機能集約・廃止が検討されている神奈川県立図書館・神奈川県立川崎図書館に関する情報をまとめます。

岸部都議員(民主党・かながわクラブ)の質疑

岸部委員

まず、戦争遺跡の保護及び戦争関係資料の保存について伺います。先ほど、今日付けで本県初めての国指定を受けたとのお話がありました。我が会派では、さきの代表質問、一般質問でも戦後70年を迎え、戦争遺跡の保護や戦争記憶を風化させない取組について伺ったところであります。そこで、代表質問に関連して、戦争遺跡の保護について何点か伺うのですが、文化財として戦争遺跡とはどのようなものを指すのか改めて伺います。

文化遺産課長

文化財保護法上には戦争遺跡という定義はありませんが、一般的には軍事施設や戦争に関する施設及び戦争による被害の痕跡などを戦争遺跡と称しております。文化庁では、戦争遺跡という呼称は使用せず、軍事に関する遺跡としているところです。国や県、市町村では、貝塚や古墳、城跡などの遺跡のうち、重要なものを史跡として指定しており、戦争遺跡も指定された場合は史跡として分類されます。また、戦争遺跡は時代的に明治以降の遺跡とされており、近代遺跡に分類されるものです。

岸部委員

国は、平成25年1月に近代遺跡の全国調査に基づいて、保護すべき重要な戦争遺跡を公表したと言われていますが、全国調査とはどのようなものだったのでしょうか。

文化遺産課長

近代遺跡の全国調査は、文化庁が幕末開国頃から第二次世界大戦終結頃までの近代遺跡につきまして、平成8年度から8年の計画で、所在調査と詳細調査を行うもので、政治、文化など11の分野を対象に実施した調査です。調査方法としては、11分野のうち、3から4分野ずつ、平成8年度から3年間で所在調査が行われ、戦争遺跡は政治分野に含まれるものですが、3年目の平成10年度に調査が行われました。調査は文化庁から各都道府県に対して依頼があったもので、県教育委員会では県内の市町村教育委員会を通じて、所在する遺跡の把握を行いました。

岸部委員

神奈川県も国の調査に対して回答していると思いますが、県内には戦争遺跡がどのくらいあったのでしょうか。

文化遺産課長

調査は市町村教育委員会を通じて行い、本県の調査結果として戦争遺跡については37件の報告を行いました。内訳としては、地下ごうが4件、砲台が14件、その他、戦争関連建造物等が19件となっています。

岸部委員

国の調査結果の公表では、県から出された37件の調査回答に対して、5件の戦争遺跡が重要なものとされたと伺っています。その5件の戦争遺跡とは、どのような遺跡だったのでしょうか。

文化遺産課長

文化庁が公表した調査結果ですが、平成25年1月に全国で772件の近代遺跡が公表され、このうち戦争遺跡は55件でした。県内では五つの戦争遺跡が選ばれており、一つ目は横浜市の日吉台地下ごう、二つ目は川崎市の陸軍第九技術研究所、これは登戸研究所と呼ばれているものです。三つ目は横須賀市の東京湾防衛砲台群のうち、猿島砲台や観音崎砲台など、四つ目は横須賀市の旧横須賀鎮守府関係遺跡、五つ目は綾瀬市と大和市にまたがる相模野海軍航空隊、現在、厚木基地と呼ばれているものです。なお、猿島砲台につきましては、横須賀市が近代遺跡である東京湾要塞跡の一部として国の史跡指定を目指しておりましたが、本日、同じ市内の千代ケ崎砲台とともに、国の史跡として指定されたことが官報において告知されたものです。戦争遺跡の国史跡指定は3例目であり、本県では初めてとなります。

岸部委員

その5件は大変著名なものだと思うのですが、神奈川県には、国が選んだ5件以外にも多くの戦争遺跡があり、国の指定にならない場合でも、県の指定あるいは市町村の指定文化財として保護していくことも大切ではないかと考えます。神奈川県では、これまで戦争遺跡を指定していないということですが、さきの本会議では、教育長から今後、戦争遺跡の指定についても検討していくと御答弁を頂いたところです。改めて、今後どのように取り組んでいくのか伺いたいと思います。

文化遺産課長

戦争遺跡についても、他の文化財と同じように重要な文化財として将来に向けて保護していく必要があるものについては、史跡として指定し、保護していきたいと考えております。通常、県で文化財指定を行う場合、指定の候補となる文化財が指定にふさわしい価値を有しているかどうかを見極める必要があるため、神奈川県にとって、歴史上、芸術上、学術上などの面から、指定にふさわしい価値を有しているかどうか、附属機関であります神奈川県文化財保護審議会において、調査や審議などを行っているところです。国の調査で回答した戦争遺跡の一つである猿島砲台につきましては、本日、国の史跡に指定されましたが、その他の戦争遺跡について、指定による保護が必要か、また、指定の検討をする場合、国、県、市町村のいずれがふさわしいかなどにつきまして、当該審議会委員の御意見を伺いながら、国、市町村とも連携し、必要な保護が図れるよう取り組んでまいりたいと考えております。

岸部委員

私の地元である横浜市南区には、昭和20年5月29日の横浜大空襲の跡、例えば京浜急行の駅にも弾痕がいまだに残っていたり、近くのお寺では空襲で亡くなられたたくさんの方々の法要を町内挙げて毎年行っております。また、かつて川であった大通公園でもたくさんの方が亡くなられたということで、小さな慰霊碑が建てられているが、町内会の方々が中心となって、戦争の惨禍を忘れないために石碑等を囲んで、毎年改めて気持ちを新たにするという会を催されているのを見てきました。遺跡にはそういった過去のことを思い出すといった重要な働きがあると思います。今回の猿島砲台跡のように建築学的にも価値のあるものは、近現代の歴史を伝える遺跡としても活用されると思いますので、是非、今後も保護には前向きに取り組んでいただきたいと思います。戦争の遺跡ではなく、記録を風化させない取組も重要と考えております。県立図書館や県立歴史博物館では、戦後70年を踏まえて、戦争関連の展示も行っているようですが、まず、県立図書館や県立歴史博物館の基本的な役割について確認したいと思います。

生涯学習課長

県立図書館は図書館法に基づき、また、県立歴史博物館は博物館法に基づいて、専門的な図書や、神奈川県に関する貴重な資料などを収集、保存し、これを広く公開します。そういったことで、県民の皆様に学びの機会を提供する社会教育施設としての役割を担っております。

岸部委員

そのような役割を持つ施設が展示会等を企画する際には、どのような点に配慮されているのでしょうか。

生涯学習課長

県立社会教育施設では、こうした貴重な資料をできるだけ多くの方に見ていただけるように、その時々の社会の話題や人々の関心などを捉まえて、工夫を凝らした企画展示を実施しているところです。その際には、専門的な知識を持つ司書や学芸員が中心となって、数多くの資料を分かりやすく整理する、あるいはテーマに沿った配置、そういったものを行うほか、県民の関心を引いて興味をかき立てるような見せ方の工夫をしているところです。

岸部委員

今、県立歴史博物館で行われている陸にあがった海軍の展示を私も見せてもらったのですが、たくさんの若い方からお年寄りの方までいらしており、また、学芸員の方たちの説明会も行われて、一つ一つの展示を食い入るように見ている方、いろいろな思いがあって、学術的に展示はされていましたが、トイレの便器であるとか、プラグであるとか、蛍光灯の部品であるとか、生活の日常的な物や食器の部分についても当時を遡って思いがあるみたいで、一つ一つに足を止められる方がいらっしゃって、非常にタイムリーな企画だったと思いました。そうした時宜を得た企画は非常に重要であり、生涯教育の中で本当に必要なことだと思うのですが、戦後70年以外で時宜を考えた企画にはどんなものがあったのか伺いたいと思います。

生涯学習課長

県立歴史博物館では、今年度、富岡製糸場の世界遺産登録の動きに合わせた繭と鋼展や、東京オリンピック・パラリンピックの開催決定に合わせた形でよみがえる東京オリンピック展を開催しております。また、過去には横浜港開港150年関連として神奈川・世界との交流展や、富士山噴火300年として宝永の砂降りと神奈川も開催しております。また、県立図書館では、映画監督の小津安二郎の生誕110周年関連として、かながわと映画展を行ったり、ロングスパンですが古事記編纂1300年関連として、知っているようで知らない古事記展といったものを行っているところです。

岸部委員

そうしたいろいろな視点から行われている中で、今年は戦後70年というところで時宜を得た企画ではないかと大変評価するところであります。高齢化が進み、戦争体験をした方がだんだんいなくなる時期を迎えて、教育委員会として、今後、県内に残る戦争の記憶を風化させない取組についてはどのようにお考えなのでしょうか。

生涯学習課長

戦争の記憶を風化させずに、次世代に伝えていくことは大変重要と考えております。そのため、県の関係部局を挙げて取り組んでいくことが必要と考えています。神奈川県に関する貴重な資料を展示などを通じて広く公開していく社会教育施設が、そうした役割を担っていくことは意義のあることと考えております。今後も関係部局と連携しながら、専門的な資料の収集に努めて、引き続き時宜を捉えながら、県民の皆様に戦争や平和について学んでいただく、あるいは考えていただくといった機会の提供に努めてまいりたいと考えております。

岸部委員

今年は繰り返しになりますが、戦後70年ということで、年数がたってきますと戦争の記憶が風化したり、記録が散逸することも考えられます。高齢の方々が亡くなられて、身の回りのものを処分するときに、貴重な資料である本や日記、そうした記憶や記録につながるものも処分されてしまうこともあります。そうしたものを寄附したいのですが、学術的な部分ではなかなかそぐわないという判断もあろうかと思います。そういったものを全て取っておくことは個人の力では限界がありますし、後世に残すには生活様式であるとか、文化的な一面であるとか、日常生活の断片ではありますが、長い歴史を考える上で、分かりやすい資料となる部分はあると思います。行政には是非、しっかり取り組んでもらいたいと考えますし、戦争遺跡の文化財指定も含め、社会教育施設での展示、また、福祉部門等の展示もあろうかと思いますので、知事部局との役割分担を踏まえながら、できる限り早期の前向きな取組を要望して、この質問を終わります。

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