機能集約・廃止が検討されている神奈川県立図書館・神奈川県立川崎図書館に関する情報をまとめます。

はかりや珠江議員(民主党・かながわクラブ県議団)の質疑

はかりや珠江議員

議長のお許しをいただきましたので、私は民主党・かながわクラブ県議団の一員として、通告に従い、提言を交えながら質問をさせていただきます。
知事、保健福祉局長並びに教育長におかれましては、明快なご答弁をよろしくお願いいたします。
また、先輩、同僚議員の皆様におかれましては、しばらくの間ご清聴のほど、よろしくお願いいたします。

質問の第2は、戦後70年を節目とした取組について伺います。
先日の我が会派の代表質問においては、戦後70年に際しての知事のご認識や、県内に残る戦争遺跡の文化財としての保護に関して質問させていただきました。知事からは、戦後70年を節目として次の世代に戦争の悲惨さや平和へのとうとさを伝えていく必要性について答弁があり、我が会派としても、知事のそうした思いを非常に頼もしく感じているところです。
私は、さきの大戦の記録や薄れ行く記憶を風化させることなく、戦争の悲惨さと平和のとうとさをしっかりと次世代に伝えていくためには、戦争遺跡以外にもしっかりと保護し、残すべき遺産があると考えています。戦後70年という時を経て次第に薄れてしまう記憶、散逸してしまう資料などに大きな危機感を覚えているところです。
そうした中、県立図書館では昨年、創立60周年記念として、終戦記念日である8月15日から、戦時文庫コレクションの記念展示を行いました。県立図書館が所蔵するこうした戦争にかかわるさまざまな文献の企画展を行い、広く県民の皆さんにごらんいただくことは大変大切であり、教育委員会では私の感じる危機感と同じものをお持ちなのだと理解し、大変評価しているところです。
また、県立歴史博物館においても先月末から「陸にあがった海軍─連合艦隊指令部日吉地下壕からみた太平洋戦争―」という特別展を行っています。この特別展のチラシには、企画展の趣旨として、終戦から70年を迎え、当時の記録も、記憶も失われつつあります。本展を通じ、このような戦争遺跡を今後どのように後世に伝えていくことができるかということを改めて考えるきっかけにしていただければと思いますと記載されています。この趣旨もまさに私の思いと同じだと感じましたし、この企画展も戦争の記憶を風化させないため大変有意義で、評価できる取り組みだと思います。
そこで、教育長に伺います。
県立図書館や県立歴史博物館において戦争関連の展示などを行う意義について、どのようにお考えなのか所見を伺います。
質問の第3は、県立図書館のあり方と再整備について伺います。
県立図書館については、緊急財政対策の取り組みの中で当初は閲覧・貸し出し機能の廃止という方向が示され、多くの県民の皆さんから、県立図書館は今後どうなってしまうのかと存続を危惧する声が上がりました。その後の検討の中で閲覧・貸し出し機能は継続していくとの方針が示されたときには、良識的な判断が下されたことを本当にうれしく思いました。
平成25年12月の本会議では、知事から、収蔵スペースや展示機能の充実を図るため、建物の建てかえ、改修について検討するとの答弁があり、図書館の将来像については、知の拠点として文化的なにぎわいに満ちた魅力あふれる図書館、圧倒的なマグネット力のある図書館を目指すという方向性が打ち出されました。また、川崎図書館については総合的に見てKSPが適地であると判断したこと、KASTの機能との融合を図り、産業活性化につなげたいとの考え方も示されました。
こうした整備方針を受けて、教育委員会でも検討を重ねてきたものと思います。
インターネットの普及により多くの情報が手軽に得られるようになったことで、県立図書館の利用者数は年々減少し、1990年代には年間30万人前後だった利用者が2010年には約25万人、2013年には約20万人となっています。一方で、協力貸出の受け付け冊数は年々増加して、13万冊を扱う実績を残しています。市町村と協力した広域図書館としての取り組みは堅調であることを裏付けています。
昨年、開館60年を記念して出された、神奈川県立図書館60年のあゆみの巻頭言でも、知事は図書館をめぐる環境の変化に触れながら、図書館が今、大きな転換期に来ているとの見解を示されました。そして、これまでの専門図書館、広域図書館としての役割に加え、新たな図書館の姿として見せる図書館としての機能や、利用者同士の交流を促進する機能にも配慮していくとのお考えを示されています。
県立図書館が新しい知の拠点として生まれ変わることを考えたとき、行政や県立図書館の利用者のみならず、多くの県民の方々に意見やアイデアを出していただくことも、関心を高める一つの手段ではないかと考えます。
こうした中、平成27年度当初予算で、県立図書館の再整備について予備調査を行う経費が計上されました。厳しい財政状況の中で再整備に取り組むに当たっては、市町村立図書館との役割分担を明確にしつつ、よりマグネット力を高めた図書館にすべきだと考えます。
そこで、教育長に伺います。
利用者を引きつける魅力ある県立図書館とはどのようなものであると考えるのか、また、再整備に当たってはどのような手法を想定しているのか、所見を伺います。

教育長(桐谷次郎) 教育関係についてお答えします。

初めに、戦後70年を節目とした取り組みについてお尋ねがありました。
県立の図書館、博物館は、社会教育法に基づき専門的な図書や神奈川に関する貴重な資料などを収集、保存し、これを広く公開することで県民の皆さんに生涯学習の機会を提供する役割を担っています。そのため各施設では貴重な資料をできるだけ多くの方にごらんいただけるよう、その時々の社会の話題や人々の関心などを踏まえ、工夫を凝らした企画展示や講座を実施しています。
例えば今年度、歴史博物館では富岡製糸場の世界遺産登録の動きに合わせた、繭と鋼展や、東京オリンピック・パラリンピックの開催決定を踏まえた、よみがえる東京オリンピック展などを開催しました。戦後70年となる本年は、さきの戦争について県民一人一人が改めて学び、平和の大切さなどについて考える年になると思われます。そこで、県立図書館では戦時下に発行され、戦後GHQの廃棄命令の中、保存されてきた貴重な資料である、いわゆる戦時文庫を開館60周年行事で公開したところです。また、現在、歴史博物館では、陸にあがった海軍と題して、慶應義塾大学の協力を得て、横浜市の日吉台地下壕を素材にした特別展を開催しています。
このように、県立図書館、歴史博物館には貴重な資料と、専門的知識を持つ司書や学芸員がおります。また、大学や研究機関などとのネットワークもあります。こうした社会教育施設が展示を通じて、戦争の記憶を風化させない取り組みの一翼を担うことは、意義のあることと考えています。
教育委員会としては、社会教育施設の果たすべき役割を踏まえ、今後も時機を捉えながら、県民の皆さんに戦争や平和について考えていただく機会の提供に努めてまいります。
次に、県立図書館のあり方と再整備についてお尋ねがありました。
まず、魅力ある図書館についてです。
魅力ある県立図書館とは、市町村立図書館にはない専門的な図書が豊富にそろっていること、利用者の学習ニーズにかなった資料を的確にアドバイスできるレファレンスの体制や、落ち着いて調べ物などができる環境が整っていることと考えています。県立図書館はこれまで約130万冊に上る専門的な図書を収集し、年間1万件を超えるレファレンスに対応するなど、利用者の学びの意欲に応える専門図書館としての機能を果たしてきました。一方、施設面では、開館から60年が経過する中で老朽化が進んでいます。また、蔵書の増加に伴うたび重なるレイアウトの変更もあり、利用者にとって使いやすい、居心地のよい施設とは言えなくなってきています。
今後、県立図書館の魅力をさらに高めるためには、利用者がゆったりと閲覧できる環境を改めて確保することが求められています。また、利用者同士が学びを高め合い、交流できる場など、これまでなかった機能も必要です。さらに、図書館が収蔵する解体新書の初版本や戦時文庫といった貴重な資料を展示したり、県民の興味を引く講座を効果的に実施するなどソフト面の対応も重要と考えております。
次に、今後の再整備ですが、来年度予算案ではそのための予備調査費を計上しています。調査では、魅力ある図書館を具体化する建築計画案を初め民間資金を活用した整備手法などについて検討する予定です。教育委員会では市町村立図書館との役割分担を踏まえながら、県民の皆さんが行ってみたいと思える魅力ある知の拠点づくりに向けて、県立図書館の再整備に取り組んでまいります。

はかりや珠江議員

まず、戦後70年を節目とした取り組みについて再質問をさせていただきたいと思います。
ただいまの答弁の中で、戦後70年の節目を前にさまざま企画を実施されたということも再確認をいたしましたし、そうした資料を集めることの一翼を担うというお話もあったところです。今後、戦時の様子をみずからの体験として語ってくださる語り部の方々も少なくなる中で、戦時中の世相を伝える書籍や資料の存在は大変貴重だと思います。そして、それらの多くは県内のあちこち、各家庭などにもまだ眠ったままになっているものもあると思われます。このままではいずれそうした貴重な品々が散逸して、二度と取り戻すことができなくなってしまう可能性があるということは申し上げるまでもありません。次世代への継承に強い危惧を覚えるところです。
戦後70年の節目は、戦争に関する県民の記憶や記録を収集、保存する絶好の機会です。これを逃すと80年にはできないということも多いと思います。こうした戦時中の世相を今に伝える日用生活品や生活の記録などをできる限り収集し、保護、保存することが大事だと思いますけれども、教育長にお尋ねします。
戦後70年の節目は、戦争に関する県民の記憶や記録を収集、保存する絶好の機会です。これを逃すと80年にはできないということも多いと思います。こうした戦時中の世相を今に伝える日用生活品や生活の記録などをできる限り収集し、保護、保存することが大事だと思いますけれども、教育長にお尋ねします。
今回の県立図書館や歴史博物館の企画展示の趣旨に沿って、戦後70年の節目の取り組みとして県立図書館において戦時中の書籍や資料を広く収集することや、歴史博物館において戦時中の本県の生活を伝えられるような品々を収集することが必要だと思いますけれども、所見をお伺いいたします。

教育長(桐谷次郎)

はかりや議員の再質問にお答えいたします。
さきの大戦で多くの方が亡くなられた事実と平和のとうとさ、これを次の世代に伝えていくことは大変大切なことと認識しております。県立図書館や歴史博物館は社会教育施設として神奈川の郷土資料などを収集し、県民の皆さんに提供していく役割があります。こうしたことを踏まえ、戦争に関する記憶や記録を後世に伝えるために、関連資料の収集も含めて、どのようなことができるのか検討をしてまいります。
以上でございます。

はかりや珠江議員

ただいま、これからどういうふうに集めていくのかということを検討してくださるというお話がありました。戦争を二度と繰り返してはならないということを伝え、希望に満ちた、心豊かな社会を実現することは私たちの責務だと知事が力強いメッセージをせんだって答弁されておりました。私はこれを伺って、大変胸を打たれる思いがいたしました。そして、教育長も知事と認識を同じくしていることもよくわかりました。
しかし、県立図書館には県としての戦時のアーカイブと呼ばれるものは、まとまった形で整備されておりません。私は先日、図書館に行って、神奈川県の語り部の方が語ったそういった映像記録とか録音というのはないんでしょうかということを尋ねて、調べていただきましたけれども、ございませんでした。県では港南区の慰霊堂にございます平和祈念館で、DVDのアーカイブをつくったということを聞いておりますが、こういうものも図書館にはないんですね。
そしてまた、アースプラザでは地球市民という観点からの世界の戦争や紛争というものを取り上げて、また戦時のことも取り上げている。いろいろな所管でいろいろなことに取り組んでくださっているけれども、県立図書館にはきちっと戦時のアーカイブというものがないというのが今の現実でございます。
私は、戦争遺跡は県の平和文化財、そしてまた、戦争体験者の方々の語る戦時のアーカイブは、二度と同じ過ちを犯してはならないという平和メッセージというふうに捉えています。戦争のアーカイブについて、どのような姿で収集、保存、活用していくか、ぜひ今、申し上げましたように関係部局が連携して、しっかりとご検討いただくように強く要望したいと思います。知事のメッセージを県民全体で共有して、戦後70年の節目に意義ある取り組みをしていただきたいということを申し上げておきます。

それから次に、県立図書館の再整備について申し上げます。
魅力ある図書館ということですけれども、今までと同じように利用者がふえていくだけでは、魅力ある図書館とは呼べないというふうに私は感じております。魅力づくりというものを考えるときに、やはり行政とか利用者だけでなく、県民の皆さんがきちっと参加をして、さまざまな立場の方が注視していると思いますので、ぜひ県民参加で、例えば知事の対話の広場で図書館を考えよう、みんなの未来の図書館を考えようというようなテーマを取り上げるとか、図書館フォーラムなど県民の皆さんの知恵やご意見をいただく機会をぜひつくって、みんなで図書館の魅力を高めていく知恵を出していただくような取り組みをしていただきたいというふうに思います。
今、朗読がブームです。また、ビブリオバトルなどというものも今、大変若い方の間でもはやっていると聞きますし、知の拠点として、そこで勉強した生涯学習の発表会とか、そういったこともホールなどがあれば開催できると思います。県立図書館を目指して皆さんが集まってくるという、そういうものが知事の描いていらっしゃる見せる図書館ということだと思いますので、ぜひご研究をいただきたいと思います。
また、川崎図書館については特許関係など一部の図書をKSPに移して、そのほかの図書、資料は紅葉ヶ丘に移すとの方針が出されていますけれども、県立川崎図書館の特色やブランド力というものを維持し、さらに高めていくためには、分散はマイナスではないかとの声もあります。川崎市富士見地区の再整備により移転する方向にある川崎図書館ですが、できれば利便性の高い、現在地に近いところへの移転としてほしいという要望も強いと聞いておりますので、県の川崎合同庁舎の今後の活用なども視野に入れ、川崎市と改めて十分な協議をしていただきたいと思います。

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