あ な た と 融 合 し た い ・ ・ ・

 レイプから始まる恋もある、なんて公言してしまえば世の中から袋叩きにされるのは火を見るより明らかであり、某つぶやきでつぶやこうものならまとめられてコメント欄で非難の大合唱になるのは容易に思い至るのだが、2年前の今日、そんな世の中が一変してしまうとは誰が予想できただろうか。ノストラダムスでも古代マヤ人も、そんな未来など全く想定外であっただろう。
 そんな記念日といっていいのかそれとも審判の日とでも名付けるべきなのかよく分からない夏も間近なある日曜日の朝、というには少し遅い時間。日当たり良好築25年のアパートの6畳間で、おれは女の子に乗っかられていた。無論性的な意味で。

 「あ、ああん!いい、いいよぉ!もっと、もっとぉぉ!!」

 全裸でおれに馬乗り、いわゆる騎乗位で声を張り上げて喘ぎながら、自分で腰を振っているのはここから歩いて5分ほどの市立中学校に通う2年生の女の子だ。
 肩に届かないくらいのショートに、あどけなさの残る可愛らしい顔。白い素肌の体躯はどちらかといえば小柄で、もちろんおれの上で腰を振っていても揺れるほどの胸はない彼女の名前は三瀬 瑠羽(みつせ るう)といい、その下でひたすら出しそうになるのを我慢して、瑠羽の膨らみかけの胸、その頂点を重点的に愛撫しているもうすぐ三十の大台に差し掛かりそうなおれは戸方 十郎(とがた じゅうろう)というのだが、そんなおっさんに片足突っ込んだようなむさい男のことなぞどうでもよい。さしあたっての問題は、あまりに瑠羽の膣内(と書いてなかと読む)が気持ちよすぎてもうすぐ出してしまいそうだということだ。

 「う、うっ、で、でる…!」

 彼女の上下運動に合わせておれも腰を突き上げているのだが、その動きが早くなるのは半ば無意識だった。体が早くザーメンを瑠羽の奥深くに注入したいとせかしている。

 「んああっ!だして!なかに、いっぱいいいいいいっ!!」

 全く茂りのない、瑠羽のつるりとした下の口はおれの分身を根元まですっぽりくわえ込み、きゅうきゅうと締め付けて早く出せとせがむように妖しく蠢き、おれの快楽のダムを決壊させようとし、見事次の一突きで決壊した。

 「ああああああああああああああああっっっ!!!」

 体が弓なりになり、白い喉をつきだすようにして絶頂した瑠羽の奥に、おれは今日二度目の精を放った。彼女の中にすっぽりうずめられたおれの息子が、快楽の残滓をびくびくと暴れながら吐き出している。

 「うっ、くぅぅっ」

 そのあまりの気持ちよさに、思わず呻いてしまう。そうしてすべてを吐き出して、先ほどまでの行為の余韻に浸り始めたおれの胸板に、瑠羽がゆっくりと倒れこんできた。

 「はぁ、はぁ、きもち、よかったぁ…?」

 繋がったままでぎゅっと抱きつく瑠羽。そんな彼女のさらさらとした髪を軽くなでてやりながら、おれは正直な感想を漏らした。

 「…ああ、よかった。すごくよかった」
 「えへへ。わたしも…」

 おれの答えに気を良くしたのか、満足げにつぶやいた瑠羽は仰向けのおれの頭の両脇に手をつきゆっくりと上体を持ち上げ、その顔はニコニコとした朗らかな笑みの中に、そこはかとない淫靡な雰囲気を含ませていた。

 「ねえ、もっとし───っっっ!!?!」

 言いかけて突然、びくん、と瑠羽の全身が震えたのを感じた。目は見開かれ焦点は定まらず、薄く開いた唇の隙間から言葉にならない喘ぎが漏れ始めていた。そんな瑠羽の様子を見ておれは彼女の身に何が起こったのか、そしておれと瑠羽の今日のこれからの予定が決まってしまったことも理解した。

 「ん、ああ…ああああんっ!」

 みしみしと何かが軋む音が聞こえる。25年ものの木造アパートなのだから軋みの一つや二つくらいは気にするものではないが、おれはこの軋みがアパートのものではなく、彼女の体──骨格から発せられるものだと知っている。

 そう、彼女は変身を始めたのだった。


 2年前のうだる暑さが日本中を包み込んでいた今日。人間の女性、とごく一部の男性はほぼ絶滅した。ちなみにほぼ、というのはいまだヒトゲノムを保持し、遺伝子に変化が見られない女性も存在しているからだ。ただその数は今となってはごく少数で、日本の全女性人口のわずか4パーセントほど、各国平均でも10パーセント前後という絶滅危惧種である。
 では残りの90パーセント以上はというともちろん死滅したわけではなく、人間ではなく別の種へ変化してしまったのだ。背中には大きな羽、黒光りする尻尾、そして何より、男を誘い、男を性的に貪るための美貌と肉体を持った、物語の中の生き物であったはずの人間の上位種、サキュバスへと。
 老いた者は若返り、幼すぎるものは成長し、全てが10歳くらいから20代半ば程度の若い肉体を持った、それまでは空想の産物あるいは男のロマンであった麗しい悪魔と化した女性とごく一部の男性たちは、その本能と欲望と猛烈な飢餓感のままに、自分の夫を、恋人を、友達を、兄弟を、連日の激務からようやく解放されスーパーで買ったビールと焼き鳥片手にささやかな夜宴を楽しもうと帰宅の途上だったしがない会社員を襲い、その精を貪った。最後だけやけに具体的なのはもちろんおれのことだからだ。
 道端で倒れこみ苦しそうに呻いていたいた小学生が突如羽の生えた美女になりそのまま襲われて押し倒されたおれは気を失うまで犯され、目が覚めたら市立病院の病室で、俺を襲った小学生にわんわん泣きながら謝られ、その父親と同じくサキュバス化したらしい羽の生えた高校生くらいの母親に土下座された上後日その子が「責任とって私が奥さんになります」などと宣言されたのも今となってはいい思い出だ。

 ところでもう察しのいい方もそうでない方もうすうす感づいているかと思われるが、そのときの小学生とは瑠羽のことであり、しかも宣言どおりすったもんだの末におれと瑠羽は入籍した。(法律が変わって結婚可能年齢が引き下げられたのだ)まさに逆レイプから始まった恋である。後で雑誌か何かで読んだ記憶があるのだが男女の出会い方のアンケートではおれと瑠羽のような出会い方をした、つまりサキュバス化した女性に襲われそのまま夫婦や恋人同士になるパターンが一番多く、次いで多いのが女の子からの逆ナンパ、第三位がサキュバス向け出会い系サイトという結果らしい。肉食系女子恐るべし。
 
 ともかく世界の人口の半分以上はヒトの上位種へ変わり、この恐るべき事実に残った人間、というか主に男は戦慄と恐怖とちょっといいかも…という感情に包まれたのだが結局大きな混乱もなく今も世界は回っている。人間でなくなった者たちは姿形こそ変わってしまったが記憶や理性といったものを完全に失うことも無く、また襲われた男性も特に死人がでることもなかったからであり、その理由も後ほど判明したことなのだがサキュバスと化した者たちの体液には強力な媚薬成分のほかに超がつくほど強力かつ体への負担が少ないという夢のような精力剤になっているからというどこかの有名な医科大学の発表が一週間前くらいの新聞の三面に書かれていた記憶がある。
などと回想にふけっている間に、瑠羽の「変身」は音だけでなく、目に見える形でも始まっていた。

 「あ、あん、ああん!!」

 華奢な体が女性的な丸みを増しつつ大きくなっていく。細い腕が少しずつ伸びていき、太ももとお尻の肉感が増していくのが分かる。そしておれのムスコをくわえ込んだままの瑠羽の膣は、まるでそこだけ別に意思を持っているかのように熱くなって蠢き、その刺激は二度果ててバテ気味だったムスコを一念発起させるのには十分だった。

 「か、わるぅ…わたし、かわっちゃ、ううううううっ!!」

 ゆっくりと、しかし今までの生物学的には考えられないほどの速さで成長と変貌を続ける瑠羽。一度彼女に「変身」するときの感覚について感想を聞いたことがあるのだが、相当な快楽らしい。初めて「変身」したときはあまりの気持ちよさに意識を失ってしまったとか。つまりおれはあの時無意識の瑠羽に襲われていたのだ。おおこわいこわい。

 「あ、ん、くふぅぅっ、ひぃ、くぅ、うううううっ!!」

 肩にかかる程度だった髪もざわつきながら伸び始め、その根元から鮮やかな金色へと色を変えていく。顔立ちからもあどけなさが徐々に消え、すっと通った大人の美貌へと変わっていく。喘ぐ声音も少し低い大人びたものへの少しずつ変わっていく。さらに目を引くのが胸の成長だ。

 「くぅ、ん、んんっ!あ、ああんっ!」

 なだらかな丘がどんどんと隆起していく。内側からしっかりと肉づいて、まるで風船を膨らませるかのように急速にしっかりと丸みを帯びていくのが分かる。おれはそんな胸を両方、両手で揉みしだき、ぴんと立った頂点のつぼみをつまんで軽く転がしてみた。

 「ああああああ!!りゃ、めえええええええっっ!!ひううううっ!!」

 二度三度体を大きく跳ねさせて瑠羽が悶え、というより叫ぶ。「変身」中は全身が敏感になり、胸をこうしていじくられるのはもちろん、肌をさすられるだけでもイッてしまうことがあるらしい。事実今、瑠羽はイッてしまったようだ。

 「あひぃ、ひぐぅ、いく、いくのとまらないのぉぉっ!!」

 半狂乱に近い状態で、開いた口の端から涎を垂らしながら、満面の淫らな笑みで嬌声を上げ続ける彼女。この部屋の両隣が空室だからまだよいものの、隣人がいたら苦情が来てもおかしくないレベルだ。もし隣の部屋に新しく引っ越してきた住人がいたらもうこの部屋ではおいそれとはヤレまい。そうなればここからおれの7年落ちの安物軽自動車で20分くらいにあるラブホテルを使うしかない。

 「くふぅぅぅっ、んぎ、ひうっ、んあ、あ、ああああんっ!!」

 おれの体にのしかかる重さは明らかに増している。中学二年生だったはずの瑠羽はすでに高校生程度にまで成長していた。根元から毛先まできれいなブロンドに染まった髪は背中の中ほどまで伸び、顔は瑠羽の可愛らしさを色濃く残した、大人びた美麗なものに成り代わっていた。背丈は一回りくらい伸びて、体の輪郭はすっかり女の丸みを帯びているが、同時に少女の儚さも感じさせる、まさにおれ好みの体型だ。そして時折ゆさゆさと揺れる二つの膨らみもまた、大きめでありながら大きすぎず、片手で少し余すくらいの巨乳、いや美乳といっていいくらいにバランスの取れた、これもまたおれの趣味にぴったりの胸。サキュバス化した女性は、添い遂げた恋人や夫の好みに合わせて体型が変化するという噂がまことしやかに囁かれているが、案外事実なのかもしれない。

 「んあっ!はぁ、はぁ、はぁ、はああああああああっ!!?」

 ほんのわずかな間を置いて、「変身」は次の段階、仕上げにかかったようだ。一度大きく瑠羽の体が跳ねると、みしみしという骨格の軋みがさらに大きく聞こえてきた。同時に、パキパキと硬い何かを割るような音、ぎゅ、ぎゅという何かを締め付けるような音も混じり始める。それは瑠羽を見ていればよく分かった。背中から左右に一対、何かがせり出し始めているのだ。

 「んあ!ひゃうぅぅっ、あ、くはぁぁ…」

 明らかに骨組みと分かる膨らみを持った、肌色で薄い布のようなもの。それは、瑠羽の羽だ。こちらからは見えないが、彼女の背中、肩甲骨と呼ばれる出っ張った骨が変質して背中の皮膚ごとせり出して伸び始めているのだ。ここまで皮が伸ばされると痛そうとか破れないのかなどと思ってしまうがどうもそういうことにはならないらしい。

 「あ、ああんっ、ひゃあっ、う、ううう…」

 ぺちぺちと足、おれの太ももに何かが当たっている。少しだけ頭を上げてみると、黒く細いなにかがのたうちまわる蛇のように暴れているのが見えた。瑠羽の尻尾だ。後ろ腰、ちょうど尻の割れ目の少し上あたりから生えているはずだ。そこで背中から広がる彼女の羽に目をやると、ちょうど尻尾と同じように、先端から黒く変色を始めたところだった。

 「あ、あ、ああ、ん、ふっ、くぅぅぅぅ…」

 何かをこらえるように頭を下げ、背中を丸める瑠羽。その耳が見えない手で引っ張られるように先が尖っていくのが見える。背中の羽はもうほとんど漆黒に塗りつぶされ、瑠羽の「変身」がまもなく遂げられることが分かる。
そして。

 「んあああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」

 体を弓なりに跳ね上げて、悲鳴みたいな嬌声を上げ、根元まで黒く染まりきった羽を広げ、その顔は悦びに満ちて。
瑠羽は、人でないものへ生まれ変わった。

 「はぁー、はぁー、はぁ、はぁ、ふぅぅぅ…」

 蕩けた顔で「変身」の余韻に浸る彼女。その瞳が茶色がかった黒色から、ルビーのような透き通った赤色に変わる。これで瑠羽は完全に、人間ではなくなったのだ。
 そんな瑠羽を間近で見て、そのあまりにエロい「変身」ぶりにおれの分身は再びの復活を遂げていた。そもそも瑠羽の中は「変身」中ずっと文字通りミミズ千匹がひしめいているような感じで蠢いていたのだ。元気にならないわけが無い。
 
 ともかくこうして中学2年生の少女は、18、19くらいの少女を脱皮して大人へと変わる直前の女性へと成り果てたのだ。肩にかかるかどうかくらいの、少し栗色の強い黒髪は背中の中ほどを越えるくらいの、美しい金の絹糸の髪へ。少女らしい活発で可愛らしい童顔はその雰囲気を残して、大人びて美しく整ったものへ。体は一回り成長し、女特有のやわらかい丸みを帯びつつ引き締まったスレンダーな体躯へ。膨らみかけた胸はしっかり自己主張して手には少し余るくらいの大きさになりながら、張りのある形のよい乳房に。耳は尖り、背中ではコウモリの羽を何倍も大きくしたようなそれが広がり、お尻の割れ目の上あたりからは羽と同じ黒光りする尻尾が、意識してるのか無意識なのかしゅるしゅると動いている。

 「ふぅー…えへへ、じゅーろう…」

 大きく息を吐いて呼吸を整えると、瑠羽は子供のように無邪気で蕩けた笑みを浮かべおれの名前を呼びながら倒れこみ、抱きついて毛深いおれの胸板に頬をすりすりとしている。その姿はまるでじゃれつく子猫だ。体は成長したのに、心は少し幼くなっているらしい。
 記憶や理性は失われないと言ったが、変身の影響なのか性格に関してはその限りではないようで、14歳の時の瑠羽とは違う部分もある。変身前はおれの妻として(文字通りの幼妻である)、健気にしっかりしてくれているのだが、その反動なのか変身すると子供っぽく甘えん坊になる。聞いた話だと多くのサキュバス化した女性がそうらしく、同僚の奥さんもいつもはドSなのだがサキュバス化すると超がつくほどの淫乱ドMになるとかこの前の飲み会でのろけていやがった。一粒で二度おいしいとはうらやまけしからん。
 などと何回か会ったことのある女子大生くらいにまで若返ったナイスバディな入社同期の奥さんのことを思い出していると頬を膨らませてむくれている瑠羽と目が合った。

 「じゅーろう、今ほかの女の子のこと考えてたでしょ?」
 「何を言ってるんだおれはいつでもお前のことをむぐっ!?」

 サキュバスの嫉妬パワーは読心術まで会得させるらしい。そんなことはおくびにも出さず爽やかな笑顔で瑠羽への愛を説こうとしてそれは瑠羽の口付けで遮られた。

 「ふっ、ん、んむ、くちゅ、じゅる…」

 おれの唇の間に滑り込み、口の中を嬲るように蠢く瑠羽の舌。そのままおれの涎をすすり、おれの舌を絡めとりながら何かを流し込んでくる。

 「んっ、んく、んく、んむ…」

 それはおれの舌を溶かすような、ひどく甘い液体。水飴を直接飲んでいるようなねっとりとした甘味を拒むことができず、おれは流し込まれるそれを嚥下することしかできない。

 「んっ、ごくっ、くふっ、ぷはぁぁっ!」

 満足したのか瑠羽の舌が名残惜しそうに口の中から離れていく。離岸する唇同士の間を、細い透明な糸がつないで、消えた。

 「…じゅーろうが、わたしだけしか見られないようにしてあげる」

 飲み込んだ甘い液体──瑠羽の涎はすぐさま吸収され全身を巡り始める。足の指先から髪の毛の先までおれのすべてに染み渡り、すべての細胞が瑠羽を求めているようなそんな錯覚を覚える。いや、錯覚じゃないだろう。おれの頭の中はもう瑠羽を気持ちよくすること、瑠羽に気持ちよくしてもらうことしか考えられないし、おれの視界は瑠羽しか見えない。完全フルパワーなおれのムスコはさらに大きく、硬くなり、瑠羽のナカもそれに合わせて形を変えていくのが分かる。

 「わたしはもう、じゅーろうしか、見られないん、だから…っ」

 にこりとした子供っぽい笑みの中に、人間の上位種としての嗜虐が混じっているのを見て、おれはこいつには本能レベルで抗うことはできないと思い知りつつ、腰を突き上げはじめた。

まあ勝てなくてもいいか。おれは瑠羽を愛しているし、瑠羽もおれを愛してくれている。それでいいじゃない。

管理人/副管理人のみ編集できます