鬼畜陵辱SSスレ保管庫のサンプル

 透華は寄り添わせるように紅に自らの身体を重ねた。
 少女の重さ、柔らかい身体を、紅は片腕で抱いた。
 それを透華は抵抗もせず、受け入れた。
「紅さん、これを」
「ん?」
 透華は、紅の手に銃を握らせた。
「……透華?」
 紅は手に触れた硬質な感触を掴んだ。
 その瞬間だった、透華は引き金を引いた。
「――っ!」
 紅は左手の感覚が失せて、そこに炎を押し付けられているような痛みを覚えた。
 力をこめて、銃を奪い取ろうとしたが手は反応しない。
 それは当然だった。
 紅の手は、手首とその先が別れ別れになってしまっていたのだ。
「なにを……」
 それでも紅は強い自我で痛みに抗った、まだ反対の手がある。
「だめですよ」
 右腕が撃たれた。
「……ひっ……があああああああああああああああああああああああああああああ」
 紅は獣のような咆哮を上げて、痛みに抗おうとした、そして眼前にいる敵を殺そうと決め
たのだが。口がふさがれてしまった。
 透華は紅の唇に自らの唇を重ねて黙らせると、ゆっくりと赤い糸を引かせながら離した。
「うるさくしたら」
 紅は両腕が動かなくなっても、まだ抵抗しようとする。
 透華は唇を尖らせた。
 なんで、こんなに騒ぐんだろう?
 死ぬほどじゃないのに、父さんを殺したくせに、なんでこんなに大騒ぎするんだろう?
「いたいんですか?」
 紅はじたばたと暴れまわっている、腕からは血がどんどんと溢れていって、周囲に血だま
りを形成していく。
 透華は黙らせようと思って、更に撃った。撃たれていないほうの脚を。
 そうすると、紅は動きをとめた。まだひくっひくっと痙攣していたが、それでも透華でも
十分に押さえ込める。
「ねえ、紅さん。わたしね、紅さんのこと好きですよ」
 詠うように少女は言った。
 ゆっくりと紅の身体から衣服を剥ぎ取りながら。
「お父さん殺しちゃったけど、でも、紅さんのこと、好きなんです。おかしいですよね」
 紅の身体は美しかった。
 自分の余分な脂肪がついた肉体に比べて、紅の身体は無駄がなく、綺麗だった。
 透華は紅の乳房に舌をはわせてみた。
 勃起し硬直した乳首を歯で噛むと、紅はわずかに喘ぎ声をあげた。
「紅さん、気持ちいいんですか?」
 紅はなにも答えない。焦点のあわない瞳で空中を見つめている。
 透華は不機嫌そうに頬をふくらませた。
「答えてくださいよ」
「――あがっ」
 傷口に触れると、紅は身体を痙攣させて悦んだ。
 不思議だった、どうして憎いはずの相手を好きになってしまっているんだろう?
 父を殺したのが紅だとしって、透華は最初信じられなかった。だけれど、紅は人を殺すこ
とを仕事にしている、だとしたら紅が父を殺していても不思議ではない。
 ――紅さんが父さんを殺した……?
 紅は恨んだ、騙されたと思った。今までやさしい顔して傍にいたのが、父さんの研究を奪
うためだと知って怒りに震えた。
 だけれど、恨みきれなかった。
 紅のことを知らなければ殺すこともできただろう。
 紅の傍にいなければ復讐を遂げていただろう。
 だが、透華は紅を知ってしまった。だから、もう殺すことはできなかった。少女の幼い魂
ではそんな判断は下せなかった。
 だから透華は――紅を自らのものにしようと思った。


 ***
 
 
 港に、一台の車が停まっていた。
 田所は煙草をふかしながら、時間が過ぎるのを待った。
 もう透華は紅を始末したころだろうか?
 そんなことを考えていると、後部座席の飯島が口を開いた。
「俺のせいなのか?」
 田所は紫煙を吐き出した。
「なにがです?」
「今回のことだ」
 縄で縛り上げられ、暴行を加えられても、この老練な男は己我を失うということはなかっ
た。だからこそ殺さずに、生かしておくことにした。
 この男に自分の生き様を見せ付ける。田所はそう考えていた。
「組織は俺とお前、二つのグループへ同じ指令を与えた、食い合わせるためにだ。しかし、
お前も俺も最終的に柊透華を引き渡す相手は同じだったはず。二つのグループを食い合わせ
たのは、失敗したという結果も必要だったからだ」
 組織は二つあるいはそれ以上の組織から、今回の件に関して依頼を請けていた。というの
が飯島の考えだった。
 全ての組織にとって味方であり敵である、そのスタンスを貫くためには、どこかの依頼を
請けて他の依頼を請けないという選択肢は存在しなかった。
 そのために、あらかじめ引き渡す企業を決めておき、他の組織には失敗したと証拠つきで
伝えるつもりだったのだろう。
「そうですね。私もそう考えています。組織にとって私たちは捨て駒に過ぎない」
 誤算があるとすれば、それは組織が指令を下した二つのグループに同時存在している田所
の存在だろう。
「気づいていたのなら、何故」
 飯島は苦い顔で言った。
 田所は答えず、煙草をふかした。
 言ったところで飯島が納得するとは思えなかった。
 田所にとって自らが存在するグループも構成員もどうでもよかった、自分さえ生き残れる
のならそれでよかった。それが田所が、唯一孤児院で学んだことだった。
 自らのためなら他者を蹴落とせ、それが田所の生き方だった。
 田所は二つのグループで争わされていると気づくと、まず自分が生存するために動くこと
にした、だが途中からこれを利用できないかと考えるようになっていた。
 田所はまず自分の生存を考え、次に伊佐美紅を始末するための方法を考えた。
 真正面からの打ち合いでは紅に勝てるとは思えなかった、ならば紅に負担を押し付けよう
と思い、戦力にならない透華を預けたままにした。奪おうと思えば、いつでも奪うことはで
きた。
 だが、紅は予想以上に強かった。
 津田は無理でも、地沼なら行けるだろうと思ったが返り討ちにあい。ならばと集団で襲わ
せたが、それでも駄目だった。
 最後に残ったのは、紅には撃てないだろう存在によって紅を殺させる。
 その考えをひらめいた当初は、飯島に殺させるつもりだった。
 しかしそれはできなかった。
 万が一、紅が反撃し、飯島を殺すようなことになるのは赦せなかった。
 飯島の愛情を独占した上更に、飯島の死まであの女のものにはさせたくなかった。
 故に田所は透華を使うことにした。
 透華に正常な判断をくだせなくなるような薬を投与し、銃を与えた。
 今頃透華は紅を殺していることだろう。
 いくら紅といえど、幼い少女を殺すことはできないはずだ。
「遼」
「なんですか?」
 田所は吸殻を海に捨てると、首だけ振り返った。
「なんでも思い通りにいくと思うなよ」
「……はい?」
「お前は力があればなんでもできると思い込んでいる、そう信じているんだろう。だがそん
なのはただの傲慢だ。力じゃ手に入らないものだってある」
「……それで?」
 田所は黙して聞いた。
 飯島はぺっと血を吐き捨てると、笑って言った。
「それだけさ。お前が思っている以上にうちの娘は強いぞ、お前がどんな策をろうしたって
、それをぶちやぶるだろうさ」
 田所は「くっ」と喉を鳴らし、顔を引きつらせた。
「私は貴方を、貴方が作ったものを破壊する、それだけのことです」
 そう言って車から降りた。
 外の風は冷たく、いまにも雪が降ってきそうだった。
 田所は足早に倉庫へと歩いていく、もう透華が紅を殺し終えただろう、死体を確認したか
った。或いは、殺せていなければ、その手助けをしようと決めた。
 倉庫へと戻っていく道の途中、人影が田所の前に現れた。
 その人影は漆黒のコートをまとっていた。
 無言で銃口が向けられる。
「くっ」
 透華は失敗したということか。
 田所は内ポケットから拳銃を抜き、直ぐに撃った。
 避けるべきだった。
 田所は胸に強い衝撃を受けて、そう思った。血が口から溢れた。
「……だめ、だったのか……私は、俺は……」
 薄く雪が積もったコンクリートの地面に倒れ、田所は見た。
 黒いコートはよろめき、同じように倒れた。
 田所は満足げに笑い、その生涯を閉じた。
 
 
   <ED――ちからの行方>
 
 
 紅は両腕を撃たれ、両脚の自由を奪われてなお、生きることをあきらめていなかった。
 自分はこんなところでは死なない。
 まだ直治の役にたてていないのだから、こんなところで死んだら駄目なんだ。
 そう思いながらも紅は理解していた。
 自分の生命がもう尽きようとしていることを。
 ならば、と紅は思った。
 ぼやけた視界、紅は首を動かし透華の姿を求めた。
 透華は紅の上に乗ったまま眠ったかのように動いていない。
「……ど……ぐっ……とお、か」
 うまく声がだせなかった。
 それでも透華には届き、透華はゆっくりと顔を上げた。
 視線が絡む。
「なんですか?」
 紅はその瞬間、自らを死の淵に追い込んでいる相手でありながら、透華のことを可憐だと
思った。
 透華の髪に触れたいと思ったが、腕は動かなかった。
 ゆっくりと口を動かして、透華に自分の考えを伝えた。
 それをしてくれたら、未来永劫透華の傍から離れないと約束した。
 すると透華は涙をこぼし、従ってくれた。
 透華は紅のコートを着ると、そのぶかぶかさに照れたように笑った。
 紅も笑い。
「似合ってるよ」
 そう言ったが、紅の目は既に光を失っていた。
「それじゃ、行ってきます」
「ああ、頼んだよ」
 身体も動かせず、目も見えなくなった紅は、ゆっくりと訪れる死神の鎌をその首に感じな
がら。その瞬間を待った。
 
 
 そうして、重なるように銃声が鳴った。

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