エロパロ板「おむつ的妄想」スレッドに投下された作品のまとめwikiです。

「105番の方どうぞ。」
デスクに座り、卓上マイクの赤いボタンを押しながら声を発する。
我ながら優しそうな声だ。

次の患者さんは、と事前に記入してもらった問診票に目を通す。
「21歳女性、か。」
診察ではほぼ使わない重めのペンライトを右手の上でクルクル回転させ高鳴る胸を落ち着かせる。
ワクワクすると手元が落ち着かなくなる。昔からの癖だ。



俺は石谷白衣(イシヤ・ハクイ)。
今年この「石谷クリニック」を開業した未婚の30歳。
一応旧帝大卒、まあエリートといわれる部類の人間だろう。
医師免許を取った後は母校の大学病院で働きつつ出世することも考えたが
自分の専門性を発揮して楽しみながら金を稼ぎ、マイペースにやれる環境を求めて4年で母校を辞めて開業した。
出世争いの生々しさやハードな環境で働くのは俺には合わないと感じたのだ。

ハクイはもちろん本名。医師である父がつけた。
変な名前だと思われるだろうが、医師になるべくして生まれてきた人間という印象もあるし結構気に入っている。
国内では総じて「ハクイ先生」、海外の学会でできた友人からは「Dr.Hack」の愛称で親しまれる。

お坊ちゃん育ちということもあるが、俺は貧乏家系から努力して国立医大に入って調子に乗ってしまった奴とは違う。
女癖も酒癖も悪くない、金遣いも普通、遊び方も激しくない。
休日には皇居ラン、読書を欠かさない。
朗らかな人柄にウィットのきいた言葉選び、端正なルックス。交友関係も広い。
ちなみに中肉中背・高身長でルックスも悪くなく、モデルにスカウトされた経験もある(もちろん丁重にお断りした)。

画に描いたように順風満帆な人生のスタートを切っているように見える俺にも、唯一少し特殊な趣味がある。

−−−−−俺は、ABDLなのだ。



時刻はちょうど10時。
コツコツコツと三回のノックの後に「失礼します」という細い声が聞こえ
診察室の白い扉がゆっくりと横にスライドを始める。

患者の緊張を解くよう、ゆっくりと朗らかに振る舞うことを心がける。
医師とは言え客商売。細かな気遣いがその後のクリニックの存続に繋がると
以前クリニック経営にまつわる講義で聴いて以来徹底している。

「そちらにおかけください。」
はい、と小さい声とも息とも取れる音が聞こえたと思うと、ゆっくりと椅子に腰を下ろした。

彼女の名前は吉岡桜。
綺麗に染められたダークブラウンのボブ、それに合わせられた茶色のスクエア型のレザーリュックと8ホールのブーツ。
黒以外はなかなか珍しい。
統一された茶は彼女なりの拘りなのであろう、生成色のブラウスと小振りな青地の花柄スカートにも良くマッチしている。
オリンパスを首からさげさせればザ・下北沢系サブカル女子の完成といったところか。
綺麗系というわけではないが、くりっとした大きな瞳と幼い顔立ちが印象的だった。

彼女は椅子に座り膝の上にリュックを置き、何も喋らぬまま5秒程度の沈黙が流れた。
よっぽど緊張しているようだ。やれやれ、少しほぐしてやるか。

「あ、お鞄はそちらのカゴに入れていただいて結構ですよ。
抱えていた方が安心するのであればそのままで結構ですがw」
「は、はい…!」
表情は強ばったままだ。

リュックの細い紐を丁寧に畳みながらカゴに入れようとする彼女に軽く雑談を振ってみる。
「その靴、マーチンですか?そんな素敵な色があるなんて知りませんでした。」
「あ、はい、一応そうです。」
「オシャレですね。私も以前黒の3ホールを穿いていたので懐かしいなと思いまして。」
「私も持ってます…!」
「ブーツ、お好きなんですね。」
共通の話題を見つけると人は相手に親近感を覚える。
会話を一つずつ紡ぐごとに彼女の緊張は解けていったように見えた。

1、2分話して、そろそろ本題に移ることにした。
「ところで、今日はいかがされました?
お体のことなので話しづらいかもしれませんが、ちゃんと治療して完治させるよう努力します。
ご自分のペースで結構ですから少しずつ話してみてください。」

するとみるみるうちに彼女の耳は赤らみ、顔も視線も下に倒れていった。
直感的にわかる。
こういう反応を示す子は大体夜尿の症状で来院してくる。
俺は自分の知的好奇心を満た・・・いや、この子の症状を治療するためにも早くその先を聞きたかった。

「よ、夜寝るとき、その・・・、トイレに行っているんですけど・・・ちゃんと行っているんですけど・・・」
しばらく沈黙が流れたあと彼女は今にも消えそうな声で言った。

「最近、お布団を濡らしてしまうことがあって・・・治したくて・・・」

「なるほど、そうなんですね。お話ししてくださってありがとうございます。(やっぱり夜尿症か)」
「ネットで調べて色々したり、水分控えたりしているんですけどどうしても・・・」

漠然とした不安に襲われているように見えた。
まずは夜尿のメカニズムとパターンについて説明をすることにした。

「・・・ということなんです。」
「わかりやすいです、ありがとうございます・・・!」
「もう少し詳しく症状についてお伺いできますか?いつから症状があって、一週間に濡らしてしまうことは何回ぐらいありますか?」
ここからは根掘り葉掘り聞いていく。

「だいたい・・・3週間ぐらい前です。
最初濡らしてしまったときは疲れた後にお酒を飲んだあとだったので
たまたましてしまっただけだとおもったんです。」
「ふむ。最近疲れることは多いんですか?」
「うーん、テストとかバイトとかいろいろあって疲れているのかもしれません。
初めて濡らしてしまったときに寝冷えしたせいでちょっと風邪っぽくなったんです。
でも学校があるのでなんとか体調が悪いまま平日をやりきったんですけど
週末になったら一気に熱が出て・・・そうしたらまたやってしまって。」
彼女の中で話す勇気が生まれたようだ。こうなればもうこちらは何もしなくてもよい。

「今だと・・・週に2回ほど・・・です。」
そう言ったとき彼女の目が泳いだ。嘘をついている。
これは確実にもっとしている。かわいい。
金も貰えるしふとした時にキュンとさせられる。俺はこの仕事を愛している。

「量はどの程度ですか?また今どういった形で対策されていますか?」
「最初のうちはコップの水をこぼしたぐらいだったんです。だからタオルとビニールを敷いて寝ていました。
でも・・・これが病院に来るきっかけだったんですけど、今朝量が結構多くて・・・。
お尻まで濡れるぐらいだったんです。これはさすがに何かおかしいのかもしれないと思ったんです。」
「なるほど。聞かせてくださってありがとうございます。でもお話しを聞いている感じだとまだ病気だと判断するのは早いかなと思います。
一番高い可能性は心身の疲れなんですよ。最近眠りが浅くなっている感覚はありませんか?」
「確かに、最近布団が濡らしてしまうかもしれないと心配であんまり熟睡できていない気がします・・・。」

「わかりました、じゃあちょっと体のバランスを整えてくれる薬を出しておきます。
それを使ってみてちょっと様子を見てみましょう。改善が見られない場合はまた1週間後にきてください。」
点鼻薬と内服薬を処方することにした。

「何かほかに気になることとかありますか?」
「いえ、ないです。ありがとうございます。」
「はい。すこしゆっくりして疲れをとるようにしてみてくださいね。お大事にどうぞ。」

椅子から立ってカゴに置いたリュックを背負い帰る準備をし
ちょこちょこと小股で歩き、診察室から出ていこうとする。少し名残惜しかった。

彼女は診察室から待合室に続く扉をまたゴロゴロと鳴らすと、もう一度振り返り会釈をして「ありがとうございました!」と言った。
入ってきたときよりも、茶色のブーツから発されるリズムは軽やかだった。
春の香りが鼻をくすぐった。

「・・・それでは、終礼を終わります。明日は午前診療のみとなりますがよろしくお願いします。本日もお疲れさまでした。」

働いてくれているスタッフたちとの終礼を終えて一度診察室に戻り、ふうと息を吐いて椅子に座る。
スタッフはポツポツと帰り始めたようで、待合室の向こう側にある出入口の方からは「オツカレサマでしたー」と無機質なトーンの声が聞こえてくる。
次第にクリニックから人の気配が消えていく。

オツカレサマな俺は少しボーッとしながら「吉岡、桜・・・」となんとなく彼女の名前を呟いた。
雑務をいくつか片づけて机の周りを整理してPCの電源を切る。

明日は土曜日、午前診療だけだし心身ともに余裕が持てそうだ。
軽く飯でも食って深夜になるのを待った後にC1を流しに行こうか。
通勤の足車にしているエリーゼのキーを手に取って席を立とうとした矢先、トゥーットゥットゥッというリズムがスマホを震わせた。

「いまからひま?」

酒豪と飲みに行く気分ではなかったので「多忙」とだけ返そうとしたが、俺のプライベートを大体知っているこいつに嘘をついたところでまた小言を言われそうなことに気づいた。
すぐさまバックスペースを二度タップした後「飯?どこ?」とだけ書いて送信。一秒とたたずに既読がついた。

「いつものと濃さ来飲んでる」

・・・いつもの所で先に飲んでいると言いたいんだろう。この感じ、すでに結構飲んでいるようだ。
今日も会計は俺持ち、運転代行利用コースか・・・。

狭く入り組んだ小さな繁華街。ヘッドライトで人を掻き分けてコインパーキングに車を止め、雑居ビルの2階に入ったいつものカジュアルなワインバーに向かう。
店に入ると「ハクイ!ハクイ!おせーぞ!」と言いながら手を振る人影があった。
ここはそういう店じゃないのにと思いながら俺はこいつのすぐ横のカウンター席に座る。

「あれ、お前さっきと服変わった?」
「一回家帰って着替えてきた!」
「わざわざねえ・・・」
「いやだって取りに帰るものあったし。てかこのワンピース可愛いっしょ〜ほれほれ!」
「やめろw」
「チッ、釣れねえな!!」
「(口悪いなあ・・・)」

こいつの名前は、神田護(カンダ・マモル)。
"マモル"という男性的な名前だが女性だ。看護師として俺のクリニックで働いてくれている。
26歳独身、彼氏無し。
猫目に添えられた上品な睫毛が特徴的で、155cmそこそこの身長から延びる手足は細く長い。
清潔感のある長袖Tシャツやブラウスにすとんとしたキャミワンピースを好んでよく着ているのだが、
もしかするとこの手のスタンダードな服装を日本で一番着こなす女かもしれないと思わされる。
体の線も細いのでもっとスタイルの良さが出るような服を着ればいいとおもうのだが、いつも緩い服ばかり着たがる。
―――なぜなら、こいつもまたABDLだからだ。

こいつは美人なのに毎日おむつで生活をしているそうだ。仕事中も。
こいつ以上の残念系美人はいないと思う。
しかしおむつを履いているとはいえ、働いている時は至極真っ当で優良な看護師である。
同僚と軽い冗談を交えながら笑顔でテキパキ働くタイプ。
知識も広く深く手も早く、仕事がとにかくできるため人望も厚いが酒を飲むとすぐこうなる。
顔はいいので色んな男から言い寄られるようだが、進展したという話は一度も聴いたことがない。
男と飲みに行って解散すると大体その後連絡がつかなくなるんだけどなんでだろう?と相談されたことがあったが俺は何もいえなかった。



「財布が来たからさ!ねえ!私の生まれ年ぐらいの赤出して!高い奴!」
店中に響き渡る品のない声で店員に言う。財布って俺のことか。
「お客様の生まれ年ですと90年代初盤ぐら・・・ではなく2000年ちょうどのワインということで宜しいでしょうか。」
「うん!そう!!」
だいぶ都合がいい。

一度マモルに、なぜそんなにも酒を飲むのかと訊いたことがある。
酒が好きなこと自体はもちろんそうだが、もう一つの理由はシンプルに「泥酔すれば自然におねしょできるから」らしい。
さすが生粋のABDL、命を削っている。

「・・・私、ちょっとトイレ行ってくる」
騒いでいたのに少しの間無口になったと思うと、頬を赤らめてトートバッグを片手に足早にトイレに向かっていった。
席を立ちあがるときカサカサという音が聞こえたので、まあそういうことなのだろう。

〜〜〜
マモルと知り合ってもう6年になる。きっかけはTwitterだった。
俺は当時医学生。友達も多い方だったが、家に帰ればいくつになってもおむつが外れないABDL。
自分ながらこのギャップに息苦しさを感じていたし、ABDLであることに後ろめたさを覚えていた。
リアルの友達にABDLであることを隠し続けているせいで、常に嘘をついているような気持ちだったのだ。
そんなこんなで、おむつを履くごとに安心感と虚無感を同時に覚えた。
俺の全てを知って仲良くしてくれる友達なんて一人も居なかった。

ある時俺は思った。
何も隠さず、ありのままで居られる場所と人間関係がほしいと。
俺はTwitter始めた。

俺は課題に追われている中時間を作って、当時好きだったアーティストのライブに行った。
会場の建物の写真をTwitterに上げたのだが、マモルもどうやらそのアーティストが好きだったらしくリプライが飛んできた。
しばらくタイムライン上でやり取りをしたあと、DMを重ねた。
マモルはTwitterに着画をアップすることもあるため男性のフォロワーが多く、出会い目的のDMにうんざりしていたところだったらしいが
ABDLで趣味が共通していて、かつ異性の出会いを求めていない俺のような人間を探していたのだと言っていた。
やり取りをする中で、お互い学生で医療職を志す者同士だということもわかって意気投合した。

LINEを交換してから毎日話しているうちに、お互い好きな画家がいることがわかり一緒に個展に行くことになった。
これがマモルとの出会いだ。
個展で黙々と作品を眺めたあと、そのまま帰るのも味気ないので帰りに近くのレストランに寄ることになったのだが、そこでマモルは酒癖の悪さを発揮。
荒れに荒れて店にも俺にも散々迷惑をかけた翌日、マモルから来たLINEには「ごめん、なんも覚えてないw」と書かれていた。
普通だったら即座に関係を切る程度の出来事があったのだが、
お互いABDL同士ということや、何事も包み隠さず接することができる唯一の友達になれそうだという確信を持てたため
今日の今日までやましいことは全くなく関係は続いている。
それから時が経ち、俺は大学病院に勤める医師となり、マモルは別の大学病院で働く看護師になった。
お互い性癖をこじらせて泌尿器科勤務。底知れぬ好奇心を以て着々と知識と経験を重ねていった。

去年。
泌尿器科のクリニックを開業するから一緒に働かないかと打診をしてみた。
一度はあっさり拒否されたのだが、マモルは優秀でいいやつだと知っていたしどうしてもこいつが欲しかった。
諦めず熱意を伝えつつ、仕事中おむつの着用許可した。
さらにおむつをしたまま働きやすい環境作りをすると約束した。
具体的には、院内のトイレに鍵付きの用具入れを設置すること、
ユニバーサルシートの設置すること、
ゴミシューターを設置すること、
ナース服の改良をすること(おしりのシルエットが目立ちづらい仕様)などなど。
すると「ABDLにこんなにやさしい職場はない」と目を輝かせながら快諾。
こんな感じで、Twitterで知り合っただけの関係だったにも関わらず今や職場の部下として働いてくれている。
〜〜〜
「で、マモル、今日何で俺のこと呼んだの?」
俺は純粋に気になって聞いた。
「酒飲みたくなった時に私がお前のこと呼んで何が悪ぃんだよ!」
「つまり財布ってことかよ・・・」
「冗談冗談!お前、アレだろ、アレ!桜ちゃん!ちょっと好きだろ!てかだいぶ好きだろ!私わかっちゃうかんね!」
どうやら恋愛的な話をふっかけて茶化したかったということらしい。

「まあ可愛らしい子だと思うけど俺はABDLとしか付き合いたくないからなー。ていうか患者さんに手出すとかあり得ん。」
「こじらせてんなー、わかるけど。」
「自分のこと隠して生きていくなんてゴメンだ。まあ吉岡さんはたしかにタイプなんだけど。」
「ふーんwABDLも難儀だねえw」
「人のこと言えねえだろw」
お互いにゆるく罵り合いながらグラスを傾ける。

夜も更けた。俺は明日も朝から診察だ。
「俺そろそろ帰るわ。」
「金は置いてけよ。」
「なんだそのチンピラみたいな口ぶりはw」
「ていうかさー、ハクイ、帰る前に一つ言いたいことあったんだけど。」
「何?」
「私さー、桜ちゃん、なんか違和感あったんだよね。」
桜ちゃんと呼ぶなと突っ込みたかったが、さっきまで緩みきっていた表情は嘘だったのかと問いたくなるほどマモルは急に真面目な顔をしたのでそのまま話を続けることにした。
財布からカードと名刺を取り出して店員さんに渡し、俺は尋ねる。
「具体的にどのへんが?」
「自分でもよくわかんないんだけど、なんとなく。」
「それじゃわからんなwまあ夜尿の症状が完治してくれるのが一番だけど、また来たらもう少し詳しく症状聞いてみるわ。」
「うん、そうして。」
「サンキュ。じゃ帰るわ。お前もほどほどにしろよ。会計切っちゃったからこのボトルとつまみ最後にしろよ。」
「うるせーなわかってるよー。私は明日シフトないからいいんだよー。」

じゃあな、と言い残して店を出る。今日は運転代行を呼ばずに歩いて帰ることにした。駐車場代はかかるが、金はあるからまあいい。
俺はさっきマモルが言ったことが気になっていた。あいつの勘は何かと当たる。現状吉岡さんについて持っている情報が少なすぎるがゆえに、考えることの一つ一つは推測の域を出ないのがもどかしい。

ああでもないこうでもないと考えているうちに家についた。
これ以上考えても無駄なので、さくっとシャワーでも浴びておむつを履いて寝ることにした。
忙しい医師の至福のひと時である。

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