「え? このまま・・・ですか?」
ベッドの上で唖然とする美佳に、
薄い花柄のエプロンを身につけた由紀はさらりと返した。
「もちろんそうだよ。サインした誓約書になかった? 『入所者は許可なく着脱することはできない』って」
「だったら、どうすれば許可してもらえるんですか。せめて仕事に行くときだけでもこれを外したいんです」
「可哀相だけれど、ダメなの。ほら、あなたのおむつカバー」
由紀は、美佳の下腹をふっくらと包み込んでいる
白いおむつカバーを指差した。
「そのおむつカバー、赤い縁取りがしてあるでしょう?
それは『常時おむつ着用者』用なの。その色のおむつを外してあげられるのは、おむつ交換と入浴と日光浴と、あとはそうねえ、お仕置きの時くらいかな。
お仕置きのときはおむつもおむつカバーも外して、おしりを丸出しにしてこんなふうにね」
由紀は平手でぱん、ぱんと振る真似をしながら、ちらりとウインクしてみせた。
「おむつを外したいだなんてばかり言っていると、大勢のヘルパーの前でお仕置きされちゃうよ。
それに、私以外のヘルパーに頼もうとしてもムダ。そのおむつカバーを見れば一目瞭然、あなたが常時おむつ着用者だって分かる仕組みなんだから」
「ただでさえこんな厚ぼったいおむつを着けないといけないのに、外出のときもだなんて」
美佳は口をとがらせた。
「外せないというなら、外出中は交換することもできないんですよね?
万が一粗相が過ぎて漏れ出したら非衛生だし、周囲にも迷惑じゃないですか?
かといって我慢したりしたら身体にも影響がありますよね?
やっぱり外出の時におむつを着けていくのは、いつ漏れるか分からないから無理・・・」
なけなしの抵抗も、由紀の前には空しいだけ。
「あ、それは心配ないのよ。あなたのオモラシね、おむつ交換の度にチェックしているの。色や匂いや成分だけでなく、排泄量もね。
あなたの尿量なら、そのままのおむつでも2、3回分は楽に吸収してもらえるわよ。
心配なら、外出の時にはライナーを追加して厚く当ててあげるから大丈夫。それでも尿が漏れないか、オモラシが匂わないか心配?
そんな心配をするくらいだったら、漏れ出す前に戻ってくることね。
寄り道せずに帰ってくれば、そんな心配は要らないよ。おむつが行動を監視している、ってところかな。ふふふ、便利だね、おむつって。
さて、おむつの上には何を着ようかな」
由紀はクロゼットを開けると、その中に仕舞われている美佳の衣服をチェックし始めた。
「イヤ、やっぱりイヤです。おむつを当てて仕事に行くだなんて考えられません」
美佳の目にうっすらと涙がにじむ。
「仕方ないなあ。そんなにおむつを外したい気持ちが抑えられないなら、抑制パジャマを着せてあげようか?
つなぎ型で自分ではファスナーが開けられないようになっているから、そうすれば自分の意思でおむつを外してしまうことはなくなるよ。もっとも、抑制パジャマを着せられたら、こういう外出着をその上に着ることはできなくなるわね。
外に出たりしたら、とっても恥ずかしいと思うんだけど」
クロゼットの中の美佳の外出着は、パンツ・スーツやジーンズといった、下半身にぴったりと合う衣服ばかり。膨らんだおむつカバーを包み込める、ゆとりのある衣服はひとつも見当たらなかった。
(まったくこの子ったら、何を考えているのかしら。居室に持ち込める衣服の数は決められているというのに)
おむつカバー一枚の姿で外出させるわけにも行かないし、これでは本当に抑制パジャマでも着せておく他なさそうだ。
「着てみれば分かるけれど、抑制パジャマって意外と暑いのよね。いたずらできないように身体を覆ってしまうのが目的だから、ボタンを外して調節できるわけでもないし。簡単には引き裂けないように厚い生地で作ってあって」
「もっとも、抑制パジャマを着て1ヶ月も過ごすと、みんなおむつを外したいなんて思わなくなるみたいだよ。
抑制パジャマに加えて、たいていミトンもつけさせられるんだけどね。手首のところできゅっと止めちゃうと、自分では脱げないし、指も使えなくなるのね。
おむつが濡れたどころか、それこそ身体のどこかがかゆくなったというだけでも、自分では掻けないから誰かに訴えるしかなくなるの。
でもトイレだけでなく、食事から何から全て頼りきっての生活となると、おむつに対しても素直に頼ることができるようになるみたい」
さあて、どうする? 洋服着るのはやめて抑制パジャマにする?
着たいなら持ってきてあげるよ?」
美佳は静かに首を振った。
「わかりました、そんなにおっしゃるなら今日はおむつをつけて出かけてみます。それに万一粗相したとしても自分で始末できますから、抑制パジャマまでは要りません」
「だ、か、ら、美佳さん、分かってないなあ。
それはできないんだってば。『入所者は許可なく着脱することはできない』んだよ。おむつはあなたが望むと望まざるとに関わらず、必要があれば私たちが検査するし、交換します。あなたに自分のおむつを交換できる能力があろうが無かろうが、関係ないの」
由紀は衣服を見繕う手を止めベッドの脇に回ると、まっすぐ美佳を見下ろすように見つめた。
「分からないなら、何度でも言ってあげるよ。あなたはもう自分のおむつを外せないどころか、下腹に触れることも許されていないのよ。
イタズラが過ぎて自分の身体も大事にできないあなたに代わって、私たちがあなたの身体を管理してあげているんだから。
残念ね。もうあなたはここに触れることもできないの。ここに、こんなふうにね」
由紀は美佳の下腹に右手を伸ばすと、人差し指でおむつカバーの股部をゆっくりとなぞり上げた。
不意の刺激に美佳はぴくりと身体をこわばらせる。
(やっぱりこの子、少し躾が足りないようだわ。保護棟に移したほうがいいかしら。少なくとも少し管理レベルを上げてみて、様子を見る必要があるわね)
しばし思案した後、由紀は枕元に備えられたインターホンのボタンを押した。
「ごめーん、誰かいない? 抑制用カバー持ってきて欲しいんだけど。サイズはSでいいかな」
スピーカーからは、若い女性の声が返ってきた。
「は、はい。主任、わかりました。ボタン式のものですよね、今すぐお持ちします」
ほどなく、白衣にかわいらしい薄黄色のエプロンをつけた女性が居室に入ってきた。胸に『研修中』と書かれたバッジをつけたその女性は、少し緊張した手つきで由紀に頼まれたおむつカバーを渡した。
「そうそう。これでいいわよ、ありがとう。さて美佳さん、あなたやっぱりうっかりおむつ外しちゃうといけないから、ちょっと管理させてもらうね。こっちのおむつカバーに替えてあげるから、おむつ交換の姿勢になってもらえるかな?」
由紀は受け取ったおむつカバーを広げて見せた。
一見、優しげな白地のカバーではあるが、股当ての両脇には頑丈そうな、銀色の輪のようなボタンがついていた。
「このおむつカバーはね、このボタンで留めるんだけど、ボタンの真ん中をこんなふうにしっかり押さないと、外れないようになっているのよ。美佳さん、これってどういうことかわかる?」
「おむつはずしを防ぐっていうことですか」
「正解。もっとも鍵がついているわけではないから、外そうと思えば外せるんだけどね。
ただ、このおむつカバーなら、装着中に偶然外れてしまったなどということはありえないわけ。もしおむつが外れたとしたら、それは明らかに故意だということ。
おむつ検査のときにおむつカバーを外した様子があったら、『要保護』扱いになる規則よ。当分の間は保護棟に移ってもらうことになるわ。抜け出し防止帯つきのベッドの上で、勿論のことだけどおむつもずっと当てっぱなしの生活になるわね。
それもいいわよ。私たちが24時間しっかりと見守って、完璧に管理してあげるから」
「そんな、そこまでしなくても・・・」
口ごもる美佳は無視して、由紀は傍らで立ったままの研修生に向き直った。
「佐藤さん、ちょっとあなたのスカートを持ち上げて、美佳さんに見せてあげてくれるかな」
(え、えっ?)
いくら主任の指示であっても、同性の、しかも利用者の目の前だ。しかし由紀は容赦がない。
「ほら何しているのよ、指示されたら素早く動きなさい。
これもおむつ検査と一緒だよ。」
おむつ検査という言葉が由紀の口から発せられた途端、研修生は肩をぴくりと震わせた。そしてその言葉に反応するかのように白衣とエプロンの裾を掴むと、腰元までしずしずと引き上げた。
丸晒しになった下腹を覆う白いのパンティ・ストッキングの下には、暖かげにふっくらと膨らんだ白いおむつカバーが見えた。
「ほらね。ちゃんとおむつを着けて頑張っているでしょう?
この子もちょっと前まではおむつを外したいって繰り返していたものだから、あなたと同じ抑制カバーを着けているんだよ。
伸縮がない分少しぶかぶかだけれど、見た感じ普通のおむつカバーと変わらない感じよね」
立ちずくめで働いていたことと、おそらくは中身のおむつも濡れて重さを増しているのだろう、股当てに包まれた股間部は心持ちずり下がっていた。
股当てには、大きく「6西・佐藤」と書かれていた。6階西棟、すなわち排泄以外は自立している女性たちの棟の担当という意味だ。
「ただ、いくら抑制カバーでも、おむつカバーの腹や脚回りから手を差し込めば、中のおむつに触れることができてしまうんだよね。
だから冬なんかだとストッキングを穿いた上から、ボディスーツとかレオタードのような下着を重ねることもあるんだよ。抑制パジャマみたいに、腹部から手を差し込めないようにするためにね。
でも夏場はそんな重ね着するわけにもいかないし、そこで」
由紀は研修生の後ろに回ると、白衣の両脇をぐいっと引っ張り上げて胴回りを丸晒しにした。
「ほらこうやって、ストッキングを脱がずに穿いているかどうかをチェックしてあげているの」
ストッキングの胴回りに沿って、ちょうどベルトを通すように薄く細いテープが入れられているのが見えた。テープの両端は重ね合わされ、小さなプラスチックのホックで留められている。
「このホックは一度挟んだら外れないの。テープを切るしかないのね。ウエストにぴったり合わせてあるから、中に手を差し入れることは無理。おむつ検査のときこのリボンが切れていたら、たとえ研修中でも、その身分を解かれて『要保護』扱いになる規則なの。
これでもダメならもっと上の管理レベルもあるんだけど、幸いこの子はこれで大丈夫みたい。研修中だけあって、常に行動を監視されているようなものだしね。もちろん、あなたにもこのストッキングを穿かせてあげるから、安心してね」
研修生にもういいわよと合図した後で、由紀はエプロンのポケットから小さな装置を取り出した。
「それからこれは、ちょっぴり聞き分けのなかった今日の美佳さんへの、私からのプレゼント。おむつにオモラシしたことがはっきり分かるように、おむつアラームを付けてあげるわね。
外出? 大丈夫。外でもはっきりと聞こえるように、音量は最大にしておいてあげるから。
途中で外したりしないように、ストッキングの中に入れておこうね。
これを付けたら、あとは仕事でも何処でも出かけていいわよ」
おむつの中に敷き込まれたセンサーが湿気を感じ取ると、確実にアラームが鳴る。
アラームを止めたければ装置のスイッチを切るか、おむつを交換するほかない。
『要保護』扱いを覚悟でストッキングを破る勇気がない限り、せいぜいアラームを鳴らしながら帰り道を急ぎ、帰棟後のおむつ検査とおむつ交換を甘んじて受けるほかない仕組みだ。
「さあ、おむつを替えてあげるね。身体の力を抜いて、脚を開きなさい」
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ベッドの上で唖然とする美佳に、
薄い花柄のエプロンを身につけた由紀はさらりと返した。
「もちろんそうだよ。サインした誓約書になかった? 『入所者は許可なく着脱することはできない』って」
「だったら、どうすれば許可してもらえるんですか。せめて仕事に行くときだけでもこれを外したいんです」
「可哀相だけれど、ダメなの。ほら、あなたのおむつカバー」
由紀は、美佳の下腹をふっくらと包み込んでいる
白いおむつカバーを指差した。
「そのおむつカバー、赤い縁取りがしてあるでしょう?
それは『常時おむつ着用者』用なの。その色のおむつを外してあげられるのは、おむつ交換と入浴と日光浴と、あとはそうねえ、お仕置きの時くらいかな。
お仕置きのときはおむつもおむつカバーも外して、おしりを丸出しにしてこんなふうにね」
由紀は平手でぱん、ぱんと振る真似をしながら、ちらりとウインクしてみせた。
「おむつを外したいだなんてばかり言っていると、大勢のヘルパーの前でお仕置きされちゃうよ。
それに、私以外のヘルパーに頼もうとしてもムダ。そのおむつカバーを見れば一目瞭然、あなたが常時おむつ着用者だって分かる仕組みなんだから」
「ただでさえこんな厚ぼったいおむつを着けないといけないのに、外出のときもだなんて」
美佳は口をとがらせた。
「外せないというなら、外出中は交換することもできないんですよね?
万が一粗相が過ぎて漏れ出したら非衛生だし、周囲にも迷惑じゃないですか?
かといって我慢したりしたら身体にも影響がありますよね?
やっぱり外出の時におむつを着けていくのは、いつ漏れるか分からないから無理・・・」
なけなしの抵抗も、由紀の前には空しいだけ。
「あ、それは心配ないのよ。あなたのオモラシね、おむつ交換の度にチェックしているの。色や匂いや成分だけでなく、排泄量もね。
あなたの尿量なら、そのままのおむつでも2、3回分は楽に吸収してもらえるわよ。
心配なら、外出の時にはライナーを追加して厚く当ててあげるから大丈夫。それでも尿が漏れないか、オモラシが匂わないか心配?
そんな心配をするくらいだったら、漏れ出す前に戻ってくることね。
寄り道せずに帰ってくれば、そんな心配は要らないよ。おむつが行動を監視している、ってところかな。ふふふ、便利だね、おむつって。
さて、おむつの上には何を着ようかな」
由紀はクロゼットを開けると、その中に仕舞われている美佳の衣服をチェックし始めた。
「イヤ、やっぱりイヤです。おむつを当てて仕事に行くだなんて考えられません」
美佳の目にうっすらと涙がにじむ。
「仕方ないなあ。そんなにおむつを外したい気持ちが抑えられないなら、抑制パジャマを着せてあげようか?
つなぎ型で自分ではファスナーが開けられないようになっているから、そうすれば自分の意思でおむつを外してしまうことはなくなるよ。もっとも、抑制パジャマを着せられたら、こういう外出着をその上に着ることはできなくなるわね。
外に出たりしたら、とっても恥ずかしいと思うんだけど」
クロゼットの中の美佳の外出着は、パンツ・スーツやジーンズといった、下半身にぴったりと合う衣服ばかり。膨らんだおむつカバーを包み込める、ゆとりのある衣服はひとつも見当たらなかった。
(まったくこの子ったら、何を考えているのかしら。居室に持ち込める衣服の数は決められているというのに)
おむつカバー一枚の姿で外出させるわけにも行かないし、これでは本当に抑制パジャマでも着せておく他なさそうだ。
「着てみれば分かるけれど、抑制パジャマって意外と暑いのよね。いたずらできないように身体を覆ってしまうのが目的だから、ボタンを外して調節できるわけでもないし。簡単には引き裂けないように厚い生地で作ってあって」
「もっとも、抑制パジャマを着て1ヶ月も過ごすと、みんなおむつを外したいなんて思わなくなるみたいだよ。
抑制パジャマに加えて、たいていミトンもつけさせられるんだけどね。手首のところできゅっと止めちゃうと、自分では脱げないし、指も使えなくなるのね。
おむつが濡れたどころか、それこそ身体のどこかがかゆくなったというだけでも、自分では掻けないから誰かに訴えるしかなくなるの。
でもトイレだけでなく、食事から何から全て頼りきっての生活となると、おむつに対しても素直に頼ることができるようになるみたい」
さあて、どうする? 洋服着るのはやめて抑制パジャマにする?
着たいなら持ってきてあげるよ?」
美佳は静かに首を振った。
「わかりました、そんなにおっしゃるなら今日はおむつをつけて出かけてみます。それに万一粗相したとしても自分で始末できますから、抑制パジャマまでは要りません」
「だ、か、ら、美佳さん、分かってないなあ。
それはできないんだってば。『入所者は許可なく着脱することはできない』んだよ。おむつはあなたが望むと望まざるとに関わらず、必要があれば私たちが検査するし、交換します。あなたに自分のおむつを交換できる能力があろうが無かろうが、関係ないの」
由紀は衣服を見繕う手を止めベッドの脇に回ると、まっすぐ美佳を見下ろすように見つめた。
「分からないなら、何度でも言ってあげるよ。あなたはもう自分のおむつを外せないどころか、下腹に触れることも許されていないのよ。
イタズラが過ぎて自分の身体も大事にできないあなたに代わって、私たちがあなたの身体を管理してあげているんだから。
残念ね。もうあなたはここに触れることもできないの。ここに、こんなふうにね」
由紀は美佳の下腹に右手を伸ばすと、人差し指でおむつカバーの股部をゆっくりとなぞり上げた。
不意の刺激に美佳はぴくりと身体をこわばらせる。
(やっぱりこの子、少し躾が足りないようだわ。保護棟に移したほうがいいかしら。少なくとも少し管理レベルを上げてみて、様子を見る必要があるわね)
しばし思案した後、由紀は枕元に備えられたインターホンのボタンを押した。
「ごめーん、誰かいない? 抑制用カバー持ってきて欲しいんだけど。サイズはSでいいかな」
スピーカーからは、若い女性の声が返ってきた。
「は、はい。主任、わかりました。ボタン式のものですよね、今すぐお持ちします」
ほどなく、白衣にかわいらしい薄黄色のエプロンをつけた女性が居室に入ってきた。胸に『研修中』と書かれたバッジをつけたその女性は、少し緊張した手つきで由紀に頼まれたおむつカバーを渡した。
「そうそう。これでいいわよ、ありがとう。さて美佳さん、あなたやっぱりうっかりおむつ外しちゃうといけないから、ちょっと管理させてもらうね。こっちのおむつカバーに替えてあげるから、おむつ交換の姿勢になってもらえるかな?」
由紀は受け取ったおむつカバーを広げて見せた。
一見、優しげな白地のカバーではあるが、股当ての両脇には頑丈そうな、銀色の輪のようなボタンがついていた。
「このおむつカバーはね、このボタンで留めるんだけど、ボタンの真ん中をこんなふうにしっかり押さないと、外れないようになっているのよ。美佳さん、これってどういうことかわかる?」
「おむつはずしを防ぐっていうことですか」
「正解。もっとも鍵がついているわけではないから、外そうと思えば外せるんだけどね。
ただ、このおむつカバーなら、装着中に偶然外れてしまったなどということはありえないわけ。もしおむつが外れたとしたら、それは明らかに故意だということ。
おむつ検査のときにおむつカバーを外した様子があったら、『要保護』扱いになる規則よ。当分の間は保護棟に移ってもらうことになるわ。抜け出し防止帯つきのベッドの上で、勿論のことだけどおむつもずっと当てっぱなしの生活になるわね。
それもいいわよ。私たちが24時間しっかりと見守って、完璧に管理してあげるから」
「そんな、そこまでしなくても・・・」
口ごもる美佳は無視して、由紀は傍らで立ったままの研修生に向き直った。
「佐藤さん、ちょっとあなたのスカートを持ち上げて、美佳さんに見せてあげてくれるかな」
(え、えっ?)
いくら主任の指示であっても、同性の、しかも利用者の目の前だ。しかし由紀は容赦がない。
「ほら何しているのよ、指示されたら素早く動きなさい。
これもおむつ検査と一緒だよ。」
おむつ検査という言葉が由紀の口から発せられた途端、研修生は肩をぴくりと震わせた。そしてその言葉に反応するかのように白衣とエプロンの裾を掴むと、腰元までしずしずと引き上げた。
丸晒しになった下腹を覆う白いのパンティ・ストッキングの下には、暖かげにふっくらと膨らんだ白いおむつカバーが見えた。
「ほらね。ちゃんとおむつを着けて頑張っているでしょう?
この子もちょっと前まではおむつを外したいって繰り返していたものだから、あなたと同じ抑制カバーを着けているんだよ。
伸縮がない分少しぶかぶかだけれど、見た感じ普通のおむつカバーと変わらない感じよね」
立ちずくめで働いていたことと、おそらくは中身のおむつも濡れて重さを増しているのだろう、股当てに包まれた股間部は心持ちずり下がっていた。
股当てには、大きく「6西・佐藤」と書かれていた。6階西棟、すなわち排泄以外は自立している女性たちの棟の担当という意味だ。
「ただ、いくら抑制カバーでも、おむつカバーの腹や脚回りから手を差し込めば、中のおむつに触れることができてしまうんだよね。
だから冬なんかだとストッキングを穿いた上から、ボディスーツとかレオタードのような下着を重ねることもあるんだよ。抑制パジャマみたいに、腹部から手を差し込めないようにするためにね。
でも夏場はそんな重ね着するわけにもいかないし、そこで」
由紀は研修生の後ろに回ると、白衣の両脇をぐいっと引っ張り上げて胴回りを丸晒しにした。
「ほらこうやって、ストッキングを脱がずに穿いているかどうかをチェックしてあげているの」
ストッキングの胴回りに沿って、ちょうどベルトを通すように薄く細いテープが入れられているのが見えた。テープの両端は重ね合わされ、小さなプラスチックのホックで留められている。
「このホックは一度挟んだら外れないの。テープを切るしかないのね。ウエストにぴったり合わせてあるから、中に手を差し入れることは無理。おむつ検査のときこのリボンが切れていたら、たとえ研修中でも、その身分を解かれて『要保護』扱いになる規則なの。
これでもダメならもっと上の管理レベルもあるんだけど、幸いこの子はこれで大丈夫みたい。研修中だけあって、常に行動を監視されているようなものだしね。もちろん、あなたにもこのストッキングを穿かせてあげるから、安心してね」
研修生にもういいわよと合図した後で、由紀はエプロンのポケットから小さな装置を取り出した。
「それからこれは、ちょっぴり聞き分けのなかった今日の美佳さんへの、私からのプレゼント。おむつにオモラシしたことがはっきり分かるように、おむつアラームを付けてあげるわね。
外出? 大丈夫。外でもはっきりと聞こえるように、音量は最大にしておいてあげるから。
途中で外したりしないように、ストッキングの中に入れておこうね。
これを付けたら、あとは仕事でも何処でも出かけていいわよ」
おむつの中に敷き込まれたセンサーが湿気を感じ取ると、確実にアラームが鳴る。
アラームを止めたければ装置のスイッチを切るか、おむつを交換するほかない。
『要保護』扱いを覚悟でストッキングを破る勇気がない限り、せいぜいアラームを鳴らしながら帰り道を急ぎ、帰棟後のおむつ検査とおむつ交換を甘んじて受けるほかない仕組みだ。
「さあ、おむつを替えてあげるね。身体の力を抜いて、脚を開きなさい」
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