻の下にチョビ髭を描くのだけは遠慮してほしいな。
ふわり。
頬に、何かが触れる。軽くて、柔らかい。あ、多分やよいのおさげだ。ちょっとくすぐったいけど、ここは我慢──。
「!!」
唇に、何かが触れていた。柔らかくて、温かくて、少し湿り気のある、何か。
息を吸い込むと、鼻に入ってくるのは、熱い空気と、温かくて甘い香り。
なにこれなにこれ。
目を開けて飛び起きたい誘惑に駆られる。でもダメ。今、ミキは眠ってるんだから。そう、ミキは眠れる森のお姫様なの。起こすには、王子様の──しかないの。でも、その相手が王子様じゃなかったら?
頭の中がぐるぐる回る。もう何がなんだかわかんない。
結局、ミキにできたのは、目をぎゅっと閉じて、ひたすら眠っているふりをすることだけだった。


「じゃあ、レッスン行ってきますね」
バタン、と、ドアが閉まる音が聞こえた。なんとなく数を数える。
1、2、3、4、5、6、7、8、9
10数えたところで、ぱっと目を開く。蛍光灯の光がまぶしい。
「……完全に、目が覚めちゃったな」
指でそっと唇を撫でてみる。まだ、そこがひどく熱い気がして、ドキドキした。
どうしてやよいはあんなことをしたんだろう? もしかして、さっきの仕返し? でも、そんな仕返し、聞いたことない。だいたい、やよいだって──。
「も、もしかして、ああ見えて、いろんな人といっぱい!?」
……自分で言ってて、わけ分かんないの。
「とりあえず、レッスン行こうかな……」
せっかく目が覚めちゃったことだし。それになにより、やよいの気持ちを知りたい。
そうだ。ミキを眠りから覚ましたこと、責任取ってもらおう。うん、それがいい。
「今日のお仕事は楽しくなりそうなの!」







































「いい子ちゃん、か」
レッスンスタジオへの道のりを、やよいは一人で歩いていた。その姿には、いつもの陽気さは感じられない。
「プロデューサーのことを信頼してるだけなのに。美希さんにはそう見えちゃってたんだな……」
初めて見たときから、美希は、やよいにとっての憧れだった。一つ違いとは言え、抜群のスタイルで、歌もダンスも上手。それになにより、ステージの上で見せる輝き。
どれも、自分では持っていない物だ。だから、憧れた。
「おかしいよね。ただ、美希さんみたいになりたい、って、頑張ってきたはずだったのに……いつからなのかな」
美希のそばにいたい、美希に触れたい、美希といろんなことをしたい。そう思い始めたのは。
「私、いい子なんかじゃないですよ」
振り向いて、765プロが入っているビルを見上げる。美希はまだあそこで眠っているのだろうか。
やよいは、指でそっと唇に触れると、ぽつりとつぶやいた。
「あんな、いやらしいことする子が、いい子なわけ無いじゃないですか」

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